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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第2章「邪龍の魔王」

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23話 2度づけ警察

ここ最近串カツの話ばかりですね。



 店が繁盛してくると常連客というものが出来てくる。


「なあ、スーさん。あの姉ちゃんエロいな?」


「ああ、エロい」


 さっき串カツを買って行った美人のお姉さんを目で追いながら男2人で呟く。


「やばいな、あのおっぱい」


「やばいな、あのおっぱい」


 歩くたびに揺れる放漫な胸を見ながら俺と隣のハマさんは呟いていた。


「なんじゃ、また見とるのか? 男は好きじゃのう」


 そんな俺らにアルデが呆れながら串カツを揚げている。

 まあ、アルデに言われても何にも思わないが、どれだけ言われても見てしまうのが男の性である。


「まあな、男だからなー」


「仕方ないだろ。あれはなー」


 そう2人でアルデに返す。

 あの串カツ祭りから毎日の様に串カツを買いに来る水色の髪の美人なお姉さん。そしてこの人を見るのが俺達男2人の日課になりつつある。


「まあ良いが、あの女は程々にしておくのじゃぞ?」


「あの女って、お? あれか嬢ちゃん? 気にしてるのか? アルデの嬢ちゃんはまだまだちっせぇからな! まあ、いつかああなれる様に頑張れよ! わっはっはっはっ!」


「うるさいわ!!」


 笑いながらからかうハマさんにアルデが串を投げつける。

 そしてアルデがハマさんの店へ向かっていった。


 ……あ、これは見ない方が良さそうだ。

 そう思って俺は2人を見ないように目を背ける。


「痛てぇ! 危ないだろ……って! 待て! それを持ってくるな! それは洒落にならん! 待てって! 嬢ちゃん、悪かった! 悪かったって! ちょっ、まっ……ぎゃぁぁぁっ!!」


 ……何をされてるかはわからないが、これは仕方ないだろう。ハマさんが悪い。


「ふんっ! 自業自得なのじゃ!」


 そう言いながら口元を真っ赤にしてもぐもぐと何かを食べているアルデはマジで怖い。

 トマトだってわかっているんだけど、それは心臓に悪いからやめて欲しい。


「主、なんだこの騒ぎは?」


「ん? ティオルか、お帰りー」


 そんな騒ぎを起こしていると、お使いに行っていた赤髪のドラゴンメイドが帰ってきた。


「また幼女が何かしたのか?」


 ティオルが買い物カゴを机に置き、買ってきた物を並べながら質問をする。


「まあ、いつもの事だなー」


 俺はティオルの質問を流しながら机に並べられた食材を見る。

 うん、頼んでいた肉などの食材は全部買ってあるな。


「よし。じゃあティオルはこれを切ってくれ」


 他の食材を移動させながら、まな板の上に大きめの肉を置く。


「わかった。しかしあの幼女は昔から変わらんな。騒ぐとうるさい」


 その呟きにアルデが反応した。


「なんじゃと? 貴様、またもや妾を侮辱するのか? 下僕のトカゲが何を言っておる!」


 口元を手で拭いながらティオルに食ってかかる。


「なんだと? 串カツの事しか考えていない幼女が何を威張っている。我に負けたくせにな!」


「き、貴様っ! ではもう一回やるのじゃ! あの時は貴様は魔王であったからな。今なら余裕で倒せるのじゃ! ほれ、表に出ろ!」


「やる気か? ならここで貴様の弱さを思い知らせてやる!」


 またうるさい2人が騒ぎ出したな。放っておいてもいいんだけど、ここで暴れられると営業に迷惑だからな。

 仕方ない、止めるか。


「お前らここで暴れるなよー」


「其方は黙っておれ! 今日こそ此奴の息の根を止めてやるのじゃ!」


「主は首を突っ込むな! この生意気な幼女の口を止めてやる!」


 2人が睨み合いながら魔力を上げていく。

 だから、これ以上は面倒くさいからやめてくれ。


 俺は2人に近づき、そして、


「だから、暴れるなって!」


 「アイテムポーチ」から白い棒の様なものを取り出し、2人の頭をスパンッ! といい音を鳴らしながら思いっきりしばいた。


「ぬあっ!?」

「なあっ!?」


 うん、中々の良い出来だな。


「はいはい、仲良くするのはそれぐらいにして、手伝ってくれ」


「仲良くないのじゃ!」

「仲良くない!」


 俺の言葉に頭を押さえながらハモって返す2人。これを仲がいいと言わずして何と言うのだろう。


「しかし、それは何なのじゃ! 痛くは無かったが、びっくりしたのじゃ!」


「そうだ主! それは、武器なのか……?」


「ん? これか? これはハリセンだ!」


 右手で持ったハリセンを左手に軽く打ちつけ良い音を出しながら、2人の質問に答える。

 先程まで啀み合っていたのに、これに食いつくとは。


「ハリセン……?」


「なんだそれは?」


 見た事がないらしい。

 まあ、こんなモノ誰も作らないよな。


「武器といえば武器なのかな? でもこれの良い所は思いっきり叩いても死人が出ない事だ」


「む? 死なんのなら武器の意味がなかろう?」


「何のために使うのだ?」


 2人の頭に疑問符が浮かんでいる。敵を倒せない武器は武器ではないのか。


「そうか。なら使い方を教えてやろう。ティオルそこに立ってみ?」


「なんだ? これでいいのか?」


「うんうん。じゃあ、避けるなよ?」


「は?」


 その瞬間ティオルの頭に向かって思いっきりハリセンを落とす。


「いたぁぁぁっ!?」


 スパンッ! とさっきよりも大きく鋭い音と共にティオルが奇声を発した。

 うん、中々良い音がしたな。


「な、な、何をする! 痛いだろうっ!?」


「言っただろ、そうするモノだって? あとそこまで痛くなかっただろ? 俺が力を入れてこうだからな? 死人が出ない。うん、完璧!」


「いや、意味がわからん!? だから何のために使うのだそれは!?」


 俺が使い方を見せたのにティオルは全く理解していない様だ。

 しかしアルデは違った様で、


「成る程……、スノハラ! 妾にも貸すのじゃ!」


「いいけど。はい」


 アルデにハリセンを渡す。


「ふっふっふっ! 妾は気づいたのじゃ! これはあいつらに使うのじゃろ?」


 そう言ってアルデが客の方を見る。

 そうか、アルデは気がついたようだな。


「さすがだな、気づいたか。そうだ、アルデの思っている通りだ」


 そして俺はある客を指差す。


「あれだけ言ってるのに、最近2度付けをしようとする奴が多いだろ? 2度付け禁止は串カツを食べる為の絶対のルールだ。まあ、衛生上悪いからって言うのもあるけどな。だから、もし2度付けをする奴がいたらそれで思いっきり叩いていいぞ! 2度付けは犯罪だからな!」


「成る程。2度付けは犯罪じゃ! ふふっ、わかったのじゃ!」


 そう返事をして嬉しそうにハリセンを振り回すアルデ。


「じゃあ、気づいたアルデにそのハリセンを託そう。今日からお前は2度付け警察だ!」


「2度付けケイサツ……。うむ! いい響きなのじゃ!」


 そう言いながらハリセンをフルスイングする幼女。

 やっぱりこいつは幼女にランクダウンしてるだろ。


「って事で、早速あの客だ! 行ってこい!」


 その話をしている間にも2度付けしようとしている客がいたので、指を指してアルデを促す。


「わかったのじゃ! 行って来るのじゃ!」


 そしてウキウキしながらハリセンを持って走って行った。

 その見た目でハリセンを持ってウキウキしていたら、本当に子供にしか見えない。


「おい貴様!」

「なんだアルデちゃん……っ!? って何だそれ!? ……ちょっと待って!? それで何するんだ!? おい!? 振りかぶって、ちょ……っ!!」

「2度付けは禁止なのじゃぁ!!」

「ぐわぁぁぁぁっ!!」


 とても良いハリセンの音が響き渡った。

 大満足である。


「ふははははっ! 他にはいないのかー?」


 ハリセンを持って店前を歩くアルデの顔は楽しそうだ。

 まあ、これで2度付けする客も減るだろう。


「なあ主? 我にはアレはないのか……?」


 アルデを屋台の中から見守っていたところ、ティオルが物欲しそうにアルデのハリセンを見ていた。

 ハリセンは魅力的だが、アルデに混ざりたいのだろうか?


「ティオルも欲しいのか?」


「……っ!! いや、えっと……」


 自分がアルデと同じ物を欲しいと言ったのが少し恥ずかしかったのか、金色の目を泳がせる。


「ははっ、わかった、予備をあげよう」


 そう言って「アイテムポーチ」から予備に作っていたハリセンを取り出す。


「本当か!」


 俺の言葉に笑顔になるティオル。

 今更だけど、こいつら賢くて長年生きてきたとは思えないほど反応が単純だよな。こいつら元魔王にはこういう娯楽はなかったのだろうか?

 少しの事でも新鮮な様で楽しんでいる。


「ほい」


「ははっ! 我も行くぞ!」


 ティオルにもハリセンを渡したら、嬉しそうにそれを持ってアルデの方に向かって行った。

 仲良く2度付けする客を見張っている。


 まあそれはそれでいいんだけど、どっちか手伝って欲しいんだけど。




     

2度つけ警察って、まじこいつら子供じゃん(笑

って思いながらアルデとティオルを見ていると和む。

一応ハリセンでアルデとティオルが人間を殺す気で叩くと死にますので、手加減をしているのは暗黙の了解で。


スノハラはティオルリーゼをティオルに呼び方を変えてます。アルデミスをアルデみたいに。


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