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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第3章「封惑の魔王」

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7話 エミリの息抜き①



「お兄さんこっちです」


「おっ、ユリア! 待たせたか?」


「いえ、ちゃんと1時間程で来てくれましたし大丈夫です」


 馬車で1時間。そこまで遠くない距離を移動し、無事に王都に到着する。

 王の城の前に向かっていると城から少し離れた路地でユリアに声をかけられた。

 あの事件以来来ていないが、城前まで行くのは気が引けるので少し良かった気がする。

 でも、エミリの姿が見えないな。


「エミリは?」


「エミリは城の中ですよ」


「ふーん。てっきりエミリについての事だと思ったんだけど? 違った?」


 ユリアは首を横に振る。


「いいえ、エミリの事です。ただ簡単に城から出る事が出来ないだけです」


「成る程。エミリも王女様だもんな。そんな簡単に出れる訳ないよな」


「大体はお兄さんのせいですけどね?」


「……ですよねー」


 ユリアにバッサリ切り捨てられ落ち込んでしまう。

 まあ、前まで割とエミリはユリアと出かけていた記憶がある。

 と言うか初めて会った時も2人で冒険者の格好でいた。


「エミリはこの1年は外に出る事が許されません。それが条件でお兄さんを助けたんです」


「まじか……それはかなりの事をしてしまったよな」


 あの活発なエミリが外に出られないのは死活問題じゃないのだろうか? あれだけ楽しくしてたし、冒険者ギルドでも割と顔見知りが多かったのに。


「まあ、エミリはお兄さんに負い目を感じて欲しくない様でしたけどね」


 エミリは優しさの女神だろうか。


「私的にはエミリには根を詰めて欲しくないです。あの子の能力は神経を使いますから」


 そうか。「識別視」の能力はかなり集中すると言ってたしな。それを主に使う仕事なのだろうか。


「本当はこんなに早く呼ぶつもりはなかったのですが、今日はエミリの特別な日なんです。だからお兄さんを呼んだのですが……」


 そう言ってユリアが俺を意味深な表情で見る。

 つまり、


「……ってことは、今回俺が呼ばれたのはエミリを連れ出せって事かな?」


 その話から、俺が呼ばれたって事はそういう事だと思う。


 つまりユリアの手引きで、王女様を城から攫う犯罪者になってくれと言う事なのでしょうか?

 何でもするとは言ったが、流石にそれはきつい気がするんだけど?

 この前は助かったけど犯罪者に逆戻りで、もうこの国にはいられない事になると思う。


「ふふっ。流石に犯罪者にはさせませんよ。それに、そうなれば私も罪になりますからね。バレたら大変です」


「そりゃそうだよなー」


「だからバレなければいいんです」


「……ははっ。笑えねー」

 

 ユリアはいい笑顔でそう言った。

 どっちにしてもばれたら犯罪者になると言う事なのでしょうか?

 バレなかったらいいってわけではないんですけどね?


「それが私の能力でならできるんですよ。絶対にバレません。実は今も使っているんですよ「幻惑」って魔法を」


「へー、そうなんだ」


 魔法を使っているとはわからなかったが、その名前なら幻惑を見せたり騙したりするのだろうか?

 使っていると言ってもどうなっているのか俺にはわからないが。


「今ここではお兄さん以外に私はユリアリアではない者に見えているはずです。では、お兄さんにもかけてみますね。『幻惑』! ……これで私が違う人に見えているはずです」


「……ん?」


 しかしそう言って話すユリアは何も変わっていなかった。

 と言うか、俺の頭の中に「レジストしました」と流れている。つまり魔法は発動したが俺には効かなかったって訳か。


「えっと、たぶん俺には効かないんだと思う。今もユリアのままだし」


「え? そうですか? 何も変わってない……?」


「うん、変わってない」


「うそ、どうしてだろ……」


 俺に魔法が効いてない事がおかしいとユリアは眉間にシワを寄せる。


「ごめんだけど、勝手にレジストしてしまうらしいんだ」


「そうなんですか……。そう言えば魔王アルデミスと出会った時も私達の姿が分かってましたよね? その時もそうだったんですか?」


「そうだな。初めて草原で会ったときにもレジストしてたと思う」


 確かにあの時もレジストしたと聞こえていた。


「そうだったんですね……。だったらずっと私とエミリはこの姿のまま……」


「うん。エミリとユリアはずっと変わってないよ?」


「……やっぱりお兄さんは規格外ですね」


 ユリアが呆れたようにため息をついた。

 規格外と言われて少し嬉しいと思ったのは何でだろうか。


「まあいいです。他の人には私がユリアリアだと見えていないみたいですし、お兄さんには効かなくてもいい事ですしね」


 そう言って話を切り替える。


「とにかく、この魔法を使ってエミリを私に見せて外に出させます」


「なる程。それでエミリが外に出れるわけなんだな。でも、その魔法ってどれぐらい継続するんだ? すぐに切れるとかないのか?」


「それは大丈夫です。私が持っている能力にこの魔法を大幅に補助してくれる物があります。魔力は消費しますが1日ぐらいなら持ちます。「幻惑」の魔法は私の魔力が切れるか、私が気絶しない限りは続きますから」


「へー凄いな。それはかなりいい能力だよな。だからユリアもエミリの側近なのか。使い方次第で何でもできるもんな」


「……そうですね。でもこの能力を知っているのはエミリだけです。あとは、お兄さんが今知りました」


「え? そうなの? 王様とかに言えばかなりいい位まで上がれるんじゃ……?」


 どうしてだろう。この能力があれば犯罪し放題だし、上手いこと使えば出世なんて余裕でできる。

 今の時点で側近だから出世もする必要ないだろうが。


「……それはしませんよ。色々あるんです」


「そっか……」


 そう言った顔はどこか寂しそうな感じがした。それに俺は違和感を感じたが、


「話を戻しますと、この作戦でエミリを外に出してある場所に向かって貰います。お兄さんの役割は護衛です。この国で最強の護衛だと思っていますからね?」


 そう言って笑いかけた顔はいつものユリアに戻っていた。


「できますよね?」


 おいおい、「できますか?」と言われたら断る選択肢なんてないだろう。

 誰に言っているんだと言わんばかりに俺は胸を張る。


「もちろん! 最強の護衛って言ってくれたユリアに恥じないように護衛をしますよ! 王女様の護衛でも有り余るぐらいに完璧に!」


「ふふっ。それはそれでどうかと思いますけどね」


 そしてエミリを護衛する事が決定した。


「行き先はエミリが知っています。そこまで危険な場所ではないですけど、何かあるかもしれませんので、必ず守ってくださいね?」


「ああ、必ず!」


 その言葉を聞いたユリアは満足そうにエミリの元に向かって行った。





「ユリアリア様、お気をつけて行ってください」


「ありがとうございます。では行って参ります」


 城の門の方からそのような会話が聞こえて、俺の方へ駆ける足音が聞こえてくる。


「おにーさん、お待たせ」


「おう、エミリ。久しぶりだな」


 かけてきたのはいつもの冒険者の格好をしたエミリだった。

 久しぶりと言ってもこの前会ってるが、話したのは久しぶりだな。


「やっぱりおにーさんにはユリアじゃなくて私に見える?」


「うん、エミリのままだな。冒険者の格好してる」


「あー、そこも変わってないんだ。まあ、私が城から出て騒ぎになってないって事は周りにはちゃんと掛かってるんだろうね。ユリアの魔法は凄いからね」


「そうなんだな」


 ユリアの事なのにドヤ顔をするエミリ。

 やっぱり俺には魔法が効いていないようだが、さっき門番が「ユリアリア」と言っていたので魔法はかかっているようだ。

 俺にはいまいちわからないが周りの状況で納得する。


「じゃあ、向かおっか?」


「その前にちょっと良いか? 先にこの前のお礼を言わせてくれ。本当に助かったよ。ありがとう!」


「うーうん。流石におにーさんが死刑になったら私も悲しいし。というか、死なないと思うんだけどね。逆に他の国に行った方がこの国にとっては大変な事になりそうだし。私はこの国に利益になる為に動いただけだよ。おにーさんの強さを知らない人ばかりだからね」


「それでもありがとう。割とこの生活が楽しいからさ。捨てたくなかったんだよな」


「ふふっ。串カツ屋もいい感じだもんね。私もまた食べたいなー。あっ、でもアルデちゃん達はしっかり捕まえといてね。次あんな事があれば流石にもう私でも庇うことができないから」


「それは理解してる。あいつらはどうにかするよ」


「頑張ってね」


 そう言うエミリの笑顔が眩しすぎる。


「あ、そうそう串カツを調理する器具? 私が預かってるから帰りに取りに来てね」


「おー、エミリが持ってたのか。それは助かるわ。帰りにな。了解」


 あれは外用に調整したから手元に戻ると嬉しい。


「じゃあ、出発しましょー!」


 そして外に向かい歩き始める。


「なあ、エミリって王女様なのに喋り方がかなりフランクだよな?」


「うん。こっちの方が楽だし、常に気を張らないようにするにはこの方がいいんだよね。切り替えだよ切り替え。ユリアとおにーさんにはもうバレてるからいいかなって」


「そうなんだ。まあ、その方が俺も気が楽だし気分が変わるならいい事だしな」


 言い方を変えると、言葉を変えないと気分が変わらないぐらい大変な仕事をしてるとも言えるわけだけど。


「で、今から向かう所はどこなんだ?」


「ふふっ。凄い所だよ。少し移動するんだけどおにーさんなら大丈夫でしょ?」


「余裕だな」


 たぶんエミリを担いで移動しても今の体なら疲れる事もないだろう。

 そんな話をしながら門の受付でギルドカードを見せて王都の外に出る。


「じゃあ、走ります! ついてきてね!」


「……ん? おっ! ちょっと待って……!」


 唐突にエミリが全力で走り始めた。

 女の子だというのに割と早い。でもそれぐらいならすぐに追いつく。


「余裕そうだね。やっぱすごいね、おにーさん!」


「これぐらいなら余裕だけど、急に走り出してどうした?」


 そのまま走りながら話す。


「実はね、その場所に行くまでに時間がないんだよね。走らないと間に合わないから」


「少し移動って言ってたけど、走るぐらいだったら割とあるんじゃないのか?」


「えーっと、歩いて2時間くらいかな? 昼過ぎまでには着きたいんだけど」


「……なるほどな」


 今は昼前だし昼過ぎなら後1時間ぐらいしかないよな。

 しかし「もっと早く出たら良かったんじゃ?」とは言えない。

 ユリアが来れないのも俺達のせいだし、出るのがこの時間になったのも色々あるんだろう。


「じゃあ、ちょっと待って?」


「えっ? どうしたの?」


 俺はその場で立ち止まりエミリを止める。


「ちょっとなー」


 そして「アイテムボックス」からあるものを取り出す。


「え? それって……」


 取り出したものにエミリが驚く。


「おう、台車だな!」


 そう、リアカーである。前回ユリアを馬車に乗せて引っ張ったので次は馬車ではなく人間が引くものをと思って常に入れていた。

 いや、これも本当は物を運ぶ物なんだけど。


「へー、あれは本当だったんだ……ユリアは馬車に乗ったって言ってたけど、台車?」


「ああ、その方が速いだろ?」


「うん……でも……」


「さあ、乗ってくれ! 早く行かないと間に合わないだろ?」


「う、うん……」


 その提案にエミリは少し戸惑っていたが、俺の言葉にうながされてエミリは恐る恐る台車に乗る。


「じゃあ、走るぞー!」


「えっ!? おにーさんそんなに急に走らなくてもい……っ!!」


「えっ、なんて? 聞こえないわー!!」


 エミリが後ろで叫んだが、聞こえないふりをして全力で地面を蹴る。


「ちょっと、待ってっ!? だ、だからっ、速くなくて、いいからぁ!! きゃぁぁぁぁっ!!」


 すぐにスピードが上がる。


 エミリもユリアと同じ反応してとても満足である。




  

エミリとのデートですね。


次回の更新は明日です。


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