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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第4章「最強の勇者」

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9話 空の旅にて

すみません、少しだけ続きを書きます!




「ティオル、ドルグランドまでは後どれぐらいなんだ?」


 ゲンダルフィンを出てから数時間。ティオルに今の状況を確認する。


「何を言ってる? ドルグランドならもう入っているぞ?」


「そうなの?」


 俺は隣にいるアルデをチラッと見る。


「そうじゃな、ここはドラグランドの領土内じゃな」


 アルデも頷く。


「下を見ても森だけどな」


 いつまで経っても街が見えないので、ドルグランドに入っているとは思っていなかった。


「そりゃそうですよお兄さん。ドルグランドは世界で一番大きい国ですから。ゲンダルフィンと接している領土が綺麗に整備されてるわけないじゃないですか」


「そう言えばそうだな。じゃあ、えっと、なんだっけ? ドルグランドの王都って?」


「セントリアですね」


「そうそう、じゃあそのセントリアにはどれぐらいでつくんだ?」


 聞きたかったのはドルグランドにじゃなくて、セントリアにって事。

 そうティオル確認する。


「もう少しだな。1時間もかからないだろう」


「もうそんなに来てたのか」


 と言ってもティオルで1時間ならまだまだ遠いか。


「……でも、本当凄いですね。普通なら1週間程かかる道のりをドラゴンに乗ればたったの数時間で行けるなんて」


 ユリアがしみじみとありえないと言いたそうな顔で言う。

 そりゃ、普通なら考えられないだろうが、飛行機に乗った事があるならこの距離ぐらいそれぐらいの認識だ。


「我が本気で飛べばもっと早く着くのだが」


「まあ、空の旅も楽しいだろ? このスピードでいいよ」


 空の旅もいいものだ。

 旅行と考えたらゆっくり移動するのも乙なものだろう。


「で、スノハラ。セントリアに着けばどう動くかもう決まっているのか?」


 アルデが「本題じゃ!」と言いたげに質問する。


「まあ、まずは観光だよな。何があるかわからんから片っ端から見て回ろうと思っているけど」


「そりゃそうじゃが、セントリアはかなり広いぞ? 1日では回りきれんじゃろ」


「そりゃそうだろ。元々何日かいるつもりだったし。ひとまず1週間ぐらい滞在予定かな。それで無理ならもうちょっと増やそうと考えてる」


「1週間ですか。本当に旅行ですね」


「そりゃな、せっかく美味い物がある国ってわかってて、すぐに帰る選択肢はないだろ」


「それはごもっともですが……1週間ですか……」


「ん? 長かった?」


 少なくとも1週間滞在する事に少し考え込むユリア。


「……そうですね。そこまでエミリを1人にしていいものかどうか。私がいないと困る事もあるでしょうし」


「そうだな。急に決まった旅行だからな。そこまで長期とは考えてないかも知れないか」


「まあ、1週間は長期とは言わないですし、行き先がドルグランドなのでそれぐらいはいるだろうと考えてると思いますが、少し不安はありますね。エミリ的には大丈夫と言うと思いますが私が」


「そっか」


 エミリに強制的に行けと言われたから旅行をするのは拒まなかったけど、ユリア自身が仕事の事を気にしながら旅行をしないといけなくなるのは少し残念だな。

 どうしようかな。


「む? 何を悩んでおるのじゃ?」


 どうするか悩んでいるとアルデが何を言ってるのかわからんと言いながら、


「せっかくあのサキュバスがいるのじゃぞ。帰りたい時に召喚して転移魔法で帰ればいいじゃろ?」


「っ!! それがあったか!」


 アルデの言葉に成る程と手を打つ。

 せっかくのあいつを使わない手はない。

 内心ティオルで帰ってもいいと思っていたが、少なくとも数時間はかかるし、少しめんどくさいと思っていた。

 たが、クレアを使えば一瞬だ。

 それに店の事も気になれば見に行く事ができる。


「ナイスアルデ! ユリア、エミリが気になったらいつでも帰れるぞ」


「そうですね。転移魔法をそんな簡単に使えるって言うのもどうかと思いますが、あの悪魔を使うのは特に気になりませんからね。気になった時に帰ればいいですね」


 と、俺の言葉に賛同しながらクレアの事になればかなりきつい口調だ。

 命を狙われてたからここまで嫌っているのは納得できる。その事には俺は特に何も考える気はない。


「これで不安も無くなったし、旅行を楽しみますか!」


「そうですね。せっかくエミリが無理にでも作ってくれた休日なので、楽しみましょう!」


 ユリアもやっと切り替えられた様で良かった。


「じゃあ、まずは空の旅を楽しみますか!」


 あと1時間ほど空を楽しみながらドルグランドに向かって……


「「「……っ!!」」」


 その瞬間、危機感知に何か反応した。


「……? どうしまし……」


 まだ視認できていないが確実に何かが……。


「下じゃ!!」


「ティオル!!」


 ユリアが俺達の異変に疑問を持った瞬間、アルデが叫ぶと同時に俺も叫ぶ。


「わかっている!!」


「えっ!? 何が起こっ……」


 気付いてから1秒程、下方から巨大な炎の球が高速で向かって来た。


「我に炎か! ふん! 『炎竜の咆哮』!!」


「きゃぁぁぁっ!!」


 ティオルが放った炎の咆哮と炎の球がぶつかり合い、激しい爆発が起きる。

 風圧でティオルの上に乗っていても体がぶれる。


「なんですかっ!?」


 衝撃が収まりユリアが叫ぶ。


「ユリア、しっかりティオルに捕まっておけよ!」


 ユリアに近づきティオルの鱗を掴ませる。


 しかし今の攻撃は俺達を殺しにかかっていた。

 ドラゴンではなくワイバーンなら一瞬で殺されている威力だ。

 俺達じゃなかったらこの世に存在しない程の威力。


「ほう! 中々の強者じゃな!!」


「そうだな、我の咆哮と変わらぬ威力。この魔力は相当だな!!」


 アルデとティオルが相手の魔力を感じて、興奮した様に叫ぶ。


 そして徐々に俺達に向かってくる影が見え始める。

 徐々にと言ってもそのスピードは高速だが。


「ふはははっ! お返しだ! 格の違いを見せてやる! これが炎だ! 『炎竜の咆哮』!」


 そいつに向かってティオルがさっき以上の威力を込めた咆哮を放つ。

 しかし……。


「っ!!」


 当たる瞬間に真っ二つに切れた。


 ……は? ティオルの咆哮を切った?


「ほう、こいつの咆哮を切るか」


 その瞬間を見たアルデが冷静に呟く。

 そして、俺達の前をその影が下から上へ通り抜けた。

 そして、


「……なっ!!」


 その姿を見て、俺の口から声が漏れる。


 初めて見る、幻想的な生き物。

 ティオルとはまた違う赤く燃える様に輝き、虹色に光る翼。複数に分かれて虹色に綺麗に舞い、軌跡を描く尾。力強くも繊細な金色に光る脚。そして、優しくも鋭い眼光と嘴。

 そう、そいつは物語に出てくる伝説の生き物……。

 

「鳳凰……っ!!」


「フェニックスじゃな!」


 俺とアルデは同時に叫ぶ。


「中々の相手だな」


 自分の攻撃を正面から斬られたティオルも叫ぶ。


 俺達より上空に登ったフェニックスは方向を変え、俺達の前に滞空する。

 ん? フェニックスの上に人がいる?

 そして、フェニックスとそれに乗る1人の人間が動く。


「フェルダ、次で決めるぞ!」


「ああ、リュウセイ!」


 その瞬間空気が変わる。

 魔力が高まり、周りの空気をフェニックスの魔力が埋め尽くす。


「『聖魔鳳凰』!」


 フェニックスが放った魔力が乗る人間に纏わり付き、七色に燃え上がる。

 そしてその人間が振り上げた剣から一本の光の線が立ち上がる。


「『龍轟一閃』!!」


 振り下ろしたその一閃は古龍をも斬り倒す一筋の斬撃。

 それに加えて、剣に纏わり付いた七色の炎は全てを浄化し消滅させる。

 今まで魔王達と戦った時と同じぐらいの危機感が身体を巡る。


「ふははははっ! これは凄いのじゃ!」


「この一撃! 我の相手にとって不足無し!!」


 しかし、それを見て叫ぶ2人。

 最強だろう一撃が迫り来る一瞬、2人の魔力も跳ね上がる。


 これはこっちもやばい!


「ユリア捕まれ!!」


「きゃぁぁぁっ!」


 ティオルの上に乗ってる以上逃げる事はできない。その場で耐えるしかない。

 ユリアを引き寄せ「絶永結界」を発動させる。


 アルデが手を前に出した瞬間、より濃い魔力が発生する。その行動は周りの空気をアルデの魔力に置き換える。


「『終獄闇夜』!」


 その極大魔法は、以前自称魔王が放ちかけた魔法。

 黒い霧の様な巨大な塊が周りの魔力を吸い尽つくし、フェニックスが発動させた七色の炎までも喰らい尽くす。

 しかし、一閃はまだ俺達に向かう。


 そして、ティオルが叫ぶ。


「『竜王の逆鱗』!」


 俺達を乗せたまま縦に一回転したティオルは、その巨大な尾を鱗が逆立つ様に暗く真紅に光らせ、空間を切り裂く一撃を放つ。

 その一撃は炎が消えてもなお俺達に向かって来る一閃を弾き消した。


 両方による一撃はその場で消滅し、静寂だけが残る。


「僕達の一撃が、相殺された!?」


「こいつらは、かなりの強者だぞ! リュウセイどうする!!」


 フェニックスとそれに乗る男が今の一撃が失敗に終わった事に動揺している。


「ほう、妾の攻撃で相殺しかできなかったか! これは楽しめそうじゃ!」


「今の一撃でも届かないとは、全力が出せる!」


 こっちはこっちで興奮し始めている。

 今の攻防に少し俺も滾ったのだが、これ以上戦闘になるのは避けたい。こっちはユリアがいる。


「いくぞ、フェルダ!」


「ああ、リュウセイ!」


「邪魔をするなよ幼女!」


「貴様がじゃ!」


 そして、両者が高まり合う瞬間、


「お前ら、ちょっと待て!!」


「ぐはっ!」


 今からさっき以上の戦いが始まろうとしたところ、俺はティオルの横に浮かぼうとしていたアルデの首根っこを掴み、ティオルの頭の上まで移動する。


「あ、主、流石に頭に乗られるのは……」


「黙れ、少し静かにしておけ」


 文句を言おうとするティオルを制し、目の前にいる男とフェニックスに向く。


「貴方達も待ってもらえますか? こちらには敵意はないですから」


「スノハ……ぐぇっ!」


 全く抵抗しないと示すため、アルデを後ろに投げ捨てて両手を上げる。


「っ!!」


「ドラゴンの上に人間が!? どう言う事だ!?」


 フェニックスが俺を見て目を見開いた様に驚く。

 人間って、さっき戦っていたアルデも人間だろ。

 しかし、それを宥める様に男が、


「待つんだフェルダ。……僕が話そう」


 フェニックスを制し、その男は剣を収めた。

 そして俺の目を見る。


「リュウセイ! 何を!」


「大丈夫だ。この人に敵意はない」


 そう言ってその男も手を上げて敵意がない様に示し、


「まずは謝らさせて欲しい。急に攻撃をしてすまなかった」


 第一声に謝った。


「……っ」


 その行動に俺は少し驚く。

 しかし、すぐに返す。


「いや、こちらも攻撃したのでおあいこですよ」


 どう考えても攻撃を先に受けた俺達が謝る必要はないが、まずは下手に出よう。

 アルデとティオルの攻撃を相殺できるほどの実力だ。あれが全力で無ければ、後々面倒くさくなるだろう。

 しかし、俺の思いとは裏腹にアルデが後ろで叫ぶ。


「何を言っておるスノハラ! あいつらが先に手を出したのじゃ! こちらが攻撃し返すのは正しい事じゃ!!」


 そう言うとは思ったが、少し黙っててくれ。


「ユリア、アルデにアレを渡して黙らせてくれ」


「は、はい。アルデちゃん、これ」


 そう言ってユリアはアルデに袋を渡す。


「こ、これは!」


「それ食べながら黙ってろ」


「わかったのじゃ!」


 そう言ってアルデは袋に入っていた丸くスライスされた芋。つまりポテチを食べ始める。

 しかしそれは普通のポテチではない。塩味だけではなく、甘さとマッチする様に配合した甘塩ポテチだ。


「やはりこの塩加減が絶妙じゃ! それに味変でこの、甘い、ポテチを! むむむっ!! 美味い!!」


 興味がポテチに移るアルデ。

 少しうるさいがこっちの話に入られるよりかはいいだろう。


 しかし、


「主! 幼女の言う通りだ!」


 もう1人邪魔をする奴がいた。


「幼女が黙っても、我は黙らんぞ! あいつらが先に手を出したの……ぐばぁっ!!」


 喋っている最中にティオルの頭の上で右足で思いっきり踏みつける。


「ティオルも静かにしておこうか」


「ぐご……わ、わかった」


 よしこれで静かに話せる。

 そう思いながら相手を見たが、


「ど、ドラゴンを踏みつける人間だと……!?」


 フェニックスは驚きのあまり口を開けていた。

 しかし、男の方は違った様で、


「なるほど、やはり貴方は普通とは違いますね」


 そう言って冷静に俺の目を見る。


「もう一度謝らせて欲しい。言い訳になるが、ドラゴンが急に僕らの国の領土内に侵入したとなれば動かざるを得なかった。しかし、何も確認せずに攻撃したのは本当に申し訳ない」


 再度俺達に頭を下げる男。

 こう素直に謝られると何か目的なのか考えてしまうが、


「この様に納めてくれた貴方の力は相当だとお見受けする。もし良ければ貴方の提案に乗らせて欲しい」


 そう言って右手を差し出して来る。

 距離的に届かないが、友好の印として考えていいだろう。

 まあ、様子を見ながらだけど。


「もちろん。よろしく頼みます」


 上げていた手を下ろし、俺も右手を出す。

 お互いドラゴンとフェニックスの上にいるので握手はできないが、それだけで友好関係を示せる。


「そう言ってくれるとありがたい」


 さっきまでは殺し合う寸前だったのにこの切り替え……アルデ達みたいな戦闘狂ではないだろう。

 この世界の強い奴らは大抵戦いを好むからな。話し合えるだけで助かる。


「こちらこそ。俺の名前は春原勇。ちょっとドルグランドに旅行をしようとして来ました」


「そうだったのですね。本当に申し訳なかったです」


 そう言って男は背筋を伸ばし、


「僕の名前は織田隆聖。ドルグランドの『勇者』をしています」


 純粋な笑顔でその男は自分が勇者だと名乗った。


次回の更新は後日活動報告で、伝えます。

申し訳ございません。

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