表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第3章「封惑の魔王」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/91

19話 「幻想記」

ユリア視点です。



「たまたま貴方が「幻想記」を持っていたの」


「……」


 待って、意味がわからない。

 元々「幻想記」を狙っていた? そこまで能力の名前まで知って当りを付けられるものなの?

 でもそれが本当なら、私がたまたま持っていたから攫われた?


「……だったら、エミリは関係ないってこと……?」


「ふふっ、そうよ。あの王女様には全く興味を持ってないわ。まあ「巫女」って能力は珍しいけど、私達には使えないから」


「……っ!?」


 まさか「巫女」の能力まで……。

 でも、私の能力より神託を得られる能力の方が国としては必要なはず……意味が分からない。


「だったら、エミリがいない今日を狙った理由は? 城に何かを仕掛けるためだと……」


「今日あの城に行ったのは貴方が王女様と離れたから。あの王女様は能力のせいでかなり感がいいから、私でも近づき過ぎるとバレてしまいそうだったわ。あの「識別視」は厄介ね」


 全て見られてる!?

 だからエミリはこの2人が来た時から常に警戒していたのか。理由はわからなかったけど、とにかくおかしいって言っていた。

 エミリの感は能力によってかなり当たるから私も警戒していたのだけど……。


「でも、離れてくれてとても助かったわ。今日攫えなかったら、半年後まで待たないといけなかったから。ふふっ。ラッキーだったわ」


 そう言って満足そうに笑うクレア。

 エミリと離れたばかりに私が攫われた? でもここまでの動きを整理してみると私を攫うために動いていたとも考えられる。


 だったら、どうする、どうしたら……。


 いや、落ち着け私……!

 エミリが攫われなかった事の方が大事だ。エミリが攫われたら戦争に発展していたけど、私が攫われただけなら何も起こることはない。

 私を攫っても何も能力が手に入るわけではない。私がこの国のために動くわけがない。

 それに私には洗脳系の魔法は「幻想記」のお陰で効きにくい。だからその考えに至っているクレアは万能じゃない。

 今日を逃したら半年後まで待たないとって言葉が引っかかるけど、まだ私に勝ち目はあるはず!


「ユリアリア・フローラウン。貴様のお陰で今日、吾輩が「幻想記」を手に入れられることになった。これで作戦が完成するわけだ!」


 高笑いする王。

 でも意味が分からない。まだ手に入れられたわけじゃない。


「完成する? 何を喜んでいるかわかりませんが、私の能力が貴方達のものになった訳でもない。私が貴方達に従わない限りどうする事もできないはずです!」


「ふふっ。そうでもないのよ?」


 私は確信的な事を言ったはずだけど、クレアは笑う。


「っ!? どういう……」


「そうね……。今日で最後の貴方には特別に教えてあげましょうか」


 そう言ってクレアが一歩私の元に近づく。


「まず「幻想記」の能力は「幻惑系」や「洗脳系」などの魔法の力を大幅に上昇させる能力なのは貴方も知っているわよね」


 知っている。私だって「幻覚」はよく使ってエミリと冒険に行っていたぐらいだ。国にとってどれだけ使い勝手のいい能力だと言うこともわかっている。

 だから私はエミリ以外に話していなかった。


「洗脳系の能力は魔力が強ければ強いほど力が増す。つまり「幻想記」を得る事でこの国の人間ぐらいなら簡単に洗脳できるようになるの」


「どういう、事ですか……?」


 クレアの目を見ると何を言いたいかはわかった。

 独裁政治するという事だ。


「そのままの意味よ。この国の人間は私達、いいえ、陛下の操り人形になるの。素晴らしい事でしょ?」


 ……やばい、この目は本気だ。


「安心して。今でも「幻惑」は使っているのよ? でないとここまでの軍事力を持つ国にはできないですもの」


「今でも使っている……?」


「ええ、毎日欠かさずに」


 理解が追いつかなかった。

 軍事力って事はあの数の騎士達に使っているってこと?

 いや、それを毎日って魔力が持つわけがない。私だって「幻想記」が無ければ「相姿の幻覚」は1度に数人までしか効果が無い、合う人全員には無理だ。

 しかし能力が無い状態で、それも何百、何千なんて不可能に近い。


「ありえない! そんな魔力普通の人間が持っているわけがない! 勇者だったらまだしも、ただの人間が持っているわけ……」


「人間じゃねーからだよ」


「っ!!」


 横から口を出してきたセルドスの言葉がわからなかった。

 どういう事!? 人間じゃない!?


「セルドス!」


「うるせーな! これから死ぬ奴が誰かに話せるわけないだろ! 俺達はな、悪魔だよ、悪魔! まあ、この国の奴らは誰もわかっていないけどな! あはははっ!」


「セルドス! ……まあいいわ。つまりそういうことなの」


「あ、悪魔……?」


 思考が止まる程の衝撃。

 見た目が人間と変わらないこの人達が悪魔……!? もしかしてここにいる人達は全員悪魔……!?

 待って! だったら、この国は悪魔に乗っ取られているってこと!?


 悪魔は「下級悪魔」でもB級モンスターで、それも魔力体制が高い。知性がある分普通のモンスターよりも厄介なモンスターなはず。

 だからこそ普通のモンスターに比べて出会う確率が少ないモンスター。


「それに俺達は人間の能力を奪うことができるんだよ。だからお前の意思は関係なしに俺らがその能力を手に入れられるんだよ!」


「……はぁ、喋りすぎよセルドス。まあいいわ、そういう事よ。残念だけどあなたの意志は全く関係ないの」


「……え?」


 そんな事聞いたことが無い。


「悪魔以外に誰も知らない事よ? 誰でも知ってたらおかしいでしょ?」


 それが本当だったら……。


「……本当に、私の能力を……?」


「そう。貴方を殺して貴方の能力を陛下に移すの。それができるのが今日なのよ」


「……今日」


「今日は満月の日だからな? 俺ら悪魔は1番いい日なんだよ!」


「セルドス! そこまで話す必要はないわよ!」


「うるせぇな! もっとあるぞ! 「幻想記」の能力を使ったらこの国の後は他の国も俺らの操り人形にできるからな! この世界の人間は全て俺らの下僕になるわけだ! なっ兄さん!」


「そうだが……セルドス、喋りすぎだ」


「ごめん、兄さん」


 うそでしょ……。

 私の能力が奪われたらこの世界が終わる? 私のせいで、世界が終わってしまう!?


 その瞬間、私の感情の関係なしに急に涙が溢れてきた。


「あら、泣いちゃったわ。でも、仕方ないわね、殺されるってわかったのだから」


「人間って脆いもんな」


「ふん、セルドス。人間を甘く見ない方がいいぞ? こんな脆い生き物でも特別な能力を持っている事があるからな、使い勝手は悪いが、使う価値はある」


「そうか! 流石兄さんだ!」


 笑いあう男の悪魔達。

 本当に、本当に私のせいになるの……。

 いや、諦めるな! 泣いてちゃだめだ! どうにかして逃げないと!

 でもこの状況で逃げれるの? どうしたら……。


「ふふっ。逃げれないわよ? 貴方をここからは日が沈むまで移動させる気はないわ。私もセルドスも陛下も貴方を見ているから。願うなら、助けを願うしかないわね。でもエンスラッドからここまで馬車で夜通し走っても1日はかかるから間に合わないだろうけど」


「くっ……」


 助けか……いや、あの国は私を助けには来ない。

 何も事情を知らないあの王が私の為に軍を動かすはずがない。あの王は私をエミリから遠ざけたいはずだし、このタイミングを良しと思っているかもしれないぐらいだ。

 それに、軍事力でこの国には勝てないなら、何か理由をつけて軍を出さないようにする。それが国にとって最悪の手であっても、そこまで考えられる頭のいい国ではない。

 あの王を見ていると、なぜエミリがあそこまで賢いのが不思議に思うぐらいだ。


 だから、私が、私自身で逃げないといけない!


「だから、大人しく待っててね……っ?」


「あぁぁぁぁぁぁっ!!」


 私は無理やり掴まれている手を振りほどき窓に向かって走り出す。

 そこまで力が入っていなかったから急な事で振りほどくことができた。このまま窓を飛び出せれば少しの希望が持てる。

 私だって伊達に冒険者をしているわけじゃない!


「はっ! 生きが良いなっ!」


「っ!! きゃぁぁぁっ!!」


 あと少しで窓というところでセルドスに上から地面に押さえつけられ、背中に座られる。


「おいおい、逃げるなよ? 大事な能力なんだぜ? 逃げられると困るんだよ? あとさ、俺から逃げられるわけないじゃん? 生きが良いのは好きだが、面倒臭いのは嫌いなんだよ。大人しくしとけよ?」


「ううっ!!」


 振りほどけない。腕が縛られてると言ってもこの重さぐらい大丈夫なはずなのに、全く動かない……。


「おいおい、動くなって。足でも切り落とすか?」


「……っ!!」


 セルドスが私の足に手を当てる。


「おいセルドス! 足を落とすのは駄目だ。能力を得るために血は必要だと言っただろ? 殴るぐらいにしておけ。あまり血を流させるな」


「そうだったな。ごめん兄さん」


 そして私から降りたセルドスに腕を掴まれ引きずられながら部屋の中心に連れていかれる。


「おい、お前ら、こいつを掴んでいろ! 動くと面倒くさいからな!」 


「「承知致しました」」


 そして男2人に地面に座らされたまま腕を掴まれる。

 もうこれで動けない。ここまでされたら何も手が無い。私も冒険者の中ではランクが高い方なのに、悪魔とはここまで差があるの……。「上級悪魔」でもない、「上位魔将」かそれ以上の力を……。


「だから、ユリアリア様。大人しくしていてくださいね」


 そう言ってクレアがニコッと笑った。



      

次回の更新は木曜日の昼ごろです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ