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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第4章「最強の勇者」

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4話 思いと感情



「あの店美味しかったです! この街にもあれだけ美味しい店があるんですね」


 あの後の料理も全てユリアの舌を満足させた様だ。


「ああ。普通はあまり通らない裏通りだから見つかりにくいけど、いい店なんだ。とにかく使ってる物が新鮮なんだよなー」


「成る程、でしたらあのマスターは『アイテムボックス』持ちでしょうか? 宮廷料理人に連れて来たいぐらいですね」


「だろ? 気に入ってくれて嬉しいよ」


 少し暗い店内。

 窓際の席に対面で座り、ユリアと俺はお酒が入ったグラスを持ちながら話す。


「はい。それにこのお店も素敵ですね」


「ありがとう」


 お酒が入ったグラスに口をつける。


 あれから店を移動して、お酒をメインで扱ういわゆるバーに来ている。

 いつも行ってる屋台の居酒屋も心置きなく飲めるから好きだが、デートと言ったらこういうお洒落なお店がいい。一度来ただけだが1発で気に入った。普段使いはできないがこう言う時は役に立つ。

 と言うか、この世界にこんなお店がある事に驚いているぐらいだ。


「お兄さんって色々知ってるんですね。この店は大通りに面しているのに私は知らなかったです」


 そう言ってユリアは窓の外を見る。

 窓から見える街並みは、街灯が少ない夜の街なのに所々家や店から光が漏れ、落ち着いた良さがある。


「そうなんだ。一応ここは有名らしいけどな。割と人がいるだろ」


 店内を見渡すと多いわけではないが客は入っている。

 前の世界みたいに人気店は常に混んでるわけではなく、店で外食する人はお金を持ってる人しかいないわけで、これが人気店レベルらしい。大抵の人は外食と言えば屋台になる。

 値段設定も割と高いし、屋台とは比べたらいけない。


「そうですね。街にこんないいお店があるとは思いませんでした。お忍びでエミリと来たいですね」


「それはありだな」


 今はまだ忙しいが、エミリがゆっくりできるようになったら是非来て欲しい。


「でも本当に今日一日は驚きっぱなしでした。最初の店からここまで知らない事ばかりで。私の方がこの国に長くいるのに全然知らないものなんですね」


 少し興奮気味にユリアが喋る。

 お酒も進み気分が良くなってるんだろう。テンションが高く少しホワホワしてる。

 酔ってるユリアなんて滅多に見れないよな。


「まあ、ユリアが知らないだろう、気にいるだろうと思った所をピックアップしたつもりだったからな」


「私の気にいる所ですか……ありがとうございます。……うれしいです」


「お、おう」


 素直にお礼を言うユリアに驚く。

 それは別に素直な事に驚いたわけじゃなく、ユリアが見せた表情がいつもとは違う純粋な笑顔に見えたからだ。

 お酒が入っていると表情も緩むのだろうか。

 いつも我慢しているユリアにはこう言う日があった方がいい。

 そんな事を思いながらユリアを見ていると、少し顔を赤らめながらお礼を言った。


「お兄さん。本当に今日はありがとうございました」


「どうした改まって」


「改まったわけじゃないですよ。本当にただ感謝を伝えたかっただけです」


「そんなに?」


 俺の言葉にユリアはグラスに口をつけてから話し始める。


「そんなにです。だって私、他人にここまでよくしてもらった事が殆ど無いんですよ?」


 少し重そうな話を急にされて驚いたが、冷静に。


「そうか。でも、エミリが色々してくれてるんじゃないのか?」


「エミリは別です。あの子は家族みたいなものですから。この前本人も言ってましたからね」


 その話に対して、この前の事を思い出しながらユリアは嬉しそうに笑う

 そしてぽつりぽつりと話始める。


「薄々気が付いているかもしれませんが、私はそこまでいい階級の貴族ではないんです。だからエミリの側近になれた事は本当に凄く運が良かったんです」


「そうなのか?」


「はい。普通は私の階級では王女の側近なんてなれません。エミリ自体の口利きがあってなれたわけです」


 知らない体で相槌を打ちながら俺はユリアの話を聞く。

 この前エミリと話して知っているが、エミリには口止めされているし、俺が知ってるって事はおかしい事になる。


「だから側近になった事で周りからはいつも嫌な目で見られていました」


「そうか……」


「そのタイミングで「幻想記」の能力が他の貴族に知られてしまえば、確実にこの国でもいい様に使われたでしょう。だから隠していたのですが……」


 そう言われると、その可能性があったか。

 出世できると思っていた俺は浅はかだったな。


「その能力もこの前周りにバレてしまいました。そして貴族の間でも陛下にも私は使える人間だとして見られる様になりました。私の失敗です、自分の能力を過信しすぎました」


 能力を認めてもらうのはいい事なのだろうが、こんな認め方は嬉しくはない。それにこの国の奴らなら使えない頭で使い潰されて無茶苦茶にされる落ちが見える。


「でも、エミリのおかげで、今の私はこの能力がバレても何もされずにいます」


「今、現国王派とエミリ派で別れてるもんな」


 実は今のエンスラッドは国王と王女とで派閥争いがされている。


「そうですね。でも、陛下はエミリに対して強く言えませんから、エミリの方が優勢みたいですけどね」


「へぇ、そんな感じか」


「はい。エミリには助けられてばっかりです」


 少し微笑みながら言ったが、ユリアからしたらエミリは助けて貰った大切な人だ。何が何でも次は私が助けると意気込んでいる様に見える。

 でも、前みたいに一歩引いてる様な雰囲気は感じられない。

 家族って言葉がかなり大きい事だったのかもしれない。


「でも……そんな事を考えるのは悪い事かも知れませんが、こんな状態でも、昔よりも今の方が楽しいんです」


 罰が悪そうに言うが、それでも嬉しそうな顔をする。


「今の私があるのは、あの事件があったからですから」


 そしてユリアの目が真剣になる。

 そのふとした顔つきが魅力的に見え、


「今ここにこの私がいるのは、エミリと……お兄さんのおかげです」


 俺の目を見てそう言ったユリアの瞳が月の光を反射した様に綺麗に光る。


「そ、そうか。そう言ってもらえると嬉しいな」


 その真剣な目にたじろいでしまう。

 こんな状況嬉しい限りなのに、可愛い子に見つめられる事でたじろぐほど女性に免疫がない事に焦る。


「本当にここにいるのはお兄さんに助けられたから、エミリが来てくれたからです。色々と迷惑をかけてしまいましたが、この結果になったのは……本当に自分勝手ですけど、自分勝手な言動になってしまいますけど。これで良かったと、本当に良かったと思えるんです」


 そう言うユリアは満足そうにとても嬉しそうな笑顔で話す。

 そして、


「お兄さん、私を助けてくれてありがとうございました」


 そう言ったユリアの顔は今日一のとてもいい笑顔だった。


 ……本当に、良かったな。


「いいよ。俺は初めて会った時からいつもユリアには世話になってばかりだったから、恩返しできるからしようと思っただけで。それに……いや、そうだな。うん、ユリアを助けたかった気持ちは大きかったよ」


 歯切れは悪いが、そう言ってユリアを見る。


「ふふっ。そういうところですよ。……だから、あの時の報酬として約束をお兄さんとした事は……良かったと思えました」


 そう言うユリアの頬が紅くなる。

 その反応に釣られて俺も顔が熱くなってる気がする。


 待て待て、ここまで正面から素直に言われるともう確実だと考えてもいいんじゃないだろうか。

 さっきから……いや、一日中頭の中でぐるぐると回っている、今日のデートという報酬がどういう意味なのか。

 今日1日ユリアと一緒にいる事ができる権利として約束したって事は、そういう事だと思っていたわけで、


「お兄さん……まだ時間、遅くないですよね」


「……っ!」


 ユリアが俺を見つめ続ける。

 やばい。ここまで積極的なユリアはもしかすると一生見れないかもしれない。

 それにここまでされるとどれだけ鈍感な人間でもわかる。


「そ、そうだなー……」


 そうだなーじゃないだろ!

 それにユリアがここまで言っているんだ。男としてここで何もできないのはかっこ悪い!

 1日一緒にいる事は本人の了承を得ているんだし、何をするかなんて想像はつく。前の世界なら犯罪かもしれないけど、この世界なら合法だ。言い方はどうかと思うが、この世界では成人している年齢なんだ。

 ここは男らしく行くしかないだろう!!


「と、とにかく夜も遅いし宿に向かおうか。ちゃんと宿は取ってあるから」


 噛むな俺!


「……はい。今日1日って約束ですから」


 ユリアの顔が少し恥ずかしそうに頷く。


 や、やばい。かなり緊張してきた。

 心臓の音がユリアにも聞こえてるんじゃないかぐらい激しく聞こえる。


「じゃあ、お会計してくるからちょっと待ってて」


 お酒も進んだし、いい感じのタイミングだ。

 クレープから始まり、このバーでここまでの反応。今日の俺はかなり頑張ったと褒めてやってもいい!


 そんな事を思いながら俺は席を立とうとして……








 ……窓の外が光り、爆発音が響き渡った。


「……は!?」


「な、何ですかっ!?」


 ユリアが身体をびくりとさせて驚きながら立ち上がる。それに釣られて俺も立ち上がる。

 周りの客達もそれぞれの反応をしながら、窓の方を見ている。


 なんだ、敵襲か!

 それもかなりいいタイミングで、ムードもへったくれも無くなったぞ!!

 どこのどいつがこんな事をしやがった! 見つけ出してどうしてくれようか!


 そう思ったのも束の間……。


「……見つけた」


 そう、遠くで聞こえた気がした。


 その瞬間、


「っ!!」


「ぬあぁぁぁぁっ!!」


 そんな声と共に壮大に何かが窓を割って飛び込んできた。


「なんだ!!」

「きゃぁぁぁっ!」


 すぐにユリア側に駆け付け、割れた窓の破片から咄嗟にユリアを守りながら、飛んできたモノを見る。


「あぁぁぁっ! あんのっ! くそサキュバスが!」


 そう叫びながら起き上がったのは見た事がある幼女。


「あ、アルデ!?」


「アルデちゃん!?」


 アルデだった。




     

飛び込んできた幼女、アルデ登場。とにかくスノハラの邪魔をしたい事が伝わる登場シーンですよね。


次回の更新は来週水曜日の昼ごろです!

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