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最終章:俺の彼女攻略法

【SIDE:望月道明】


 今日は俺の高校の入学式だった。

 高校1年生として高校デビューをする。

 春の桜の花びらの中を俺は歩いていた。

 それは期待、これからの高校生活は楽しみでしかたない。

 中学よりもさらに色々としたい事も増える年頃だ。

 新しいクラスでは同じ中学からの同級生も何人かいたので、楽しくやっていけそうだ。

 

「新しい出会いもあるかな」

 

 春は出会いの季節。

 あらゆる期待に胸を膨らませながら、入学式を終えた。

 桜並木を抜け高校を出た俺は待ち合わせ場所に行く。

 学校から離れた駅前の喫茶店に入る。

 

「いらっしゃいませ」

 

 俺は辺りを見渡すと彼女は既にすでに俺を待ってくれていた。

 

「道明、ここよ」

 

 手をあげて合図するのは那奈姉だった。

 大学が終わったら待ち合わせをしようと約束していたのだ。

 俺は席に座るとコーヒーを注文する。

 

「高校の入学式はどうだった?」

 

「楽しかったよ。校長が面白い人でさ。学校の雰囲気も楽しそうだし、頑張って受験勉強して入ってよかったと思う」

 

「そう。よかったじゃない」

 

 那奈姉はカフェオレを飲みながら一息をつく。

 

「これではれて、私は大学生、道明は高校生になったのよね」

 

「そうだけど?」

 

「……年上を恋人に選んだ事、後悔してない?」

 

 那奈姉にしては珍しく、後ろ向きな台詞だ。

 普段ならそう言うことは言わない人なんだけどな。

 

「別に?那奈姉を選んだ事に後悔はないよ」

 

「3歳も年の差があるのよ。そして、道明の周りには高校生という若い女の子がいる」

 

「いや、俺たちぐらいの年頃じゃ3歳くらいじゃ全然変わらないって」

 

 なんで今になって歳の差を気にする発言をするのか。

 どうやら、大学で何あったらしい。

 

「大学で友人になった子たちがいるんだけどね。高校が恋人だって言われたら、心配されちゃったのよ。『相手の子、浮気とかしないかな』とか『大学生と高校生ってもう全然違うわよねぇ』とか『歳の差とか気になるでしょう。なるよねぇ』とか」

 

 ネガティブになっているのはその子達の影響か。

 大学生って言えばもう大人だもんな。

 子供と考え方も違うだろうし、大人になるってことは意識も変わる。

 

「……今まであまり歳の差なんて考えたことがなかったもの。小さな頃から道明は弟みたいに傍にいたし。今になっても、特に気にした様子もなかった。でも、世間的に見れば3歳の歳の差って気になるものなのよね?」

 

「俺はそう思わないけど?あのな、那奈姉。他人の評価と視線とか、気にしてもしょうがないじゃん。俺たちは好きあって付き合い始めた。それは、愛情があってこそだろう?愛さえあれば歳の差なんて。っていうけども、俺は気にしない」

 

「私が気にしちゃってるだけかな。ごめんね、変にネガティブになっちゃって。道明が私を愛してくれているならそれを信じないといけないのにね」

 

 那奈姉も考え過ぎなんだよな。

 まぁ、大学と言う新しい環境に影響を受けることもあるだろう。

 いろんな場所からいろんな人が集まる場所だから。

 自分の体験した事ないこと、知らない事、様々な影響を受けてしまうものらしい。 

 那奈姉が今まで不思議に思っていなかった歳の差にしても、意識が変わってしまうのも考えてみればあり得る話だ。

 それは仕方ない事だし、当然だとも思う。

 俺は運ばれてきたホットコーヒーに砂糖とミルクを入れて飲む。

 

「んー。美味しい……。それで、那奈姉。これからどうする?家に帰る前にどこか寄っていく?那奈姉の好きな所に行こう」

 

「そうねぇ。もう一度桜、見に行かない?そろそろ見納めでしょ」

 

 桜か、もう今年の花は終わる時期になってるんだよな。

 最後の桜を見に行きますか。

 

 

 

 

 花が舞散り始めている桜並木。

 俺達は手を繋ぎながら恋人の雰囲気を出して歩く。

 

「……桜って散っちゃう時は一気に散っちゃうわよね」

 

「もう少しだけ、咲いていて欲しいな」

 

「儚く散るからこそ綺麗でもあるかな。限られている、それゆえに美しい」

 

 那奈姉は俺の手を握りしめて微笑む。

 

「ここで道明に告白されて嬉しかった。婚約者の事が私の思い込みで違ったのは寂しかったけど、ちゃんと恋人になれた」

 

「俺も那奈姉が好きだったんだ。ずっと昔からさ。でも、俺も不安だったから」

 

「分かるわ。想いは言葉にしづらいもの。好きだと言わなければ関係は変わらないけども、好きだと言う言葉を使うのは勇気がいるわよね……近すぎた関係だから怖いこともあるわ」

 

 両想いだったのに、結ばれるまでに時間がかかってしまった。

 互いに一歩を踏み出す勇気がなかった。

 誰だって好きな相手がいても告白するの断られるのが怖い。

 俺達は寄り添い合いながら桜の木の下に立つ。

 

「俺は那奈姉が好きだ。一度、好きって言ってしまうと簡単に言えるのにね」

 

「うん……私も好き」

 

 那奈姉の笑顔が綺麗で見惚れる。

 

「あのさ、那奈姉?」

 

「なぁに?」

 

「せっかく、恋人になれたんだから、俺を弟扱いはそろそろやめて」

 

「……んー、でも、それって道明もそうじゃない?私を那奈姉って呼ぶでしょ」

 

 言われてみればそうだった。

 俺の方もそうなんだよな、姉弟の関係が長いために互いに抜けきらない。

 

「それじゃ、俺から呼び方を変えようか?」

 

「だ、ダメ!」

 

「え?ダメなのか?」

 

 なぜか那奈姉に断られてしまった。

 てっきり呼び名を変えて欲しいんだと思ったのに。

 

「私の我がまま。道明には那奈姉って呼ばれていたいの。姉弟の関係は徐々に恋人関係になっていくように頑張るから」

 

「那奈姉、呼び名を気にいってるんだ?」

 

「小さな頃からの道明との思い出があるもの。だから、もう少しだけそう呼んでね」

 

 俺は頷いていた。

 那奈姉、そう呼ばれるのを彼女自身が好きでいてたんだ。

 大きな風が吹いて、桜の花びらが一気に舞散る。

 幻想的にも思える光景が広がる。

 

「今の花びら、CGみたいにぶわって広がっていったね」

 

「本当に綺麗だったわ」

 

 ふたりで桜を見入りながら俺達は軽くキスをする。

 今と言う時間を大切に、これからも関係を続けていけたらいいな。

 

「ねぇ、那奈姉。約束をし直そうか。いつの日か、俺と結婚してくれる?」

 

「もちろん。早く、その日が来てくれるのを願ってるわ。それに親戚たちはもう認めてくれてるから傷害もないわ。つまり結婚はいつでもできる。あとは、道明の気持ち次第ね?本気で言ってくれるときが早く来てほしいなぁ」

 

「うっ、頑張ります」

 

 遠い日かもしれないけども、いつの日にか、ちゃんと結婚したいって言えたらいい。

 そんな事を想像しながら、俺と那奈姉は最後の桜を眺め続けていた。

 来年も同じ桜並木を一緒に見ようと約束し合いながら……。

 

次回、番外編。咲良編です。

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