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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第3章「封惑の魔王」

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27話 メリットとデメリット




「いや、していないわよ……? わたしと貴方はまだ契約完了はしていないわよ?」


「どういうことだ?」


 アルデの言葉をクレナリリスが否定する。


 まだ契約が終わっていない?

 俺の戸惑い方に、クレナリリスに少し余裕が戻る。


「あら、知らないのかしら? わたしはまだ貴方に召喚されただけ。召喚したら契約完了するなんて理不尽でしょ? だから召喚後に契約をする事が普通なの。今は仮契約ってところね」


 少し上から目線で言われたのがイラッとしたけど。成る程な、理不尽か。そりゃそうだな。


「あー、そうじゃったな。確か仮契約中、一定期間までに契約しなければ、契約破棄になるんじゃったな? スノハラ、後は其方の血で契約は完了じゃ」


「アルデミスっ!!」


 アルデが確信を言ったみたいで、クレナリリスが怒る。

 いや、怒っている意味が分からない。アルデはお前の敵だからな?

 しかし、まだ契約完了ではないのか。どうしようか。


「ねえ、おにーさん」


「ん?」


 そう思いながらクレナリリス達を見ていたらエミリが俺の袖を引っ張った。


「この悪魔はどうするつもりなの? このまま置いておくわけにはいかないよね?」


「そうだな。悪魔だし元魔王だからな。見逃すことはないだろ」


「そうですね。このまま生かしておけば後々危険になると思いますし」


 そう言ってエミリとユリアがクレナリリスを睨んでいる。


「そうだな。だったら殺すしかないな」


 相手がどれだけ美人でもサキュバスで悪魔だ。別に後を引くことはないだろう。

 それにユリアを攫いエミリもユリアも傷つけた敵の親玉だったわけだ。こんな感じで話しているが、俺にも思う所は無くはない。

 そう思いながら、俺はクレナリリスを見た。

 しかし俺達の言葉を聞いていたのか、クレナリリスがなぜか勝ったかの様に俺を見て笑っていた。


「ふふふっ! 本当に何も知らずに召喚したのね? ふふっ、ふふふっ! 無理よ? それは無理なのよ」


「は? 無理って何が?」


 何を言っているんがこいつは?

 俺がこいつを殺せないとでも思ってるのか? 人型だとしても悪魔だ。何も躊躇する気はない。


「貴方はわたしを殺せないわよ? わたしを殺せば貴方も死ぬわよ、串スラさん?」


「……は? どういう意味だ?」


「その反応……ふふふっ! これはわたしにも可能性が見えたわ!」


 生気が戻った様にクレナリリスが妖艶に笑う。

 こいつ自分が死になくないからそんな事を言っているのか?


「おいアルデどういう意味だ? お前何も言ってなかっただろう!」


「いや、妾もそれは知らなかったのじゃが……」


「ふふっ、この魔法は特別なのよ。極大魔法であり最上の悪魔でも召喚できる魔法よ。考えてみて? 召喚しただけで契約に近い状態になるなんて普通ありえないでしょ? 召喚された方にメリットが無いわ。それに召喚者だけにメリットがあるのは悪魔の契約としておかしい事なの。悪魔はいつでも等価交換なのよ。つまり召喚された方にメリットが無いなら、召喚者にデメリットがあるって事よ。そうでしょ、アルデミス?」


「うーむ、契約魔法ならそれも一理あるのじゃ」


 アルデが考える様に悩み、納得したように頷く。


「だから普通、属獣を召喚する時は本体は魔界に置いたままなのよ。というか、本体を魔界における魔獣を従属にするのが普通。殺されたら契約者自身も死ぬわけだから。だからこそリヴァイアサンを選んだのよ。普通悪魔を召喚しようとする悪魔なんていないけどね。悪魔はそんな事できないから」


 待て待て待て! マジかよ!? 知らずに使ったら危なすぎるだろこの魔法!? と言うか、俺ってかなり危ない状態なんじゃないのか!?


「おい、だったらどうしたらいいんだ!?」


 こいつを殺さないなんて一体どうしたら……。


「それはそうね、わたしと今すぐ契約破棄をすればいいのよ!」


「いや、契約すればいいのじゃ」


 勝ち誇った顔でそう言い張るクレナリリス。

 でもその言葉にかぶせる様にアルデが言い張った。


「アルデミスっ!?」


「そうだぞアルデ! 悪魔とそれもユリアの能力を狙って殺しにかかったやつと契約するなんて!」


「そうよ! 串スラさんの言う通りよ! わたしと契約しても何も意味がないわよ!」


「何を言っておる? 殺せないなら契約するしかないじゃろ?」


 そう言ってアルデが笑う。

 こいつ笑いながら言ってやがるぞ! 絶対今の状況を楽しんでるだろ!


「おいちゃんと考えろ! アルデ他に何か考えが……ん?」


「そうよ! 他に……どうしたの串スラさん……?」


 アルデを否定しようとして、一瞬さっきのアルデの言葉が過る。


 ……いや、待てよ? 冷静に考えてみたら契約破棄した方がデメリットが大きいんじゃないか?

 クレナリリスは契約破棄ができる様な事を言いかけていたけど、契約破棄をすればこいつがどう動くかはわからない。例えば契約破棄した瞬間にこいつを倒すって手もあるけど、こいつならもしかしたら逃げられる算段があるのかもしれない。

 それに、俺がこいつと契約してもデメリットが思っているより無い気がする。逆に契約することでこいつを見張ることができるし、ユリアに手を出せないようにできる。

 まあ、命が繋がってるみたいだけど、元魔王が簡単に死ぬ事はほとんどないだろう。同程度の魔王か、俺レベルが現れないと死なないだろうし。


「そう考えると……契約した方がメリットになるのか」


 俺の言葉にクレナリリスがもう一度体をビクッとさせ、俺を睨んだ。


「はぁっ!? 何言ってるの貴方!? さっきまで契約しない雰囲気だったでしょ!?」


「いや、契約破棄した方がデメリットが出るなーって思ってさ」


「待って! それは本気で言ってるの!?」


「まー、うん」


「うそでしょ……」


 俺の言葉にクレナリリスの顔に笑顔が無くなった。

 しかしそれも束の間、顔を上げて作った笑みで俺の顔を見る。


「ね、ねえ、串カツのスライムさん。考え直さない? 契約破棄した方がいいわよ? わたしが居ると邪魔でしょ? わたしは元魔王よ? 人間の天敵なのよ? 側に居ることで周りからなんと言われるか……」


 さっきと違うアプローチが来たが、


「んー、いや、アルデもティオルもいるし? 同じじゃね? それに魔王かどうかなんて周りの奴がわからないだろ」


「……っ! そ、そうね……だったら、貴方「大賢者」を持っているわよね? なら、わたしの持っている魔法を全て教えてあげるから、そうしたらわたしは用済みでしょ? 別に側に置いておくメリットが無くなるわよ?」


「んー、いや、さっきの戦いで主要な強い魔法は覚えたし」


「……っ! ほ、他にもわたしが知っている魔法は沢山あるわ! 伊達に悪魔の中で最強なわけじゃないわ!」


「うーん……」


 そこまでメリットがある提案じゃないよなー。


「あっ、もしかしてユリアリア様の事を気にしてるのでしょ? 当たり前すぎて気にしていなかったけど、ユリアリア様の事なら諦めるわよ? 絶対にもう手を出さないと誓う……いや、契約するわ! どう? 貴方には悪くない契約だと思わない?」


「なるほどな……」


「ふふっ、でしょ? なら……」


「うーん、一瞬それも悪くはないかな? って思ったけど、はっきり言ってユリアの事を諦めると言ってもそれは口約束でしかないよな? ここで俺が契約解除したらそれこそ、また狙いに来る可能性もあるだろ? お前にとって「幻想記」って能力は都合がいいわけだから」


「しない! 絶対にしないわ! 契約は破らない、悪魔は契約を重んじるの。そこは悪魔のプライドがあるわ!」


「うーん、なんか信じられないなー」


 悪魔とはな何なのかわかっていないけど、本当に破らないか、信じる事ができないな。悪魔だし。


「ねえ、串スラ……いいえ、串カツのスライムさん! 絶対に契約は守るから!」


「って言ってるけどどうするユリア?」


 俺と契約破棄をしよう必死に口説こうとしているクレナリリスの言葉をそのままユリアに投げかける。

 はっきり言って、俺が許してもユリアが許さなかったら意味がない。


「ゆ、ユリアリア様っ! わたしはもう貴方を絶対に狙わないわ!」


「……」


「ねぇ? だから串カツのスライムさんに契約破棄を……」


「駄目ですね」


「……えっ?」


 クレナリリスの口から間抜けな言葉が漏れる。


「えっ? って何を言ってるんですか? 私が許すなんて有り得ませんよ? 私を攫って殺そうとしたのですよ? それを許せる人間がどこにいますか?」


「その通りだよ! あり得ない!」


 ユリアの言葉にエミリが賛同する。


「本当は目の前で消滅させて欲しいのですが、それをするとお兄さんが死んでしまいます。今の状態で殺すとお兄さんも巻き添えになるんですよね。それに契約を解除してから殺そうとしても逃げられる可能性があるなら、仕方ないですが貴方は生かすしかないみたいです。だからお兄さんがいいなら契約して欲しいです」


 ユリアが真剣な顔で俺を見る。それに対して俺は即答する。


「俺はいいけど」


「では、お願いします」


 ユリアが頭を下げる。


「って事で、アルデ、契約するわ」


「じゃあ血を一滴、此奴のどこでもいいので垂らしたら完了じゃ」


「ま、待って! ねえ、待ってよ! 考え直して! お願いだから!!」


 クレナリリスがまた何か言い始めたが無視をする。もう決まったことだ諦めろ。


「契約したら終わりよ! この「魔卿召喚」は普通の召喚じゃないのよ! 召喚した悪魔と契約すると契約解除するのもそう簡単にはできないわ!」


 何か気になる事を言っているが……。


「……じゃあ、どうしたら契約解除できるんだよ?」


「そ、それを聴きたかったら契約破棄をするって誓いなさい?」


「はい。じゃあ、契約だな」


 この状況で何を言っているのだろうか。


「だから待ってって!」


「おいおい、クレナリリスさん。今の状況で俺と駆け引きするなんて馬鹿なのか? それにあの丁寧な口調が砕けきってますよ。あの常連さんの様に丁寧に話してくれないと」


「こんな状況で話せるわけないでしょ!!」


「そりゃそうだな、って事で契約します」


 俺は剣で左手の人差し指を少し切る。


「ちょっと本気!? アルデミス! ティオルリーゼも! 契約したら貴方達もわたしと一緒にいないといけないのよ! 考え直すように言って!!」


「まあ、仕方ないじゃろ?」


「そうだな。貴様が増えても何の問題もないからな」


「どうしてよ!!」


「よし。動くなよ」


 必死なクレナリリスの前に立ち、少し血が滲んでいる人差し指を向ける。


「待って、待って!!」


 そして俺は血がついている左手の人差し指をクレナリリスの額につけた。


「待っ……あぁぁぁぁぁぁっ!! 魔力がぁぁぁぁぁっ!!」


 クレナリリスが俺から流れる魔力を嫌がる様に叫ぶ。

 そこまで嫌がらなくてもいいと思うんだけど……。


 そして10秒ほど叫んだ後、


「あぁぁぁぁぁっ……」


 クレナリリスは力が抜けた様に俯いた。

 そして俺からクレナリリスに流れていた魔力が止まり、それを期に道として何か繋がりのようなモノが出来たように感じた。


「はあ、はあ、はあ……」


「よしこれで完了だな」


「うむ。終わりじゃ」


 無事に完了したようだ。

 なんとなくだけどクレナリリスの存在がわかる。

 契約するってやっぱりこう言う感じなんだな。なんか新鮮。


「なあ、クレナリリス。これでお前は……」


 そして俺はクレナリリスを見た。しかしクレナリリスの表情に言葉が詰まる。


 そいつは、潤せた瞳と紅葉した顔、そして荒い息をして俺を見ていたからだ。


「……さま」


「……は?」


 ちょっと待て、こいつ今なんて……。


「ご主人様……」


「っ!? お、おい……どうし……」


「ご主人様ぁ!!」


「……っ!!!」


 その瞬間クレナリリスが俺に向かって抱きつく様に飛び込んできた。




       

あくまでも悪魔との契約は等価交換なので、メリットとデメリットはあります。

でも、契約破棄した後に一瞬でクレナリリスを倒せるとは言い切れないのがスノハラです。


次回の更新は土曜日の昼ごろです。

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