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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第3章「封惑の魔王」

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18話 狙われたのは

ユリア視点です。



 この2人が行ったと思われる部屋をしらみ潰しに探す。

 しかし、しらみ潰しと言っても一瞬で終わっていく。


「ここにもないのですか?」


「……そうですね、ありません。次の部屋に行きましょう」


 そう言うクレアは扉を開けて見渡すだけで、すぐに部屋を後にする。


「しかしその魔法は本当に便利でございますね。部屋を見渡すだけでわかるなんて」


 クレアは一部屋一部屋覗いて魔法を使っている。

 その魔法を使うと眺めただけで自分の求めているモノがあるかわかるらしい。


「そうですね、便利は便利なのですが、わかるのはここにあるかどうかだけで、どこにあるかまでは分からないのですよ。それに探索範囲はこの部屋より少し広いぐらいですから」


「でも素晴らしい魔法です。流石転送魔法を使えるゲンダルフィンの宮廷魔術師ですね」


 ゲンダルフィンの宮廷魔術師で転移魔法の使い手。そして勇者に同行するパーティの一人であるクレア。

 謙遜をしているが実力はかなりのモノだろう。


「そんなに褒めないでください。わたしはそこまで凄い訳ではありませんから」


 そう言える事が王様に仕えられる証拠なのだろう。


「おい、クレア。さっさと次に行こうぜ」


「そうですね。行きましょう」


 そして次の部屋に向かう。

 あと少しでこの2人がこの城に滞在していた時に訪れた部屋を探しつくすことになる。

 次の部屋も割と広い部屋だ。

 扉を開けるだけで見つけられるならそこまで労力は使わないだろうけど、一部屋一部屋見るだけでも大変だ。


 そしてクレアに着いていたウルマが扉を開ける。


「……ありました! この部屋にあります!」


 するとクレアが声を上げた。

 魔法に反応があった様だ。


「本当ですか! 良かったですね」


「ええ。ですが今からが大変でしょう……」


 クレアが部屋を見ながらため息を吐く様に呟く。


「大丈夫ですよ。私達も探しますから。それでその探し物はどのような物なのでしょうか?」


「ありがとうございます。えっと、指輪なのですが、これと似たような宝石がはまっている」


 そう言って自分の指にはめていた指輪を取って見せる。


「わかりました。では、人海戦術を使いましょう。この部屋はこの城の中でも大きい方ですからね。ウルマ、手が空いている者たちを呼んできてください」


「承知いたしました」


 そしてウルマが人を呼びに行く。


「じゃあ俺は先に探しに入るぞ」


 そう言ってセルドスが入っていく。


「セルドス……では、私達も探しましょうか」


「ええ、そう致しましょう。メリル」


「はい」


 クレアに続き私とメリルが部屋に入る。


「やはり広いですね。クレア様、手分けして探しましょう。メリルはあちらを、クレア様はこちらを、私は向こうを探します」


 部屋に入ると早々に私は指示を出す。

 一番違和感があるのはセルドスだが、何かを仕掛けるとしたらクレアの方だろう。

 そう思い私はできるだけクレアに近い所で作業する様にする。


 そしてそれぞれが指輪を探し始める。


 思った通りこの部屋は広い。数人で探していたら時間がかかるので人を呼んで正解だっただろう。


「おい、クレア。これじゃね?」


 するといの一番に入っていたセルドスが何かを持ちながらこっちに向かって来た。


 ……まだ探し始めて数分しか経ってない。そんなに早く見つかるのだろうか?


「……見せて頂戴」


 私もどんな物なのか見る為クレアの元に向かう。


「……これです! ありました!」


 見つかったとクレアが嬉しそうに声をあげた。

 それは本当にクレアが探していた物だったようだ。

 クレアの手元にあるのは言っていた通り指輪で、紫色の大きな石が入っている。


 しかし、ここまで早く見つかるなんて呆気ない。

 違和感しかないけど……。


「見つかってよかったですね」


「はい。これを無くしたら大変な事になっていましたから」


 ほっとして様に胸をなでおろすクレア。


 ……私の考えすぎなのだろうか。

 別に何も仕掛ける動作をしていなかったし、探し物は本当にあった。

 違和感はあるが、本当の事だったのだろうか。


 とにかく次の行動をしよう。

 探し物は見つかったのだから人手は要らなくなった。


「では、もう人手は必要ありませんね。メリル、ウルマに伝えてきてください」


「承知いたしましが、エミルアリス様がお一人になります。先に誰か声をかけられる者を見て参ります」


「わかりました。そうしてください」


 そしてメリルが廊下に誰かいるか見る為、扉に向かって歩いて行った。


「さて、クレア様。これでゲンダルフィンに帰れますね」


「はい。本当に助かりました。ユリアリア様」


「……え?」


 反射的にクレアの目を見る。

 耳を疑った。あり得ない言葉が聞こえたと……。


「……っ!!」


 その瞬間、身体が動かなくなる。その場から一歩も動けない。声も発せない。

 そして私達の足元が光る。


「『繋結の転移』!」


「……っ!?」


 そう聞こえた瞬間……



 ……目の前が一瞬で変わった。


 そして……。


「ようこそウォンキッドの王城へ。ユリアリア・フローラウン様」


 クレアの顔は美しく、そして魅惑的に笑っていた。


「ど、どういう事ですか!?」


 私の名前を呼ばれた!? エミルアリスではなくユリアリアと……。

 反射的に服のポケットに入れていた石に魔力を流す。


「ふふっ。あとでしっかり話してあげるわ」


 そう言ってクレアが指を鳴らした瞬間、私の意識が遠のいた。





「うっ……」


 意識が戻る。

 ここは……。場所は変わっていない? 意識を失った瞬間の部屋と同じに見えるけど。


 あれからどれぐらい時間が経ったのだろうか。窓の外がまだ明るいけど、太陽は傾いてきている。


「くっ……」


 動こうとしたが動けない?


 ……両手が後ろで縛られている。

 足は縛られてないから逃げる事は出来るかもしれないけど……。


「おっ、起きたみたいだぜ兄さん」


「そうか。おい、連れてこい!」


「「はっ!」」


 私の後ろで声がした。1人は知ってる声だがもう1人は初めて聞く。

 体勢を変えて声がする方を見ると、セルドスと貴族らしい風貌をした少し歳を食った男が座っていた。

 しかし、その眼光には鋭さが見える。


「立て!」


「うっ……!」


 私の所に来た男2人が脇に手をかけ無理やり立たせる様に持ち上げる。

 そしてセルドスと男の前に連れていかれる。


「お前がユリアリア・フローラウンか」


「……っ」


 名前を呼び、立ち上がった男は私の目を覗くように見る。

 その男の目は普通の人間とは違う異様なオーラを放っている。


 その眼光に耐え切れず目を逸らすしかない。


「そうですわ、陛下」


 それに答える様に私の後ろから声がした。

 この声はクレアか……。

 カツカツと足音を立てながら男の横に立った。

 と言うことは、陛下と呼ばれていた……この男がゲンダルフィンの国王、セルゴラウス。

 この国の軍事力の頂点であり、自らも最強の力を持つと噂の男……。


 状況を整理しないと……。

 私を見て疑いもせず私の名前を言ったって事は「相姿の幻覚」は切れている。


 でも、引っかかる……。

 クレアは城でエミリの姿をした私を見てユリアリアって言った。

 あれは……もしかして最初からバレていた?


 だったら、狙っているはずのエミリじゃなくて私を攫った理由が考えられない。

 ……いや、もしかして、最初から私を狙っていたって事?

 でも、私を攫う必要性が感じられない……。


「そうかクレア。なら今ここに、吾輩の目の前に「幻想記」があるのだな?」


「……っ!!」


 座りながらセルゴラウスはそう言った。


「その通りですわ、陛下」


 思考が一瞬停止する。


「ふははははっ! そうか! よくやった、セルドス、クレア!」


 低い笑い声が広い部屋に響く。


 ちょっと待って!?

 どうして私の能力を知ってるの!?

 エミリとお兄さんしか知らないはずの能力を……。


「兄さん機嫌がいいなー」


「当たり前だろう? 今日ここで、求めていた能力を手に入れられるのだぞ。機嫌が悪い訳がない」


「そりゃそうか! あははっ!」


 どういう事!?

 私の能力を知っているって誰かがしゃべったってこと!?

 いやでも、エミリはあり得ないし、お兄さんは名前は知らない。


 だったらどうして私の能力を……。


「安心してくださいユリアリア様。誰も貴方の能力の事は話してませんよ。私が勝手に貴方の能力を見ただけですから」


「……えっ!?」


 私が考えている事を読み取ったかのように、疑問に思ったことが答えられる。

 見たってどういうこと……?


「元々わたし達は「幻想記」を持つ人間を探していたの。それがたまたま貴方だったって事。見た方法は、内緒だけど」


 クレアが妖艶に笑った。




      

次回の更新は火曜日の昼です。

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