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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第2章「邪龍の魔王」

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19話 串カツ屋のピンチ①

まさかのマイナス能力が宿っていたとは……。



「あいつは絶対ぶん殴ってやるが……まじかよ……」


 あのクソじじいを殴る事よりも、俺の中にマイナス能力がある現実が受け止められなくて、その場に崩れ落ちたまま健治達が歩いていくのを見送っていた。


「落ち込むのも無理はないのう。妾もマイナス能力にそこまで大量の種類があるのは初めて知ったが……いや、違う種類の能力を複数持ってる時点でおかしいんじゃがな」


「そ、そうなのか? じゃ、じゃあどんなマイナス能力があるか教えてくれないか!?」


 俺のマイナス能力がやばいと……それに大量にあるって言っていた。

 そんなマイナス能力を持ってるなら、知らないと俺にとって死活問題じゃないのか!?


「嫌じゃな」


 しかしアルデはニヤッと笑い、俺のお願いを却下した。


「はあ!? 意味わかんねえよ! 教えてくれてもいいだろ! おい、アルデ!」


「嫌じゃな」


「なんで!? なんか言えない理由があるのか?」


「理由か? ただ其方に教えない方が面白いからに決まっているからであろう?」


「なんでだよ!!」


 笑いながら言うアルデが幼女ではなく、魔王に見える。

 ……ああ、こいつ、元魔王だったわ。


「……まあ、お兄さん落ち込むのもわかりますが、門の外にいてもアレですし、とにかくここから移動しましょう」


 アルデに対して荒ぶっていた俺の肩をユリアが叩きながら移動を促す。

 健治達が街に入って行ってもう見えなくなってる。


「……それもそうだな」


 悲しみに崩れ去っていた重い体に鞭を打ち、立ち上がる。


 はあ、まじで……この世界に来て以来の衝撃だぞ。

 いや、マイナス能力があるって、ギルドカードの大量スライム事件の比じゃないわ……。


「だが、それでも主は我より強いだろ? そこにいる元「不死の王」にも勝っているではないか。だったら何も問題はない」


 そう胸を張って俺が強いと言い切るティオルリーゼ。

 さっきも言ってた気がするけど、今言われるとその純粋な感情がなんだか救いの手に見える。

 なんかちょっと元気が出た気がする。


「そうだな……とにかく街中に入るか」


「ですね」


 いつまでも街の外にいるわけにはいかないから門に向かい歩いて行く。

 まあ、落ち込んでても仕方ない。

 後でアルデを絞めてマイナス能力は聞くとして、一旦落ち着こう。


 えっと、ここまでの話で大切だった事は……パーティーがあるんだっけか?


「お兄さんはパーティーには付いて行きますか? どちらにしても私はケンジ様に付き添うので行きますが」


「そうだな、パーティーなら行ってもいいか。別に俺のパーティーではないのが癪だけどな。どれだけ弁明しても意味ないんだろ、アルデ?」


「そうじゃな、意味が無い。ただの村人じゃからな」


「……なら、諦めるか」


 ただの村人って言葉は聞きたくないな。

 それにしてもアルデが俺を舐め始めた気がする。

 やっぱりこいつは早めに絞めよう。早めの教育が大切だからな。


「では行きましょうか、多分ギルドの中でしてると思うので」


「わかった。じゃあ向かうか。美味しい物は食べれそうだからな」


「美味いものか! 楽しみなのじゃ!」


「なんだ? 飯の話か? 我も食うのは好きだが、肉はあるのか?」


 話ながら門をくぐっていると、美味い物という言葉に幼女とドラゴンメイドが反応する。


「肉なら串カツがいいのじゃ!」


「またクシカツか? そのクシカツとは何なのだ?」


「ふっ、気にするでない。貴様には串カツの旨味はわからんじゃろうからな?」


「だから何なのだ、そのクシカツとは!」


「お前ら仲良くしろよー。それとティオルリーゼ、嫌でもすぐにわかるから待ってろ」


「そうなのか? 主がそういうなら」


 そんなやり取りをしながら俺達は街の中を歩いていく。

 すると、


「お、おい! スーさん!!」


 向こうからおっさんが俺の名前を呼びながら走ってきた。


「ん? ……ハマさんか? おおっ、どうした? 久しぶりだな!」


 久しぶりと言っても1週間ぐらいだが、走ってきたハマさんに挨拶をする。


「はあ、はあ、やっぱりスーさんだ。この騒ぎで串カツって声が聞こえたから、走って来たんだが……久しぶりだな」


「で、どうしたんだ? 走って来たって何かあったのか?」


「そうなんだ! って、挨拶してる場合じゃねぇんだよ! 串カツが、串カツ屋が大変なことになってるんだよ!」


 ハマさんの口から出た衝撃的な言葉に一瞬思考が止まるが、


「……は? 串カツ屋が大変なことって……どう言うことだ!?」


「とにかく来てくれ! 俺とサッさんではどうにかできないんだ! あのおっさんはなんなんだよ!」


 ハマさんの声と顔は真剣だ。何も冗談を言っている様ではない。

 そにしても、あのおっさん? まさか、あの油のおっさんが何かしたのか!?


「わかった! すぐ行く!」


 即答する。

 異常事態だと、そう言ってユリアに顔を向ける。


「って事で、パーティーには行けそうにないわ! ユリアだけ行ってくれないか? どっちにしてもユリアは行かないとダメだろ?」


「わ、わかりました。ケンジ様には私から伝えておきます」


 ユリアに魔王討伐の事は任せる。

 それに俺のパーティーじゃないからそこまで楽しみでもない。


「ハマー。何が起こっておるのじゃ?」


「アルデの嬢ちゃん……嬢ちゃんの力も必要になるだろうな」


「ふむ……?」


「おい主? 何があるのだ?」


「俺にもわからないけど、やばいらしい。とにかくティオルリーゼは付いて来ればいい」


「串カツの事じゃ! 貴様は何も考えなくていいのじゃ!」


「クシカツ? またクシカツの話なのか!?」


「行けばわかる。とにかく向かうぞ!」


「ああ!」


「行くのじゃ!」


「クシカツ……?」


 そして俺達は走って屋台外に向かった。





「なんだこれは……」


「何が起こってるのじゃ……」


「人がいっぱいだな?」


「やばいだろ……? 任された俺が何も出来ていないのが不甲斐ない……」


 俺の目の前に……俺の屋台の前に大量に人が並んでいた。

 いやこれは、並んでいるというより屋台の中にいるおっさんを囲んでいる方が正しい。

 普通だとこんなに人がいたら嬉しい事なのだが、今回は何というか全員の顔が不満と怒りに燃えているように見える。


「なんだこれは!!」

「串カツだと思ったのに!!」

「返せ! 金を返せ!」

「アルデちゃんはどこだー!!」


「み、皆さん! 落ち着いて、落ち着いて下さい!」


 それを黒い執事服を着た男がまとめようとしている。

 ……と言うか、顔を青くして必死に声を出している。


「……あっ! スノハラさん!? 帰ってきてくださったんですか!!」


 俺達が来た雰囲気を感じたのか、俺の顔を見つけた執事服の男が走ってくる。

 やっぱりサッさんだ。


「サッさん! どうしたんだ、この人だかりは!?」


「よかった……スノハラさん。貴方でなければこれは治められないですよ……」


 俺の顔を見ると安心したように胸を撫でるサッさん。


「私が見に来た時にはもう……。訳がわからないんです。ハマンドもですよね?」


「ああ。俺も市場から帰ってきたらこうなってたんだ。それで、門の方の騒ぎを聞いて向かったらスーさんがいたんだよ。とにかく早く帰ってきてくれて助かった!」


「そうか……」


 ティオルリーゼに乗って帰ってきたから普通より5日ほど早かったからな。


「とにかく、簡単でいいから状況を教えてくれないか?」


「わかる範囲ですが伝えます。しかし……これはスノハラさんの責任もあるかもしれません……」


「ど、どういう事?」


 サッさんに見られ少したじろぐ。

 俺の責任? 俺がいない間に起こっている事だから、俺が理由というのは……いや、一つだけ思い当たる事は、あるが……。

 ハマさんも言ってた……。


「はっきり言いますと、貴方が連れてきたあの男が原因です……。あの男は何ですか?」


「まじか……」


 その言葉に俺は頭を抱える。


「そうだぞ、スーさん。あの男が来てからやばい事だらけだ! 客の不満が爆発するばかりだったぞ!」


「なにしでかしたんだ、あいつ……」


 客の不満が爆発するって……何したらそうなるんだ?


「俺はあいつにはハマさんとサッさんの言う事を聞けと言ってたんだけどな……。しかも、串カツの客が耐えきれなくなったら、2人に声をかけるようにって……」


「……だよな? いや、オレもそう聞いてたから、そう動こうと思ってたんだけどな?」


「そうです。普通ならここまでの事になりません。なので、私もその様に聞いておりましたから……あの方と話に矛盾が……」


「どう言う事だ? 詳しく教えてくれ」


「この状況はわかりませんが。今日までの事を話します……」


 そう言ってサッさんが話し始めた。


 


    

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