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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第3章「封惑の魔王」

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15話 セルドスとクレア

◇少しアルデ視点です。



「あははっ! ガキのくせに俺の一撃を止めるのか! 思ったよりも楽しめそうだぜ!」


「おい貴様! 幼女の次はガキと言いおったな!! なめるのも大概にした方がいいのじゃ!」


 小僧に蹴飛ばされながら妾は空中で体勢を整える。


「なんだその喋り方、おもしれーな! ババアみたいな喋り方だぞ! あはははっ! 笑えるな!」


「なんじゃと!! 貴様ここまで妾を馬鹿にするとは! ぶっ殺すのじゃ!」


「あははっ! ぶっ殺すだと? できるものならやってみろ!」


 妾も小僧も地面に着地し、お互いに構える。


 この小僧! 確実に妾の堪忍袋の緒が切れたぞ!

 久方ぶりにいら立ちが昇りきっておるのじゃ!

 串カツの串を5000本刺すレベルの怒りじゃ!


「なあ、お前魔導士だろ? だったら俺の方が速いって決まっているから、魔法で戦った方がいんじゃねぇの?」


「ぁ? 貴様は馬鹿なのか? 貴様の速さなどハエが止まっている様なものじゃ!」


 その瞬間、妾は小僧との距離を一瞬で詰め、

 

「はっ……!?」


 妾の速さに面食らっている小僧の顔面に飛び蹴りを食らわせる。


「ぐはぁ……っ!!」


 ふははははっ! 面白い顔じゃ!


「ぐっ! なんだこいつ!? 俺のスピードに……はぁ!? ぐおぉぉっ……!?」


 次は背後に回り小僧の後頭部を掴み、顔面を地面に叩きつける。

 そしてそのまま後頭部を踏みつける。


「ぐぶっ!!」


「はっ! 何をしておるのじゃ? 貴様は接近戦の方が強いのであろう? ほれ立つがよい! ほれ! 立つのじゃ!」


「ぐっ……! ぐぉぉぉぉっ!! ……あぁぁぁぁっ!!」


 ふははははっ! 小僧の後頭部を踏みつけるのは楽しいのう!

 起き上がりたくても起き上がれないのが笑えるのじゃ!


「ほれ? どうした? 起き上がらないのか?」


「なんだこれ……! うご、かねぇ……!」


「何もできんのか? そうか……なら吹き飛べ!」


 一瞬だけ踏んでいた足を離し、小僧の顔面を蹴り上げ吹き飛ばす。


「ぐぁぁぁぁっ……!!」


 そのまま壁に激突した。

 中々いい蹴りだったのではないか? 少しすっきりしたのじゃ。

 それにしてもまだ死んでないとは、割と頑丈な奴じゃの?


「ぐっ……はぁ、はぁ、はぁ、なんだお前……魔導師じゃないのかよ……。ここまで俺が接近でやられるなんて……っ!?」


「『地獄の業火』!」


「ぐあぁぁぁぁっ!!」


「ん? 何か言ったか?」


 何か言ってた気がするが撃ってしまったのじゃ。仕方ない仕方ない。


「アァァァァァァァァッ!」


 まともに妾の「地獄の業火」を受け止めてるが、大丈夫かこやつ?


「くっ、そっ、ガァァァァッ!!」


 小僧が叫んだ瞬間、激しく目の前が光り妾の魔法が消える。


「む?」


「ハァ、ハァ、ハァ……たかが人間にここまでされるとハ……。オレに本気をださせるとはナ?」


 そしてそこには悪魔の風貌をした男が立っておった。……のじゃが、こいつ何を言っているのじゃ?


「元に戻っただけじゃろ? 何を訳のわからん事を言っておる?」


「なんだお前ハ? 俺の姿を元々わかってた様な言い草だナ?」


 何か妾に言っとるが、ただのガキの姿から大人の姿に変わっただけじゃ。


「下級悪魔風情が何を言ってるのかわからんのじゃが? さっきはいなかったが、あの女に操られているただの馬鹿なのではないのか?」


「ハァ? 何を言ってるんダ? あの女ってクレアのことだロ? あの女は便利だから俺と兄貴で使ってるんだヨ! 馬鹿はお前ダ! 俺を悪魔だとわかったのは褒めてやるガ、俺を下級悪魔にしか見えないのは残念でしかないゾ?」


 何か宣ってるが、ぺちゃくちゃと煩いのじゃ。


「喋り方も耳障りじゃ。黙ったほうが身のためじゃぞ? 下級悪魔」


「ガキがオレを怒らせやがっテ! 冥土の土産に教えてやろウ! 俺は「上位魔将」ダ!」


 何を言うかと思えば、そんなことか。


「はぁ……もうよい、煩いのじゃ!!」


 一瞬んで魔力を練り上げる。


「吹き飛べ、『断絶の氷麗』!」


「ハ……ッ!?」


 氷の塊が何か言っていた悪魔ごと壁を吹き飛ばし、元の部屋まで貫通させた。


「な? ただの上級魔法をまともに食らうとか、下級悪魔でしかないじゃろ?」





「……ん? ご主人様、今すごい音がしましたね?」


 隣の部屋で激しい音が聞こえた。あっちはアルデが飛ばされた部屋だ。

 まあ。いつものごとくアルデが暴れまわっているのだろうが。


「あら、そうね?」


「見てきましょうか?」


 俺は動こうとしたが、


「いいえ、貴方はわたしの椅子をしていればいいのっ」


 そう言ったご主人様が俺の尻を叩いた。


「はいぃっ!」


 そして気持ち悪い声が俺の口から漏れる。


「どう? わかったかしら?」


「はいぃっ! ありがとうございます!」


 もう一度ご主人様に尻を叩かれる。ご褒美である。


 俺は今ご主人様の椅子になっている!

 ご主人様に乗ってもらえるなんてなんて光栄な事なのだ!

 このなんというか背徳感に襲われるような感覚、嫌なのにうれしい感覚なのは何だ?

 ご褒美なのか? ご褒美なのだ!


 こんな体勢変態みたいだが、ご主人様の言う事は聞いてしまう。

 ここまで美人な人になら乗られても良いと叩かれても良いと、常識的で理性がある俺でも思ってしまうほど、ご主人様は尊い。


「セルドスが戦ってるのでしょう? あれぐらいの音は出るでしょうね……っ!?」


 ご主人様が俺の上で足組をした瞬間、目の前の壁が爆ぜた。


「……なにっ?」


 ご主人様が近くに何かが飛んできて驚いたようだ。

 ご主人様の驚いた声が聞こえる。どうにかしなければ!


「ご主人様! 大丈夫でしょうか!!」


「あ、貴方はそのままでいいわ。何かが飛んで……」


 飛んできたものを確認すると……知らない男が落ちていた。


「……あら、セルドスじゃないの? こんな所まで飛ばされたのね?」


「グッ……クレアか……」


 セルドスらしい。

 なんか見た目が変わっているから一瞬わからなかった。姿が子供から大人に変わっている。

 それに見た目も人間とは違う悪魔っぽい見た目になっているし。黒い角と羽と尻尾が生えてる。


「私の封印魔法も解けてるみたいだし。どうしたの? あの子に負けたのかしら?」


 ご主人様が見た方向にある崩れた壁からアルデが現れる。

 セルドスはアルデに飛ばされた様だ。

 俺の予想通りアルデの方が強いと言う事だな。


「黙レ……! いいから俺を治セ! 回復魔法ダ!」


「……わかったわ。『悪魔の祝福』」


 セルドスに怒鳴る様に頼まれてご主人様がセルドスに癒しをかける。


 待てこいつ、ご主人様に命令しやがったぞ!?

 ご主人様に命令なんて、どうしてくれようか!


「ハハハッ! それでいいんだヨ! オイ、ガキ! まだオレは死んじゃいネー!」


 セルドスはそのアルデに叫ぶが、


「……スノハラ、何してるのじゃ?」


 アルデは俺を見て呟いた。


「ん? 何してるって、ご主人様の椅子だろ? 見たらわかるだろ?」


 こいつは何を言っているのだろうか? 見たらわかるだろう。

 ご主人様がいるのに椅子をしないなんて頭のおかしい奴がすることだ!


「その様子は、遅かったのじゃな……」


「遅かったって? 何が遅かったんだ?」


「……なんでもないのじゃ」


「おい、アルデー?」


 アルデが可哀そうなモノを見るような目で俺を見ている。

 なんだ? あいつが言ってきたことなのに勝手に話を止めるとか。後でロシアン串カツを食わしてやろう。

 そしてアルデがご主人様に目を向ける。


「……やはりここに貴様がいたか。しかし、ずっと見たことがある気がしていたのじゃ? 誰じゃったかのう……」


「オイ! 無視すんじゃネーゾ!」


「そうだぞ、アルデ!」


「うーむ……」


 アルデはセルドスと俺に呼びかけられるが無視をしてご主人様を見ている。言葉的にご主人様を知っているを風に感じるんだけど。

 そして、頭をひねっていたアルデが何かを思い出したかのように手を叩いた。


「そうじゃ! 少し変わっておるが、その髪色に目の色、いやらしいオーラ。貴様、クレナリリスか! そうじゃそうじゃ! 懐かしいのう? 何十年ぶりじゃ? 百年はたったか?」


 アルデはご主人様を指さし笑いながらそう言った。

 そしてご主人様がアルデを見て溜め息を吐きながら呟く。


「……ああ、そうだったのね。わからなかったわ。セルドス、私のミスよ。貴方ではあの子は倒せないわよ」


「アアッ? ちょっと待テ! 今クレナリリスっテ……それよリ! オレがあのガキに負けるだト! ふざけてんのカ!? 負けるわけねぇだロ!!」


 ご主人様のため息混じりの言葉に、セルドスが食ってかかる。


 やはりこいつは排除するべきだ!

 なんか人間じゃなさそうだし。喋り方がキモイし。ご主人様に食ってかかるし。


「ふざけてなどいないわよ。あなたもしっかり見て見なさい。あの子の魔力……最近消えた魔王「不死の王」アルデミスにそっくりよ? というか、同じ人物ね。小さくなっているけど」


「ハァッ! なんだト!? ホントか!? こいつがあのアルデミスだトッ!?」


「ええ、わたしが今まで気づかなかったのもおかしなことだけど、あの魔力に魔力量は確実にそうだわ。それとあの話し方に、おちょくり方。絶対にアルデミスだわ」


 面白くなさそうにご主人様は目を細めながらアルデを見る。


「まあ、あの子に気づかなかったのはこの串カツのスライムさんばかり気にしていたからにしておきましょうか」


「ご主人様に気にかけて頂けたとは! 光栄です!」


 ご主人様に褒めて頂いたので喜びを見せる。


「ふふっ、この子は従順なのにね。だから、セルドス? あの子は諦めた方がいいわよ」


「イヤ関係ネエ! こんな滾る相手はいねェ! オレがぶっ殺してやル!」


「ダメよ。貴方では勝てないと言ったでしょ? 串カツのスライム……呼びにくいわね。串スラ、貴方があの子の足止めに行ってきなさい」


「わかりましたご主人様」


 俺の名前でもない呼び名を省略されたが、ご主人様なので許そう。

 しかし、せっかく乗っていただいていたのに、もう降りてしまうとは……仕方ない、ご主人様に言われた通り動こう。

 ご主人様の言う事は絶対だ!


「オイ、クレア! ナんでテメェの指図を受けなきゃ行けねぇんダ!」


「貴方の戦力は後で必要なのよ。だから、ここで死なれちゃ困るの。もうそろそろ悪魔公になるのでしょ?」


「ウルセェ! テメェに指図されるのがイラつくんダ!」


 やっぱりこいつは始末するべきだろう。ご主人様の命令も聞けないなど頭がおかしいとしか考えられない。

 しかし、ご主人様の命令は絶対だ。どうしよう?


「で、スノハラ? 妾が忠告した意味がなかったのじゃな?」


 どうしようかと迷っていた時、アルデに呼ばれた。

 と言うか、忠告ってなんだよ?


「アルデ? いや、忠告ってわからなかったぞ? あと、俺は何も変わってないし、ご主人様のために生きてるからな? ってことで、ご主人様にとってはお前が危ないらしい。なんでか分からないが足止めをさせて貰うぞ?」


 アルデに声をかけられて決定した。アルデの足止めをしよう。

 そしてアルデに近づいていく。


「はぁ、仕方ないのじゃ。一瞬だけ付き合ってやろう。ユリアももうそろそろ危ないからのう」


 アルデが構えながら言った言葉に反応する。


「は? まじか!? ユリアが危ない状態? エミリと健治が先に行ったんだけど……健治だけだったら無理か。助けないと!」


「うむ、危ないのじゃ。今あの勇者がユリアが縛られていた縄を切ったところじゃが」


 アルデにユリアと言われて思い出す。


 何をしてるんだ俺は!?

 アルデを足止めするよりユリアの方が大切だろ?

 ご主人様の命令でも優先順位はある!


 俺はアルデから目を離し扉を向く。


「何をしてるの貴方!? こっちじゃなくてあっちでしょ!?」


 しかしご主人様がアルデを指差す。


 そうだ、ご主人様の言う事は絶対だ!

 アルデを足止めしよう!


「はい! じゃあアルデ? 足止めするぞ?」


「はぁ……ユリアはいいのか?」


「そうだって! アルデなんかよりユリアの方が大切だって!」


「む? それは聞き捨てならん言葉じゃったが……まあいい」


 アルデなんか放っておいて行かないと!

 ……と言うか、さっきからなんか俺の頭の中がぐちゃぐちゃするんだけど!?

 アルデの前であっちを向いたりこっちを向いたり。


「……なに、なんなのこの子? わたしの「誘惑」の効きがおかしい……。もう一度掛けないと……」


「オイお前! だからそいつはオレの獲物だって言ってるだロ!」


 気持ち悪いと考えてる時に俺の左肩をセルドスに捕まれれた。


「うるせー!!」


 セルドスとわかった瞬間、左手を振り上げその顔面に拳をめり込ませる。


「ガバァ……ッ!!」


「……セルドスっ!!」


 そのまま激しく吹き飛んだセルドスは壁にぶち当たり動かなくなる。


「鬱陶しいなあいつ! やっと静かになったか?」


 セルドスが飛んで行った方向を見ているとアルデが俺に近づいてきた。


「そうじゃな。で、スノハラちょっとよいか?」


「ん?」


 なんだろうか? 自分から足止めされに来たのか?


「『術式解除』!」


 アルデが俺に触れた瞬間に魔法を使ったのか、何かが晴れた様に目の前の景色が変わる。


 俺のおかしかった意識が元に、晴れていく様に。




   

操られていたスノハラ覚醒。


次回の更新は水曜日の13時頃です。

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