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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第2章「邪龍の魔王」

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12話 「邪竜の魔王」①



「きゃぁぁぁ……」


 その爆風が俺達を襲う。

 凄まじい威力の魔法がぶつかった衝撃にユリアには耐えられない様だ。


「ちょっと離れるぞ」


「……お兄さん」


 俺はユリアを抱えてその場から離れる。

 この魔王の間から出ていけばユリアはかなり楽になると思うのだが、俺がこの場から離れたくないので部屋の端で守ることにしよう。

 

 流石にユリア一人を置いておくわけにはいかないし、さっき守るって言ったばかりだからな。

 しかしこの戦いは見ものである。


「ありがとうございます……」


「うん。ちょっと離れた所で見ておくか」


 俺はユリアの前に立つ。


「はははっ! 流石だな! 『雷竜の咆哮』!」


「ふん! 黙っていろ! 『堅凱の岩城』!」


 ドラゴンの雷の咆哮がアルデの岩の壁に阻まれる。


「……なん、だと……!?」


 そして、その光景に俺は驚きを隠さなかった……。

 いつの間にかドラゴンと共に空中でアルデが戦ってる事に。


 くそっ! アルデのやつ、また俺が見ていない間に飛んだだと!

 毎回飛ぶ瞬間を見れないなんて、このままだと俺は一生飛べない気がする!


「その姿でも魔法の威力は凄まじいな! しかし、ジェミラの魔力だろう、そんな大技連発してもいいのか?」


「心配するでない。またまだ余力はあるからのう! 『爆嵐の刃風』!」


「そうか! なら楽しませてくれ! 『岩竜の斬凱』!」


 アルデから放たれる一つに集中した風の斬撃を硬質化された爪で切り裂くドラゴン。


 こいつらの攻撃は一つ一つが全て一撃で殺しにかかっているとわかる。

 ぶつかり合う爆風で魔王城が悲鳴を上げている。


「ま、魔王城が……」


「こうなるのは決まっていたことだ……」


 魔王城が壊れていくことに声が出ないジェミラに対し、冷静に呟くグレイバルト。


 グレイバルトもジェミラもその場から動いていないが、流れ弾を食らわないのだろうか。

 そんな事を考えながらも、この攻防に対応できないだろうユリアに声をかける。


「大丈夫かユリア?」


「……はい、お兄さんが前に立ってくれているのでかなり楽になっています。これもお兄さんの力ですか……?」


 まあ、ユリアに直接ダメージが行かない様に「絶永結界」を発動している。

 しかし、こうしていると俺自身が戦いに行く事が出来ない。

 そう考えたら、やっぱりユリアは連れてこない方が良かったのかもな。

 このままアルデが倒してくれたらいいんだけど……。


「そうだな。まあ、俺の後ろにいる限りは大丈夫だろう」


「それは安心です……でも、アルデちゃんに加勢しなくていいんですか?」


「……今のところは大丈夫、だと思いたいんだけど」


 アルデとドラゴンの攻防は白熱し続けている。魔王城の壁は綺麗に無くなっているぐらいに。

 そりゃここまで毎回壊されたら、グレイバルトも面倒くさがるわけだ。

 今の所アルデは劣勢というわけではないが、俺の予想だと……。


「どうした巨大トカゲ? 貴様は咆哮するだけしかないのか?」


「はっ! お前が遠距離攻撃ばかりしてるからだろう!」


「ふん! なら、近づいてやろう! 『瞬光の軌跡』!」


 アルデの姿が一瞬消え、ドラゴンの背中に現れる。そして魔力が膨れ上がる。

 アルデの周りに目に見える程の雷が纏わり付く。


「ゼロ距離からの極大魔法じゃ! 『雷皇鉄槌』!」


「はっ! そう来るか! 『岩龍凱騎』!」


 アルデが数百の雷を束ねた様な巨大な雷をドラゴンに向かってゼロ距離で放つ。

 しかしドラゴンの身体が光り全身が鋭く光る黒い鱗で覆われ、アルデの雷はドラゴンを突き抜ける事なく分散された。


「ちっ! 面倒くさいの!」


「はははっ! 溜めが足りないのではないか! それにお前の魔法対策はしている! あの魔法を使わない限り私には勝てないぞ?」


 全て後出しだが、ドラゴンはアルデが使う魔法を全て相殺している。

 後出しでもアルデの攻撃を相殺するのはかなり凄いことだ。戦った俺だからわかる。


「あのドラゴン、アルデが弱っているとしても強いな」


「お兄さん……実は、余り世間に出没していなかったからすぐに思い出せなかったのですが、ドラゴンにも魔王がいます」


「そうなのか?」


「ドラゴンの魔王「邪竜の魔王」ティオルリーゼ……。全てのドラゴンの頂点に立ち、世界の半分を消滅しかけたと言う……」


「……は?」


 なんじゃそりゃ!?

 世界の半分って……まじで!? それは強すぎないか!?


「あくまでも噂ですよ。その記述が残っているだけです。そう言うとアルデちゃんも魔王の中で最強クラスですから……」


 アルデが何をしたのか知らないが、そこまで強かったのか。それが今は幼女に……。

 ドラゴンの魔王に幼女の魔王。そして、初老の魔王。魔王には色々な種類がいるんだな。

 これで魔王が3体目だ。

 どれだけ魔王がいるのだろうか。今度聞いてみようと思う。


 しかし、俺って魔王と出会い過ぎじゃないだろうか。この世界に来て数ヶ月で魔王3体目とか、ハードモード過ぎる。

 あのじじいから能力を奪ってこなかったら、たぶん1秒で死んでるな。


 そんな事を思っている間にもアルデとドラゴンの戦いは続いている。


「威力が落ちているただの極大魔法は私には効かないぞ。どうした? 早くあの極大魔法を使え! それともやはり魔力が足りないのか?」


「ふん! 貴様に使う意味がないだけじゃ! それに良いのか? 妾に集中させる時間を与えて。もう魔力は溜めれたのじゃが?」


「はっ! わざと時間を与えたのだ。時間はたっぷりあっただろう! さあ、今の全力を放ってみろ!」


「言われなくてもそうするのじゃ!」


 アルデの魔力が高まり、その瞬間空気が凍る。

 この感覚は、本日二度目の氷の極大魔法。


「永久に眠れ! 『絶対零度』!」


「……はぁ? その技か? 期待し損ねたぞ! その程度、掻き消せるわ! 『竜王の咆哮』!」


 アルデから放たれる全てを凍らせる魔法。

 そしてドラゴンから放たれるのは今までで一番の咆哮であり、全てを消す最上の一撃だろう。


 空中で激しくぶつかり合うエネルギーの塊はその空間を破壊する。

 ぶつかるエネルギーはドラゴンの咆哮に軍配が上がった。


「……なっ!?」


 アルデの極大魔法が掻き消される。


「ぬ……ぬぁぁっ!!」


 そのまま咆哮の余波がアルデを襲う。


「どうしたアルデミス? なぜあの魔法を使わん? あの魔法があるから私はお前と戦いたいのだが……」


「くっ……」


「……そうか使えんのか。はあ……ここまで弱くなったら面白みも失せるな」


 飛んでいたアルデがその場に降り立ち膝をついた。

 それに続きドラゴンが降り立つ。


「お、お兄さん、アルデちゃんが……」


「ああ……」


 アルデが負けた。

 ここまで完全に負けるとは思っていなかった。

 俺が戦ったエルダーリッチーの時より弱くなっているのは確かだ。そう言っても世界最強クラスだと思っていた。

 しかし、現役の魔王には勝てなかった様だ。


「アルデミス様!」


「お師匠様!」


「ここまでだな。グレイバルトも動かずお前も力尽きた。これで終わらせるとしよう」


 ドラゴンの魔力が膨れ上がる。


「さあ、アルデミス。まずはお前からだ!」


「くっ……」


 アルデはその場から動かない。

 ……これはやばいな。


「ユリアちょっとだけ我慢してくれ」


「えっ……?」


 そう言って「絶永結界」を解き、ユリアを抱く様に引き寄せる。


「ちょっとお兄さ……っ」


 俺は魔力を高める。

 そして熱が空気を燃やし、周りが灼熱の海と変わる様に。


「こ、これって……」


 周辺は燃え溶ける様に熱いが、俺自身は熱くない。

 ユリアを抱き寄せたのも俺の周りだけは影響がないからだ。


 右手を構え、ドラゴンに焦点を当てる。

 すると、ドラゴンが跳ねる様にこっちを向いた。


「……っ!? なんだこの魔力は!?」


「……っ!? この魔力! スノハ……」


「『超炎熱砲』!」


 全てを燃やし尽くす炎熱の光線が、アルデに当たらない様にドラゴンへ一直線に向かう。


「はっ! 炎魔法か、驚かせよって! 我には、くら……っ!?」


 一直線に向かう炎のエネルギーの塊はいつもより魔力を込めている。そう簡単には受け止める事はできないだろう。


「……やばい! 『岩龍凱騎』! 岩竜のが……ぐぉぉぉぉっ!!」


 その威力が高いことに気づいたドラゴンは咄嗟に鱗を硬質化させるが、その光線は黒く輝くドラゴンの鱗を容易く貫いた。


「ぐおぁぁぁ……っ!!」


 硬質化されたドラゴンの鱗をいともたやすく貫いた灼熱の光線。

 ダメージは与えた様だが消滅まではいってないみたいだ。


「がはっ……。ど、どう言う事だ!? ドラゴンは炎に極度の耐性があるのだぞ! それを極大まで高めた我の鱗が簡単に貫かれるだと……!?」


 あり得ない事が起こったのだろう、焦る声でドラゴンが叫ぶ。


「お兄さん……」


 ユリアが今にも倒れそうな顔をしている。やはり結界を解いたら辛いんだろうな。

 それに今はドラゴンと相対している形だから威圧が凄い。さっきより辛いだろう。


「アルデ! こっちにこれるか!?」


「う……うむ!」


 俺の言葉にアルデがドラゴンを一瞬見てから俺の方に駆けてくる。

 飛べるほどの魔力はまだ回復してい無い様だ。

 人間に戻った事によって魔力の回復は遅いのかもしれない。


「少しは動けるならアルデ、ユリアを見といてくれ」


「う、うむ。わかったのじゃが……妾も……」


「いや、今のお前ではあのドラゴンは倒せないんだろ? なんか最強の極大魔法も撃てないみたいだし?」


「む……わかったのじゃ。今日のところは引き下がろう。ユリア、少し楽にさせるのじゃ『キュア』!」


 苦しそうなユリアに緑に光る回復魔法をかけるアルデ。そのおかげか少し顔色が戻ってくる。


「アルデちゃん、ありがとう……」


「うむ」


 ……あれ? おかしい?


「……えっ? ちょっと待って!? お前回復魔法使えるの!?」


「使えるが、どうしたのじゃ?」


「使えるが……って、回復魔法って神聖魔法だろ? 元エルダーリッチーのお前が使えるはずが……」


 簡単に回復魔法を使った事に驚くが、それに対してアルデはキョトンとした顔で答える。


「エルダーリッチ―と言っても妾は元々人間じゃぞ? それも「大賢者」じゃ。大抵の魔法は使える。ただ、リッチーになった時に神聖魔法は使えん様になっただけじゃ」


 そ、そっか、こいつも「大賢者」なんだな。

 リッチー、ましてやエルダーリッチ―でこの世界最強の魔法使いと言われているこいつが「大賢者」になってないわけない……。

 しかしこいつは今大切な事を言った。


「じゃあ、もうお前は人間と認めたわけだな?」


「……もう、それでいいのじゃ。妾も弱くなったからのう……」


 そう言い落ち込む顔をするアルデ。

 ちょっといつもの張り合いがないのはやりにくいんだが。

 しかし、それは後だ。


「だったら結界的なのも使えるのか?」


「使えるぞ? 今は魔力が少ないから其方の様な結界は使えんが、少しぐらいなら」


「そうか。だったらここでユリアを任せられるな。結界を張ってここで待っててくれ。すぐに終わらせる」


「わかったのじゃ。『結界・豪』」


 アルデが自分とユリアを守る様に薄い水色の結界を周りに張る。

 よし、これで大丈夫だな。今のアルデでも流れ弾ぐらい対処できるだろうし。


「お兄さん……」


「ユリアはそこで俺の本当の強さを見ていてくれ」


 そして俺はユリアに背を向けて、ドラゴンの方を向く。

 さて、今度こそかっこいいところを見せますか!



   

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