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「分岐点・関ヶ原」〜豊臣政権による世界進出とその結果〜  作者: 扶桑かつみ
●「第五部」第一次世界大戦(グッド・ルート)

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あとがきのようなもの

 この度も、おつき合いいただきありがとうございました。

 

 月並みな言葉となっていますが、さて今回は如何だったでしょうか。

 いつもの事ながら、非難囂々のシュプレヒコールが聞こえるのは私の空耳でしょうか(笑)

 ただ、楽天的な日本人の発展を追いかける以上、可能な限り挫折をさせないのはある種のお約束ですので、ご容赦いただければと思います。

 もしくは、いつも通り「なまあたたかい目」で見ていただければと思います。

 


 なお今回は、「関ヶ原の合戦」での西軍勝利をターニングポイントとしましたが、戦国時代延長戦や第二ラウンドを期待された方には不満が多かったのではと思います。

 ただ、戦国時代や江戸時代初期の事を構築するにあたり、私自身の知識の少なさを痛感するばかりだったので、どうしても扱いが小さくならざるを得ませんでした。

 

 また、18世紀末に日本での戦乱と新国家建設を持ってきたのは、我ながらけっこう珍しかったのではないかと思っています。

 ただ、世界を大きく変化させてしまうと、人物や武将などの固有名詞を登場させにくくなっている点はかなり苦労しました。

 やりすぎると「お伽噺」になってしまいますからね。

 

 それでも、いつもの時期に近代国家建設という流れよりは、変化があってよかったのではないかと思っています。

 


 なお、当サイトの「太陽帝国」に対するオマージュもある程度被せていったので、進出場所や移民の流れはあえて似させています。

 ただし、この中での唯一最大の違いは、アイヌという異なる民族を置かなかった事ではありません。

 

 また「豊臣の世」に相応しく「黄金」をガジェット(小道具)として使ったこと点は、もう少し強調すべきだったかもと反省しています。

 

 史実での環太平洋地域、北アメリカ大陸西部、オーストラリア大陸にあった巨大な金鉱は、19世紀半ば以後急速に開発されました。

 全部合わせると、3000トンはくだりません。

 このため金の大幅な価値下落がおきて、イギリスはその金をかき集めて金本位制を作り上げています。

 

 これらの黄金が日本人の手で二百年ほど早く見つけられたら、というイフの要素を出来る限り強くした積もりです。

 

 そして莫大な黄金の富の上に欲望のまま胡座をかいて突き進む姿は、「豊臣の世」の気風のまま進んでいく日本人に相応しいのではとも思います。

 

 我々の世界でよく言われる日本人的な要素の一つである、質素倹約、堅忍不抜、質実剛健な禁欲的鎌倉武士のような姿勢スタイルは、徳川家康という巨人が中央政権を握り、彼の偉勲を受けた徳川政権が誕生してこそ成立するものだと思います。

 その徳川幕府ですら、全盛期には相応に華美になっています。

 

 しかもこの世界では、オランダとの対立とゴールド・ラッシュをエサにして日本人達がいち早く環太平洋中に出ていくので、島国根性もかなり消えていきます。

 全てに欲望がうち勝ってしまうのです。

 「わび・さび」ではなく、「かぶ」いて「へうげる」ような文化が中心となるでしょう。

 この世界の17世紀、18世紀は、赤い朱塗りに金ぴかな内装が溢れているかもしれません。

 

 豊臣幕府が呆気なく潰されたのも、欲で出来た合従連合の政府が、次の欲を担う人々に飽きられたからに過ぎません。

 日本人の世界に必要なかったから、無くなったのです。

 

 そして近代国家を作り上げた日本人達は、その後も自分たちの欲望に忠実に生きていきます。

 

 そして勝手気ままに楽天的な発展をしているところに、ヨーロピアンが一方的に殴りかかってきたので、「グッド・ルート」での世界大戦では怒りにまかせて殴り返させてみました。

 この世界の日本人達は、我慢が嫌いで辛抱強くも有りませんが、波に乗ると図に乗ってしまうような人たちです。

 少しラテン民族的な気質に変化しているのではと想定しました。

 

 「トゥルー・ルート」の方が我々の世界の日本人のメンタリティーに近いかもと思ったので、「トゥルー」にしてみただけです。

 


 なお今回も、当初は20世紀に入った時点で幕にする予定でした。

 武士の時代が完全終了すると考えていたからです。

 ですが予定を変更して、世界大戦を取り上げることにしたので、少し(かなり?)延長してしまいました。

 今回いわゆる「第一次世界大戦」に最後のスポットを当ててみましたが、これは私個人の趣味の範疇でした。

 

 でも、「グッド」では思う存分「戦艦の戦い」を扱えたし、「トゥルー」では北米でも陸上の戦争ができたし、いつもと違うグレート・ウォーが出来たので、個人的にはけっこう満足しています。

 

 ただし、冒頭を関ヶ原の戦いで始めたので、大戦争で幕を閉じるという別の目的もありました。

 


 なお、それぞれのルートの今後のこの世界の概要についてですが、ある程度プロットは組んでいました。

 

 「グッド・ルート」の方は、共産主義の総本山を最初に潰してあるので、我々の世界からは大きく脱線します。

 

 今後の世界では、ヨーロッパがドイツの覇権拡大と日本の覇権安定によってそれぞれの地域が一定の安定を見るので、ファッショ(全体主義)が台頭しません。

 当然ですが、史実のような構図の第二次世界大戦が起きる可能性はほとんどありません。

 フランスとイタリアが不遇な世界ですが、私たちの世界のドイツのような元気はありません。

 日本が大和の真珠湾を攻撃する可能性もほぼ皆無でしょう。

 

 恐らく北アメリカ情勢が焦点となります。

 

 そして私たちの世界情勢の写し鏡が、北米大陸を中心にして起きるのではないかと想定しています。

 

 戦後不況の中で、北部と南部は対立を続けながらもそれぞれ微妙に違うファシズム化するでしょう。

 そして、自由主義を守る大和共和国との対立状態をそれぞれ先鋭化させます。

 我々の世界のように、1920年代のアメリカの繁栄のような状態には決してならず、政治対立、軍事対立が先鋭化していく筈です。

 そして持てる国大和と、持たざる国合衆国、南部の対立は戦争へと向かうルートとしてフラグが成立しやすくなっています。

 

 ヨーロッパと日本は、当面はグレート・ウォーでの戦災復興と戦費返済に喘いでいるので、事が1930年代前半までに起きたら基本的に身動きできません。

 軍拡など以ての外です。

 北米情勢も戦争特需以外ではほとんど傍観せざるを得ず、ブリテン、日本、ドイツはそれぞれ自国勢力圏の経済ブロック化を進め、はぶられる北米各国の不満が増大します。

 特に南北アメリカは怒り心頭して、北米大陸での対立が限界に達した時点で、ブリテン、日本、さらにはドイツ(ヨーロッパ)を巻き込んだ北米大戦へとなだれ込みます。

 

 合衆国のカナダか南部への全面侵攻が、戦争のスタートとしては起きやすいフラグでしょう。

 

 ヨーロッパでは、ファッショのイタリアが多少やんちゃして、フランスは左化(社会主義化)しますが、ドイツ、ブリテンの二強がそれぞれの理由でヨーロッパ世界の安定を望む可能性が高く、大規模な戦争には恐らくなりません。

 某総統閣下には出番すら回ってこないでしょう。

 

 フランス、イタリアは不満を溜めまくるでしょうが、両国の基礎的な工業力、経済力ではブリテン、ドイツに対向できないので、そのままの状態が続きます。

 ロシアも内政がグダグダのままなので、我々の世界のソ連のように強硬な重工業化などの変化も起こせず、貧乏暇なし状態で内政対立に明け暮れます。

 よほど有利な条件がないと、ドイツに復讐戦を挑む事はできないでしょう。

 

 チャイナは取りあえず中華民国にしてみましたが、内乱でグダグダになることは確実だし、隣に日本という大国がふんぞり返っているので、当面明るい兆しはありません。

 辺境部各地を奪回、再併合する事もないでしょう。

 共産主義の芽も元から潰れているので、共産化の可能性もほぼ皆無です。

 

 北米大戦の時期は、1930年代初頭ぐらい。

 戦争は陸戦主体で、海では補助的な戦争しか行われません。

 少なくとも、呆れるような大艦隊は出現しない予定でした。

 空での戦いも、私たちの世界ほど酷いことにはならないでしょう。

 

 戦闘は「トゥルー・ルート」をもう少し機械化した感じで、戦車や航空機の活躍が見られたでしょう。

 そして北米中原は荒れ果てるも、大和による北米統一や圧倒的優位の確立が、やはりオチになるでしょう。

 


 一方「トゥルー・ルート」ですが、ヨーロッパ情勢が我々の世界の近似値になったので、恐らく髭の総統閣下が登場するでしょう。

 赤い国の髭親父も、北の大地を支配する筈です。

 

 少なくとも、ヨーロッパに関しては我々の世界に近い第二次世界大戦が起きるでしょう。

 しかし、環太平洋の過半を覆う日系社会が存在するので、かなり違った情勢も見込まれます。

 取りあえず、日本と大和が戦争する可能性はほとんどありません。

 大人しくなった日本を中心として、かなりの安定を見せるはずです。

 

 日系諸国としては、ヨーロッパの戦争を今度こそ傍観しようとするかもしれません。

 少なくとも、日本が枢軸側に立つ理由はない筈です。

 ただし、北米は上に書いたのと似たような事になるのではないかと想定しているので、北米で自由主義対全体主義という構図の戦争が見られるかもしれません。

 南軍が皮肉家の葉巻デブと、北軍が総統閣下と握手する可能性もかなり高いでしょう。

 やっぱり大和は、奇襲攻撃を受けるかもしれません。

 


 もっとも、プロットとして構想したのはここまででした。

 ただこれらの想定の場合、今ひとつありきたりで面白みに欠けると思って先に進むことを止めました。

 変則的な第二次世界大戦には一定のニーズがあるとは言っても、ここまで日本人社会が違っていてはやっても仕方ないでしょうしね。

 


 それでは、また別の並行世界で会いましょう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今回も楽しませてもらいました。来年以降の投稿も楽しみにしています。
[一言] 楽しませていただきました。 ありがとうございました 次の作品も期待して待っています。 なにはともあれ、完結お疲れさまでした。
[良い点] 完結お疲れさまでした。 大きな火種が残っている以上、どちらの世界も燃え盛りそうですね。
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