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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第3章「封惑の魔王」

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14話 王の間の前で



「ここですね……」


 王の間に向かっていると次から次へと兵士達が沸いて来たが全てなぎ払い、ユリアがいる王の間の手前の部屋に到着する。


「……着きました。ユリア……」


「この先にユリアがいるんだな?」


「うむ、この先じゃ。其方でもここまで来ればわかるじゃろ?」


「ああ、わかるが……」


「春原さん……」


「……それよりも目の前にいる奴をどうにかしないとな」


 そう言いながら目の前の扉に立っている少年に目をやる。


 こんな所に少年がいる事に違和感があるが、王族や貴族が着る様な派手な装束を付けた服なので納得する。

 それにそいつからは普通の人間とは違う異様なオーラが漏れていた。


「……ゲンダルフィンの勇者セルドス」


 エミリがそう呟く。

 ……勇者?


「あれ? この前の王女様じゃん? なんでここにいるの? あっ! もしかしてあの子の事連れ戻しに来たの?」


 カラカラと笑うその姿はまさに子供だ。

 しかし、こいつが勇者か……。健治以外の勇者に会うのは初めてだけど、名前が日本人じゃない。外国人か?


「まあ、今は取り込み中らしいから無理だけどさ!」


「やはり貴方……」


 エミリが睨みながらセルドスを見る。「識別視」で見たのだろう、エミリの眉間にしわが寄る。


「で、侵入者って聞いたんだけど、お前らが侵入者なの? 王女様とただの男2人と……幼女? うちの近衛騎士団は何をしているんだよ。意味わかんねーな! 特に幼女って、笑えるじゃん! 場違い場違い! あはははっ! まあ、1人だけケビンより強そうなのがいるみたいだけど?」


 少年が俺達を見て失礼な事を呟きながら健治を見た。

 しかし、こいつも俺の実力を見れないレベルか。

 しかし気になる言葉があったのだが……。


「まあいいさ! お前、俺と戦おうぜ!」


 そう健治を指差して叫んだ。


「俺か? いいぞ? ご指名ならやってやる!」


「おっ! いいね、いいね! さあさあ、やろうぜ!!」


 健治の言葉にセルドスのテンションが上がり、その場でピョンピョンと飛び跳ねる。


「王女様、春原さん! 先に行ってユリアリア様を助け……っ!?」


「……貴様! 妾を幼女と言ったな!! 許さんのじゃ!! 死ぬがよい! 『地獄の業火』!!」


 健治が挑発を受け、俺達にかっこよく先に行けと言おうとした時、セルドスがアルデの炎に包まれた。

 やっぱりな。


「……っ!」


「……お前、流石にそれは可哀想だろ」


「ふん! あの小僧が妾を幼女呼ばわりしたからじゃ!」


「えっ、えっ!?」


「アルデちゃん……」


 俺はいつも通りに突っ込むが、エミリと健治はアルデの急な行動に戸惑っていた。


「……ま、まあ、これで結果オーライですね。さあ、ユリアリア様を助けに……っ!!」


「あははははっ! いいねいいね!」


 またもや健治の言葉が遮られ、燃えていた所からアルデに向かってセルドスが飛び出て来た。


「お前だな、幼女! ぶっ飛べ!!」


「む?」


 セルドスは飛び出た勢いのままアルデを蹴飛ばし、壁を突き破りながら自分ごとこの部屋から消える。


「アルデちゃん!!」


「アルデさん!!」


 アルデが飛ばされたことによりエミリと健治が叫ぶ。

 しかし、俺は大丈夫だと2人の肩を叩く。


「アルデなら大丈夫だ。あいつではアルデに勝てないだろうからな」


「そ、そうですか……?」


「かなり強いと思うんですけど……それよりもアルデさんの方が強いと?」


「うん、余裕だろ」


 そう言って俺は王の間の扉の方に向かう。

 エミリと健治はその言葉に疑問を持ったが、セルドスはアルデにとって役不足だと確信している。少なくともグレイバルトよりは弱いだろう。

 元魔王だ負けるわけがない。


「とにかく行くぞ! 元魔王のアルデの心配よりユリアの方が心配だろ?」


「……わかりました! おにーさんを信じます。行きましょう!」


「元魔王……? えっ!? どういう事なんだ!?」


 健治が元魔王の言葉に引っかかったみたいだが、無視して王の間の扉に手を当てる。

 もう別に隠さなくてもいいか。後で話そう。


「さて、ここからが本番だ」


 この先にはアルデ曰く、割と強い奴がいるらしい。

 俺が倒せないレベルではないらしいけど。


 そう思いながら大きい扉を開ける。


「ユリア!!」


「ユリアリア様!」


 少し開けた扉の隙間からユリアが見えた。

 しかし、ユリアは2人の男に両腕を掴まれて部屋の中心に立たされている状況だ。

 それを見たエミリと健治が部屋の中に飛び込む。


「よし! 行く……」


 俺も続き、扉を開け切ろうとした時、


「ダメよ、今取り込み中だから」


 何かにかぶさる様に後ろから抱きしめられた。


「っ!!」


 反射的に俺はその何かを剥がす様に腕を振るったのだが……手応えが無い。

 避けられたのだろう。俺に預けられていた体重が軽くなった。


「外が騒がしかったから見に行ってたのだけど……あら、セルドスがいないわね?」


 おっとりとした色っぽい女性の声が王の間の扉とは逆の俺達が入ってきた扉の方から聞こえる。

 一瞬で移動したのか?


「エミリ、健治! 先に行ってくれ!」


「は、はい!」


「春原さん! ……わかりました!」


 エミリと健治は俺の違和感を感じ取ったのか素直に王の間に入っていった。


 影がかかってるようで、こいつが何者なのかはっきり見えないが、多分こいつは危ない。

 俺はアルデみたいに魔力感知ができるわけではないが、レベルアップによる五感は敏感になっているはずだ。流石の俺でもここまで近づかれて気付かない訳がない。

 でも、抱きつかれるまでわからなかったって事は、それぐらい危ない相手だというわけだ。

 多分王の間の中にいる奴より余裕で強い。


「あら、行っちゃった。まあ、あの子達ぐらいなら大丈夫でしょう。1番危ないのは貴方みたいだから」


「へぇ……」


 ティオルが俺の魔力は注意深く観察しない限りは気づかないと言っていたのを思い出す。

 さっきのセルドスでも気づかなかったのに気づくということは……。


「ごめんね、貴方はこの先は行かせないわ」


「……っ!?」


 その言葉を聞いた瞬間、俺とそいつの場所が入れ替わっていた。

 俺が王の間の扉の前に立っていたはずなのに、今はそいつが扉の前に立っている。その後ろには走っていくエミリと健治が見えていた。


 そしてそいつは空いていた扉を閉める。


「あら、場所が入れ替わって驚いた? 串カツのスライムさん?」


「っ!!」


 位置が入れ替わったのもそうだが、こいつが俺の事を「串カツのスライムさん」って呼んだ事に驚く。


「……まじか」


 扉が閉まったことでやっと顔がしっかり見えた。

 目の前に立つ女性、見覚えがあるというよりこの前も会った。

 そして忘れることがない見た目だ。

 腰まで伸びている白に近い水色の髪と放漫な胸を揺らし、赤に近いピンク色の目は俺を見定めるように見ている。

 その雰囲気が余計美人なオーラを醸し出し、なんとも魅力的な大人の女性なのだと思わせる。


 そう、この人はハマさんと一緒に見ていた……。


「常連のお姉さん……」


「ふふっ。覚えててくれてくれたのね。ありがとう」


 名前は知らない常連のお姉さんが嬉しそうにニコッと笑い、髪をかき上げるしぐさをする。

 美人がそれをするだけで魅惑的に感じてしまう。


「……どうしてここに?」


 この状況では確信しかないが、何故か聞いてしまった。


「なぜって、わたしがこの国の人間だからよ? あの時言ってたでしょ? センリスクには用事があって行っていたって?」


「……そうでしたね」


 その通りだろう。考えたらわかる。

 つまりここにいるこの人はゲンダルフィンの人間で、ユリアを攫った仲間ってわけだ。


「こんなところで会えたのは何かの縁かもしれないけど、この先は行ってはダメよ。取り込み中だからね。あなたはここで待っててくれないかしら?」


 その場から動かず話し始め、人差し指をピンッと立て、


「そうね、あの日の約束でわたしがこの国の王都を案内してもいいわよ?」

 

「……いや、無理ですね」


 魅力的な誘いだったが俺は断る。

 流石の俺でもこのタイミングでその提案に乗るような馬鹿な男ではない。


「その先にユリアがいるんで。常連のお姉さんでも手加減しませんよ?」


 そう言いながら構える。

 女性なので手加減はするが、出来れば戦いたくない。

 そう思って常連さんの目を見たのだが……。


「いいえ、待って貰うわ。ふふふっ」


 常連さんが魅力的な顔で笑った。


「……っ」


 その瞬間、俺の意識が変わった……。




     

次回の更新は月曜日の20時頃です。

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