騒がしくも幸せな日々
⬛アーススターノベルさんにて、六月に書籍化していただけることになりました。人外恋愛短編小説アンソロジーに『ねぇクラちゃんさぁ、マジでアタシの嫁にならない?』と共に掲載されます。
詳しくは活動報告をご覧ください。
嬉しかったので、少しだけ『その後のお話』を書いてみます。
「あなた達はいったい、何を考えてるんですか!」
目の前にお行儀良く並んだ五対の犬耳達が、いっせいにピクン!と揺れて、ピルピルと震えた後に力なく萎れた。
可愛いがそれに負けるわけにはいかない。
今日だけは絶対にちゃんと叱らなければ!
「カルーさん、お腹の子に何かあったらどうするんです! 安静に、って意味分かってるんですか⁉」
「わ、分かってるよぅ。だってアタシ、戦ってないもん」
「そ、そうだぞ! 戦ったのは俺と親父だ」
フルーさんの言葉に、思わずニッコリと微笑んだ。
お義母さん直伝の黒い笑顔に、五対の耳が縮みあがる。ついでにしっぽも足の間にシオシオと収まったところをみるに、俺の黒笑顔はどうやら期待通りの効果をあげてくれたらしい。
「……カルーさんは、大人しくベッドに戻って下さい」
「はい……」
突然いなくなって、こっちは死ぬほど心配して探しまわっていたというのに、あまりにも呑気に「ただいま~! 大猟だよ~!」と巨鳥ガルッサを差し出されたもんだからうっかり正座させてしまったが、本来そんな場合でもなかった。
なんせいつ産気づいてもおかしくないタイミングなんだから。
「カルーさんより、お二人の方が重罪です。一緒に正座して下さってるわけですから、心当たりありますよね、お義父さん」
「はい……」
そう、俺の目の前にはこの熊みたいなお義父さんを筆頭に、フルーさんと愛しのわが子達が犬耳を全力で下げた状態で正座している。
ちなみに五年前に授かったカルーさんと俺との愛の結晶は、まさに希望通りカルーさんにそっくりな赤毛の女の子と、俺そっくりな男の子。ただし二人とも犬耳しっぽ付きだけどな。
女の子はユイ、男の子はレオン。ぶっちゃけ性格は二人ともカルーさん似。元気で天然で、可愛いが突拍子もない事を引き起こすところまでそっくりだ。
しかし今はそんな事はどうでもいい。
「どこの世界に産み月に入った妊婦連れてクエストに出るバカがいるんですか! お義父さんも! フルーさんも! どっちか止めて下さいよ!」
「す、すまん……」
「じいじは悪くないの!」
「ママがタイクツで死にそうだったから、じいじとフルーにぃには助けてあげようって言ったんだ」
「ジンメイキュウジョなの!」
「ユイ……レオン……じいじを庇ってくれるのか……!」
可愛い孫達に庇われて、お義父さんは目頭を抑えている。
しかしそれくらいでほだされている場合じゃない。なんせカルーさんとお腹の中の新しい家族の命がかかってるんだ。
この無鉄砲な人達を止めるのは俺しかいないんだから!
「あのねぇユイ、レオン。ママとお腹の中の子達はね、あんまり動き過ぎると苦しくなって死んじゃうんだよ」
「ええ⁉」
「ママ、死ぬの⁉ 死んじゃうの⁉」
しまった、二人がこの世の終わりみたいな顔になってしまった。えーと、えーと、どう言えばいいのか。子供への説明って難しい。




