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第48話 「赤鬼襲来」

 手紙を出してから約二週間後、キキレアがホットランドに到着したらしいので、俺は迎えに行くことにした。

 わざわざこんな遠いところまでやってきてくれたんだからな。


 簡素な手荷物を下げたキキレアは舌なめずりをするかのように邪悪な顔をして、馬車から降り立っていた。なんだか背中に黒いオーラが見え隠れする。

 ううむ、やはりダンジョン攻略というのは大変なんだな。あんなに人相まで変わってしまって。俺はキキレアの苦労を思う。


 キキレアがあちこちを見回しているので、俺は手を挙げた。


「おーいキキレア、こっちだこっち」

「――っ」


 俺を見るやいなや、ギンッと音が出そうなぐらいにこちらを睨みつけてくるキキレア。ダンジョンを攻略したばかりで気が立っているのだろうか。

 ダンジョンではああいったピリピリとした雰囲気を漂わせることも大事なのかもしれないな。勉強になる。


 キキレアはズンズンとこちらに向かってやってくる。俺は両手を広げてキキレアを迎えた。


「あんたぁ――」

「よくここまで来てくれたな、キキレア!」

「――って」


 なにか言いかけようとしたキキレアだが、まずはその労をねぎらうことからだろう。


「いやあ、長旅は大変だっただろう。俺は今、旅館を開いているんだ。まずは温泉にでも入ってその疲れをゆっくりと癒してくれ。あ、くたくただろ? 荷物持とうか?」

「あ、う、うん……ありが、と」


 ぽつりとお礼を言ってから、キキレアは『しまった』という顔で慌てて口元を塞いだ。なんだろうか。ダンジョンには互いにお礼を言わないようにする、という決まり事でもあるんだろうか。あるいはキキレアなりのジンクスか? よくわからないな。


「ともあれ、お前が来てくれてとても心強いよ。俺たち素人集団では、ダンジョンに挑むなんて無謀もいいところだったんだ。本当はダンジョンにひとりでイクリピアにとどまろうって言おうとしたお前を、無理にでも連れていければよかったんだけどさ。でもキキレアはS級冒険者で、俺たちとは住む世界が違っていただろう? 俺はできれば楽して暮らしたいとか思っちまうような男だしさ。それなのに引き止めるなんて、申し訳ない気持ちになっちまってな。それがこんな風にまた一緒に冒険できるなんて、嬉しいさ。ありがとう、キキレア!」

「……………………」


 俺がまくしたてると、キキレアはぐぐぐぐと拳を握り締めながら、俯いていた。

 やがてその口から、小さなぼやきが漏れる。


「……な、なんかこれ、思っていたのと違うわ……!!」


 それは拳の落とし先がわからなくて戸惑っているような、不思議な響きを持っていた。

 俺は眉を寄せる。


「なにがだ?」

「なんで私を歓迎するのよあんた! もっと、こう、敵意をぶつけてきたり、傲慢にしてきなさいよ! なんでそんなまともなのよ! おかしいでしょう! 私を捨てたくせに!」

「いや、あれはお前がダンジョンに向かうって言ったから……」

「なんだっていいのよ! ほら、恨みをぶつけてきなさいよ! 山ほどあるでしょう、私の嫌なところ! 早く言いなさいよ! じゃないと私もあんたの旅館を爆発炎上させられないでしょう! 私ひとりが悪役になっちゃうじゃないの!」

「お、おう」


 なに言ってんだこいつ……。こわ……。

 俺は情緒不安定なキキレアに対して、せめて優しくしてやろうと誓ったのだった。



 旅館に案内していると、キキレアの後ろにはいつの間にか、ひとりの女性が立っていた。

 背の高い女性だ。髪型は青色のセミロング。短いマントを着ているが、その中は薄着のようだ。腰にはたくさんの革袋をつけている。


 顔立ちは整っていて美人なのだが、前髪が長く目が隠れて覆われているせいもあって、どこか近寄りがたい怜悧さも感じられた。キキレアはまだあどけなさが愛嬌の代わりになっているが、この美人さんはそういう年でもないようだしな。


「誰だ? キキレアの仲間か?」

「ああ、うん、紹介するわ……」


 キキレアはまだ奥歯に物が挟まったような顔をしていた。感情を爆発させてしまったことが恥ずかしいのかもしれない。ダンジョン攻略はストレスたまるからな。わかるわかる。

 それはそうとして、キキレアは青髪の美人を指す。


「この子はシノ。イクリピアで再会したから、連れてきたのよ。無口で人見知りだからあんまり喋らないけど、よろしくしてあげてね」

「はあ。俺はマサムネだ。旅館を経営している」

「どういう自己紹介なのよ」


 俺がそう言うと、シノはぺこりと小さく頭を下げた。前髪の中の目を合わせようとしない。

 なんなんだ。人見知りだからうちの旅館に雇ってくれっていうのか? 美人の働き手は歓迎だが、うちの旅館は経営に余裕がなくてな……。


「ダンジョンに挑むなら、必要でしょ」

「人見知りがか?」

「なに言ってんのよ」


 キキレアはわかってないわね、という顔で腰に手を当てた。なんだ? 本当に人見知りが必要なのか? どんな役目を担うんだ? 対人関係においてもパーティーが緊張感を保てるようにするためか? どことなく他人行儀がダンジョン攻略のコツなのか?


 俺が首を傾げていると、キキレアは人差し指を立てながら言う。


「シノはシーフのA級冒険者よ。必要でしょ」

「マジか」


 俺は目を剥いた。シノはこくりと小さくうなずく。その様子には自信の欠片もなかったようだが、しかし人は見た目に寄らないということを俺はもう十分に知っている。いかにも熟練っぽい雰囲気を醸し出していたノームのオッサンシーフは、ゴミみたいな野郎だったからな。

 なんにしても――、これは、助かる!


 ダンジョンのスペシャリストのキキレアが、A級冒険者のシーフを連れてくる。こういうのを指すときのことわざがあったな。そうだ、『かもがネギを背負って来る』だ。


 俺はぷいと横を向いているキキレアを賞賛した。


「さすがキキレアだ! やっぱり俺にはお前が必要だったんだ! 行き倒れていたお前を救ったのも運命だったんだな! 【パン】のカードを持っていて本当によかった! まさか巡り巡ってこんな恩が返ってくるとは!」

「あんた旅館経営でどんだけ追い詰められていたのよ……まったく、ホンットに現金なやつなんだから……」


 キキレアは呆れたようなため息をついた。

 だがその口元は先ほどよりも少しだけ緩んでいる。


「ありがとうキキレア、ありがとう、そしてキキレアよ永遠に!」

「ちょ、ちょっとあんた、往来なんだけどここ!」


 俺は勢い余ってキキレアの手を掴んだ。そうして上下にぶんぶんと振る。これでダンジョン攻略は成功したも同然だ。さすがはキキレア。ぼくらのキキレア。世界はお前を待っていた。


 と、俺がそんな風にキキレアの手を握っているとだ。


「……む~~…………」


 旅館の前を掃き掃除していた女将見習いのナルが、なにやら半眼でこちらを見ているのであった。



 というわけで一晩休んだ後、ダンジョン攻略に行くことになって。

 俺の部屋で準備を整えている最中のことだった。


「あんた、なにこれ」

「持っていくものだが」


 俺が積み上げた鞄を七つ見せたところで、キキレアはすごく嫌そうな顔をしていた。ぼそっと小さく「ありえないわ」とつぶやく。俺はその言葉を聞きとがめた。


「なにを言う。ありえないことはないだろ。ダンジョンは未知の危険がいっぱいなんだ。準備をしすぎて悪いということはないはずだ」

「悪いわよ。いいからちょっと明細みせてみなさいよ。あんたのことだからどうせリストアップしているんでしょう」

「無論だ。任せろ」


 紙を手渡すと、キキレアはそれを何度も読み返す。


「ちょっとペンを借りるわよ」

「ああ、いいぞ」


 そうして机の上からペンを取って、次々とペケをつけ始めた。

 作業は一分足らずで終わる。「はい」と返された紙を見て、俺は目を剥いた。


「――ほとんどなにも持っていかないじゃないか!」

「そうよ」


 キキレアは当然とばかりにうなずく。

 俺が頭を悩ませて選別したというのに! この女は! 断捨離の神様にでもなったつもりか!


「ダンジョンに潜るのに余計な道具はいらないわよ。逆に持ちすぎたらとっさのとき、荷物に気を取られて逃げ遅れたりするわ。そっちのほうが危険よ」

「むぐ」


 俺は口をつぐんだ。まるでこいつ、見てきたかのように言いやがる……。


「必要なものは身ひとつと、わずかな補助アイテムよ。それでも不安で心もとないっていうのなら、まだダンジョンに行くほどのレベルに達していないのよ。そこらへんのショボいクエストでも繰り返しているのがいいわ。ダンジョンはそんなに甘いものじゃないわ」

「……ぐぐぐ」


 なんかものすごい正論を言われている……。渾身の力でブン殴られているような気分だ。なんだか落ち込んできた。

 俺はため息をつく。恐らくキキレアの言っていることが正しいのだろう。俺が正しければ世の中のダンジョン攻略はみんな鞄を七つ持って行っているはずだが、事実そうはなっていないわけだからな。


「わかった、キキレアの言う通りにしよう」

「ええ、もちろんよ。すべて私に任せなさいとまでは言わないけれど、あんたよりは私のほうが知識も経験も上なんだからね。ある程度は言うことを聞きなさいよね」

「はい、キキレア先生」

「ふふ、あのマサムネがずいぶんといい子じゃないの」

「バカ言え、俺は失敗から学ぶんだ。自分に足りないところも正しく理解してこその慎重かつ冷静だ。もう二度と過ちを繰り返してなるものか」

「素人だけでダンジョン攻略して、よっぽどな目に遭ったのね……」


 キキレアが憐れむような視線を向けてくる。屈辱だ。

 俺が黙っていると、キキレアは自分の胸を叩いて悪戯っぽく笑った。


「ま、自分の未熟さを知るのは、いいことだわ。誰もが完璧にできるんだったら、パーティーなんて組む必要はないからね。パーティーっていうのは自分にできないことを補い合うためにあるのよ。だからあんたはいつも通り、不敵に構えていりゃいいのよ」


 そんな風に言ってくれるキキレアに、俺は自然と頭を下げていた。


「……すまんな」


 キキレアは驚いて目を丸くしていた。


「あんたホントにここでなんかあったの? 働きすぎて頭おかしくなっちゃったんじゃないの? この私の毒気を抜くだとか、誰にでもできることじゃないわよ。私のパパやママでさえ無理だったんだから」

「それはお前の両親に心から同情するよ!」


 キキレアが来てくれたことで、多少なりとも肩の荷が下りたのは事実だ。普段はキキペディアだとかなんとか言って茶化しているが、なんだかんだ頼りになるな、こいつは。


 もしかしたら最近、ひとりでがんばりすぎていたのかもしれない。

 準備が整ったところで、俺の目に映ったのは、床の間でよだれを垂らしながら眠っていたポンコツ女神だった。


 でも仕方なくないか? キキレア。俺のパーティーメンバーこんなやつだぞ!?




 さらに翌日のこと。つまりキキレアが到着してから二日後のきょうになって、すべての手筈が整った。レジャーダンジョンは閉鎖しっぱなしだから、そろそろ働かないと金がやばい。


 さあ、ダンジョン攻略を始めよう。


 メンバーはグッと減った。俺とナル、キキレア、ミエリ、そしてA級冒険者のシーフ、シノ。五人である。


 手荷物は全員が少しずつ分担して持っている。荷物を一カ所に集中させてしまうと、誰かひとりがトラップに引っかかって合流できなくなったときに、まとめて遭難する危険性があるからだ、とのことである。実に論理的だ。


 俺はマッピングツールと寝袋を三つ。どうせ交代で番をするのだから、全員分の寝袋を持っていく必要はないらしい。確かにそうだ。

 ナルは食料と灯りを。キキレアが食料と結界石。ミエリが食料と薬の類。そうしてシノはなにも持たずに先頭を歩く。シーフは己の重量も把握していなければならないとのこと。プロフェッショナルだな。


 ちなみに今回、ナルは竜穿を担いできている。俺は非常に心配だったのだが、なぜか俺とキキレアを交互に見ながら「持っていくよ! 大丈夫! いざってときのために!」と言ってきかなかったのだ。

 いざってときこそ竜穿をぶっ放してほしくはないのだが、大型モンスター襲来の危険もある。「使うかどうかはともかく、持って行くのは別にいいんじゃない?」とキキレア顧問の一言で許可が下りてしまった。キキレアはナルに甘いからな……。


 俺の武器は新たに接着しなおしたドラゴンボーンソード。なんだかんだこいつとも長い付き合いだな……。そして、クロスボウを腰に提げている。

 ナルは竜穿。ミエリは素手で、キキレアはダンジョン攻略の資金で購入したフレイムロッド。そしてシノは蒼水晶アイスクリスタルの魔法を帯びた短剣を持っている。


 先頭を歩くシノに続いて、俺たちはダンジョンに足を踏み入れた。

 地下一階を難なく突破し、さらに奥へと向かう。


 黙々と歩いてゆく中、地下二階まで降りていった辺りで緊張が切れたのか、あるいは退屈しのぎか、ぽつぽつと会話が交じり始めた。

 その途中聞こえてきたのは、ミエリとキキレアのこんな会話だ。


「そういえばキキレアさん、お久しぶりですね。あれからどうしておりました?」

「イクリピアのダンジョンを攻略してきたわ。大したことないダンジョンだったけれど、メンバーが頼りなくてね。シノと再会できたのは幸運だったけれど、ちょっと手間取っちゃったわ」


 ミエリに対してもざっくばらんに話しかけるキキレア。いつの間に仲良くなったんだこいつら。


 会話の内容から察するに、どうやらキキレアとシノは昔パーティーを組んでいた仲間だったらしい。キキレアがまだS級に上がる前の話だ。

 もともと知り合いだったから、キキレアも彼女を信頼しているのだろう。


「ダンジョンを攻略するときの生命線はやっぱりシーフだからね。トラップは簡単にパーティーが全滅しちゃう、とっても怖い仕掛けよ。そこらへんで雇った急ごしらえのシーフでダンジョンに潜るなんて、考えられないわ」

「そうですよねー! それなのにマサムネさんてば――」


 後ろからミエリとキキレアによる、楽しそうな俺ディスが聞こえてくる……。くそう、反省していると言っておろうに……。


 そんなときだ。先頭を歩いていたシノがぽつりとつぶやいた。


「でも……、あんなに楽しそうなキキレアちゃん、初めて見た……」


 俺はお前の肉声を初めて聞いた気がするぞ。


 いや、違う。よろしくしてやってくれと頼まれているんだ。最初からこんなツッコミめいたセリフはよくないな。

 この方はA級冒険者さまなんだ。俺たちのパーティーが生きるも死ぬもこの方にかかっている。できるだけ丁重に扱わなければ……。


「そう、なのか? 普段のあいつはどういう感じなんだ?」

「えっと……なんか、えらそう……?」

「それ完全にいつものあいつじゃねえか!」


 俺が怒鳴るとシノはびくっと震えた。

 ああ、いかんいかん。つい声を荒げてしまった。そうだ、こいつが小さな女の子だと思えばいいんだ。小さな子どもを相手にするようにしよう。


「そ、それはシノ、いつものキキレアじゃないかな」


 俺はできるだけにこやかな表情を作りながら話しかける。だが、シノはやはりびくっと怯えてしまった。


「お、男の人に……、名前、呼び捨てにされた……」

「パーティーに入っているんだったら日常茶飯事じゃねえの!? どんだけナイーブなんだよお前!」


 ダメだ、また怒鳴ってしまった。もう無理だ。こいつには突っ込まずにはいられない。ツッコミホイホイだ。キキレアとはさぞかしいいコンビなんだろうな。

 美人のくせにびくびくしてて、なんかこいつ無害な熊みたいだな。いや熊は全然無害じゃないが。


 シノは頭を抱えながら、ふるふると首を振った。


「う、うう……、そのたびに、ビクッとしちゃう……」

「難儀だなお前……、よく冒険者ができているな……」

「ダンジョンでは集中しているから……、周りの音が聞こえなくて……、だから、へいき……」

「そうか。……で、キキレアがなんだって?」


 俺が問うと、シノは「うん……」と小さくうなずいた。


「キキレアちゃん、パーティーだと偉そうで……、みんなに煙たがられて……、次々と、パーティーを変えていたから……」

「ほう」


 それはまあ、キキレアらしい話ではあるな。あいつは口撃力が高いからな。あの調子でどこにでも突っかかっていたら、そら煙たがられるだろうて。

 自分より年下の女に好き勝手言われるのは我慢できないやつらがいるんだろう。


 ちらりと後ろを見ると、キキレアはミエリに詰め寄られていた。


「えっ、どうして雷魔法使えなくなっちゃったんですか!? そばにわたしという女神がいるのに!? ただわたしを尊敬すればいいだけなんですよ!? すごく簡単なことじゃないですか!? だって偶像をあがめるよりも、目の前に生の女神がいるんですよ? こんなにラッキーなことないですよね!?」

「そうね、なぜかしらね!? 不思議だわ! どうしてかしらねー!」


 必死にごまかそうとするキキレアだ。あそこで『あんたに幻滅したからよ!』と本当のことを言わないのが、キキレアの優しさだろう。まだ信心が残っているんだな……。さすが愛の使徒なだけはある。


「こんなに楽しそうなキキレアちゃん、初めて見て……、それで……」


 シノはじっと俺を見た。いや正確には目は前髪で隠れていて見えないので、俺を見つめているような雰囲気だ。


「……たぶん、キキレアちゃんは……、いい人に巡り合ったんだな、って……」

「そ、そうか?」


 俺を見てそんな風に言うシノは、どういう目をしているんだ。絶対そんなんじゃないと思うんだが……。


「うん……、自分がどんなに偉そうにしてても……、それ以上に偉そうで、傍若無人で、人を人とも思っていないような……、いい人と……」

「お前絶対に褒めてないよな!? 俺のことめっちゃ馬鹿にしているよな!?」

「し、してない……、してないしてない……」


 一生懸命首を振るシノだが、ここで問い詰めるわけにもいかない。A級冒険者のシーフさまにへそを曲げられては大変だからだ。


 くそう、さすがキキレアの友達だよ! 一筋縄ではいかないよな!


 シノは口元だけで微笑みながら、小さく頭を下げた。


「だから、キキレアちゃんのこと……、よろしくお願い、します……」

「はいはい……ったく……」


 俺は適当にうなずきながら、頭をかいた。よろしくだなんて、あいつがそんなタマかよ。キキレアはどこでだってひとりで生きていけるだろうよ。


 直後、後ろから、「日がな一日マサムネと一緒になって食っちゃ寝食っちゃ寝しているあんたに幻滅したからよー!!!」という怒鳴り声と、同時に「ええええええええええ!?」という叫び声が聞こえてきた。


 堪忍袋の緒が短すぎる。

 それでこそ俺たちのキキレアだ。



 地下三階の雑魚を蹴散らし、俺たちは運命の地下四階へと降り立った。

 さ、ここからが勝負だぜ。


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