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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第3章「封惑の魔王」

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30話 帰還



 しかし俺達の中で話がまとまったと思ったら、健治が凄い剣幕で割り込んできた。


「待て! 待ってくれ! どういうことだ!? そいつがグレイバルト!? あの「剣魔の魔王」グレイバルトか? あいつは春原さんが倒したはずじゃ!?」


「えーっと、倒したけど、人間に戻ったっていうか」


 そうか、こいつには何も言ってなかったか。


「人間? 魔王が人間ですか!?」


 うーん、この機会だから全部言うか。


「そうだ、人間。と言うか元々人間らしい。それにお前のよく知るこのアルデも元魔王の「不死の魔王」アルデミスだ。今は人間だけど」


「妾は人間ではないのじゃ!」


 まだ言ってるよこいつ。この前自分で人間だって言ってただろ。


「……は? アルデさんが元魔王アルデミス……? え? どういうことだ……?」


 健治がパニくっている。もう一つ二つ加えるか。


「ちなみにこのドラゴンのティオルも元魔王で、ここに居るサキュバスのクレナリリスも元魔王。そう言ったらここに4体も元魔王がいるのか。凄いな」


 今思うと俺の周りに元魔王が多すぎる。なんだこの元魔王率は。

 いや、出会う奴ら全員魔王なんだけど?


「ほ、本当ですか王女様……ユリアリア様……」


 なぜか助けを求める様にエミリとユリアを見る健治だが、エミリもユリアも「私もその反応わかるよ」みたいな顔をして頷いた。


「……マジか? マジなのか? いやいや、どこの勇者が魔王を配下にする話がある? ここまでそろっているっておかしいだろ……」


 しかしまだ現実を受け入れない健治。何に対して拒否をしているのだろうか。

 そこで健治が何か納得したように頷いた。


「……そうか、なる程! 春原さんも打ち損じたんですね? これは俺にチャンスが! 任してください! ここは俺が倒して見せます!!」


「おい、健治? 何言ってるんだお前?」


 なに明後日の方向の解釈をしてるの? 情報が多すぎて頭がショートしたかの?

 エミリもユリアも驚いてあわあわしているだろ。


「魔王グレイバルト! この前の苦渋、晴らさせてもらうぞ!」


 そしてグレイバルトに啖呵を切った。

 早い早い、展開が早いから!


「ん? なんだ、偽勇者か? 今はお前に構っている余裕はない。今はこの状況をどうするかでいっぱいなのだ!」


「そうか、抵抗はしないか。なら、俺が倒してやる!」


 そして健治が剣を抜き、グレイバルトに向かって走り出す。


「ケンジ様!?」

「ケンジ様まって……!」


「宝剣開放!! 『グランダム』!」


 健治の宝剣が光を放つ。


「『雷光の断斬』!」


 そして剣に雷を纏わせ、振り下ろした。


「鬱陶しい!」


 しかし、グレイバルトは何も剣技も魔法も使わずにただ剣を上げて、健治の攻撃を受け止めた。


「なっ!?」


「久々に振ったがやはり手に馴染むな、絶剣「バルグレイド」は!」


 そう言って健治の剣を弾き返す。


「おい、グレイバルト手加減しろよ?」


 ここまで来たら俺はこの戦いに手を出す気はないが、一応殺されてはいけないので釘を刺しておく。

 もしもの時は俺が間に入るけど、勝手に動く健治にもお灸は必要だろう。それに今の健治とグレイバルトなら別に健治が圧倒されるわけないと思うが……。


「勇者の言葉だ、殺しはしないが久しぶりに絶剣を振るのだ。切り刻むが文句はいうなよ?」


 グレイバルトが一瞬だけ剣を振った。


「『瞬閃連漸』!」


 そして剣を鞘に納める。


「なっ……っ?」


 その瞬間、健治がその場で崩れ落ちた。

 それは一瞬。傍から見たらただ剣を鞘に納めただけ。しかし、その1秒にも満たない間にグレイバルトは100回もの斬撃を健治に食らわせていた。


「がはっ……」


「普通は微塵切りからの消滅だが、かすり傷程度にしてやったぞ?」


 いや、手加減しろって言ったけど手加減できてねーだろこれ!?

 すまん健治、俺が悪かった。これは可哀そうすぎる。

 いやでも、まだ生きているみたいだ。何も千切れていないし、掠り傷レベルじゃないけど、殺していないって事は手加減はできていたのか。でもこれ回復させないと死ぬだろ。

 健治に駆け寄って回復させる。


「『聖女の灯火』!」


 俺はこの前覚えた上級回復魔法で健治の傷を癒す。するとすぐに目に見える傷が消えていく。

 俺が撒いた種だし仕方ないよ。


「……うっ」


 良かった、回復魔法を覚えておいて。

 そして健治の意識がすぐに戻る。


「……す、春原さん、すみません……」


「いいけど、あまり勝手に元魔王に戦いを挑まない方が良いと思うぞ?」


 そう言って健治から離れる。


 今の俺の中では健治に対する事については許している。と言うか今の状態を見て許そうと思った。

 それに同郷でそれも高校生だからもあるが、こいつに手柄を横取りされたのは全て俺の「村人C」というマイナス能力のせいだとわかったからだ。

 それでも自分の成果にしていたのは思う所があるが、高校生だと思えば納得してやろうとも思わなくもない。俺の高校時代よりかは幾分まじめだからな。


 それに今の俺はあのクソ爺の神からチート能力を奪ってきたからいいものの、普通だったら俺は健治より弱かっただろうと心のどこかで考えてもいる。まあ、それは気にしても仕方がない事なので気にしないが。


「くそっ……」


 後ろで健治が何か呟いたが聞かないことにする。エミリとユリアが駆け寄っていから任せよう。


「って事でグレイバルト、この国の事は頼むぞ?」


「いや、まだ決めかねて……」


「何を言っておる。さっき良い返事をしたであろう? 剣も返した。男なら二言は無いはずじゃろ? あっ、強制じゃがな」


「……はい」


 グレイバルトが俯いてしまった。


「ははははっ! 貴様も面白い事になったな!」


「笑うなティオルリーゼ! くそ! お前があの時来なかったら剣を奪われず、この城に来ることが無かったのだ! 全ての元凶はお前のせいだぞ!」


「何を言っている? 「煉獄」は元々我らドラゴン族の物だぞ? ただ返してもらっただけだ。逆に絶剣が戻ってきてよかっただろう?」


「この剣は元々隠してあったのだ。オレの物だ!」


 そしてティオルリーゼとグレイバルトがいがみ合う。


「ふふっ、グレイバルトもご主人様に良い様にやられたのね。まあ、わたしは思ってもいない方向に転んでいるけど楽しいわ」


「黙れサキュバス。貴様の配下がオレの剣を勝手に使っていたのだろう? その事は許さんからな?」


「そう。別にいいけど、せっかく国の統治について教えてあげようと思っていたのに? 止めようかしら?」


「なん、だと……?」


「どうする?」


 クレナリリスの言葉にグレイバルトは折れる。


「……わかった、すまん、今言ったことは訂正しよう」


「ふふっ、貴方も素直ね」


「おい、サキュバス、あまりグレイバルト様に馴れ馴れしくするな!」


「なに? 妬いてるのかしら? 可愛いわねリッチー」


「や、妬いてなどいるか!」


「ふふっ、可愛いわ」


 こいつら魔王同士は仲がいいんだろうか。

 でも、楽しそうに話している所悪いがもう用事も済んだし帰ろうと思う。


「って事で後は任せたグレイバルト。エミリ達と話してこの国はエンスラッドと良い交易ができる国にするから、また来るわ。一旦今日は帰るけどさ」


「はっ? もう帰るのか? 説明が全くされて……」


 俺の帰るという言葉にグレイバルトが反応するが、ティオルに言葉を遮られる。


「主帰るのか! 我は腹が減っている! 帰りにワイバーンでも狩って帰ろう!」


 ティオルがドラゴンの姿になる。


「ユリアー、エミリー、帰るぞー! 健治を連れてきてくれ」


 ユリアとエミリに声をかけてティオルに乗る様に促す。

 健治はまだ落ち込んでいるがユリアとエミリが背中を押してティオルに乗り込んでいく。


「待ってくれ、詳しい説明を……」


「そういう事じゃ小僧。後は任せた! スノハラ腹が減ったのじゃ。妾は串カツを食いたいのじゃぞ。いや、最高に美味い串カツを話しておったじゃろ! それを食わせるのじゃ!」


「おー、そんな事も言ってたよな。ロシアン串カツを食わせてやろう」


「なんじゃそれは! 楽しみじゃ!」


 ふはははっ! お前はこれからもだえ苦しむがいい。俺を笑っていた罰だ。


「お師匠様!? いや、待ってくださいよ!」


「あっ、そうそうグレイバルト。外の奴らもどうにかしておいてくれよ? ティオルが瀕死にしている奴らがいるから」


「そういえばそうだったな。我も中々魔力の使い方が上手くなったと思うぞ?」


「おい、クレナリリスも乗れ」


「あら、わたしもいいのご主人様?」


 そして俺達はそそくさとティオルに乗る。


「待て待て!? 何もかもがわからないんだが! おい……!」


 グレイバルトが叫ぶが、俺はそれを無視する様に。


「頼むわー。じゃ! 急ぐから!」


「は!? ちょっと待て! ちょっと待て勇者!!」


「じゃーなー」


 そしてティオルが飛び上り天井がない城を出た。


「待てーーーっ!!」


 グレイバルトが何か凄い顔をして叫んでいたけど仕方ない。適材適所という言葉がある。いや、何が適材適所だって感じだけど。

 まあ、後で見に来るし今日は任せていいだろう。

 それにエミリとユリアがお疲れだ。早く帰さないといけないからな。


「お兄さんよかったんですか、任せていて?」


 グレイバルトに丸投げしたのをユリアが大丈夫かと聞く。


「あれだけあの騎士団長に信頼されていたら大丈夫だろ。それにこの世界で最強の剣聖なんだし、もと国王だ。心配する要素がない」


「そうですけど、国を統治するのは生半可な事では無いですし……」


「まあ、気にしすぎるのも良くないし。またエミリと打ち合わせをすればいいだろ? どっちにしても行くことになるから」


「そうだね。後々打合せすればいいけど、明後日ぐらいに行かないと大変な事になると思う。王がいない国は絶対成り立たないから、今回グレイバルトをあの場に置いたのがぎりぎりの判断だったかな。まあ、今日は疲れているからユリアと城に帰りたいよ」


「それもそうですけど……」


 ユリアが納得した様だ。


 さて、俺も忙しくなりそうだな。


「ねえ、エミリ……」


 するとユリアがエミリに寄り添うように向き直った。

 それを見て俺は少し離れる。二人っきりにはできないけど、少しぐらいは空気を読もう。


「どうしたのユリア?」


「エミリ……本当に今日はありがとう」


「うーうん、お礼なんていう事じゃないよ」


「どうして? 本当に助かったんだよ? エミリが来る前、本当にダメだって思った瞬間があった。でも、その瞬間エミリが来てくれて、助かるって、安心できた。エミリが来たのはすごく驚いたけど、本当に嬉しかったから。だから、お礼を言わせて?」


「そう言ってくれると凄く嬉しいな。でもね、私にとってはユリアを助ける事は当たり前の事なんだよ?」


「当たり前の事って……?」


「その言葉のまま。当たり前。ユリアを助ける事は当たり前なの」


「……えっ、どういうこと……」


「ユリアは私の家族だから。家族を助けるのは当たり前のことでしょ? 助ける事に理由なんてないよ。私が助けたいから助けただけ。私がしたい事をしただけ。だからお礼なんていらないんだよ?」


「……ぇ」


「……っ!?」


 そのエミリの言葉を聞いたユリアの目から涙がこぼれた。


「えっ、ユリア!! どうしたの!?」


 急に泣き出したユリアに驚きエミリが寄り添って肩を支える。


「家族か……」


 ユリアがぽそっとつぶやいた。


「ユリア!? ごめん、私なんか変な事言った!?」


「……だいじょうぶ……大丈夫だよ。ありがとう……本当にありがとう……!」


 そう言って涙を拭いたユリアはとてもいい顔で笑っていた。




    

これで無事にユリアを救出出来ました。良かった。

でも当初の目的のゲンダルフィンを潰してないですね。王がいなくなったので潰れたのも当然ですが。


次回の更新は金曜日の昼ごろです。

3章終わりまで残り2話!

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