21話 串カツ祭り①
串カツ祭り開催!
「さてアルデ! 準備はいいか?」
「うむ!」
俺達は串カツの準備に取り掛かる。
しかし、それはいつもの様に普通に作るわけではない。
俺達しか出来ない、誰にも真似できない。アルデだからこそできる串カツの作り方だ!
「なんだ、何をするんだ!?」
「普通に串カツを作らないのか?」
「準備といっても鍋もまな板も無いじゃないか!」
「アルデちゃん可愛いよー!!」
お客から様々な声が飛ぶ。しかし、これを見たら黙るだろう。
いや、逆に叫ぶか?
「しかし、こんな作り方を考えるとは其方も中々じゃな? こんなやり方があるとは早く言っておくのじゃ」
「だろ? まあ、アルデしかできない事だけどな」
「ふっ! 妾じゃからこそできる芸当か! 悪くないのじゃ!」
「じゃあ、始めるぞ!」
「うむ! 始めるのじゃ!」
その一言で串カツ祭りが始まる!
「では皆様ご覧ください! これが最高の串カツの作り方です!」
俺とアルデが定位置に着く。
「いくぞ、アルデ! ふん! まずは下準備!」
掛け声と共に、俺は串カツのメインである何十人分にもなる肉の塊を空中に投げる。
「ふははははっ! 妾の精密な魔力の扱いを篤と見るが良い! 『爆嵐の刃風』!」
それに向かいアルデが腕を振り魔法を放つ。
その瞬間、空中に投げられた肉の塊が一瞬にして串カツサイズの数センチ角に切られる。
そして、そのまま空中で止まる。
「おお! すげー!」
「なんだ! 今の魔法か!?」
「正確すぎるだろ!!」
「アルデちゃん、可愛いよ!!」
観客が驚きの声を上げる。
まあ、これは凄いよな。しかし、まだここからが本番だ!
その肉達を空中に留めながら次の作業に入る。
「こんな感じでいいか、ほらよ!」
「食べ物で遊ぶなと教わって来ましたが、割り切りましょう! はい!」
アルデの前左右に陣取っていたハマさんとサッさんが卵をアルデの上に向かって投げまくる。
「良い高さじゃ! 『操凛の風嵐』!」
投げられた卵がアルデの前で止まり次々に割れていく。
そして、その割れた卵は落ちる事なく空中で留まると同時に殻と中身に分かれていく。
「まだじゃぞ?」
アルデがクルっと指を回転させる。それと同じ様に空中の黄身と白身が混ざり合っていく。
見事に卵が黄色い液体に変わりそれもまた空中に回転しながら留まる。
「流石だな」
「ふははははっ! まだまだいくのじゃ!」
次々とアルデが魔法で材料を空中に浮かべ下準備をしていく。何も道具を使わず全て魔法で様々な野菜や肉などを切っていく。
そう、今回の串カツ祭りは全て空中で調理器具も使わず魔法のみで全てを作り上げる事である。
アルデしか出来ない、誰にも真似できない技巧。そして、見る者も楽しませる魅せる余興。
それが串カツ祭りである。
「さて、皆様! うちの串カツが美味い最大の理由はパン粉です。カラッと揚げるためには良く乾燥し、そして細かい粒にします!」
「この様にすると早くて美味しくなるのじゃ! 『旱魃の水槽』!」
その魔法により空中に浮かんでいたパンの、水分が一瞬でとび良い塩梅に乾く。そして、
「『爆散の粉塵』!」
「「「きゃぁぁぁっ!!」」」
軽い爆発音と共にパンが細かく弾けたんだ。
しかし粉となったパンは客のところまで飛び散らず途中で止まり、風に流されるようにアルデの前に集まる。
「こんな感じで作ります! 皆様真似してみてくださいね!」
「出来るかっ!!」
「凄い、魔法の精度だ!」
「アルデちゃんが、こんな魔法使いだったなんて!」
「アルデちゃん、可愛いよー!!」
「アルデちゃん天使だーー!」
所々からアルデの称賛の声が挙がる。
アルデの周りを飛び交う個体と液体は幻想的に見え、そして意味不明な光景になっている。
「さて、ここからメインですよ! 空中に浮かぶ黄色い……いや、黄金の液体をご覧下さい!」
空中に浮かぶ黄色の液体である油が、アルデの前で20センチ程の厚さで2メートル程の長さに整えられる。
そして、
「『地獄の業火』!」
炎の魔法によって油の温度を上げていく。
うん! 良い感じだ!
そして衣に身を包んだ肉や野菜がアルデの目の前に均一に並んでいく。しかし、それはまだ串が刺さっていない状態だ。
つまり、ここからのメインは、
「さて、ラストスパートじゃ! 『操凛の風嵐』!」
アルデの目の前に数百の串が並ぶ。
それは数百の剣が浮かび降り注ぐ刃の様に……。
「ふっ!」
アルデが手を振り、その声と共に串が一斉に並んだ衣を纏った肉に刺さっていく。
「では、いくのじゃ!」
そしてそれを良い温度まで上がった油に入れていく。
「「「おおっ!」」」
ジュワーと目と耳を楽しませる音。香ばしく香る鼻腔をくすぐる香ばしい匂い。そして狐色に染まっていく串カツ達。
その匂いと見た目にお客から声が上がる。
「さあ、完成だ!」
「ふむ!」
アルデが串カツを油から上げていく。
狐色に染まった衣が、これが串カツだと主張する様に、鼻腔を擽る香ばしい匂いを放つ。
浮かんだ串カツはそのまま客の目の前に運ばれていく。
串カツだからこそ、皿がいらないから出来る事だ。
「皆の者! 食べるのじゃ!」
「「「うおぉぉぉぉぉ!」」」
その一言で客達は串カツを食べ始める。
「これだ! この味だ!」
「串カツうめー!!」
「作り方も凄かったけど、串カツの味も変わらず美味しい!」
「やっと食べられたよ!」
「アルデちゃんは女神だー!!」
歓声が聞こえる。
そう、これが聴きたかったんだ!
串カツに喜ぶ人々の声! それが一番のスパイスだ!
「ふう、疲れたのじゃ」
「アルデお疲れ」
作り終わり椅子に座っているアルデに串カツを持っていく。
「中々の作業だったぞ? もう、調理器具が無い時しかやらないのじゃ。あむ……美味い!」
「そりゃそうだよ。あとは俺達がするから休憩してていいぞ」
そして俺は「アイテムポーチ」からソースが入った壺を数個取り出す。
「あとはこれだな。ティオルリーゼはこれ持って客の中歩いて来てくれ」
「わかったが、それはなんだ? 黒い液体?」
「スノハラ! 妾にも渡すのじゃ!」
「アルデはマイソース持ってるだろ?」
「舐め尽くした!」
まじか……!
「お、おう……じゃあ、これだけ渡しとくわ」
アルデに1壺だけ渡す。
「うむ!」
「で、これはなんだ?」
「それはソースだ。串カツを付けて食べるものだな。まあ、とにかく2つぐらい持って歩いてくれたらいい」
ティオルリーゼに蓋を開けたソースの壺を2個持たせる。
「歩くだけでいいのか?」
「ああ。歩いていればわかる。あと、人には手を出すなよ」
「ん? ああ、わかった」
俺の言葉に疑問符を浮かべながら、ティオルリーゼがソースの壺を持って客の下に向かって行く。
その瞬間、
「ん!? この匂いはまさか!!」
「お姉さん! それは!」
「ソースだ! ソースが来たぞー!!」
「念願のソースだ!」
「待ってました!」
ティオルリーゼを囲む様にソースに向かって群がっていく。
「な、なんだ急に!? ちょ、ちょっと待て! き、貴様ら、ま、待て……!?」
「ソースだー!!」
「おい! 2度付禁止だぞ!」
「わかってるよ!」
「あー! うめーー!」
ソースに向かって串カツを持つ手が数十と伸びる。
その光景にティオルリーゼが唖然とした顔で棒立ちになる。
「ふっ、流石ソースってとこだな」
俺はティオルリーゼの驚いている顔に満足する。
「まあ、これで騒ぎも無くなるだろうし、串カツもより浸透するだろうな」
「おいスーさん、こうするとは思わなかったぞ。それにしても、すげーなアルデの嬢ちゃん!」
「そうですね。人が集まってるからこそ出来る事ですね。集める必要が無かったのはいいです。それにアルデちゃんがここまでの魔法を使えるとは思いませんでした。その年で宮廷魔法使いレベルですよ!」
「そうじゃろ、そうじゃろ? 妾は凄いのじゃ! もっと褒めるが良いぞ!」
「凄いな嬢ちゃん!」
「流石です!」
「ふははははっ! そうじゃ、そうじゃ!」
アルデがハマさんとサッさんに褒められて上機嫌になる。
そのまま褒め続けて気分良く串カツを作らせよう。




