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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第3章「封惑の魔王」

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4話 串カツの献上



「おお……」


 目に入る光景に思わず声が漏れる。


 重厚な扉を通ると目の前に広がるのは王の間。

 人が常時滞在するには広過ぎる大きさで、ここで何十人が会議したとしても余裕があるほどだ。

 置いてある物が全て高級品だと一眼でわかる金色。その中央の玉座に1人派手な格好をしたおっさんが座っており、周りに騎士が守る様に配置している。


 あっ、エミリとユリアの姿もある。それに見たことある騎士団長もいるな。


 俺達は兵士に促され部屋の中央まで歩いていく。


「よく来たなクシカツのスライムよ!」


「はっ!」


 俺はその場で跪き、かけられた言葉にとにかく敬意を持った風に返す。

 ここでの失敗は許されない、慎重に。


「其方が作ったクシカツとやらがかなり美味だと言うではないか? 余は美食家である」


 王様が話し始める。

 この国の王様を初めて見たけど、エミリとはあまり似てないな。中肉中背で王様らしいふてぶてしさがある。


 付け加えるように騎士団長が口を開く。


「王は下町のモノでも美味なモノは食べることにしておられる。光栄に思うが良い、クシカツのスライムよ!」


「はっ!」


 俺はもう一度敬意を込めて返事をする。

 この騎士団長は気に入らないが、ここは言う通り光栄に思おう。


「おい、スノハラなんじゃこいつらは? 妾に向かって無礼ではないか?」


「そうだ我もいるのだ、生意気ではないか?」


 ギリギリ聞こえない程度の声で2人ともちょっと怖い発言をする。

 お前らには何も言ってないから、一々反応しなくていい!


「いいから喋るな! 動くな! 俺が良いと言うまで絶対だぞ!」


 小声で2人にそう話す。

 串カツさえ食べさせれば満足させられる自信はある。そして、王都に2号店を出す算段だ!

 王様のお墨付きなら爆発的に売れるだろう。


「おい貴様ら。何をこそこそ話している? 陛下の御前であるぞ!」


「すみません!」


 騎士団長に注意をされたのでとにかく謝る。


「まあいい。これからクシカツを作ってもらう。陛下、私が食べた時は中々の美味でありました」


「本当かカルデム? 其方が美味だと言うのであれば本当なのであろう! 余は楽しみである!」


「はい。では、厨房に案内させます。お前達この者を厨房に案内せよ!」


「「はっ!」」


 そう言って騎士団長が周りを動かそうとしているが、俺はそれに対して提案をしたい。

 こんな場面で発言するなど無礼かもしれないが、ここは重要なタイミングだ。


「それについて、すみませんが一つご提案をさせて頂だいてもよろしいでしょうか?」


「なんだ? クシカツの事であれば厨房の者と話し合えばいいだろう?」


「それもそうですが、はっきり言いますと私の串カツは誰にも真似できません。それと王様には出来立てを食べていただきたいのです。騎士団長が食べた様な出来立てをです」


 その言葉に王様と騎士団長の表情が動いた。


「いや、料理は城の料理人に作らせ……」


「待てカルデム! 余は出来立てを食してみたいぞ! 其方は出来立てを食したのであろう? ならその美味さも知っているはず? 余が食せないのは不公平ではないか?」


「陛下……わかりました。では出来立てを作らせましょう。クシカツのスライムよ、どうするつもりだ?」


「ここで作らさせて頂きます」


 その言葉で鋼の間がざわつく。


「なっ!? 何を言っている! ここで調理をするだと!? そんな事は前代未聞だ! させるわけがな……」


「それは面白い! ではここで調理させよう!」


「陛下っ!?」


 しかし王様は俺の提案に許可を出した。騎士団長は戸惑っているが、さすが王様だ! 懐が深い!


「良いのだ! 美味な食の為にはそれぐらいせねばならん。出来立てが食せるのであれば、ここで調理をさせたら良かろう!」


「陛下……承知いたしました。すぐに準備をさせましょう。お前達、ここで調理をする準備を!」


 王様が俺の提案を承諾し、騎士団長が指示を出す。

 しかし、器具の持ち出しとかした事ないだろう。周りの側使い達が戸惑っているので俺は助け舟を出す。


「いえ、大丈夫です。自前のがありますので」


 と言うか串カツ用セットなんて俺しか持っていないだろう。俺の自由にやらせて欲しい。

 俺は「アイテムボックス」から器具一式を出す。

 一式と言っても簡易な物で、火はアルデ任せなのだけれど。


「む!? 「アイテムボックス」か?」

「珍しいな。宮廷魔導師レベルではないか!」


 「アイテムボックス」を使用した事で周りが騒つく。

 これはそこまでの魔法なのか。少し俺の株が上がったなら嬉しい。後の行動が楽になるしな。


 そんな声を聞きながら準備を完了する。


「では、今から始めますので。ご期待ください。アルデ」


「うむ」


 そう言ってアルデがつけた火に鍋をかける。


「なっ! 無詠唱だと!?」

「宮廷魔導師でも殆ど使える者はいないぞ!?」

「あの年齢でそこまでの魔法を……。なんたる才能だ!」


 アルデが気ままに使った魔法でざわつく。

 初級魔法ぐらいなら誰でも無詠唱できるってアルデが言ってたのに。後でユリアに常識を聞いてみるしかないか。


「よし、いい感じだ。では、今から串カツを揚げます」


 衣を少し落とすとパチパチと弾ける音がする。

 その適温の油に串カツを投入する。


「おお! なんだこの匂いは! 何たる香ばしい匂いだ!」


 じゅわぁっという音と共に香ばしい匂いが部屋に充満する。


 串カツは調理中の音と匂いも最高のスパイスになる!


「あの時のままの匂いだ」

「なんと美味しそうな香ばしい匂いだ」

「これはあの者が言う通り期待ができる!」


 うん、いい感じだ。美味そうだ! それにこの肉は特別だからな!


 そして出来上がった串カツを多めに皿に盛り王様の元へと持って行こうと、したが……。


「ちょっと待て貴様! 一度自分で食べないのか?」


 騎士団長が俺を止める。

 そう言えばこういう時って毒味をしないといけないんだったな。


「わかりました。では頂きましょう。ついでに食べ方も伝えさせて頂きます。まずはこのままで食べて頂きたいです」


 そう言って串カツを一本取り一口で食べる。

 うん、いい出来だ! 今日も美味い!


「次にこの黒い液体、ソースに付けてお召し上がりください。あ、ソースの2度付けは禁止ですのでお気をつけ下さい」


 ソースが入った壺を開け串カツを入れる。

 そしてソースがついた串カツを口に入れる。

 やっぱり俺が作った串カツは美味い。それにソースも絶品だ。


 あっ、2度付け禁止って言ったけど、別に王様用のソースなので2度付けしても良いんだけどな。癖で言ってしまった。


「では、これでよろしいでしょうか?」


「ああ、いいだろう」


 そして串カツを取りに来た王の側近にお皿を預け、俺は下がる。


「ほう、これがクシカツとやらか! 何とも香ばしい香りだ。これは期待できる!」


「陛下、まずは私が……」


 そう言う王様の横で側近がソースを付けた串カツを食べる。


「んんっ!!」


 串カツを口に入れた瞬間、側近が目を見開く。


「ど、どうしたのだ!」


「も、申し訳ございません! 初めて食べる味でございましたので……。陛下、これは早くお召し上がりになられた方が! 美味しゅう御座います!」


「それほどか!」


 そして王様が串カツを一本取る。


「では、其方の言う通りまずはそのまま頂こう」


 そして一口サイズの串カツを1口噛み切る。2口で食べるのだろう、食べ方も上品だ。


「む!! なんだこの柔らかさは! それにサクサクの衣に中から湧き出す肉汁! 美味であるぞ!」


 そのまま2口目を口に入れる。

 思ってた以上の反応だ。


「この肉は美味だのう! 何という肉だ?」


「それはワイバーンの肉でございます。この日のために特別なものを」


「おお、ワイバーンの肉か! ワイバーンの肉は最高の肉であるぞ! 市場に出回りにくいはずだが、手に入れて献上するとは素晴らしい! 気に入ったぞ!」


「ありがたき幸せ!」


 俺は心の中でガッツポーズをする。

 よし! 作戦成功だな! ワイバーンにして正解だった!

 後でコカトリスも揚げよう! アレも美味いからな!


「ここまで陛下の口を唸らすとは……」


「で、次はこのソースという黒い液体を付ければ良いのだな?」


「はい!」


 そう言って2本目の串カツを手に取りソースに漬ける。そして先程と同じく一口噛み切った。


「っ!! これは美味だ! 先程とは違いこのソースと言うのが味を引き立てておる!」


 よっしゃ! 完璧だ! 完璧な反応だ!

 これで俺の串カツも王都に……いや、世界に羽ばたけるのではないか!!


「また違う味わいである! 旨味と甘味と酸味が見事に合わさっておる! これは沢山付けた方が美味であろう!」


 そう言って王様が食べていた串カツをソースにもう一度漬けた。


 ソースの良さをよくわかっている反応に俺は満足しながら頷いて……、


「……むっ!!」


 その瞬間、その声と共に、俺の横から何かが飛び出した。

 俺は王様が美味しそうに串カツを食べている事に満足して、気が緩んでいたんだろう。


「……あっ!」


 その突然な行動に反応が遅れる。騎士団長達も動けていない。


 その飛び出したそいつは一瞬で王様との距離を詰めた。手に白い棒状の何かを握って……。


「まっ……!」


 嘘だろ! まさか、お前!!


「2度付けは禁止なのじゃぁ!!」


 その声と共にアルデがハリセンで王様の頭を叩いた。


 それは見事に、普通ここでは聞くことが無いはずの……ハリセンの音が王の間に激しく響き渡った。


「ぐあぁぁぁぁっ!!」


「「「へ、陛下ぁ!!」」」


 王様がハリセンの痛みに悶え、周りの騎士が駆けつける。


 そしてその横には叩き終えたハリセンを持ち、満足そうに持つ幼女が立っていた。


「ふん! 2度付けは悪なのじゃ!」


「あ、アルデぇぇぇぇぇ!! おまっ!? ええっ!?」


 その状況に俺は叫びながらパニクってしまう。

 何をしたのか一瞬理解が出来なかった。


 しかしアルデは俺の叫びに対してキョトンとして、


「何を言っておる? 2度付けする奴は犯罪じゃと、ハリセンで叩けと言ったではないか?」


「おまっ! それは時と場合が……」


 まじか……こいつまじか……!?


「陛下! 陛下ぁぁ!」


「ぐっ……痛い、痛いぞっ……」


 生きてる。

 ハリセンで手加減しているから生きてるんだけど……やばい、これは非常にやばい……!


「き、貴様か!! クシカツのスライムぅ!!」


 騎士団長が俺を睨む。


 やばい、これはやばいぞ!

 王様の近くに座っていたエミリも立っていたユリアも俺達を見て唖然としている。

 そりゃそうだ、王様に手を出すなんてあり得ない事だ。


「……ぐうぅぅぅ!! か、カルデム!! こいつらを捕らえろ!」


「はっ!!」


 一瞬にして周りの兵士達に囲まれる。


 まじか、ここで失敗するとは……。


 まじで、何してるんだよあいつ……。


「こいつらを牢屋にぶち込むのだ!!」


 ああ、ここでの俺の人生終わった……。




 

  

まさかの2度づけ警察登場!! まさかのアルデが叩くとは……


次回の更新は火曜日の18時ごろです。

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