7話 絶剣を使う者
「っ!! グレイバルト様! 良いのですか!?」
固まっていた空気を壊す様にグレイバルトの言動にジェミラが声を上げる。
「ああ、いい」
しかし、ジェミラの言葉にグレイバルトは肯定する。
「お、お待ち下さい、グレイバルト様!! こいつは人間で、それに勇者でございます! それを貴方様が育てるのはおかしい事では無いでしょうか!」
「ジェミラ、オレは元魔王だが今は人間だ。別に人間を育てる事はおかしい事では無い。それとな……いや、まあ、いい」
一瞬グレイバルトの顔色が変わる。
それを見たジェミラの行動を変え、
「……っ!! そうですか……。わかりました。グレイバルト様がそう言うのであれば、従いましょう」
跪き頷いた。
「すまないなジェミラ」
そう言ってジェミラの肩に手を置く。
「いえ、グレイバルト様の意思なので」
その言葉は何も不満がない様だった。
この反応、何かしらグレイバルトの人間時代にあったのだろう。
まあ、理由など何でもよくて、健治が俺から離れる事が決定した事に俺は満足する。
「って事だ、良かったな健治」
健治の肩を叩く。
「色々思うところはありますが、強くなれるならもう道は選ばないですから」
そう言って健治はグレイバルトの前に向かう。
さあ、これで俺が何も手を出さなくて良くなった。
そう思った時、
「しかし条件がある」
そう言ってグレイバルトが健治を止める。
「条件?」
「ああ、簡単な事だがな」
そう言って腰に下げていた剣を抜き、
「ほら」
健治の元に投げた。
「おっとっ! これはどう言う……」
「構えろ」
そう促す。
健治は何かを察したのかそれに従い剣を構えた。
「その剣は『絶剣』バルグレイド。オレが人間の時代の相棒であり最強の剣だ」
「絶剣……」
そう言われて健治は青白く光る綺麗な剣をまじまじと見る。
「その剣には特別な力が3つある。一つは持ち主を選ばず持った者の能力を最大限引き出す。二つはこの剣に宿る魔力の解放。三つは『絶剣』の解放だ」
「……特別な能力」
「そうだ、だからこそこの剣は最強と呼ばれる」
な、な、なっ、何それ!! むっちゃかっこいいんだけど!! 絶剣の解放? 何それ! 俺が欲しい!!
やっぱりあの時返さなかったら良かったと思うほどに! 欲しい!!
「それで、お前には二つ目の魔力の解放をしてもらう。できなければこの話は無しだ」
「なっ!」
その言葉に健治が目を見開く。
「安心しろ。お前がそこまで弱くても『勇者』であるのであればその剣を持った瞬間にわかる。強い潜在能力がある者は選ばれる」
それって、聖剣みたいな感じだな。
だったら俺にふさわしい剣はそれじゃないのか?
でも、今更言えないし、あの時に返したのがほんと悔やまれる!
「……わかった。これでいいんだな?」
そう言って健治がグレイバルトに向かって剣を向ける。
そして、
「『魔力解放』」
元々知っていたかの様に唱えた言葉と同時にその場を埋め尽くすほどの魔力に包まれる。
その状況に周りは固まる。
濃い魔力。それは極大魔法を放つ時と同じぐらいの濃度だった。
「ほう……」
珍しくアルデから声が漏れる。
「ふっ、ふははははっ! そうか、そうだったか!」
そして嬉しそうに笑うグレイバルト。
「どうだ?」
「いいだろう!」
満足そうに、納得した様にグレイバルトが答える。
「本当か!」
「ああ、偽勇者……いや、ケンジだったな。オレが責任持って鍛えてやろう! ついでにその仲間も鍛えてやる!」
「わ、私達もですか!?」
「俺もか!?」
「魔道士に戦士だろ? 男の方はケンジのついでにオレが鍛えてやる。女の方はジェミラ! お前が面倒を見ろ!」
「はっ! グレイバルト様の意のままに!」
ついでに早紀と雅人も鍛えてもらえるみたいで、強くなれる様だ。
「良かったなお前ら」
「はい。強くなれるなら何だっていい。元剣聖なら元魔王でも仲間を守れるぐらいの強さは身につけられるからな!」
「そうだね! 私もついでかも知れないけど頑張るよ!」
「ああ、健治。俺もお前のサポートはできるぐらいにはなるからな!」
楽しそうに、嬉しそうに健治達は笑い合う。
……何というかこいつら王道の主人公みたいな事言ってるな。
俺も一回ぐらい言ってみたいな。
「丸く治ったな、ならスノハラ早く行くのじゃ」
「お前は軽いな。あいつらお前の孫弟子になるんだぞ」
「む? そうか! なら妾の言う事は何でも聞くのじゃな!」
「「「っ!!」」」
良い事を聞いたかの様に言ったアルデを3人が一斉に見る。
それは可哀想だからフォローしとくか。
「それは可哀想だからやめておけよ。ちなみに孫弟子はお前の管轄じゃないから」
「なんじゃ、残念じゃな」
俺のフォローにアルデが残念そうにする。
その様子を見て健治達が安心した顔になる。
俺は「じゃあとにかく」と言いながらその話を無理やり終わらせ、
「って事でグレイバルト。そいつらを任せたから。俺らはもう行くわ」
「ああ、オレが決めた事だ。安心して行けばいい」
「おう」
そう言うグレイバルトが健治達を見る目は少し懐かしいものを見る感じだった。
何でもいい。面倒くさいのが俺の手から離れたのならそれでいい。
「スノハラ、早く行くのじゃ!」
「早いなお前」
壊れた扉を出ていたアルデが叫ぶ。
「春原さん!」
王の間から出る直前、健治に声をかけられる。
「ん? どうした?」
「ありがとうございました! 春原さんのお陰で強くなれます! 絶対春原さんみたいに強くなって、魔王を倒せる様になりますから!」
「おう、頑張れよ」
やはり主人公らしい発言をして満足そうに言い切る健治。
まあ、仲間を守れるぐらいには強くなってくれ。
そして健治達の声を背中に浴びながら俺とアルデは城を出る。
「しかし、グレイバルトがここまですんなり同意するとは思わなかったな。いつもみたいになると思っていたんだけど」
「いや、あやつにも思うところがあったのではないのか? 妾もあまり知らんが、元人間の時代に何かあったのじゃろう」
少し興味があるのかアルデは顎をさすりながら言う。
「そうなのか。まあ、アルデも今日は大人しかったからな。最後はいらん事言ったけど、無理難題を吹っかけなかったし」
「何を言っておる。今回はこうなるとわかっていたからこそ茶を飲んでいたのじゃ。妾の頭ならこんな予想下らないからのう!」
何か胸を張って言うアルデ。
「アルデも弟子を思う気持ちがあったってわけか。なんか師匠っぽいな」
「師匠っぽいではなく、師匠じゃ!」
俺の発言に突っかかるアルデをいつも通りからかいながら俺達は城の外に出る。
城の広い庭にティオルで降りたから、今もここら辺で待っていると思うんだが。
おっ、いたいた。
「おーい、ティオル待たせたな」
「ん? 主か! 待ちくたびれたぞ!」
見渡すと庭の中心に人間姿のティオルが待っていた。
「ごめんごめん、ちょっと話し込んだわ。その代わり、しっかり健治を任せて来たから」
「そんな事はどうでもいい。我には関係ない話だからな。それはそうと、主に客が来ているぞ」
「ん? 客?」
そう言って俺の横の後ろの方を指す。
指された指の先、俺から少し離れたベンチに誰か座っている……って!
「クレア!? あいつ来たのか!!」
クレアだった。
ベンチに座りながら少しうとうとしている。
あいつ、留守番しておけって言ったのにこんな早く約束破るとは! 舐め切ってるな!!
そんな怒りを顔に表しながらクレアに近づいて行く。
「……ん? あら、ご主人様、やっと帰って……って! どうして怒っているのっ!!」
「おう、クレア。どうして怒っているってか? おいおい? 本気でわかってなかったらお前はただの馬鹿か!!」
「い、いや、違うわよ! 見て! わたしの後ろを! 連れて来たの!」
「何言ってるんだお前は……」
そう言われてクレアの後ろを見ると、
「……ユリア! それにエミリも!!」
2人がベンチに座っていた。
次回の更新は来週水曜日の昼ごろです。
年末なので予定ですが、もしかしたらずれるかもしれません。延期になった場合は申し訳ないです。




