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異世界転生したのでスローライフ狙ったら伝説の救世主に祭り上げられた件  作者: 東雲 明
第1章 召喚と測定不能

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第2話 選ばれなかった数値

「ようこそ、異世界より来たる勇者よ。我々は天界アストリアの民。お前こそが、古の予言に記された伝説の救世主。我らの世界を魔王の脅威から救う、唯一の希望である。」


……は?


 一瞬、言葉の意味が理解できなかった。勇者? 救世主? 俺が?


 胸の奥で、何かがざわめく。嬉しいのか? 怖いのか? わからない。


 憧れていた異世界召喚が現実になったのに、喜びより恐怖が先に立つ。 


 俺は戦えない。剣も魔法も使えない。ステータス開いたら全部ゼロだ。家族はどうなる? 母さんは? 学校の友達は? アマプラの続きは? ――くだらないことまで頭をよぎる。


 長老たちの真剣な視線が、俺の肌を刺すように感じる。期待されている。


 重い。息が詰まる。逃げ出したい。でもどこへ? ここは天界だ。帰る方法なんてない。


「……なんでだよ……。」


 思わず零れた本音が、静寂の中で響いた。周囲の長老たちが一瞬で凍りつく。しまった、声に出していた。


「……何で俺が救世主なんだよ! 証拠は?! 」


 隣の長老が驚いた顔で俺を見たけど、俺は答えられなかった。もうどうでもいい。どうせ俺みたいな冴えない高校生が救世主なんて無理だ。帰りたい。普通の、つまらない日常に戻りたい。


 と、そのとき。


 ぴた、ぴた、ぴた――


 小さな、軽やかな足音が大理石の床に響いた。長老たちの間から、ふわりと何者かが飛び出してきた。


俺の視界に飛び込んできたのは、銀色の髪をツインテールにした、年齢不詳の少女だった。


白いふわふわのドレス。裾に金糸の刺繍が施され、小さな翼のような飾りが背中に揺れている。


 肌は陶器のように白く、頰にはほのかな桜色。大人っぽく整った顔立ちなのに、全体の印象は無邪気で、天使そのものだ。


 でも、一番心を奪われたのはその瞳だった。


 深い青。まるで夏の空を閉じ込めたような、透き通った色。俺を見上げるその瞳に、警戒心のカケラもない。ただ純粋な、喜びと好奇心だけが満ち溢れている。


「わぁーい、龍夜くん、おっはよー! 」


 いきなり飛びついてきた。


 小さな体が俺の腕にぎゅーっと抱きつき、柔らかい感触が全身を駆け巡る。甘い――花と果実を混ぜたような、優しい香りが鼻をくすぐる。頭がクラクラした。心臓が一気に跳ね上がる。なんだこの距離感。初対面だろ? しかも呼び捨てって。


「ちょ、ちょっと待て! くっつくなって! 」


慌てて引き剥がそうとしたけど、少女は離れない。それどころか、もっと強く抱きついてきて、顔を俺の胸に埋めてくる。温かい。小さくて、壊れそうで、でも力強い。


「えー! 私のこと覚えてないの?ずーっと待ってたんだよ。おかえり! 龍夜くん! 」


ニコニコと笑いながら、上目遣いで俺を見上げる。その笑顔が、めちゃくちゃ可愛い。無防備すぎる。うざいくらいの天真爛漫さ。でも、それがまた……たまらなく可愛い。


胸の奥が、熱くなる。なんだこの感情。苛立ち? 照れ? それとも――。


長老たちが慌てて声を上げる。


「ミユウ様! まだ儀式が終わっておりません! 勇者殿への説明を……」


「えー? いいじゃん、後で後で! 龍夜くん、疲れてるでしょ? お腹すいてない? ミユウ、なんでも作れるよ! 龍夜くんの好きな食べ物、教えて教えて!」


完全に無視。長老たちの顔が青ざめているのに、ミユウは俺の手を取って、くるくる回りながら笑っている。小さな手は温かくて、柔らかくて、離したくないと思ってしまう自分が怖い。


俺の頭の中は、もう大混乱だった。


魔王とか、救世主とか、そんな大層な話はどうでもよくなっていた。正直、耳に入ってこない。目の前にいるこのロリ体型のうざ可愛い天使に、全神経を奪われている。


憧れていたスローライフはどこへ行った? のんびり畑でも耕して、異世界でのんびり生活を送るはずだったのに。


初日から、こんなペースに振り回されている。


でも――嫌じゃない。


むしろ、この温もり、この笑顔、この声。昔から知っているような、懐かしさ。


心臓がバクバクうるさくて、長老たちの荘厳な言葉が、遠くの波の音のようにしか聞こえない。


怖かったはずの異世界が、急に少しだけ、温かく感じる。


――ああ、もうダメだ。


俺の異世界生活、完全にこの子のペースだ。


伝説の救世主として崇められる前に、俺はこのミユウって子に、心を完全に掌握されてしまっている。


はあ……集中できねえよ、全然。


でも、こんな気持ち、悪くないかも……なんて、思ってしまう自分が、一番怖い。


その瞬間、残りの充電わずかなスマホの通知が鳴った。俺は急いでスマホを開いた。目に飛び込んできた、インスタのお知らせは。


 ーー無期限休載のお知らせーー


 いつも配信を見てくださっている方、応援してくださっている方へお知らせです。当作品は、作者急病のため無期限休載とさせていただきます。次回作は決まり次第追って連絡します。


その瞬間、俺の手からスマホが乾いた音を立てて落ち、俺の心は絶望で満たされた。え、あの続きは?剛田唱ごうだしょうが、「非リア舐めんなよおお!!」と叫びながら魔王に突っ込むあのシーンの続きは? 剛田唱じゃないけど、叫びたくなった。別の意味で。


「ち、ち、ちくしょおおおーー!! 」


「ねーねーどうしたの龍夜くん。私も何か叫ぼうかな。」

 

 俺の乾いた叫びと、ミユウの天然うざ可愛い鼻歌だけが、アストリアの宮殿に響き渡っていた。



作者から、お読みくださった方へ。毎回、読まれないのでは?打ち切り?!の恐怖と戦いながら書いています。どうか、少しでも何か感じてくださったなら、評価、ブクマしてくだされば、打ち切りの恐怖と戦わずにすみます。どうか、打ち切りの呪いから解放してください。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
どんどん読んでいくと自分まで異世界に行ったような気分になった!ゲーム好きだしRPG大好きだから主人公にめっちゃ共感できた‼️楽しみに続き読みまーす( ´›ω‹`)
2026/01/22 16:19 アラフォかーな
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