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異世界帰りの大賢者様はそれでもこっそり暮らしているつもりです <WEB版>  作者: 木野二九
第十二章 お休みは用法用量を守ってお正しくお取りください
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聖女神託襲撃事件 その4

「師匠、どうして俺の回復魔法は上手く行かないのでしょう」

「相変らず想像の斜め下を爆走するやつじゃな! そもそもそれは、回復魔法とは呼ばん」


 俺が首を捻って悩み込んでいたら、師匠は豪華なドレスの腰に手を当て、ない胸を力一杯張りながら「ふん!」とばかりに鼻を鳴らした。


 確かあれは闇の女王(クイーン)と二人で死の谷から這い上がり、師匠に無理難題を言いつけられながら、修行を続けていた頃だ。


「ダーリンの才能が凄すぎるだけで、問題なんか無いじゃない!」

 幼女姿の闇の女王(クイーン)が俺の肩の上で、師匠に向かって可愛らしく舌を出す。


「それだけなら良いのじゃが……おぬしら二人の魔力が混じり合い、変な作用を起こしておるのも事実じゃ。ほれ見よ!」


 師匠が治める森の片隅で、地面に転がる瀕死の「火喰い鳥」のヒナに、俺が回復魔法をかけたら、手のひらサイズの卵に戻ってしまった。


 師匠が卵を拾い上げ、俺たちによく見えるように掲げると、

「あれ? ダーリンが助けたのって不死鳥(フェニックス)だったっけ??」

 闇の女王(クイーン)が俺の肩越しに身を乗り出して、師匠の手のひらを覗き込む。


 パカリと音を立てて卵から現れたのは、どう見ても、無限回廊図書の図鑑で見た伝説の妖魔だった。


「妖魔は魔力の多寡によって形態を変える生き物じゃからな、数百年生きた「火喰い鳥」が何かの加減で不死鳥(フェニックス)に変化することはある。じゃが瀕死のヒナが卵に戻り、不死鳥(フェニックス)に変化したのを、我は初めて見た」


 ピヨピヨと鳴きながら師匠にじゃれる小鳥さんは、なかなかキュートだったが……。


「我は(ことわり)を守るために、この鳥を今握りつぶすかどうか、悩んでおる」

 苦笑いしながら微笑む師匠は、どこか辛そうだった。


「そのまま森に住まわせることはできないのですか?」

 俺が師匠に訴えると、

「読んで字のごとく不死鳥(フェニックス)とは、永遠の命を持つ生き物じゃ。この幼き生命に、その覚悟が有るとは思えん。さて、勝手に押しつけた試練がこいつにとって幸せなのか、それとも瀕死のまま死に至るのが幸せだったのか」


 師匠の言葉に、闇の女王(クイーン)が心配そうに俺の顔を見た。

 ちょっと顔近すぎで、対処に困る状態だったが、


「そもそもそれを選ぶ権利が俺たちにあるのでしょうか」

 なんとか声を絞り出すと、


「うむ、それも(ことわり)じゃな」

 師匠は深く頷いてから、手のひらのヒナを大空へ羽ばたかせた。


 そして、

「くれぐれも忘れるでないぞ。命とは時や空間と同じ『人が手を出してはいけない領域』じゃ。歪んだ(ことわり)はいつしかめぐり巡って、災禍の元となり、自身に降りかかるじゃろう。おぬしの論で行けば、あの鳥の責任はおぬしが取らねばならない」

 師匠は真っ直ぐと俺を見詰めて、微笑んだ。


「分かりました師匠。何かありましたら、必ず俺が責任を」

 嬉しそうに森の上を飛び始めた不死鳥(フェニックス)を確りと目に焼き付け微笑み返す。

 笑顔の師匠と見つめ合うと……。


「んがっ!」

 なぜか肩に乗っていた闇の女王(クイーン)が、勢いよく俺の頭にかぶりついた。



   × × × × ×



 空を見上げながら回想していたら、

「他の女のこと考えてますね!」

 春香に足を踏まれる。


「師匠の言葉を思い出していたんだよ」

「に、しては……よからぬ顔をしてましたが」

 春香はすねたように俺の顔を見上げた。うん、恋人同士の役だと言っていたが、さすが潜入捜査を専門にやっていただけはある。


 照れたようにヤキモチを焼く、初々しい恋人のような春香の態度に、ちょっとドキドキしてしまった。

 きっと青春が帰ってきたら、こんなことが起きるのだろう。うん、たぶんきっと。


「取らなきゃいけない責任が沢山ありそうだから、ちょっと心配になってきただけだ」

「やっぱり……あちこちで女の子を泣かせてたんですね」


 微妙に会話がかみ合ってない気がしたが、そこは説明しても無駄なような気がしたので、ラン・ブレードをタコ殴りしているルナに話しかける。


「それ以上殴ったら、回復魔法の意味が無くなるだろう。それとも殴ることで『(ことわり)の歪み』を正しているのか?」


「『(ことわり)の歪み』を正す? ああ、大いなる意志の奇跡に対する代償の話しか? なら心配はいらねえ。そっちに転がしてある男は『大いなる意志への反逆者』なんだろう。なら今、奇跡を行使することは、意志に背く行為じゃねえ」


 タコ殴りをやめたルナが、一仕事終わったとばかりにさわやかな笑顔で、額の汗を拭う。殴られていたラン・ブレードもなんだか嬉しそうだ。


 まるで昭和のラブコメ漫画みたいな現状にため息をつきながら、

「奇跡には代償や、施行に必要なルールがあるのか?」

 気になったことを聞くと、


「そう言やあんたは大賢者ケイトの弟子だったな」


 ルナは芋虫のようにロープでぐるぐる巻きになって、うごめいているライザーを蹴飛ばし、空を見上げた。

 魔法障壁が解けたせいか、ライザーを狙って鳥さん達があつまってきている。

「ゲゲゲッ」「グガーグガー」

 と、大声で鳴く鳥さん達の数も増えてきた。早くこの場を離れないと違う問題が起きるかもしれない。


「それがどうしたのだ」


「あたいたちは『大いなる意志に』奇跡を願い、そのルールに則って代償を払いながら奇跡を施行するんだ。今回はこの男の歪みを正す約束で許可をもらった」

 初めて聞くルールだが、俺は話しを促すように頷く。


「だが大賢者ケイトは『大いなる意志』一部だから、許可なんかいらねえ。自分自身の責任で奇跡を施行する。そんな基本的なことも聞いてなかったのか?」


「そうか……いや、師匠は肝心なことは教えてくれないタイプだったからな」

 まったく困ったものだと俺も空を見上げたら、ひときわ大きな鳥さんが、俺を見て「グギャアアア」と鳴いた。


 この辺りの鳥さんは大きくて凶暴なのが多い。今叫んだ鳥さんは、よく見ると、体長5メートルはありそうだ。しかもどこかで一度見たことあるような種類だし。


「珍しいのが飛んでるな」

 ルナもその鳥が気になったようだ。


 脳内で時系列を計算し直す。

 今回想していた師匠との思い出と、時間遡行してきたらしい、この場所。


 記憶が曖昧だから正確な計算できないが、少なくともこの「聖女神託」が行われていた頃、俺は師匠の森で修行していたはずだ。


不死鳥(フェニックス)って、成長が早いのか?」

「さあ? 知らねえよ。あたいも初めて見たし、希少種過ぎて、言い伝えもあまり残ってねえからな」


 その大きな鳥さんと目が合うと、またとても嬉しそうに、凶暴な大口をあけ……。


「グギャアアア」

 と、鳴いた。






関係者様たちとご相談いたしまして、タイトルに<WEB版>と足しまして・・

で、この章の最後までをまず来年(2024年)からを目処にアップすることとなりました!


活動報告にも書きましたが、雑誌連載をオリジナルで展開することになり、

なろう様の規約の関係で、この章の最後までアップしたら、一度完結とするかもしれません。


コミックの方は皆様の応援のおかげで、連載を続けることができております。

しかし僕自身の体力というか、病み上がりでまだ執筆スピードが上がりません。

なんとか連載を止めることなく漫画原作を書くのが限界です。


こんなんですが・・どうか、、

どうか、これからも宜しくお願いいたします。


すいません (o_ _)o



2023年 12月 17日  木野二九

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久々のハイファンタジー 連載開始しました!

大賢者様 読んでいただき、

気に入ってもらえたのでしたら、

きっと面白いと感じてもらえるはずです!!

 リンクはこちら ↓

『魔法学園のイリュージョン』

是非宜しくお願いします
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