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「最近あんたとお茶する時間が一番楽になってるって自覚して気が遠くなりかけた」

「まあそれは末期ね」

「あんたが言うな、あんたが」

「選帝を頑張って早く帰ったほうが良くってよ」

「徹頭徹尾他人事だからって投げやりすぎるわ！」

「『徹頭徹尾他人事』にしかできないあたくしにどうしろと？」

「愚痴らせてよ。

　あたし、結構感情豊かなほうだと思ってたのよ」

「何かあって？」

「やっぱり帰らなきゃならないかなって腹を据えたんだけど…そしたら、自分の冷めっぷりにびっくりよ。ときめかなくなったのよ！」

「あら、良いことじゃなくって？」

「何処が！？　抱き上げられたり抱きしめられたりしてもね、ああ重くないかなとか心配してくれてるんだなとか、そういうところに思いは及ぶけど、きゅんとしないのよ！　乙女としてどうなの！」

「現実的でよろしいじゃないの」

「あっさり言うな！　責任感ぐらい滲ませなさいよ！」

「あら、だって貴方、別にときめきたいわけじゃあないんでしょう？」

「う」

「うら若き乙女として現状に危機感を覚えているだけで、積極的に恋をしたいわけじゃないのでしょう」

「…ホントにあんたって機微に聡いわよね。何でそれでずーっと『問題外』でいられるのか、謎でしょうがないんだけど」

「確かに、あたくしには、多少そういったことを読むくらいの能力は、あるのでしょうね。それは否定しない。でも、あたくしはそれを生かせないのよ」

「そう？」

「ええ。知識がたくさんあるとか、人や国の流れが読み取れるとかは、十全な条件にはならないわ。上手く生かし、助言し、周囲を導くだけのことをして、初めて賢いと言えるの。けれど、あたくしができるのは、ただ、指摘だけ。しかも、その小賢しさを駆使して世渡りするほど器用な性質でもないのは、『問題外』でいることからもわかる通り」

「…………でも」

「なあに？」

「でも、あんたは、あたしに忠告してくれたでしょう。指摘にしかなっていないつもりなんでしょうけど、あたしにとって、あれは忠告」

「…………そう」

「あたし、正直ちょっと浮かれてた。ううん、勿論帰りたいって思ってたし、何であたしがって気持ちは確かにあった。だけど、あたしが選ばれたんだって、そういう優越感もあったの。選帝者だから、皆優しくしてくれたしね。このままだったら、もしかしたら此処にずっといたいって言い出してたかも」

「…………」

「其処に冷や水浴びせられて、ムカついたけど。でも、きっと、あんたの他にそれをしてくれる人間は、いなかった」

「そうでしょうね。わざわざ洗脳を解くような真似ですもの」

「うん、だから、感謝してるのよ。帰りたいって気持ちを、思い出させてくれた」

「その結果、ときめかなくなっても？」

「……もう。正直それは不本意だけどね。ま、恋なら向こうでも出来るでしょ」

「その意気でしてよ」

「そういうのを思い出させてくれるから、あんたとのお茶会はイイのよね。ま、これからもバレないように通うから、付き合ってね？」

「おすすめは相変わらずしないけれど、まあ、構わなくってよ」

「ふふ。じゃあ、またね」

「…ええ、また」