番外七話 九月二十九日
この日を迎えた空飛の胸中は複雑だった。
自身の誕生日……本来であれば祝われるべき出来事。
ただ……彼にとって、この日が正確に生まれた日なのか? 捨て子であるがゆえに謎なのだ。
だから……特別感など感じられないし、他の三人のように祝われても微妙な気分になるだけなのだ。
(……みんなには伝えてないし……久しぶりに、リメイクされたホラーゲームでも……ん?)
ゲーム機の電源を入れようとして、ふと通知が鳴ったので視線をやれば、そこには魂の片割れであり、人殺しの罪人であり……そして現在はトクタイ監視下の元で過ごしているサーシャからの連絡だった。
何事かと思い、手に取ってみればそこには──。
『やぁ僕? 今日は不幸にも、僕と僕がそれぞれの孤児院に引き取られた日らしいね? 正直、今まで誰も祝ってくれなかったからどうでもよかったんだけど……。せめてもの慰めに贈ってあげるよ。……おめでとう』
思わず胸が熱くなる。思ってもいなかったサプライズに、空飛の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「……よし!」
空飛は、自室から出てリビングへと向かった。ちょうどよく、五奇、鬼神、等依の三人が揃っている。彼はいつものテンションでまったりしている三人に声をかけた。
「皆様、突然でございますが……僕今日……誕生日でございまして……! つきましては……ずばり! なんか祝っていただきたく存じます! はい!」
三人の驚く声に微笑みながら、今日という日を楽しむことにした空飛なのだった。
空飛の誕生日をもって、この番外伝は連載終了とさせていただきたいと思います。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
また、突然の完結済み、大変申し訳ございません。




