91.
次郎たちの前に現れた、ヒカゲの分身部隊。
影の人形たちは聖騎士の放つ光で一瞬で溶ける。
次から次へと湧き出ては聖騎士によって討伐されていく……。
「なんだ黒獣たいしたことないな!」
と騎士達が増長する一方で、次郎は冷静に事態を分析し、やがて違和感を覚えてるようになった。
(あまりに、無意味すぎる)
影人形は聖騎士によってワンパンされる。
それがわかって襲い続けているのは何故か?
(純粋に考えると時間稼ぎか。しかし何のために……?)
次郎はヒカゲの手札を全て知ってるわけではない。
相手が予想外のことをしてくると、考慮に入れた上で、全体を見渡している。
何かしてくるだろう。
警戒を周囲に張り巡らせる……。
そのときだ。
「がはっ!」
次郎の体を、後ろから何かが貫いていた。
自分の影から影の触手が伸びていたのだ。
「なる……ほどねえ……!」
すぐにこれが、ヒカゲの作戦だと気づいた。
ヒカゲが何かしてくる、そう思わせることで、自分への注意をそらす作戦だったのだ。
ヒカゲは影の中から飛び出してきた。




