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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第3章「封惑の魔王」

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16話 マイナス能力の弊害



 俺のおかしかった意識が元に、晴れていく様だ。


「一瞬で……」


 そして常連さんが俺達の事を見て呟いていた。


「これでいいじゃろ?」


「まじかよ……マジ助かった! あいつマジで何してくれてんのって感じだわ!! いやいやいや! 考えられないって、俺って今までマジで椅子になってたの!?」


 俺は何をしてたんだ。記憶がはっきり残っている。

 今までしていた行動がフラッシュバックする。


「しっかり椅子をしていたのじゃ」


「……やべーな。まじで今までの状態の意味がわからん。今までの行動全部覚えてるし、頭ははっきりしてるのに変な行動取るって謎だわ。「魅了」って怖すぎないか?」


 今までは常連さん……クレナリリスの「魅了」にかかっていた訳だ。

 今の数分の出来事が怖くなる。


「でもアルデ、助かった!」


「これで貸し一つじゃ。後で何か作ってもらうのじゃ?」


「わかったよ。じゃあ、トンカツを作ってやるわ」


 ロシアン串カツは止めておいてやろう。


「ほう、トンカツじゃと? さぞかし美味いのじゃろう! 楽しみにしておこう!」


 満足そうに頷くアルデ。

 しかし、時間をロスしてしまった。早くユリアを助けに行かないと!


「……やっぱりアルデミスも危ないわね。わたしの「魅了」を簡単に外すなんて……。セルドス起きなさい! 『悪魔の祝福』!」


「グッ……ハァ、ハァ……」


 クレナリリスは後ろの壁に崩れていたセルドスに向かって回復魔法を唱える。

 セルドスまで距離があるのにクレナリリスの回復魔法は届くのか。


「流石にわたし1人ではこの2人は無理だわ。少しでも役に立ちなさい」


「チッ……オレに命令すんナ!!」


 回復したセルドスが悪態をつきながら俺たちに向かってくる。


「常連さん……クレナリリスだったな? 覚えたからな! どれだけ美人でも流石に椅子は、俺のプライドが……」


「スノハラ、妾がクレナリリスとやる。其方はまた引っ掛かるからのう? 其方は一瞬であの小僧を潰してユリアの所に行くのじゃ!」


「……おう、わかった」


 そうだ、こんな所で時間を使ったらダメだ。こいつらの思い通りになる。

 仕方ないから、ここは素直にアルデに任せよう。


 しかしセルドスでも、ただの拳では一撃で倒せないのはわかった。

 次は魔法で消滅させてやろう。

 こいつどう見ても悪魔だろうから思いっきり出来る。


「クソ、ガァァァァッ!!!」


 俺に向かって叫びながら来るセルドス。

 瞬時に俺は右手を向けて魔法を唱えようと……。


「避けるのじゃ! スノハラ!」


「ん!?」


 急にアルデが叫んだ。しかし無視して魔法を唱える。

 どんな攻撃だろうとも、それごと俺の極大魔法で打ち消してやればいい!


「『封殺の魔功』!」


「超炎熱砲!」


 俺が唱えた瞬間、セルドスは身を構えながらバックステップを踏んだ。


「グッ!!」


「……ぁ?」


 ……しかし、俺の魔法は発動しなかった。

 そして頭の中に「レジストできませんでした」と流れる。


「ハッ! 発動してねェゾ! 見掛け倒しカ!」


 セルドスがその場でもう一度構え直す。

 そして離れていたアルデが俺に向かって叫んでいる。


「スノハラなぜ避けんのじゃ!」


「いや、知らねーよ! 何が起こったんだ!?」


 ……いや、ちょっと待て、魔法が使えなかった!?


「ふふっ。やっぱりね。そこまでの強さなのに「魅了」が効いてたって事はこれももしかしてと思ったのよね。駄目元だったけどラッキーだったわ」


 そう言って嬉しそうに口角を上げるクレナリリス。


「また簡単に掛かりよって……。其方、もう魔法が使えんぞ?」


「……はっ? ……待て待て待て待て! えっ!? また魔法使えないってわけか!?」


「そうじゃ」


 呆れたようにアルデが吐き捨てる。

 マジか……そんなんばっかだなおい!

 でも俺の油断のせいなんだよな……。アルデに文句言えないぞ。


「とにかくスノハラはその小僧を潰すのじゃ! あいつは妾がさっさと抑えればよかったのじゃ!」


 そう言ってアルデが走り出す。


「……やっぱりそう来るわね。でも串スラの魔法が使えないならセルドスでも勝ち目があるでしょう」


「ふっ、あいつを舐めすぎじゃな?」


「え?」


 なんかアルデが素直に俺を評価しているので、その期待に応えよう。


「ハハッ! 魔法が使えなかったらお前もただの人間だロ!」


 さっきは俺の攻撃にびびってたのに何言ってるんだこいつ?

 魔法が使えなかったら剣技……も使えなかったわ。

 だったら、拳技を使えばいいだけだ。


「じゃ、アルデ先に行くわ!」


「ナニ言ってやがル! オ前はここで死ぬんダヨ!!」


 セルドスが目の前に立ちはだかるが、

 この前ティオルをぶっ飛ばした時と同じ構えで、俺は構える。

 身体中に魔力が巡る。


「……っ!? あの構えにオーラ! 嘘っ!? 極大拳技まで使えるの!? セルドス!!」


「ウルセー! オレがブッコロス!」


「あの馬鹿っ!」


「おい、何を余所見しておる? 貴様の相手は妾じゃぞ?」


「くっ!!」


 さっさと終わらせてユリアの所に行きますか!

 さっきから色々あったが……俺の落ち度もあるが、今度こそ終わらせる!


「四豪連鬼」


 左手を前に出し、右手を引く様に構える。

 そして、


「初撃・げき……っ!!」


 俺が拳技を使おうとした瞬間、扉の向こうから大きな音が聞こえ、扉を突き破り、誰かが吹き飛んできた。


「むっ!」


 その光景に注意を取られて発動しようとしていた拳技が止まる。


「ぬなっ!!」


「アルデ!」


 そいつはその勢いのままアルデにぶつかり、被さる様にアルデを吹き飛ばす。


「……大丈夫じゃ。しかしこやつ……」


「がはっ……。ぐっ……、あ、アルデ、さん……」


「健治か……?」


 それは健治だった。それも全身がボロボロの状態でアルデに被さっている。

 そして俺が健治に気を取られているところにクレナリリスが唱える。


「『封殺の技巧』! ふふふっ! ラッキーだったわ。これで貴方の拳技も使えなくしたわ! ふふっ! これで何もできないわよ!」


 その瞬間、頭の中に「レジストできませんでした」と流れる。

 そしてクレナリリスは嬉しそうに、さっきより少し大きめに笑っていた。


「スノハラまたか……!!」


 アルデが呆れた様に俺を見る。


「これで魔法と拳技は使えないわ。これで足止めはできるわね?」


 ……らしい。

 つまり、俺は拳技も使えなくなったみたいだ。


 ……やばい。それはちょっとやばくないか?

 今はそこまで油断してなかったぞ?

 それにこいつが使う魔法ってズルくないか? 拳技も魔法も使えなくするなんて……。

 かかる俺も俺だけどさ。


「スノハラ、だから言ったであろう! 其方の能力に「面食い」があると! 気を付けるのじゃと!」


「知らねぇよ! そんな事……」


 何言ってるんだこいつ!

 笑いながら言ってた事など覚えてない。それにお前がいたら大丈夫だって言ってただろ!


「美人には弱いと言ったのじゃ!!」


「それかよ!!」


 待て、思い出せ! 確か……美人の攻撃が全部食らうって事だったか!?

 つまり、俺なら普通レジスト出来るはずの魔法も全て受けてしまうという事だと……。

 なんだそれは! まじ意味わかんねぇよ!


「『キュア』!」


 アルデが健治に回復魔法を使う。


「剣もない、他に武器もない。そうなったら其方はもう何も使えないただの人間じゃ! とにかくそいつを早くぶっ潰して行くのじゃ! それぐらいはできるじゃろ! ユリアが危ないのじゃ!」


「くそっ!」


 アルデに怒られてしまった。

 なんで俺が怒られないといけないんだよ!


 ああ、くそっ!

 今回は魔法も拳技も使えないのか! 他の武器もない。ティオルの時と違って何も使えないとか!


「あら、時間もあと僅かだわ」


 窓の外を見ながらクレナリリスが呟く。

 時間が思っているより過ぎている。

 それにあと少しってどういう事だ?


「セルドス、絶対に通してはいけないわよ」


「ハッ! ダマレ! こいつはブッ殺してやル!」


 セルドスが今度は止まらないという勢いで走って来る。

 何も使えないが、今の素のままでもこいつぐらいは十分戦闘不能にはできるだろう。

 でも、あと少しって言う言葉が気になる。


「ぐっ……春原さん! アルデさん! ユリアリア様と王女様が……!」


 少し回復した健治が叫ぶ。

 その言葉に俺とアルデは開いた扉の中を見る。


「……っ!」


 そこにはユリアに被さる様にしているエミリと男が1人向き合っていた。

 そして健治がここまで飛ばされたと言う事で、危ないとすぐにわかる光景だった。


「やばいぞ」


 俺は迫りくるセルドスを無視して王の間に向かって走る。


「オイオイ、急いでドウシタ?」


 しかし、扉側にいるセルドスは当然俺の前に立ち塞がる。


「どけ!」


「ハッ! ドクわけねえだろロ!」


 俺は叫ぶがセルドスは俺の前から距離を取りながら通さない様に動く。

 一撃だ! とにかく一撃で吹き飛ばせばいい!


 俺がセルドスに向かって拳を構えた瞬間、


「バカカ! オ前はオレがブッコロッ!!」


「邪魔だ悪魔風情が!!」


「バグハァッ……!!」


「……っ!!」


 窓が激しく割れ、セルドスが目の前から弾き飛ぶように消えた。

 そして、人間の姿で片足飛び蹴りの格好をしたティオルが目に入る。


「主! 終わったぞ!!」


 その場に綺麗に着地をして、人間の姿のティオルがドヤ顔をしながら立っていた。


「ほら! 外を見てくれ! あれだけいた人間を全て殺さず無力化したぞ!」


 割れた窓の外を指さして、ほめてくれと言わんばかりに胸を張るティオル。

 まあ、頑張ったと思う。

 でも、それとは関係なくナイスタイミングだ!


「よくやった!」


「ふっ! 我にとってこれぐらいは朝飯前だ」


「……クソガァァァァ!!」


 そう言いながら飛んで行ったセルドスが血を流しながら、ティオルに向かって走ってくる。


「なんだあいつは?」


「ティオル! 次はあいつだ! 今度は遠慮しなくていい!」


「そうか! 遠慮しなくていいんだな!!」


 俺は瞬時にティオルにセルドスを任せる事にした。

 さっきティオルが指差した時に窓の外を見たが、日が暮れかけて暗くなり始めていた。

 もしそれがリミットならもう時間がない!


 瞳をドラゴンの様に細くしてセルドスを睨むティオルの脇を通り抜けて扉の前まで走る。


「嘘……あの強化した騎士達を殺さずに無力化してきたの……? 殺したら魔法が発動する様にしていたのに、魔法が発動しなかったって事は……あのティオルリーゼが……?」


「おい、クレナリリス。じゃから、妾が目の前にいるのじゃぞ?」


 あり得ないと言った様な声でクレナリリスが呟いているが目に入れない。

 扉の向こう側でエミリとユリアが危ない状態だ。


「くそっ! 間に合うか!」


 扉に近づくにつれ状況が変わる。

 その場で座って動けないでいるエミリとユリアの前に剣を持つ男が歩いて行く。

 そして、遠くから見ても怪我をしているとわかるエミリとユリア。


「……あいつは絶対ぶっ飛ばす!!」


 しかし本当に危ない状態だ! このままだと、本当に……!!


 全力で走る。「瞬動」を使えば一瞬の距離が数秒かかる。


 でも、魔法が使えない、拳技も使えない。

 それがこんなに鬱陶しい事だったとは知らなかった。後ろの奴らにここまで手間取るとは思ってなかった。

 これで間に合わなかったら自分を恨んでしまう!


「間に合え!!」


 走る。全力で走る。


 たったの数秒がとても遅く感じる。


 王の間に踏み込んだ瞬間、剣を持っている男がニヤッと笑い、剣を振り上げる。

 その瞬間、ユリアがエミリを押し飛ばす。


 そして、エミリの代わりに剣がユリアに向かい振り下ろされた。




   

振り下ろされた剣……。


次回の更新は金曜日の20時頃です。

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