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285話―マグマを纏う巨人

 二つの班に別れたリオたちは、地上から空中から襲いくる敵の人形兵たちを薙ぎ倒していく。四百体は軽くいた人形たちでも、数の差だけでは優位に立つことは出来ない。


 魔神たちの快進撃はとどまるところを知らず、地上と空に別れたまま要塞の内部へ侵入する。今後の旅において、背後から奇襲されるのを防ぐため、生き残りが出ないよう倒していく。


「こっちはもう終わったね。ダンねえたちの方はどうかな?」


「やあ、呼んだかい? こっちも終わったよ、リオくん。案外楽だったね。口ほどにもなかったよ」


 地上班、空中班共に人形兵を全滅させたようだ。全員つつがなく合流し、後は要塞を出て先へ進むだけ……そう思われた矢先、異変が起こる。


『人形兵の全滅を感知。敵対的生命反応の消滅を確認出来ず。これより、機巧兵器ギア・ド・ラーヴァを起動する』


「な、なんだ!? 揺れ始めやがったぞ!?」


「みんな、早くここを出よう!」


 不気味なアナウンスが流れた直後、要塞が揺れ始める。リオたちは急いで脱出し、空へと逃れる。そして、揺れの原因を見ることとなった。


 要塞を構成する建造物がスライドし、変形し……まるでティタンドールのような鋼鉄の巨人へとその姿を変えていっている。その光景を見て、リオたちは固まってしまう。


「な、なんだぁこりゃ……。一体、何がどうなってやがるんだ」


「あの姿、ティタンドールみたい……。あれ? ってことは、まさか……」


『各システムオールグリーン。ギア・ド・ラーヴァ、攻撃を開始する』


「わあ、やっぱり!」


 敵意の滲むアナウンスが流れた後、鋼鉄の巨人――ギア・ド・ラーヴァの体表面が紅に染まる。そして、身体の各所に空いた穴から煮えたぎるマグマが流れ始めた。


 ギア・ド・ラーヴァは空中にいるリオたちに狙いを定め、巨大な溶岩の塊を投げつけてくる。散会して攻撃を避けつつ、リオたちは巨人と戦う。


「やけに楽勝だなーって思ったら、こんな隠し球がいるなんてねぇ。拙者、こんなの聞いてないよもう!」


「恐らく、この巨人が魔王の用意した第二の試練なのでしょう。放置していれば、後々災いをなすことは確実ですね」


 ファティマの言う通り、もしこの巨人を放置して先に進めば、次に待ち受ける敵たちと挟み撃ちにされてしまうだろう。なんとしても、ここで仕留めねばならない。


 リオは敵に対抗するため、レオ・パラディオンを呼び出そうかと考えるも、すぐにやめた。グランザームがこの一体しか鋼鉄の巨人を有していないとは、考えにくかったからだ。


(もしここでレオ・パラディオンが破損したら、後が大変だ。修理も満足に出来ないし……他にもこんなのがいたら大変だし。ここは、僕たちだけで倒すしかない!)


 そう決心したリオは、まず敵を観察する。迂闊に相手の元へ飛び込めば、ロクに攻撃することも出来ず返り討ちにされてしまうだろう。


 全身から滝のように流れ落ちるマグマの熱気にあてられながらも、リオはギア・ド・ラーヴァの周囲を旋回し攻撃を誘発する。まずは、相手の手の内を暴くのだ。


『バトルモジュール……プロミネンス・カノン起動。ターゲット・ロックオン……発射!』


「リオ、来るぞ!」


 ダンスレイルに抱えられたカレンが叫ぶなか、ギア・ド・ラーヴァは右手を変形させ大砲を作り出す。照準をリオに合わせ、煮えたぎる溶岩の塊を撃ち出した。


 リオは華麗な空中制動で攻撃を避け、相手の背後に回り込む。どこかに弱点がないかと探していると、背中と腰の境目に、蒸気が吹き出している穴を見つけた。


「あの穴、蒸気が出てる……。もしかして、あそこから排熱してるのかな?」


『敵対反応、背後からの接近を確認。迎撃します』


「うわっと!」


 ギア・ド・ラーヴァは勢いよく振り返りつつ、左の拳で裏拳を叩き込んでくる。間一髪それを避けたリオは、クイナの元へ近付いていく。


「くーちゃん! あいつの弱点を見つけたよ、力を貸してくれる?」


「がってん! で、作戦はあるの?」


「うん。かくかくしかじか……」


「うんぬんかんぬん……なるほどなるほど。よーし、いっちょやってみよーう!」


 リオから作戦を聞いたクイナは、彼と連れ立って敵へ接近していく。その途中、アイージャたちにも作戦を伝えて回る。彼女らに囮を頼み、リオとクイナは空を往く。


「さて、リオくんから直々のお願いがあったからね、張り切っていくとしようか。カレン、しっかり掴まっていなよ? 落ちたらマグマのお風呂にドボン! だからね」


「わぁーってるっての。そっちこそ、落とすなよな」


 そんなことを話しながら、ダンスレイルとカレンが真っ先にギア・ド・ラーヴァに突撃していく。他のメンバーも時間差で突撃し、相手を撹乱する。


 頭部に内蔵された四つのセンサーをフル起動させつつ、マグマを纏う巨人はダンスレイルたちを攻撃する。身体を流れるマグマを操り、鞭のように振るう。


『敵対反応、複数接近。迎撃兵器作動……プロミネンス・レイン、発射!』


「! 来おるぞ、全員下がれ!」


 アイージャの叫びを合図に、魔神たちは一斉に後退する。その直後、マグマが逆流して天へ昇り、炎の雨となって広範囲に降り注いできた。


「あっち、あち! こんなの直撃したら燃えちまうぞ!」


「わー、でも流れ星みたいできれーだねー」


「言ってる場合か!」


 レケレスを抱えながら、ダンテは落ちてくる無数の溶岩の欠片を右へ左へ避けていく。運搬役をしている彼とダンスレイル以外は、欠片を粉砕し逃げ道を作る。


 その間にもギア・ド・ラーヴァは攻撃の手を緩めず、左手を腕の中に格納し、代わりに湾曲した巨大なブレードを出現させる。ブレードを振るい、魔神たちを攻撃する。


「ファティマ、危ねえぞ! 避けろ!」


「はい、承知しています。この程度の攻撃、避けるのは造作もありません」


 ひらりとブレードを避けつつ、ファティマはチラッとリオたちの方を見る。クイナと共にギア・ド・ラーヴァの背後に回り込んだリオは、二人で水の魔力を練り上げていた。


「くーちゃん、準備はいい?」


「バッチリ! いつでもいけるよ、リオくん」


「分かった。じゃあ、いくよ。いち、にの……さん!」


「合体奥義……」


「スプラッシュ・ボール・キャノン!」


 リオはジャスティス・ガントレットの力を解き放ち、水色の宝玉を輝かせる。すると、大きな水の球が出現し、ギア・ド・ラーヴァに向かって勢いよく放たれた。


 水の球は排熱の役割を果たしている穴に直撃し、巨人の内部に冷却水を流し込んでいく。冷えきった水はパイプを通して、巨人の各部へ流れ込む。


「上手くいけばいいんだけど……」


「なぁに、だいじょぶだいじょぶ。まだ動くようなら、追加でまたブチ込んでやりゃいいもんね」


 水の球が徐々に小さくなり、吸収されていくのを見ながらリオとクイナはそう呟く。リオは冷却水をギア・ド・ラーヴァの体内に流し込み、マグマを冷却し機能不全に追い込むつもりでいた。


 その目論見は、半分ほど成功した。完全にとはいかなかったものの、ギア・ド・ラーヴァの体内を血液のように流れるマグマが冷え、ある程度固まり始めたのだ。


『溶岩の冷却を確認。温度上昇のため内燃機関の出力を増幅します』


「おっし、動きが止まったぞ! へへ、リオの奴上手くやったみたいだな!」


「そのようだね。さ、今のうちに総攻撃だ!」


 内部を流れるマグマが冷え固まったことで、ギア・ド・ラーヴァの活動が鈍り攻撃の手が止まった。活動再開を阻止するため、リオたちは一斉に攻撃しようとする。が……。


「ハーッハハハハ! そうはいかねえぜ! このオレ、ゾームが相手をしてやるよ!」


「!? クソッ、こんな時に新手かよ!」


 その時、漆黒の魔方陣が空に浮かび上がる。その中から、威勢のいい声と共に山羊の頭蓋骨を被った大男……『黒大陽の三銃士』の一人、ゾームが現れた。


「グランザーム様に頼み込んで迎撃に来たが……もうギア・ド・ラーヴァが起動してんのか。やるじゃねえか、魔神ってのは」


「お前は……グランザームの部下か!?」


「そうだぜ、ボウズ。オレはゾーム。グランザーム様の配下、その一番の古株よ。さあ、仕切り直しといこうぜ。第二の試練……こっからが本番だ!」


 ゾームはそう叫ぶと、巨大な鉈を二つ呼び出し両手に持ち構える。グランザームの最後のしもべが参戦し、戦場は混迷を極めようとしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ついに本命のご登場か(ーー;人形共何かでは時間稼ぎにしかならんからな( -д-) どれだけの力を持つやら(-.-)y-~
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