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美少女はじめました  作者: 針山田
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40話 ところで、ひなこって


「ところで、ひなこ、一つ聞いてもいいか?」

「ん? なに?」

「ひなこってーーーー、ロリコンか?」

「な、なにを聞きだすの⁉︎ きゅうに」

「いや、さっきステラで、女の子見た時、かわいいつってたろ?」

「言ったよ? でも、じゃあ、優也くんにとっては、あの子はかわいくなかったの?」

「まあ、かわいいっちゃあ、かわいかったな」

「じゃあ、優也くんもロリコンってことになるよ?」


 しかしそれは、かわいいか、かわいくないか、と問われればの回答に過ぎない。ひなこと違い、優也にとっての彼女への第一印象は、不思議、の一言であった。


「ステラのあの子は百歩譲ったとして、わざわざ研究所に取りに行った、あの写真はなんなんだ?」


 大事な忘れ物があると言うから、危険を冒してまで、敵の本拠地である研究所の居住区にあるひなこの部屋まで忍び込んだ。

 その忘れ物というのが、一人の幼い少女を撮った一枚の写真であった。大事だというからには特別な写真なのだろうと思ったが、そこにはひなこが写っていないし、被写体である少女の視線はカメラにはなく、どこか別の場所を見ていた。

 まるで少女を隠し撮りしたかのような、そんな写真。

 友達かという優也の問いに、ひなこははっきりと違うと否定していたのを覚えている。

 あの時は状況が状況だった。聞きそびれてしまったが、今真相を明らかにしよう。


「あの写真に写ってる子も、幼い女の子だったよな?」

「あれはね、友だちにたのんでとってもらったの。大事な一枚なんだよ」

「だから、なんで大事なんだ?」

「そりゃあ、かわいい女の子が写ってるからにきまってるよ!」

「いや、だからそれがロリコ、」

「ほらほら、優也くんも見てよ!」

「てか持ち歩いてんのかよ写真」


 こりゃダメだ。相当な重症である。


「ね? かわいいと思わない?」

「………………」


 半ば押し付ける形で写真を見せてくるわ。感想を求めてくるわ。


「よく見て!よく見て!」


 手に取り、改めて見てみれば、かわいい女の子ではある。

 が、断じてひなこが言うかわいいとは意味が違う。

 

「わーったから」


 その時、


「あれ? ゆーくん?」


 前方には、優也の幼なじみである珠音の姿が。


「おう、珠音じゃねぇか」


 その隣には、


「僕もいるよ」


 冬野ほたるがいた。


「なんか、お前ら二人って、珍しい組み合わせだな」

「ちょっと……、ね?」

「うん。珠音ちゃんがね、僕を」

「ちょっ、ちょっと! ほたるくん!」


 何かを言いかけた冬野の言葉は、珠音によって制止された。


「なんだよ、気になるじゃねぇか」

「そ、そんなことよりっ! ひなこちゃんの、その服、もしかして?」

「うん! やっと見つけたんだ!」


 嬉しそうに見せびらかすひなこ。

 話の逸らし方が上手いこと。まあ、聞かれたくないというのならば、あえて聞こうとはしないが。


「どこにあったの?」

「うーんとね、ステラ」

「やっぱり落とし物センターに?」

「ううん。なんだか、へんな人がとどけてくれたの」

「変な人?」


 間違った表現ではない。実際に、突然、人の匂いを嗅ぎ出し、その上興奮を覚えるという変態であったわけだし。


「なんかよくわからんが、拾ってくれてたらしくてな。そんでさっきその人に会って、返してくれたんだ」

「なんだか、変な話だね?」

「やっぱ珠音もそう思うか」

「僕も部分的にしか聞いてないけど、不思議な話だと思うな。なにが一番不思議って、その人が今日ステラにいたことだよね」

「まあな」


 まるで優也たちが来るのを知っていたかのように、姿を現した男と少女。他に用があったというのならいざ知らず、あの様子だと落とし物を返す目的でステラにいたように感じた。

 しかし深くは考えない。落とし物が戻ってきて、さらにひなこに笑顔が返ってきたのだから、結果オーライとしよう。


「そういや、冬野はひなこと初めて会うんだったな」

「うん。ひなこちゃんっていうの?」

明元あかりもとひなこ。こいつは、冬野ほたる。俺の友だちだ」

「冬野ほたる。よろしくね?」

「こちらこそよろしく! 優也くんって、珠音ちゃん以外の、女の子の友だちいたんだね?」

「………………」


 無邪気なその言葉が、なにより冬野の心には刺さったことだろう。


「……ひなこ。こう見えて、冬野は男なんだ」

「え⁉︎ あっ、そうだったの……。ごめんね?」

「ううん、言われなれてるから大丈夫だよ、気にしないで……」


 だから傷つかないという意味ではない。


「ひなことは色々あってな。今は俺ん家に住んでもらってるんだわ」

「ゆーくんの家に⁉︎」


 冬野と話していたつもりだったが、誰よりも早く、超人的な反応をしたのは珠音であった。

 余計な一言を言ってしまったと後悔してもすでに遅い。

 昔から、珠音は、自分以外の女の子が優也の家に上がることを嫌がる傾向がある。もっと言えば、優也が他の女の子と仲良くすると、決まって機嫌が悪くなる時期もあった。


「それ、どういうことなのかな……? 詳しく聞かせて?」


 目が怖いです近付かないでください。

 ジリジリ……、と距離を詰めてくる珠音。

 さすがのひなこも身の危険を感じてか、彼女から距離を置いている。

 てか標的は俺なんですか? ひなこにも聞き出せるだろ。


「待て待て珠音、落ち着け」


 そんな言葉で落ち着いてくれたら苦労なんてせず。

 両手で何もないことをアピールする優也の手から、何かが地面へ舞い落ちた。それは、先ほどひなこから受け取っていた、一枚の写真である。

 それを拾い上げるは珠音。


「………………」


 無言で、写真に写る幼い少女へ視線を向け続ける珠音。

 その横から、興味を持った冬野が覗き込む。

 そして一言。


「優也君って、もしかして、ロリコン?」

「ちげーよ‼︎」


 少し前のやり取りか! しかも今度は疑われる側!


「ゆーくん……」


 おいさっきまでのオーラはどこに行った。蔑んだ目で俺を見るな。


「やっぱり優也くんはロリコンだったんだね!」


 おいひなこ、やっぱりってなんだ。それはお前だよ。仲間が出来て喜ぶな。


「趣味は人それぞれだと思うよ」


 同情してんのかそれ。だとしたら一番ひでぇよ。てかだからロリコンじゃねぇよ。

 てかおいなんだ、この場に味方はいないのか?


「なあ、笹木。どう思うよ」


 当たり前の日常。だからこそ忘れてしまっていた。


「急にどうしたのゆーくん」

「ささき?」


 優也が立つこの場所が、すでに昔のような平凡でないという現実を。


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