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臨時生徒会長 その2

()()生徒会長ですよ。新入生さん」


 カーテンの向こう側から現れたのは生徒会長だ。

 少し前まで、俺の隣りにあるベッドで横になっていた女の人。

 そして、信じてはいないけれど俺の言うことなら何でも聞くらしい美人の先輩。

 その生徒会長が丸椅子に座っている俺を覗き込む。


「ごきげんよう」


 生ごきげんようだ!

 本物のお嬢様のごきげんようは、クルセイダー加藤先輩のような殺気が無い。

 返事を返そうとして、ふと疑問が湧いた。

 男の俺もごきげんようで良いのか?


 口をぱくぱくさせて悩んでいたら、生徒会長がクスクスと笑って言った。


「こんにちは、新入生さん」


「こ、こんにちは」


「もしかして、ごきげんようって言わなきゃ。って悩んでた?」


 見透かされた。

 そして、優しくフォローしてくれた。

 天使かこの人は? 天使の羽根が見えるぞ。

 これが年上の鳳凰翼、じゃなかった包容力ってやつか?

 これはもう俺、かっこつけなくて良いよね?

 甘えちゃって良いんだよね?


「実は、そうです」


「やっぱりね」


 おおお!

 優しい。

 大人の女の人だ。

 そう思うと、俺だけ座っていてはいけないと思い至る。

 俺は立ち上がって、大人の女性に挨拶をするべきだと考えた。


「あの。はじめまして、一年の碇矢です」


 俺は立ち上がって、憧れの大人の女性を見上げる……

 あれ? 見下ろしてる?


 中二まで、お姉さんといえば俺よりも身長の高い見上げる存在だった。

 クラスの中心的な女子ともなれば、俺より結構身長が高かったと思う。

 体格でも負けていたし、なんなら力比べしても勝てなかったと思う。


 中三になると同級生の女子であれば、あまり身長では負けていなかったかもしれない。

 でもそれは、同い年だからでお姉さんではない。


 そして現在、高校一年生。

 先輩のはずのお姉さんが、俺よりも小さい?

 大人のお姉さんなのに?

 美人のお姉さんが、俺より小さくて、美人なのになんか……可愛い。


 そんな事を考えていると、生徒会長が俺に近づいてきた。

 もう目の前だ。

 これは、俺の雌奴隷として抱きついてきたりするのか?


 あ、触れる。

 そう思った瞬間に俺のほうがぶつからないように体を捻った。

 生徒会長はそのまま机に手を伸ばし、置いてあった白いカチューシャを手に取る。

 そして「あら? 君、どうかしたの?」と言わんばかりに上目遣いで見上げられた。


 これは、からかわれたのか?

 中学までの俺なら、からかわれてたら怒っていただろう。

 だって、馬鹿にされているんだから。

 俺のほうが身長は高いし、力も強い。

 だから、俺をからかったら駄目だろう?


 生徒会長はそんな俺を無視して鏡にむかってカチューシャの位置を確認している。

 無防備に背を向けて。

 これは、そう。舐められているんだ。

 ガツンと言ってやらなきゃ。男として。


「どう?」


 髪を整えて、生徒会長が振り向き俺に問いかけてきた。


「え? はい、かわいいです」

「まぁ、先輩にかわいいだなんて。おませさんね」


 ガツンっと。

 ガツン……

 生徒会長は両手の指先をカチューシャに添える。


「これがないと、落ち着かないのよ」


 ああ、綺麗なのに可愛い。なんだこれ?


「改めて、はじめまして碇矢くん。「()()生徒会長の志村です」


 ここで、俺の処世術。

 誰でも握手が発動していたなら生徒会長と手をつなぐことが出来ただろう。

 俺はあとからそれに気づいて、悔しさに涙した。

 でも今はそんなこと、思いもつかなかったんだ。


「そういえば、体温計が壊れたとか言ってたよね?」

「そうです」


 生徒会長はカチューシャに添えていた手で、前髪をかきあげる。

 綺麗なオデコが眩しい。


「どうしました? 体温計で測ってみてください」


 カチカチ。

 荒井さんが逃げ出す威嚇音だが、生徒会長には効果が無いようだ。

 妄想の中では顔を真っ赤にしてくれた生徒会長だったが、現実では瞳を閉じることすらなかった。

 カチカチ。

 黒い瞳で、俺をじっと見ている。

 カチカチ。

 練習は十分だ。

 俺のほうがドキドキしながら生徒会長のオデコに体温計を向けてクリックする。

 カチ。


「やはり何も表示しませんね」


 俺は何も映らない液晶から顔を上げて、それを生徒会長に見せようとした。

 しかし、生徒会長のほうから俺の横に移動してくる。


「何も映っていませんね。電池は入っていますか?」

「確認はしていませんが多分」


 俺がグリップ部分のフタを開けると、単三電池が2本入っていた。


「よく、中を見ていないのにわかりましたね」

「中身がスカスカな感じなのに、グリップだけが重かったので」


 凄いですね。

 生徒会長が俺を褒めてくれた。

 もっと良いところを見せたい。


「電池が原因か見てみます」


 保健室にある同系統の体温計と電池を交換すると、モニターにスタンバイの表示が出た。


「はいどうぞ」


 生徒会長がまた綺麗なオデコを俺に晒す。

 ピッ。

 36.7度。


「少し高いですね。なにか思い当たりますか?」


 俺は生徒会長を心配して言った。

 電池の事よりあえて、微熱を心配してみた。

 生徒会長を心配できる男を見せたいのだ。


「思い当たることはありますよ」


 風邪だろうか?

 まさか、()()()()!?


「大変じゃないですか、何が思い当たるんです?」


 俺は気遣いの出来る男だ。


「碇矢くんは、エッチさんですね」


 は?

 なんで?

 イカリヤだからIさんですよ?

 そりゃ、エッチなのは否定しないけど、なんでこのタイミングでそんな事を?


「電池はどうでしたか?」

「あ、はい。交換したら動きました。保健室のは動かないので電池が原因だったようです」

「なるほどです。碇矢くんは凄いですね」


 また褒められた。


「そうすると、交換できる電池があれば解決ですか?」

「はい。電池があれば解決です」


 生徒会長の質問にさっと答えられる。

 俺は生徒会長の役に立てる男だ。


「電池はどこだろう」

「電池とわかれば、私が用意してあげられますよ」


 会長はワンピースの縫い目にしか見えないところから鍵を取り出した。

 それで棚のひとつを開けると、単三電池が4本組になっているパックを取り出した。

 二本ですね。

 そう確認して、四本入りのパックを開けようとする。


「ん」


 気合なんだろうか。


「ん!」


 気合みたいだ。


「碇矢くん、ハサミを取ってください」


 机の上のペン立てにあるハサミの事だろう。

 俺は生徒会長の持つ電池4本パックの下に手を差し出す。

 渡してくださいのジェスチャーだ。

 よく見ると、分割しやすいようにミシン目が入っているタイプ。


 バリ!


 少し力を込めると綺麗な2本パックふたつに分かれた。


「さすが、男の子です」


 子というのに、ちょっとだけ不満を覚えながらも、また褒められたことに気分が高揚する。

 生徒会長は備品管理表なる紙に、俺に電池を渡した事を記入する。

 二人でサイン欄に名前を書いた。

 これはもう、実質婚姻届に違いない。


「では電池を渡しますので、最後に保険証を出してください」

「え? はい」

 

 高校生にもなると保健室って保険証いるのか。

 財布を取り出して中身を見てみる。

 生徒証明書しかない。


「生徒会長、すいません。俺、高校では保険証がいるって知らなくて」

「では、修理費は全額個人負担になります」


 これが大人の自腹ってやつなのか。

 しかしクラスの為だ、俺も大人になろう。


「いくらですか?」

「……クスッ」


 笑った生徒会長、可愛い。

 そうじゃない、これは。


「冗談です」


 また、からかわれた?


「さっきから、俺のことからかってませんか?」


 出来るだけ不機嫌そうに言った。

 これが友達との会話なら、空気読めない奴と言われるほど真面目な顔で言ったんだ。


 生徒会長がまた笑った。

 今ごろ気づいたの? そう言ってる気がする。

 ちょっと悔しい。

 少しは仕返しがしたい。

 どうやったら出来る?


 いや。

 方法があるのは分かっている。

 デコの冗談を真に受けるなら、俺は生徒会長に命令できるはずなんだ。


 こんな可愛い人にからかわれたままでは我慢できない。

 こんな綺麗な人に命令してみたい。


 もう人体模型のおっぱいは気にならない。

 机の上のタブレットが意識から離れない。


『この女はおやぶんに献上するため、既においらが処女ビッチに調教してあるっすよ』


 デコはそう言って、生徒会長にウインクをさせて見せた。

 俺は……

 俺は、机の上のタブレットに手を伸ばした。


つづけ

おおおおおおおお、可愛いよ! 可愛いよ、オヤビン!!

(ΦωΦ)


うがい、手洗い、評価とブックマークをお願いするでヤンス。

それから好きなキャラの登場する話にイイねしてもらえると、凄く参考になるでヤンス!

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