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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第2章「邪龍の魔王」

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20話 串カツ屋のピンチ②



 ……要約すると、あの油屋のおっさんは初日から来たらしい。

 それも自信を持って俺に店を任されたと言いながら、最終手段であったソースを売りに来たらしい。

 しかも売り方が悪かった。

 俺が伝えていたのは、量を少なく小分けにしたソースを1人の数量を決める事で客に均等に行き渡る様にすることだ。数が無いから少しでもみんなに行き渡る方が良く、皆が手に取れれば文句が少なくなる。

 しかし、油屋のおっさんはそれを初日に売り出し始めた。……個数制限なしに。


 それを見たハマさんとサッさんが止めたのだが、目を離した隙に売出し在庫を一瞬にして消した。

 それも俺が設定していた倍の価格でだ。


 そして起こったのは、ソースが足りなくなった事で始まる、第一次ソースショックであった。

 まあ、第一次ソースショックは冗談だとして。


「でも、ソースだけなら客も別に我慢するだろ?」


 ソースが無いだけでここまでなるとは思わない。


「そうなのですが……これは私にもわかりません。今日来たらこうなっていたんですから。すみません」


「オレも今日だけは外せない売り出しがあったからな、すまん、俺の監督ミスだ……」


「……いや、俺のミスだ。迷惑をかけた」


 そう言い、2人に頭を下げる。

 あの油屋のおっさんを起用した時点で俺のミスなのは確かだ。

 それにここは俺の店だ。対処は俺がしなければならない。


 そして、後ろにいたアルデに声をかける。


「アルデ! 少しだけだけどこの場をお前の力で治めてくれないか? 少しだけでいい!」


「妾がか? 面倒くさいのじゃ」


「後でお前の好きなものを作ってやるから!」


「わかった。妾の魅力で治めてやろう!」


「頼むぞ!」


 簡単にアルデの協力を得られた。


 そしてアルデが集まっている人立ちの後ろに立ち、叫ぶ。


「皆の衆! 妾が帰ってきたぞ!!」


「ん! アルデちゃん!?」

「アルデちゃんだ!」

「嬢ちゃんが帰ってきたぞ!」

「アルデちゃん、風邪は大丈夫なの?」

「アルデちゃーん!!」


「大丈夫なのじゃ! それに妾が帰ってきたからもう安心するが良い! 美味い串カツを食わしてやろうぞ!」


 アルデの一言で周りの声がアルデに向く。そして歓声が上がる。


 よし、これで大丈夫だろう。さすが看板娘をしてるだけはある。


「主、我はどうしたらいい?」


「ティオルリーゼはこっちに来てくれ」


「了解した」


 そして、屋台の中にいるおっさんに声をかける。


「おい、油屋のおっさん!」


「っ!? お、おお! スノハラさん! やっと帰ってきたのか! 助かった、本当に助かった!」


 俺の顔を見て安心した顔になった油屋のおっさん。

 おっさんにそんな顔で見られても嬉しくも何にもないが、この数の客に囲まれてるのは可哀想なところもある。

 そんな事よりこの現状について聞く。


「単刀直入に聞くが、ソースだけでこんな事にはならないだろ? 何やらかした?」


「……っ! いや、何も……」


 図星を突かれたのか、一瞬油屋のおっさんの顔が曇り言葉を濁すが、


「……はぁ。今なら怒らないから、正直に言ってみろ? な?」


 俺は冷静に淡々と質問する。

 この店を頼んだ俺がここで怒るのはお門違いだ。何を言われても我慢しよう。


「……そうか、そうなら……」


 俺の目を見て罰が悪そうに顔を歪めながら口を開いた。


「……串カツを作って、売った」


「……は?」


 その言葉に一瞬俺の思考が停止した。

 しかし、すぐに頭を回すのだが……


「……ちょっと待て、串カツ? を売った?」


「いけると思って……」


「なんで!? お前は馬鹿か!?」


 思わず怒鳴ってしまった。

 と言うか、これを反射的に怒鳴らない奴はいないだろ。


「う、売ったのですか……? まさか、あれを……?」


「まじかよ……」


 隣に立っていたハマさんとサッさんも驚いている。


「2人は知ってるのか?」


「はい。あれは串カツとは呼べない代物でした……」


「ああ、やばいぐらい……まずい……」


 その言葉に俺は絶句する。

 やばいぐらいまずいって……揚げ物でそれって……。


「……お、俺にも見せてせてくれるか?」


「わ、わかった……」


 そして、串カツらしき黒い物体を持って来た。


「……ちょっと待て。これはなんだ?」


 全くもって串カツには見えない。黒いこげた物体が串に刺さっているだけだ。

 まさかと思っていたが……。


「串カツ、です……」


「まじかぁ……」


 ため息が体全体からこぼれた。


 言ってた通り串カツには見えない。

 しかし、一度は信じてみよう。一度も作り方を教えていない状態で、このおっさんが作った串カツを。確実に失敗している串カツらしき物を。


「あ、あむ……っ!!!」


 そして一口入れた瞬間に俺の目がはち切れんばかりに見開いた。


「ど、どうですか……?」


「ど……」


「ど……?」


「どうですかもクソもないわぁ!! 不味すぎる! いや、不味いじゃない! これはただのこげた肉だろうが!! 食えるかぁ!!」


 俺は勢いで叫んでいた。

 ……こんな料理始めて食べたわ! なんでそんなベタなことが起こるんだよ! 死ぬかと思ったよ! 魔王と戦うよりハードだったよ!

 いや待て待て待て! これを売り物にしたとか俺の店を殺人店にするつもりか!!


「なんで、出来ない事しようとしたんだよ! ソースの売り方も教えただろ! 串カツまで手を出すとか、あんたは馬鹿か? いや、あんたを選んだ俺が馬鹿だったのか!?」


 ついつい叫んでしまった。怒らないと言ったのに……いや、これを食って叫ばない方がおかしい!


「す、すまん……」


「はぁ……いや、考えると全ては俺が悪い事になるのか。お前を雇ったのは俺だからな……。怒りたいが怒るのはおかしい事だよな。逆に謝るわ、すまん」


「いや、どうしてスノハラさんが……」


「いい、俺の考えが甘かっただけだし。まあ、出来ない事はしない方がいいよ。あと、行動するなら周りの言う事を聞いた方がいい」


「はい……」


「以上」


「え、えっと……それだけです……か?」


「ああ。それだけ」


 俺はそれで話を終わらせようとする。


「おい、スーさん!? それだけか!? ここまでやらかしたんだぞ!?」


「そうですよ!? 言う事を聞かずにここまでしたのは流石にどうかと……」


 それで終わらせた俺に対して2人が疑問をぶつけてくる。


「いや、俺の店の事だし、全部の責任は俺にあるからな。まあ、これだけで終わってるならまだ大丈夫方だろ?」


「……大丈夫、ですか?」


「ああ、大丈夫。逆にこの状況を利用できる。いや、利用する!」


 俺はニヤッと笑いながら答える。


「利用する? どう言う事だ?」


「まあ、見ててくれ!」


 これだけの人がいるというのは都合がいい。集める必要がないのはいい。

 商売で1番大変なのは集客だ。


 そして、俺は店の前に立ち、話し始める。


「お集まりの皆様! この度はご迷惑をお掛けして申し訳ございません!」


「なんだ、なんだ?」

「串カツのスライムさん?」

「おお! 帰って来たのか!」

「あんたのところのおっさんがやらかしたぞ!!」

「串カツを食わせろー!」

「アルデちゃーん!!」


 アルデを見ていた人達が俺を見て声を上げる。


「安心してください! もちろん今から串カツを食べていただきます! 希望のソースもです!」


「本当か!」

「あんたかアルデちゃんが作るんだろうな!」

「やっと食えるぞ!」

「アルデちゃーん!」


「勿論! それと今回は特別な事も見せましょう! それを観てくださった方には無料で串カツを食べて頂きます!」


「本当か!」

「無料で!?」

「まじか! やったぞ!」

「いつもの作ってくれよ!!」

「やったのじゃ!!」


 俺の言葉に集まっていた人から歓声が聞こえる。

 ついでにアルデの声も聞こえたが、お前は作る側だ。


「という事で皆様。家族やお友達を連れて来てくださって構いませんよ? それに今来てくださっている方には優先でこのポテチをお配りいたします!」


 そして「アイテムポーチ」からポテチを取り出して見せる。


「おお! ポテチか!」

「あれはつまみにいいんだよな!」

「お菓子にもいいよ!」

「やったのじゃ!」

「アルデちゃん可愛い!!」


 また歓喜の声が聞こえる。ついでにアルデの声も聞こえた。


「だから、アルデは配る側だ。こっち来い」


「ぬあっ」


 お客と同じ様に喜んでいるアルデの首根っこを掴み連れてくる。

 そして隣にいたティオルリーゼと共にポテチが入ったボウルを渡す。


「はい。アルデとティオルリーゼはこれを配って来てくれ。つまみ食いするなよ?」


「むっ! ずるいぞ! 妾にも食わせるのじゃ!」


「なんだこれは?」


「ポテチだ。食べ物なんだけど、これが終わったら食べようか。って事でアルデ、これからする事を手伝ってくれたら串カツとポテチの出来立てをたらふく食えるぞ? 今食べるより後での出来立ての方が絶対美味いだろ?」


「なんじゃと!! その通りじゃ!! わかったのじゃ! では配ってくるぞ! 行くぞトカゲ!」


「トカゲではない! それに我に命令するな!」


 言い合いながらアルデとティオルリーゼは客にポテチを配りに行った。


「さて、俺も準備するか」


「な、なあ、スノハラさん。何するんだ……?」


「そうだぞ、スーさん! 今から何するんだ?」


「この状況を利用するとは、どういう事でしょうか?」


 少し後ろで見ていた3人が質問をしてくる。


 この状況、つまり人が集まっている状況を利用する。加えて今から無料で食べれると言えばもっと人を集めてくるだろう。

 そこで串カツを食って貰えれば、より串カツの美味さを知ってくれるんじゃないだろうか?

 俺の串カツはこの街に割と浸透しているが、より盛り上がるイベントをすればもっと浸透する。


 つまり、ピンチはチャンスに変わる!


「そうだな。今からするのは余興だ」


「余興、ですか?」


「ああ。今から串カツでお客を魅せる!」


 客を魅せるには誰も出来ない事をする。


 そう、こっちにはアルデがいるわけだ!


「串カツ祭りの開催だ!」


 


    

串カツ祭りとは……。アルデが魅せます!

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