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美少女はじめました  作者: 針山田
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49話 彼の家


「なんでこのあたしが、アンタなんかの家に……」

「じゃねぇと、お前服ねぇだろ」

「そうだけど……」


 優也とともに、家へ足を向けているのは、ひなことカメリアだ。

 カメリアが『美少女』でなくなったことにより、展開していた結界も解除され、壊れた校舎も破れた服も元通りかと思いきや、完全に破れ去ってしまったカメリアの服は戻らないという現実に、急遽優也の家へ向かうことが決定した次第である。

 そうして学校をあとにした三人は、今は自宅から近い場所を歩いていた。


「今着てんのだって借り物で、明日には返す約束なんだから」


 結界の中ではカメリアにブレザーを貸していたが、まさか外までその格好で歩かせるわけにもいかず、優也は学校の先生に頭を下げて、女子用の制服を一人分貸してもらった。

 そん時の優也を見る先生の目といったら……。


「てか、それを借りて来た俺に感謝の言葉はないのか? どんだけ苦労したと思ってんだ」

「借りてきてなんて頼んでないし」

「だったら、お前はあのまま帰りたかったのか? 先に言っとくが、どのみちブレザーは返してもらうからな」


 それはつまり。


「ーーっ⁉︎ いっ、いいい今アンタあたしのは、はだ、はだっ裸思い出して興奮したでしょっ⁉︎ このっ変態! えっち!」

「ししてねぇよ!」


 たぶん……。


「そういえば、優也くんって、すぐに人の服を脱がしたがるよね? わたしのときも門番さんのときも、ほらカメリアちゃんのときも。そんなに女の子の下着が見たいのかな?」

「な⁉︎ なな何を言い出してんだよ⁉︎」

「アンタ、そこまで変態だったの……」


 なんかずいぶんとカメリアが遠く離れてしまった気がする。

 ……まあもともと近づいてもいないか。


「言わせてもらうが、『結晶』破壊のため仕方なくだ。ひなこ、お前はわかってんだろ」

「じゃあ、わたしのときは?」

「少なくともお前の場合は自分で脱ぎ出したんだろ」

「でも優也くん、見たそうな顔してたよ?」

「だとしてそれは『結晶』のことであってお前の下着を見たいわけじゃ断じてねぇ」

「見たくないの?」

「見たく、ない……こと…………ない………………こと…………」

「? どっち?」

「どっ、どどっちだっていいだろ!」

「うーん……。そういうことにしといてあげる」


 どういうことにしといてくれたんだか。

 確実に本人は無意識だろうが、時折彼女は黒い部分を見せる。ブラックひなこ、とでも名付けておこうか。


「アンタら、あたしが監視してる時も思ったけど、ほんと仲良いわよね」

「あれ、カメリアちゃん、もしかしてしっと?」

「しっ⁉︎ ししし、し嫉妬⁉︎ し嫉妬なんかしてないわよ!」


 嫉妬?

 カメリアが誰に?

 ……いや、これは愚問か。カメリアが優也に向けた嫉妬であることは間違いない。ひなこと仲良くしているのを羨ましがっているのだろう。


「あれ、でもカメリアも研究所の中じゃ仲良かったんじゃないのか? ひなこが友だちだって言ってたし」

「とっ⁉︎ と、友だち……」


 カメリアは、照れ臭そうに頬を染める。

 嬉しいなら、そう言えばいいのに。素直じゃないやつだ。


(これがひなこの言ってた、不器用だけど根は優しいってやつかな)


 正直彼女のことを完全に許せたかと聞かれれば、違うのだろうが、きっと悪いやつではないのだろう。


「なにもお前を家に呼ぶのは服のためだけじゃねぇよ」

「アンタもしかしてーー⁉︎」


 明らかに優也から距離を取るカメリア。

 門番の時といい、カメリアにも、そういう人間だと認識されている気がする。

 それもこれもすべては、隣で何事もないように立つオレンジ髪の少女のせいであるが。


「そうじゃなくて、色々話したいこともあるんだよ」

「そんなのないわよ」

「俺はあんの」


 色々と確認したいことがある。

 カメリアは門番とは違い、研究所直々に捕獲を命じられた『美少女』だ。そういう意味では、もっと詳細な情報を聞き出せるだろう。

 そんなことを考える優也の隣では、ひなことカメリアが会話をしていた。


「カメリアちゃん。優也くんの家はいいところだよ?」

「別にあたしはそういう心配をしてるんじゃないわよ」

「? じゃあどういう心配?」

「心配ってほどの……」

「あっ! わかった! カメリアちゃん、緊張してるんだね? 優也くんの家にいくの初めてだから」

「なあっ⁉︎ き、緊張なんかするわけないじゃない! なんでこのあたしがこんなやつの家に行くぐらいで緊張しなきゃいけないのよ!」


 カメリアがあげたその大声に、優也が反応を返す。


「何の話してたんだ?」

「アンタには関係ないっ!」

「ぶうッ⁉︎」


 飛んできた拳を、優也は顔面で受け止めた。


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