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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第3章「封惑の魔王」

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28話 素朴な主食



 その瞬間クレナリリスが俺に向かって抱きつく様に飛び込んできた。


「ちょっ、何!? 何なの! 何なんですか!?」


「お、お兄さん!?」

「おにーさん!!」


 待って待って!? 胸が、柔らかいものが! 色々幸せだけど、ユリアが! エミリが! 見てるから!!


「じゃなくて! なに!? この変貌ぶりはなんだよ!!」


「美味しいの……!」


「は……?」


 何が、何が美味しいって……?


「美味しいのよ! 貴方の! 貴方の魔力が!! 凄い、素晴らしいわ! ご主人様の魔力って濃いのに素朴な味で大量なの! わたし初めてだわ。ここまですんなりと受け入れられた魔力って。普通強い人間の魔力は濃くてその人間の色が出てくるの。でも、ご主人様の魔力は濃くて量が多いのに飽きない味。何というか……そう! 人間で言う主食! パンみたいなもなの!」


「……っ!」


 やばい、何かこいつ興奮している! 目が怖いから! ピンクじゃなくて赤く光っているから!

 吸われてる! 魔力が吸われているんですけど!?


「だからわたしはご主人様の魔力が欲しいわ!」


 俺に抱き着いたままクレナリリスがそう言った。


「待て待て待て!! 普通契約した主人の方が魔力を奪う方だろ!? それが逆になってるって……」


「何を言ってるの? そんなの誰も決めてないわよ? ただリヴァイアサンは魔力が豊富過ぎるから奪わないけど、普通の属獣には魔力をあげるのが主人の役目よ?」


 何を言ってるのって顔で俺を見られても、そんな事は知らないから!


「おいアルデお前! こんな事になるとは言ってなかっただろ!」


「はははははっ! あはははははっ! 笑える! 笑えるのじゃ!!」


「こ、こいつ……!!」


 爆笑してやがる!!


「サキュバスだからそうなるかもとは思っておったが、本当になるとは思わなかったのじゃ! ふははははっ!」


「アルデお前!!」


「ご主人様の魔力ってまだ尽きないのね? 凄いわね!」


「おい! 触るな! 触ってるとお前に魔力が吸われる!! ティオルも見てないでどうにかしてくれ!!」


 ティオルにも助けを求めるが……。


「それがサキュバスの習性だからな? ドラゴンが肉を食うのと同じだから仕方ない」


「仕方なくないだろ!!」


 訳わからん事を言うティオルはもういい!


「エミリ、ユリア。どうしたら……」


 エミリとユリアに助けを求めるが……。


「おにーさん……叫んでるけど嬉しそうだよ?」


「ですね……」


 俺の状態を冷静にツッコまれる。


「違う! 違うから!? これは男性なら誰でもこう言う顔になるって! っじゃなくて! 俺は望んでる訳じゃないから!!」


「へー、そうなんだねー」


「まあ、お兄さんならそう言いますよねー」


「だから違うから!!」


 俺が弁明しても流される状態である。


「ねえ、ご主人様? もっと頂いてもいいかしら?」


「よくないわ!!」


 抱きついたまま離れないクレナリリスを無理やり引きはがす。


「あら、残念」


 あっ、感触が……。って違う! そんなの思ってないから!!


「ふふっ」


 そんな俺の中身まで見通すようにクレナリリスは妖艶に微笑む。

 くそ! ユリアとエミリにこんな場面を見られるとは思わなかったよ! こいつを召喚するんじゃなかった!


「でも男じゃから、本当は嬉しいんじゃろ?」


「……まあ、本当はな…って! 何言わせるんだ!!」


 変な事を言ったアルデの頭を思いっきりしばく。


「お兄さん……」


「おにーさん、やっぱり……」


「違うから!!」


 爆笑しているアルデの頭を掴み上げる。「痛いから離すのじゃ!」とか言う声は耳に入れず、俺の怒りの矛先をアルデに向ける。

 絶対ロシアン串カツを食わしてやる! そしてロシアン串カツに当りは入れん! 全てはずれにしてやる!


「でも無事に終わってよかったよ。ね、ユリア」


「そうですね」


「そうですねって、俺の状況はっ!?」


 反射的に突っ込んでしまったが、ユリアとエミリは嬉しそうに笑っている。


「あははっ。それも込みでユリアを助けられたから、私からしたら満足な結果だよ?」


「ふふっ。そうですね。ありがとうございます、お兄さん」


「お、おう」


 いい笑顔で2人からお礼の言葉を貰った。

 そんな顔で言ったら何も言えないじゃないか。


「で、おにーさん。この国はどうするの?」


 エミリが唐突に話を変える。


「どうするって?」


「今、この時点でこの国の王がいなくなった訳でしょ? このまま放って置いたら誰かがするだろうけど、それまでに替わりになる人を置かないと崩壊するだろうね」


「エミリの言う通りですね。この国を仕切る者がいないのは危ない事です。それにこの国は見たところ一枚岩です。他の国より王に固執しています。それはこの国の動きを見たらわかります。ですよね、悪魔?」


「そうなのか?」


 ユリアにつられて俺はクレナリリスを見る。


「そうね。この国は物理的な力を持っているのが王なの。つまり王が1番強いわ。それはわたしがここに来る前からの事だけど」


「……どう言う事だ?」


「元々この国の王になるには強さが必要なの。逆に強ければ王になれる。つまり物理的な強さ、腕っ節が必要ってことね」


 ここは脳筋の国のなのか?


「そこで長い間剣聖の家系が王座に就いていたのよ。自身の力だけで成り上がってきたわけ」


「待て、剣聖家系って……」


「バルシエル家って言ってね、代々「剣聖」を出していたわ。普通は受け継がれる事は無いのだけど、あの家は特別だったのかしらね。最後の剣聖はリルグレイハルト・バルシエル。ご主人様が持っている剣の持ち主よ」


 色々突っ込みたいことがあるけど、やっぱりそうか。剣聖って言ったらあいつしか思い浮かばないからな。


「知ってる、グレイバルトだろ?」


「あら、知っていたのね。まだ若い魔王だけど、王を辞めて魔王になった人間だから有名なのよね。もう一人似た様な魔王もいるけど」


 有名って、魔王側でも人間から魔王になるのはおかしい事なんだな。

 それにしてもあいつ王だったのか。魔王関係なしに人間の国王でもあったって……。


「話を戻すけど、だからこの国を掌握するのは容易かったわよ。リルグレイハルトがこの国を出て行ってから100年ぐらいかしら? 王がいなかったから簡単だったわ」


「じゃあお前らは100年程この国の王をしてたのか?」


「そうね、片手間にだけど。別に国を統治するのは難しくないのよ? わたしにかかれば魔法でなんとでもなるし、力を示したら直ぐに王になれるわよ。ご主人様なら余裕かしらね」


「……いや、俺はならないけどさ」


 やばいなこの国。強ければ王になれるって。


「100年も悪魔が統治していたのですか……。考えられない……」


「……だね、本当にやばかったんだねこの国……」


 ユリアとエミリが疲れ切った様に頭を抱えていた。俺とは考える所が違うみたいだけど。


「じゃあ待てよ……? あいつがこの国から出て行かなかったら良かったんじゃないか? あいつがいたらお前らもこの国に来なかっただろうし、あいつのせいか?」


「そうね、グレイバルトのせいね。だからわたしは悪くないのよ? 空いた穴を埋めただけだから。別に国民を手駒として扱ってた訳じゃないのよ? 戦争での死人は少ないし」


 そう言われればそうかも知れないけど……。別に悪くない国って言えばそうなのか?


「騙されないでくださいねお兄さん。この国は戦争ばかりしている国ですよ? 自国の犠牲者は少ないですけど、他国の犠牲者は多いですから。それにエンスラッドに喧嘩を売るような国です。私も攫われてますし」


「そうだよ、おにーさん!」


「そうだったわ。一瞬騙されかけたわ」


「ふふっ」


 クレナリリスが「あら、残念」と言いながら笑う。

 こいつ、やっぱり契約しておいてよかったわ。


「で、どうしたらいいと思う? クレナリリスを置いて行くか?」


 ユリアとエミリに尋ねる。


「……今のところはそれが最善策かと思うんですけど、悪魔ですしね……」


「ユリア、それもあるけど悪魔って言っても、もうおにーさんの従属だからどうとでもなるんじゃないかな? 今まで統治していた知識は必要だし、悪いやり方だけど魔法を使って混乱しない様にもできるしね」


「……それはそうですね」


 エミリの言葉にユリアが納得する。

 まあ、そう言う手もあるな。

 しかしそれに口を挿む様にアルデが手を挙げ、


「なら、グレイバルトを連れてくれば良いのじゃ!」


 無責任にそう言った。




    

まさかのとばっちりが来るグレイバルトさん。


次回の更新は月曜日の昼ごろです。

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