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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第3章「封惑の魔王」

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25話 悪魔召喚




「くっ! 仕方ない、このまま逃げるしか……リヴァイアサン!!」


「ゴアァァァァッ!!」


 リヴァイアサンが叫けび、急に身体が重くなった。

 動けないほどではないが鬱陶しい。


「我の重力魔法で貴様らも動かないだろう」


「あぐっ……」


「あぁっ……」


 ……そうか、俺は大丈夫だけどユリアとエミリには耐えきれない程の重力みたいだ。

 床が軋み崩れ始めているほどの重力の様だ。


「ティオル!!」


「了解した!」


 ティオルが俺の意図を理解したのか、ドラゴンの姿に戻りユリアとエミリの上にかぶさる様に立つ。


「あ、ありがとうございます、ティオルちゃん」


「ありがと、楽になったよ」


「ああ、主の命令だからな」


 ユリアとエミリは少し楽になった様だ。

 俺が「絶永結界」を使ってもいいけど、今俺は魔力を溜めている。クレナリリスに逃げられるわけにはいかない。


「なっ!? 何故貴様らは動ける!!」


「いや、動けるもんは仕方ないだろう?」


「くっ! マイマスターの命令だ! 潰れるがいい!!」


 リヴァイアサンが物量で押しつぶすかの様に俺達の元に迫ってくる。この城自体を壊しながら迫りくる巨体。


 その隙にクレナリリスはリヴァイアサンの影に隠れて見えなくなった。


「アルデ!!」


 先に飛び上がっていたアルデに声をかける。

 見えなくなったのはまずい。


「わかっておる! 『絶対零度』!」


 アルデが全てを凍らす極大魔法を放ち、リヴァイアサンが凍り始める。


「ゴッ、ガァァァァァァァァッ!!」


 しかし、完全にはその巨体を凍らすことは出来ない。


「……その程度、我に食らうか!!」


「ふん、貴様に氷系統は効きづらいとはわかっておる。その巨体と魔力耐性なら今の魔力で少しでも凍らせたらいいのじゃ」


 そいつの一瞬動きが鈍くなった時、俺は構えていた剣を振り下ろす。


「『龍轟一閃』!」


 その一撃はリヴァイアサンを真っ二つにする。


「グガァァァァッ……!!」


「よし、アルデその隙にクレナリリスを!」


「わかっておる!」


 俺が言うまでにアルデがリヴァイアサンを飛び越えてクレナリリスを追っていた。

 それに続いて俺も飛び上がろうとしたのだが……。


「……なっ!?」


 リヴァイアサンの切れたはずの身体が繋がり始め、何もなかったかの様に元に戻った。


「だから貴様らの攻撃は食らわんと言ったであろう!!」


 再生能力か? 全く効いていない?


「では、我から攻撃をするぞ! 滅びのな……」


「『雷皇鉄鎚』!」


 リヴァイアサンが攻撃をしようとした瞬間、激しい雷が轟き、その巨体を貫いた。


「グガァァァァ……ッ!!」


 リヴァイアサンがアルデの雷の極大魔法を至近距離で食らって叫ぶ。


「ふん! 魚風情が黙っておれ! スノハラ、クレナリリスはもういないのじゃ! 一瞬で逃げおった!」


「まじか! 逃したか!」


 あの一瞬で逃げるとは。


「スノハラがサキュバスで驚いているからじゃぞ!」


「うるせー! 俺は魔王玉を奪おうと思ってたんだよ」


 手元にある魔王玉を振り回しながら叫ぶ。

 急に動けば警戒されるから掛かった振りをしてたんだよ!

 決してサキュバスだからあんな事やこんな事が頭に過ったからでは、決してない!


「まあいい。とにかく先にこのリヴァイアサンをどうするかじゃ?」


 そうだ。こいつをどうするかも重要だ。

 俺の一撃が効かなかったのは初めてだし、かなりの強敵だ。ちょっと焦ってるかもしれない。


「こいつが実体であれば食い甲斐もあるのに、我は腹が減ってきたぞ……。残念だがこいつを食えないのか……」


 後ろでティオルが何か言ってる。

 そう言えばクジラっぽくて食えそうに思うけど。

 どこまでお腹すいているんだって感じだ。今そんな事を考えるタイミングじゃないんだけどな。

 それより、実体じゃないってのが気になる。


「トカゲの言う通りじゃ。こいつは魔力の塊りじゃから殺すことはできんぞ? 本体は魔界にいるからのう」


 そう言いながらアルデが俺の横に降りてくる。


「魔力を尽きさせるしか方法はないが、リヴァイアサンは自然の厄災じゃからな、魔力はほぼ尽きん」


 まじか、なんだそのチートモンスターは。


「妾だけでも1週間不眠不休で戦わないと底を尽きさせられんかもしれん。今の妾では無理じゃな」


 そうか、アルデが戦っても1週間かかるのか。いや、待てよ? だったら俺もティオルも加われば1日ぐらいで消滅するんじゃないか?


「じゃから、スノハラもトカゲも合わさればいいのじゃ」


 アルデも同じことを考えていた様だ。


「貴様ら! 何ぺちゃくちゃと話しておる! 貴様らは我がマイマスターの為に消滅させると言って……」


「『竜王の咆哮』!」


「ガァァァァ……ッ!!」


 リヴァイアサンの胴体に風穴が開いた。それもすぐに元に戻ろうとするのだが、ティオルが撃ってしまった。


「うるさいぞ魚が! 我は腹が減っているのだ! 鬱陶しいぞ!」


「……な、なんだと!! そんなことで我を侮辱するのか! 我は貴様より長く生……」


「『竜王の咆哮』!」


「ガァァァァ……ッ!!」


 またティオルが撃った。

 せっかく閉じ始めていた風穴がもう一度開く。


 わかるよ、腹が減ったらイライラするのもわかるよ?

 でもこのタイミングで言うって、どれだけ食いしん坊キャラなんだよ。


「貴様! 我に何をするのだ!」


「ふん! 知らんわ!」


 よし、なんかティオルが荒ぶっているから俺も加勢しよう。


「我を馬鹿にしおって! 貴様から消滅させてやるわ!!」


 そしてリヴァイアサンがティオルに向かって何かしようとした時。


「『雷皇鉄鎚』!」


「ガァァァァ……ッ!!」


 アルデが極大魔法をまた撃った。


「き、貴様らぁぁぁぁっ!!!」


 リヴァイアサンが怒りあらわにするが。


「『龍轟一閃』!」


「ガァァァァ……ッ!!」


 俺もやってしまった。

 ちょっと全力で放っても死なないのは新鮮かもしれない。


「き、貴様、らぁぁぁぁっ!!!」


「『超炎熱砲』!」

「『破滅の死雨』!」

「『竜王の咆哮』!」


「ガァァァァ……ッ!!!」


 ダメージは通っているのは通ってるのか。アルデの言う通りこれを続けたらいつか消えるって事はわかった。

 よし、全力でやろう。


「き、貴様、らぁぁぁぁっ!!!」


「『超炎熱砲』!」

「『破滅の死雨』!」

「『竜王の咆哮』!」


 それから俺達は魔力が尽きるまで攻撃をし続けた。



「……きさ、貴様ら……」


 流石の魔界の最強のモンスターも再生が追いつかなくなり、あちらこちらから煙が上がり、傷も再生しにくくなっている。もうそろそろ消えそうだ。


「さあ、消えるまでやるぞ?」


「ふははははっ! 妾の全力をここまで撃っても消滅しないとは、流石リヴァイアサンじゃ!」


「はははっ! 我の攻撃も耐えるとは攻撃しがいがあるぞ! しかし早く消えろ! 腹が減って仕方がない!」


「く…………」


 うちのバトルジャンキー共が楽しそうに笑っている。

 普通ここまでしても倒せなかったら嫌になると思うんだけど、こいつらは逆に全力で戦う事がないから今を楽しんでいるんじゃないだろうか。


「ねぇ、ユリア……何これ……?」


「わかりるよエミリ。本当に何これって感じだよね……」


 後ろでユリアとエミリが呆れてるのか戸惑っているのかわからない声を上げている。


「くそぉぉぉぉっ!! マイマスター! すみません!!」


 耐え切れなくなったのかリヴァイアサンが叫んだ。


「すみません!! 耐え切れません! 戻ります!!」


「えっ!」

「むっ!」

「あっ!」


 そう言った瞬間、リヴァイアサンが消えた。


「おいアルデ! あいつ消えたぞ!!」


「そうだぞ、幼女! 消滅するまで攻撃出来るんじゃないのか!!」


「知らんわ! 妾もあいつと戦うのは初めてじゃぞ!」


「……まあ、耐え切れませんって言ったから、辛かったんだろな」


 あれだけフルボッコにされてたらどれだけ回復すると言っても気が狂うだろう。


「しかし、クレナリリスも逃して、リヴァイアサンも逃してしまったとか、どうにかならないのか?」


「そうじゃのう……」


 内心リヴァイアサンはどうでもいいけど、クレナリリスを逃したのは痛い。

 またユリアを狙うって公言していたし、出来るならどうにかしたい。常に俺がユリアを守っていられるわけではないからな。


「あいつは賢いからのう……。次は確実に妾達にバレないタイミングで仕掛けてくるじゃろうな」


「だろ?」


「そうですよね……」


 アルデの言葉にユリアが下を向く。

 どういう気持ちかはわからないが、自分が狙われるのは耐えられないだろう。


「大丈夫だよユリア! その時はおにーさんがまた助けてくれるよ!」


「ああ、絶対助けるけどさ」


 そう言ってエミリの顔を見たらエミリはなんとも言えない感情で笑っていた。

 楽観的に言ってるけどエミリもしっかりわかってるだろう。狙われるってのはかなり辛い。


「やっぱり魔王玉を取ろうとせずに先にクレナリリスを倒しておいたら良かったか」


 そう言って魔王玉を取り出す。

 サキュバスと知るまでは人間だと思っていたからな、少し抵抗があったのは確かだけど。


「……それじゃ!!」


 魔王玉を取り出して失敗したなと思っていた時、アルデが叫んだ。


「え? それじゃ! って何?」


「それじゃ、それ! その魔王玉じゃ!」


「え? これが何か関係あるのか?」


「あるもないもあるに決まっておる! それを使ってあいつを召喚したらいいのじゃ!」


 え? 何言ってるのこいつ?


「何言ってるのこいつ? みたいな顔をするでない! そのままの言葉通りじゃ!」


 いや、そのままの言葉通りって……。


「仕方ないのう。説明すると、さっきクレナリリスが使った魔法「魔卿召喚」は魔界にいるモノを召喚する魔法じゃ」


「うん。わかるよそれは」


 リヴァイアサンが出てきた時にユリアとエミリが魔界の王の属獣って呟いていたからそれはわかるけど。


「あの魔法は召喚するモノの魔力が詰まった物が有れば召喚できるのじゃ」


「おう」


 で、どういう事だ?


「普通は魔力が大量に詰まっている物など誰にも渡す事はない。じゃからリヴァイアサンはあいつの従属という事はすぐにわかる。それに召喚されたモノは召喚者の従属となるのが普通じゃ。まあ、普通は召喚する前に従属することになるのじゃがな」


「……ん? つまり?」


「つまり、その魔王玉は元々クレナリリスのモノじゃったと。そして、さっきの魔王の元に宿ったが、魔王玉を取り出し自分のものにしようとしていたわけじゃ。なら奴なら、他の魔王に渡す時に魔王玉に魔力を残して渡していたはずじゃ。そうすることでより強い魔王を作り出し最終的に自分に見返りが返ってくるようにできるじゃろう?」


「なるほど……?」


「そう言えば、あのセルゴラウスもクレナリリスの魔王玉のお陰で洗脳系の魔法が使えるようになったと言ってました」


「なら、確実じゃな。魔王になる事で強くはなるが、他の能力が使えるようになる事はない」


 へー、そうなのか。

 いや、はっきりわかってないが。


「じゃから、その魔王玉にはクレナリリスの魔力が詰まっているという事じゃろう」


 ふむ……って事は、この魔王玉を媒体にして上手くいくと言うわけか。


「なるほど。よし、じゃあ、やってみるか!」


 可能性があるならやってみよう。

 俺は左手に魔王玉を持って魔力を集中する。

 あの魔法はもちろん「大賢者」さんが覚えてくれてました。


 そして目の前に魔法陣が出現する。


「『魔卿召喚』!」


 そして魔王玉と魔法陣が光り、黒い光の柱が立つ。

 今度の光の柱は人1人分ぐらいの大きさだった。


 そして、徐々に光が消えていき……。


「な、なにこの光……って……えっ?」


「お疲れ様でーす」


 目の前に薄い水色の髪とピンクの目をし、豊満な胸を揺らしたサキュバスの常連さんが、目を見開きながら立っていた。




     

召喚された元魔王。


次回の更新は火曜日の昼ごろです。

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