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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第1章「不死の魔王」

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4話 授かった能力

 


「……やばい、何これ!! すげぇよ! いける、いけるよ! これは確実にチート能力を手にいれてるぞ!」


 目の前のガラス化した光景を見て叫ぶ。

 これで2つ能力が使えたわけだ。なら、もうあのカードの束は俺の糧となったと確信できる。

 えっと、他の能力はなんだっけ……?


「ま、魔力の波動も無しに極大魔法だと……!? 私の部下達が一瞬で全滅とは……」


 俺の魔法によって円柱状に横に削り取られた地面の直線状に、さっきの魔王の側近が立っている。

 ん? こいつにこれは食らわなかったのか? 魔王にも当たってないし……って、待って! この能力1回しか使えなかったよな……? 今思うと普通に俺ピンチじゃね!?


「くっはははははっ! ほんとにやるようだな此奴! ジェミラ、お主の部下が全滅だ!」


「くっ、私は魔法が効かぬ故無事でありますが、それでもダメージがあるとは……。部下がやられたのは私の失態でございます。しかし魔王様、次の一手がありますので、お待ちを!」


 そう! こっちも待って欲しい!

 えっと、他にどの能力があるのか整理させて! 思い出さないと!


「どうする……って、うぉ?」


 何があるのか考えあぐねていると、何かが俺の体に急に入って来る感覚に襲われる。

 それは俺の中で膨れ上がり収縮し吸収されていく。そしてそれが繰り返される。


「っ!! ま、魔王様こいつ、魔力が膨大に膨れ上がって……」


「くははははっ! 此奴ついに力を解放させたか。ジェミラよお主は下がっておれ。吾輩が出よう。久々の高揚だ!」


 何これ!? 頭の中でピコンピコン鳴ってる! うるさすぎるんだけど!?

 でもそれが、体がどんどん強くなっていく感じからしてレベルアップってわかる。


 それにしてもレベル上がりすぎじゃないか?

 あれか、「麒麟児」か? 確か、倍の経験値が貰えるはずだった。そう言えば、目の前にいるのが魔王って事はここ魔王の間だよな? その部下ってかなり強いもんな。じゃあ、そいつらを全滅させた「超炎熱砲」って強すぎないか?


「勇者よ! 吾輩が相手をしよう!」


「えっ?」


 そんなレベルアップを受け入れているといつの間にか目の前に魔王が立っていた。


 って、ちょっと待って! どうして魔王が!? さっきの側近みたいなのは……離れてるし! それに、まだレベルアップの音が鳴り続いてるんだけど!?


「ほう? 吾輩が前に立ってもなお、力を解放するか。これ以上上がると吾輩でも対処しきれなくなるな。ふむ、少し戦いたい気もあるが我慢しよう!」


 そう言って魔王が背中に背負っている大剣に手をかけ、抜き去る。

 その大剣は真紅に光りながら、黒いオーラが纏わっていた。


「我が部下の仇だ。受けるが良い! 『死の斬撃』!」


 そして大剣を振り下ろした。


「……っ!!」


 やばい! こいつはやばい! 直感がやばいって告げている。


「ぬっ……あっ……!」


 咄嗟に横に飛び、転がるように避ける。


「なっ……」


 転がりながら元いた場所を振り向く。

 音を立てず放たれたその一撃は、触れた先を全て消滅させていた。

 削られた天井からは薄暗い空が見える。


「ほう? この一撃を避けるか。この魔王最上の剣技を」


 か、かなりやばすぎませんか!?


「ふっ、ふはははは! 初見で「死の斬撃」を対処されたのは初めてだ!「死の斬撃」は触れたものを消滅させるからな? 2回目を受けた奴はいなのだが」


 まじかよ! 消滅って、怖すぎるだろ!


「魔王様、私が援護を致しましょう」


 魔王の側近が少し離れた所から声をかける。あいつに邪魔をされればさすがに詰むんじゃないだろうか。


「待て、今吾輩は久しぶりに高揚しておる。邪魔をするなよジェミラ。こやつの力の開放も落ち着いてきた。吾輩ももっと楽しみたいからな!」


「……っ!!」


 嬉しそうに言うその言葉と同時に魔王と魔王の周りの空間が赤黒く光始める。

 大地が揺れ、風が荒れるほどの巨大なエネルギーが魔王から解放されていく。


「ま、魔王様それは! 魔王城が跡形も無くなります! 私も……」


「ふん、城などまた建てればよい! それよりも吾輩の楽しみの方が上だ! ジェミラお前は離れていろ。終われば呼び戻す!」


「……は、はっ!」


 その瞬間ジェミラという側近が消えた。ついでに俺のレベルアップの音も消えていた。


「さて! 楽しもうでは無いか! 『魔王解放』!」


 それと同時に魔王の光が膨れ上がり、収縮し……消えた。

 いや、消えたんじゃ無い……落ち着いたって事か。


「……ぉ」


 息を飲む。その場から音が消える。空気の振動が消え、風を感じない。そいつしか目に入らない。それ程の存在が目の前に現れていた。


「ははははっ! どうだ、これがオレの真の姿だ」


 魔王の口調と姿が変わる。

 漆黒の中に真紅が混じり、3メートルほどあった巨体が一回り縮み2メートル程になっている。

 しかしさっきまでとは違う異様さが滲み出て、これが魔王だと思わせるオーラを放っていた。


「ふんっ!」


 真紅の巨大だった剣も今の体に合わせて太刀ほどの大きさになっている。それを簡単に真横に振りぬく。


「……まじかよ」


 目を見開く。

 魔王のただの行動で魔王城の天井と壁が消滅し、空が大きく見えていた。


「はははっ、驚くな。今のオレの攻撃は全て「死の斬撃」だ。さて勇者よ、本当の戦いを始めようか!」


 そう言い、魔王が剣を構えた。


 ……えーっと、整理したい。とにかく整理したい。魔王を見てから全く考えを整理できずにここまで来ている。

 えっと、どうなっているの? 魔王と対峙しているのはわかる。レベルが上がったのもわかる。でも、これからどうしたらいいの? 考えさせ……。


「ふん、来ないなら、こっちから行くぞ!」


「っ!! ちょっとま……」


「待て!!」


 俺が静止の言葉を言う前に誰かが叫び、その声に反応した魔王が止まった。


「誰だ? オレの戦いを止める奴は?」


「俺だ、魔王!」


 そういいながら、片腕を無くした剣士らしい青年が歩いてくる。


「待って健ちゃん! あなたはもう戦えないわ! やめて!」


「そうだ、待て健治! お前の体じゃもう……無理だ!」


 その青年を止めるように左右から魔法使いの様な女性と戦士の様な青年が掴む。


「止めるな! おい、魔王! 俺との戦いは終わってないぞ! 俺はまだ戦える!」


 そう言って片腕の青年は片手で剣を構える。


「健ちゃん!!」


「健治!!」


 その光景に俺は佇む。

 ……何これ、何か始まったんだけど。俺的には時間がある方がいいからラッキーだけどさ……。

 まさか、こいつらがこの世界の勇者的な存在か? けど、素人目線でももう戦えない様に見えるし……周りの言う通りにした方がいいだろう。


「オレとの勝負だと? 笑わせる! 部下にも歯が立たない死にぞこないの貴様がか! しかしこいつはオレの部下たちを全滅させた! 目の前のこいつが勇者だろう? ならお前はなんだ? 偽物か? 弱すぎる! 弱すぎてオレが相手をする気もならなかったわ!」


「だ、黙れっ! 俺が勇者なんだ! 俺が魔王を、お前を殺す!」


「健ちゃん待って!」


「健治これ以上は……!」


 あ、やっぱりこいつが勇者なんだ。そうだよな、魔王と戦うのは普通勇者だよな。それにしても、名前が「ケンジ」って「健治」かな? そうだったら多分俺と同郷じゃないか?


「貴様がオレを殺すだと? はははははっ! 笑い殺すつもりか! 笑えんな!」


 いや、笑い殺すつもりかって言ってるし。


「黙れ魔王! 俺がお前を!」


「黙れ」


 その言葉と共に魔王から威圧が飛び、その一言で勇者一行は動けなくなった。

 俺はなぜか動けるが。


「死にたいか? 死にたいなら喚くな。一瞬で仲間諸共消してやろう!」


 あっ、これ、絶対こいつら死ぬやつだ。……たぶん無理だよな。だって「死の斬撃」だ。当たれば消滅で、避けるしかないが避けれないだろ。


「死ね」


 魔王が剣を振り下ろす。


 ……あー、くそっ!

 そう思った時、俺は走っていた。


「『絶永結界』!」


 魔王と勇者の間に入り、


「……なっ!」


 魔王の一撃が高い音を立て、俺の目の前の見えない壁によって防がれる。「金剛騎士」による一回きりの全てから守る最強の盾「絶永結界」。


 こいつらとは全く関係ないが、俺の身体は動いていた。


「はっ、ははははっ! まさか、俺の一撃を真正面から止めるとは! はははははっ! 流石だ、流石だぞ、勇者! 楽しいぞ、楽しいぞ!!」


 すごい勢いで叫び始める魔王。

 いやいや、俺も防げるかどうかわからなかったし、体が勝手に動いていただけなんですけど? 冷や汗半端ないんですけど!


 これで俺の唯一の防御手段無くなった。どうしようか!


「やはり勇者、お前との戦いの方が面白い! さあ偽物よ一瞬で消してやろう!」


 感情が昂った状態で魔王は片腕の勇者を見据える。


「お、俺は偽物じゃない!」


 せっかく助けたのに魔王に食って掛かるなよ! 力の差が歴然だろ! なんでそんなに喋れるんだよ! 確実に殺されるぞお前!


 あーもういい! 魔王に話が通じるかわからないけど、言うだけ言ってみるか!


「ちょっと待て魔王!」


 今にも剣を振り下ろそうとしている魔王に正面から声をかける。


「どうした勇者? 今からの滾る戦いに言葉はいらないはずだが? 少し待て、すぐに邪魔者は消してやろう」


 いやいや、消さないで。とにかく話を聞いて? 


「いや、目の前で仲間が死ぬのは感慨深い。こいつらは逃がしてくれないか?」


 仲間ってなに? って感じだが、一応それらしい理由を言ってみる。


「……ふむ、弱い者は死ぬのが自然の摂理。強くなればそう考えが変わるはずだが……。しかし、お前が言うならそうしよう。お前との戦いの方が重要だからな! そもそもあの様な偽物などに興味はない。勇者の顔を立てやろう! 貴様ら、さっさと俺の前から消え失せろ!」


 魔王がうなずく。

 俺が言うならって、どれだけ戦いが好きなんだよ!

 あ、ついでに俺も逃がして欲しいんですが。


「い、行くよ! 健ちゃん!」


「そうだ、行くぞ健治!」


「待て、まだ俺の戦いは終わってっ……ぐぉ!?」


 勇者がうるさいから俺が手刀で眠らせる。初めてしたけど、気絶したようだ。息は……している。


 俺に一瞬頭を下げて勇者一行はそいつを担いで逃げていく。


「ちなみに、おれも……」


「さて、邪魔者も居なくなったぞ勇者よ! 続きを始めようか!」


 魔王は意気揚々と剣を構える。

 そうですよねー、やっぱ逃がしてくれないですよねー。

 さてどうしようか。


「ん? なんだその剣は?」


 魔王がいつの間にか俺が握っている剣を見てつぶやいた。

 あ、これですか? えっと、さっきあの勇者が落としていったので拝借させていただきました。多分、かなりの業物だろうし。これなら戦えるだろう。


「お前にそのレベルの武器は似合わんぞ? 隠している本当の武器を使え!」


「……ない」


「くははははは! そうか、あくまでも隠し通すか! いいだろう! ならばオレがお前の全てを引き出してやろう!」


 その瞬間、より魔王の魔力が高まる。


 魔王さん、何か言ってるけど、マジで何もないんです。武器も何も。もちろんこの服装も側近が言っていた通り初心者用だと思いますし。

 ……そう考えたらあのじじいが用意したとかか? くそっ、武器ぐらい用意しておけよ! それより魔王の前に転移させるなよ! 絶対あのクソじじいはぶん殴ってやる!


「行くぞ勇者!」


 そして魔王が真紅の剣を片手で縦横無尽に振る。



  

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