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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第4章「最強の勇者」

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6話 教えを乞うのなら



「俺に剣を教えて下さい!!」


「……は?」


 健治のその言葉に俺は一瞬意味がわからず変な声が漏れる。


「頼む、春原さん! アンタしか教えて貰える人がいないんだ!」


「いやいや待てって! 俺はお前に教えられないぞ!? 教えられるレベルじゃない!」


 もう一度言われたことで意味が分かり、直ぐ様否定する。

 俺が人に教えるなんて無理だろう。


「レベルじゃないって? 春原さんより強い人はいないでしょ! 同郷のよしみで教えてください!」


「春原さん。私からもお願いします!」


「そうです! 健治に教えられるのは貴方しかいない!」


 連れの2人も頭を下げた。

 しかしそんな事をされても、


「だから、待てって! 俺ではまともに教えられないから!」


 どれだけお願いされても、無理な物は無理だ。

 ろくに訓練もしてない『大賢者』と『剣聖』などの強い能力で覚えた事しかない俺が人に教えるとかありえない。

 と言うか、急にどうした? 俺の事を嫌っていたんじゃないのか?

 

「春原さんでまともに教えられなかったら誰がいるんですか!」


「そうです! 私達強くなりたいんです!」


「あれからずっと考えてこの答えが出たんです! お願いします!」


 いや、そんな事言われてもな……それに、めんどくさい。

 俺は今からドルグランドに行かないといけないし。


「少なくとも今から俺達は出かけるんだ。だから忙しい」


「でしたら戻ってきたら稽古をつけてください!」


 確かな理由を言っても引き下がらない健治達。

 どうにかしてこいつらを引き離したい。


「だから無理だって! 他を当たってくれ!」


「そこをどうにか!」


「「お願いします!」」


 それでも引き下がらないか。


 どうする?

 このまま放っておいてもいいが、こいつらが強くなる事は悪い事ではない。別に魔王を俺が倒すとしても同郷がその辺のモンスターにやられたとなれば後味が悪い。

 ここまで関係を持ってしまったら、何か考えた方がいいんじゃないかと思うぐらいには関係性はもう出来上がってしまっている。

 しかし、とにかく俺は教えられない。

 じゃあどうするか……。


「春原さん!!」


 ……待てよ、強くなれればいいんなら、俺じゃなくてもいいのでは?

 強くて剣が使えると言えば……ティオルでもいいんじゃないか。

 そう思いさっきから無言だったティオルに声をかける。


「強かったらいいんだろ? だったら、ティオル! お前が教えてやってくれ」


「嫌だ。我は強い奴しか興味がない。それに強くさせるのではなく、我が強くなりたい!」


 腕を組み、顎を上げ、即答された。

 と言うか、俺の頼みを初めて断られたんだが。


「そうか……」


 俺はすぐにティオルに教えさせる事を諦める。

 ティオルの態度を見れば一目瞭然だ。

 全く動く気配がない。と言うか健治達に全く興味をなさそうにしている。

 意思は固そうだ。


 ティオルが無理だったら、アルデか……。


「嫌じゃ」


 そう思いながらアルデを見ると嫌そうな顔をして、何も言う前に断られた。

 じゃあ無理だ。

 もう教えられる奴がいない。


 さて、どう断ろうか。

 そんな事を考えようとした時、


「……あっ」


 ……いや、いい奴がいるじゃないか!

 アルデの顔を見て思い出した。

 剣のエキスパートで強くて、人間で! 教えるのに最適な奴が!


「春原さん! どうか! お願い……」


「わかった」


 俺は答える。


「っ!! 本当ですか! だったら帰ってきてから……」


「いや、とにかく強くなれたらいいんだろ? だったら最高のいい奴を紹介してやる!」


「紹介……ですか?」


「ああ。凄いやつだぞ!」


 俺はある人物を思い浮かべながら、そう返事をした。





「妾が来た!!」


 巨大で装飾が飾られた高級そうな扉を幼女が蹴り飛ばし王の間に入る。

 その扉、この前直したばかりなのに、やめてやれよ。


「お、お師匠様っ!?」

「アルデミス様!?」


 何事だと扉を見た王の間にいた2人は幼女の顔を見るや否や、驚きの色に染まる。


「む? どうした、妾が来たら悪いか?」


「っ!! いや、そう言うわけではないですよ! おいジェミラ茶を入れさせろ!」


「はっ! すぐに!」


 ジェミラが周りのメイド達に指示を出す。

 すぐさまメイド達はアルデが座る椅子、机を用意してお茶の準備をする。


「うむ、悪くないのう」


 そう言いながら用意されたティーカップに口をつけるアルデ。


「……で、お師匠様。今日はどう言うご用件で?」


 寛ぎ始めたアルデに恐る恐る声をかけるグレイバルト。

 そこまでびびらなくてもいいんじゃとは思うが仕方ない。アルデが来るたび面倒くさい事を命令されるからな。

 まあ、今回は俺からの命令でもあるけど。


「そうじゃった、そうじゃった。寛ぎかけたわ。ジェミラ其方も中々やるのう!」


「ははっ、アルデミス様に褒めていただけるとは!」


 そんなアルデに対して俺は横から口を出す。


「アルデそんな事はどうでもいいんだ。早く本題に入るぞ」


「なんだと! そんな事とは! アルデミス様にお褒めい……」


「うるさいぞジェミラ! しかと聞くのじゃ小僧! 単刀直入に言うと、こいつらを鍛えてやって欲しいのじゃ!」


 アルデは背後に立っていた健治達を指差してそう言った。


「はぁっ!?」

「はあっ!?」


 驚く声が二重に聞こえた気がする。

 一つはグレイバルト。そりゃ急に言われたら驚きもする。しかし、健治も驚くのはどうなのだろう。


「ど、どういう事ですかアルデさん!! 俺がこいつに剣を教えて貰えと!?」


「む? 嫌なのか? だったら仕方ない。貴様の話はこれで終わりじゃ」


「えっ? どう言う……春原さん!」


 そりゃ俺に回ってくるよな。


「そのままの意味なんだが。剣を使う最強の男と言えば『剣聖』リルグレイハルト・バルシエルだろ? そいつが目の前にいるんだったら教えてもらうのが1番だろ?」


「……っ!! 剣聖!! こいつがですか!」


「貴様人間風情がグレイバルト様をこいつ呼ばわりだと! 身の程を知れ! この方は歴代の剣聖の中で最強と言われたお方だぞ!!」


 健治の発言に怒りながらちゃっかりグレイバルトの自慢をするジェミラ。どれだけ好きなのだろうか。


「そ、そうなのか……」


 その事に衝撃を受ける健治達。


「元魔王が剣聖なのか……」

「考えられない、よね……」


 そりゃ驚くのも無理もない。

 魔王が剣聖だったって何とも言えないよな。それが事実なので仕方ないから、受け入れないといけないが。


「まあ、今まで色々あったけど、俺が剣を教えられないから、選択肢はこれしか残らない。つまり、グレイバルトに教えてもらうしかないわけだ」


「で、でも……」


「考えてみろ健治。こいつは剣聖だ。この世界の人間の中で最も剣の扱い方が強い男だ。こんなチャンスは普通ないと思わないか?」


「っ! そ、そうですね……」


 俺の言葉に悩み始める健治。


「健ちゃん……」

「健治……」


 周りの2人は健治の事を心配そうに見る。


 まあ、剣聖と言っても元魔王だ。俺にとっては元魔王なんてただの付属品みたいなものだけど、こいつらにとっては何度も負けた相手で、殺されかけた相手だ。戸惑うのも無理はない。

 普通だったら酷な事をするなとは思うが、強くなるには1番の近道だと思う。

 それに何度も負けた分、こいつの実力はわかっているだろう。


 まあ、グレイバルトを紹介した1番の理由は俺の手から離れる事なんだけど。


「……わかりました」


 そして健治は顔を上げて俺を見る。


「強くなるにはそれしかないのでしたら春原さんの言う通りにします。実際こいつの強さは身を持って知ってますから」


 その表情は渋々と言うよりかは、決心した様な顔だった。


「そうか、なら良かった。で、グレイバルトの方はどうだ?」


 健治が決めたら後はグレイバルトの方だ。

 多分嫌がると思うが、嫌がれば無理やりにでも教えさせる。アルデを使うだけだが。


 そう思い問いかけると、


「……わかった。いいだろう」


 何も抵抗なく首を縦に振った。


「だろうな。普通は嫌だよな。元魔王が勇者を育てるなんて聞いた事ないし。でも、残念ながら教えないといけないんだよなー。じゃあ、アル……えっ? 今なんて言った?」


「いいと言ったのだが?」


「……っ!?」


 その言葉に俺達は驚き、一瞬固まった。



 

     

次回の更新は水曜日の昼ごろです。

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