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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第2章「邪龍の魔王」

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18話 あのクソじじいから与えられた真実



「きゃぁぁぁぁ!!」


 急加速から地面スレスレで停止する。


「着いたぞ、主」


 ティオルリーゼはそれまでの勢いとは違い、静かに地面に降り立つ。

 背中から飛び落ちることもなく、全く違和感のない停止だった。

 これが魔法の効果というのなら、魔法はとても素晴らしいものである。


「人間が近づいてくるぞ? どうする?」


「そうだな……」


 ティオルリーゼに言われて俺も門の方を見る。門からは見える距離だが、降り立つのに影響がない様に少し離れた所を指定した。

 それにしても集まっている人数が少ない。急な事で対応できる人数が少なかったのだろうか。

 まあ、それでもドラゴンに対して向かってくるのは凄い事なのだろう。


「ユリアリア様、ここは俺が行きます」


 そう言って健治が降りて行く。


「健ちゃん待って!」


「俺も行くぞ」


 健治に続き、早紀と雅人も降りて行く。


「妾も降りるぞー」


「私も行きます」


 アルデとユリアも降りて行った。それに釣られて俺も降りることにする。

 ティオルリーゼから降り、門の方に目を向ける。

 こっちに向かって来ているのは、白い髭を生やした体格の良いおっさんを先頭に十数人の冒険者達だ。


「総員構え!!」


 そして魔法が当たる距離まで来ると構え始めた。


「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」


 その冒険者達の行動に焦ったのか、ティオルリーゼの陰から健治達が慌てて出て行く。


「誰だおま……っ!? あ、貴方は……勇者ケンジ様!?」


 先頭に立っていた白い髭を生やしたおっさんが声を上げながら一歩近づく。


「ああ。貴方はこの街のギルド長だな? すまないが、構えを解いてくれないか?」


「構えをですか……わかりました。総員、構えを解け!」


 ギルド長の一言で全員が戦闘態勢を解いた。

 そして1人だけ健治に近づいて来て、頭を下げる。


「覚えてくださり光栄です。おっしゃる通りこの街のギルド長です。しかし、ケンジ様そのドラゴンは……?」


「これはちょっと事情があって……」


 ギルド長がドラゴンを指差して質問をする。

 それに対し健治はばつが悪そうな顔をする。

 しかし……。


「……なるほど! 流石勇者ケンジ様! まさかドラゴンまで従えられるとは!」


「……は?」


 ギルド長が的が外れた答えを言った。


「ドラゴンが向かって来ると聞いた時はこの街の終わりかと、絶望かと思いましたが、ケンジ様のドラゴンだったとは! 素晴らしいです!」


「なっ!? いや、違うぞ! このドラゴンはあいつの……」


「何をご謙遜されているのですか! この様な事、貴方以外に誰ができるのですか?」


「だから、俺じゃなくて……」


「成る程! 全て言わなくても私はわかっておりますよ! ケンジ様がやってきた方向、そして貴方が魔王城に行っていたのは知っております!」


 ギルド長が右手を突き出して健治の言葉を遮る。


「実は、ドラゴンが来ることはギルドの魔力感知で確認し先程わかった事なのですが、その前に魔王城の巨大な魔力が消えたと王都から報告があったのです! それがどう言う事かと言いますと!!」


 健治の話を全く聞こうとしないギルド長が両手を広げて叫ぶ。


「つまり、ケンジ様が魔王を討伐したわけですね!」


 その瞬間後ろの冒険者達から歓声が上がった。


「流石ケンジ様! 一度は討伐できなかった魔王を討伐するとは、素晴らしい! これぞ勇者様! 私は貴方に会えるまで生きていて大変喜ばしく思います!」


 興奮気味に流暢に話すギルド長。

 しかし、健治がその言葉を否定する様に、


「だから、俺じゃなくてあの人のドラゴンなんだ! 魔王も俺は討伐していない!」


 俺を指差しそう言った。


「っ!? そんなわけがないです。貴方ではなく、そこにいる男がしたと!? その男が……ん? 何ですか! 串カツのスライムじゃないですか! はははっ! 面白い冗談ですね! そこにいる男はスライムごときに負ける事で有名な串カツ屋の亭主ですよ? ドラゴンを従えれるわけがありません。それも魔王まで討伐とは、あり得ませんよ! はははははっ!」


「「「はははははっ!」」」


 笑いながら言うギルド長と周りの冒険者達。

 何を言ってるんだと思いたいが、経歴だけ見ると正しい。俺がドラゴンなんて従えられるとは思わないだろう。

 ましてや魔王討伐なんて。


 しかし、健治がここまで言ったんだ。俺も言った方がいいだろう。


「ちょっと待ってくれないか? このドラゴンは健治の言う通り俺が従えているんだ。だから証明しろと言われれば、何かする様に命令させ……」


「はぁ……流石にその嘘はいけませんよ?」


「……は?」


 俺の言葉に被せてため息をつき、そいつは俺の言葉を否定した。


「ケンジ様が貴方のドラゴンと言っているのは少しでもこの場を和ませるため。ドラゴンがいる事で緊張感が凄い事になってますが、それを緩和させる為です。その結果この通り私達も笑えている。しかし、その優しさを横取りするのは筋違いです! そうですよねケンジ様!」


「いや、そう言うことじゃ……」


 そいつは健治の言葉も聞かず、自分の考えを話し続ける。


「ケンジ様! そこまでこの串カツのスライムの手柄にさせようとするとは! 何があるか分かりませんが、優しすぎます! しかし、この私には通じませんよ!」


「いや、だから……」


「ほほう! わかりました。あくまでも仲間だと言うのですね! そこまでおっしゃるなら串カツのスライムも一緒に魔王討伐のパーティーに参加させましょう! それで良いですね!」


「ちょっと……」


 健治はギルド長の勢いに負けて口を閉じそうになるが、俺は違う!


「いや、良くねーよ! 全く話を聞いてねぇじゃねーか! なんで健治の手柄になってるんだよ! 俺は……」


 間髪入れずに否定をするが……。


「そこまでです! せっかくケンジ様の慈悲なる考えを無我にしてはいけません! ただの串カツ屋の亭主が戦えるわけがない! さあさあ、ケンジ様! ドラゴンは門の外でよろしいですね。パーティーの準備を直ぐにさせましょう!」


 俺の言葉に被せ否定する。

 そして前にアルデを撃退した時と同じように、健治達が連れて行かれて行く……。


「なんだそれは……」


「お兄さん……」


 不満と苛立ちが湧き上がる。


 またこのパターンだ。俺の手柄を健治に横取りされる。

 今回は健治も否定したにもかかわらず、健治がしたと強制的に決められた。

 何かの陰謀とも思える程の行動だ。


 しかし、健治の所の早紀が話していた通りになっている……。


「……どういう事だよ」


 ギルド長もそこにいた冒険者達も誰も俺を信用する素振りもなかった。

 というか、健治しか目に映っていなかった様にも思える。

 俺に対して興味も何も持っていないような……。

 違和感しかない。


「ほう!」


 その時後ろでアルデが笑い始めた。


「ふははははっ! なんじゃ! そういう事か! ふははははっ!」


「な、なんだよ!?」


 笑いだすアルデに強く突っ込みをいれる。


「いや、話がおかしいと思っていたので其方の能力を見たら、納得したわけじゃ!」


 俺の能力を見た!?


「ど、どう言う事だ!?」


「其方の能力に「村人C」があるのじゃが……」


「……は?」


 なんだそれ!? そんな能力俺知らないぞ!?


「その能力によって、其方はただの村人にしか見られない。特に周りに存在が強い勇者のような者がいたら、よほどの事でない限り本人が見ていない手柄は信じてもらう事ができないと言う能力じゃ」


「……ちょっ、ちょっと待て。それって……」


 いや、まさか……。


「つまり、世にも奇妙なマイナス能力じゃな!」


「はぁぁぁぁっ!? えっ!? はぁぁっ!?」


 驚きのあまり街まで響く程の声で叫んでしまった。


 う、嘘だろ……!? マイナス能力が俺に宿っているだと……?

 いやいや、待て。ちょっと待て。理解が……。


「何というか、笑える……いや、笑えん事じゃな。流石に妾も同情するぞ!」


 アルデが笑いながらそう言う。


「お兄さんにそんな能力が……」


 ユリアまでも同情の目で見ている。


「そんな能力があっても主の強さは変わらないぞ!」


 いつの間にか人間の姿に変わっていたティオルリーゼがフォローする様に言っているが、今の俺には聞こえない。


「あ、あり得ねぇ……」


 しかし思い出してみる。

 確か「村人C」という名前はあのクソ爺のところで見た気がする。AでもなくBでもなくCだった。

 でも確かに俺はあの時、クソ爺の前にマイナス能力の束を置いてきた筈だ。

 だから……。


「……っ!? いや、まさかな……」


 あの扉の中に入った時、クソ爺に投げつけられたカードがある。

 俺が拾ったのは「流動体攻防無効」のカードだった筈だ。


 俺はあの一枚しか見て……。


「嘘だろ……」


 痛かった……。

 確かに俺の頭に当たった物の衝撃が思ってるよりあって、一枚だけ当たった感触じゃない。

 それに塊が床に散らばっていた気もする。

 でも拾ったのは「流動体攻防無効」だ。


 だから……まさか「村人C」があるって事は……まさか、他に散らばっていたカードも……っ!?


「まさか、俺の中には……他の能力も……」


「そうじゃな。其方の強さの謎も解けた。意味がわからぬぐらい大量の能力を持っていたぞ?」


 アルデが喋り始める。


「それもプラスのエグい能力から、マイナスのエグい能力までなっ!」


「嘘だろ……? 嘘だろ……!? なあ、アルデ?」


「嘘ではないぞ?」


「嘘だって言ってくれぇぇぇぇっ!!!」


 俺の魂の叫びが出てしまう。


 何故だ! なんで大量に……。

 いや待て、ギルドでもわからなかった事がどうしてアルデにわかる?


「そうだ! アルデはなんで俺の能力がわかるんだよ!」


「ん? 妾は最強のエルダーリッチにして「不死の王」魔王アルデミスじゃぞ? ……元じゃが。相手の能力値ぐらい見るのはスライムを倒す事と同じぐらい簡単じゃ」


「なっ……!?」


 まさか、看破のような魔法があるのか!? だったら!


「なあ、俺にも教えてくれよ! 俺が自分で自分を見てやる!」


「……残念じゃが、それは無理じゃな」


「な、なんでだよ!」


 アルデが残念そうに、考える様に話す。


「妾でも其方のマイナス能力は初めて見たものばかりじゃが……其方の能力に「メガネ」という能力があるんじゃが。それが其方がコンタクトという物を身につけない限り視覚系の魔法は使えんみたいじゃ。補助魔法による視力だけの上昇はできるのじゃが……」


「……な、なんだそれ!?」


 なんだよそれ! 「メガネ」って言ったら眼鏡でいいじゃねぇか! なんでコンタクトなんだよ!

 俺が前世ではコンタクトだったからか!? 眼鏡もかけてたよ!?

 訳わかんねーよ!!


「……ごほん! 話を戻すが、つまり其方はこいつらの前で爆発的に印象に残る事をしない限り永遠に強さを認めさせられないわけじゃ」


「なっ、なっ……」


「其方は、ただの村人なのじゃ」


「なん、だ、と……」


 そして俺は崩れ落ちた。

 何もかも、頭の先からつま先まで灰になるぐらい粉々に崩れ去った。


「案ずるな、妾がフォローをしてやるぞ? ふははっ! スライムが弱点か!」


「おま……」


 アルデに弱点がバレた。


「大丈夫だ主! 我も力になるぞ!」


「……ティオルリーゼ」


 戦いの事しか考えていない、アホそうに見えるティオルリーゼ。


「お兄さん……私も、何かあれば言ってください! お兄さんには助けられましたから! ……やっぱりスライムは手段として有効だと……」


「ユリア……」


 最後の呟きは聞かなかったことにしたい。


「くそぅ……」


 ここで全てが分かった。

 俺の……春原勇の能力はプラスの能力だけではないと。

 マイナスの能力も宿っていると。

 その能力達と一緒に生きていかないといけないと。


 そして俺は心に……魂に誓った。


「絶対あのクソ爺はぶん殴ってやる!」


 と。




     

これでスノハラの功績が健治に取られた理由が繋がりました。

まさかの「流動体攻防無効」以外のマイナス能力が宿っているとは思っていなかった……。と言うかなんだよ「村人C」って! Aでもないのかよ!と思うスノハラです。

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