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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第2章「邪龍の魔王」

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5話 追いついてから



「うっ、うっ……」


「ごめんごめん。遊びすぎたわー」


「ホントですよ! なんですかあのスピード!」


 速すぎたスピードに放心状態だったユリアが文句を言う。

 いやー、中々馬車を引くのも楽しかった。

 多分あれは時速100キロを超えてたな。そこまでスピードが出たもんだ。

 馬車を引っ張らず単身だったらスポーツカー並みの速さは余裕で出ていただろうな。そして俺は新幹線を超える。

 まあ、初めてこのスピードを感じたら怖いだろうけどな。


「楽しかったのじゃー」


 アルデは終始とても喜んでいたが。


「もっとスピードは出ないのか?」


「これ以上スピードだすの!? 出さないでいいから!!」


 アルデの注文にユリアが必死に止めようとする。


「ユリア落ち着いて落ち着いて。まあ、これ以上は出せないな。馬車が壊れそうだし」


 途中ギシギシいってたから、これ以上出すと空中分解をしかねない。


「そうか、残念じゃな」


「いや、別に普通のスピードでいいから!! アルデちゃんは何でそこまで楽しめるんですか!?」


「妾が本気で飛んだ方が速いのじゃが、他人が操る物に乗るのは割と面白いのじゃ」


「……そうでした。この子元魔王でしたね……」


 その現実についていけない様な顔をしているが、今更だと思う。


「じゃあ、もう一度走るか!」


 俺は馬車を引く為に力を入れる。


「だから普通でいいでからぁ!!」



 って事で、アルデとユリアの間を取って普通の馬車が走るより少し速いスピードで移動する事になった。

 今更だが、やっぱ人が馬車を引くのことがおかしい気がする。


「グギャァァ!」


「むっ? また出てきよったぞ?」


「よし! ふんっ!」


「プギィィ…………」


「ゴギャァァァ!」


「ん? また近づいてきよったぞ?」


「よし! ふんっ!」


「プギャァァ…………」


「……なんなんですか」


「ん? どうかしたか?」


「……もう、いいですよ……」


 何故かユリアが呆れてるが、俺はただ出てきたモンスターを引いているだけだ。

 ユリア達と充分に話せる速さで走っていると、モンスタが俺に向かって来るので、仕方なく蹴飛ばしてるんだが。

 あっちが向かって来るのが悪い。


「……ここのモンスターのレベルは高い筈なんですが……。ワイバーンの時もそうでしたね……本当にお兄さんって強かったんだと再確認しました……」


「そうだろそうだろ。俺は強いんだぜ」


 呆れた様な、諦めた様な言い方だけど、この現状を見て俺の強さを再確認してくれるユリア。

 まあ、それだけでも来たかいがあったかもしれない。


「ん? あそこで誰かが歩いてるのじゃ」


 そんな事を思っていると、馬車の荷台からアルデが顔を出し前の方を指をさした。

 いや俺も前を向いてるから指しているのか見えてないんだけど、その歩いている人物は俺にも見えている。


「ホントだな」


「あっ! あれです! ケンジ様達です!」


 その方向を見たユリアが馬車から身を乗り出す。

 そうか、もう追い付いたか。街を出てから5時間ぐらいしか経っていないけど。


「もう追い付いたのじゃな」


「本当ですね。私は丸1日かかると思っていましたし」


「そうか、じゃあこれで安心だなー」


 そう言いながらそのまま健治達に向かう。




「ん? 健治、早紀、なんか来てないか?」


「そうかな……えっ、本当だ!? 何か来てるよ!?」


「な、なんだあれ!? 馬車……人? えっ、人が馬車を引いてる!?」


「新種のモンスターか!? やばいぞ!」


「ああ! 逃げるぞ!!」



「おーいって、あれ?」


 健治達が何故か怖いものを見たかの様に逃げていく。


「これを見たらそう思うのも頷けますけど……」


「ふははははっ! 妾達から逃げるとはな! 追うのじゃ、スノハラ!」


「おう!」


「えっ!? アルデちゃん!? お兄さん!?」


 何故か楽しそうに言うアルデ。

 あれか、逃げる物に元魔王の血が騒ぐのだろうか。なんとなくだが俺も乗ることにしよう。

 猫がねずみを追うように、俺は逃げる健治達を追いかける。


「っ!? あいつ俺達を追って来る!?」


「やばい振り切れないぞ!?」


「うそ! 健ちゃんどうするの!?」


「くっ! 戦うしか……」


 ふっ! 俺の前ではお前らのスピードは止まっているのと変わらない!


「早紀、雅人! やるぞ!」


「うん!」


「おう!」


「スノハラ! あいつらやる気じゃぞ!」


「ふっ! 俺ら相手にな!」


「ちょっとアルデちゃん! お兄さん! ああもう! ケンジ様達! 私です! ユリアリアです!」


 ユリアは俺とアルデの奇行に耐えられず馬車から顔を出して健治達を呼び止める。


「……えっ!? ゆ、ユリアリア様!?」


 距離を取ろうとしていた健治達が、その声と言葉に急に止まってこっちを向く。

 ちょっ!! 急に止まられると……!


「どうしてここにあなたが……って、なんで人が馬車を引いてるんですかっ!?」


 そんなツッコミが誰かから聞こえたが……。


「ユリアすまん!」


「どうしましたかお兄さん?」


「俺、急に止まれないんだわ」


「えっ!?」


 その瞬間、急ブレーキをかけた俺……ではなく馬車が後輪が浮き前方に向かって空中を舞う。

 それも健治達を巻き込む様に、


「くっぅぅ!!」

「きゃぁぁぁぁっ!!」

「ふははははっ!」

「なっ!!」

「うわぁぁぁぁ!」

「きゃぁぁぁぁっ!」


 その場に叫び声と笑い声がこだました。





「絶対に嫌だ!」


「健ちゃん、どうして!?」


「どうしてって、こいつは王女様から授けられた宝剣を奪って、壊したやつだぞ! そんな奴の言うことは信じられない!」


 3人が荒れている。特に健治が。


「それに出会い頭に馬車で襲って来る様な奴だ! 馬車が俺らにぶつかる前に止まったから良かったものの、あと少しで大事故だ! いや、中のユリアリア様は大変な事になってたぞ!」


「それはそうだけど……でもそれは強さとは関係ないんじゃ……」


「関係……なくない! とにかく無理なものは無理なんだよ!」


「健治……今はプライドは大切じゃ無いだろ! 力がないとあの魔王は倒せないぞ?」


「プライドじゃない! 見てみろ? あいつは子供も連れてきてるんだぞ!? あいつの方が足手まといになるかもしれないだろ!」


 なんか色々と聞こえるが、馬車は俺のおかげで大事故には至らなかった事を考えて欲しい。

 まあ、事故になりかけたのは俺のせいだけど。


「お兄さん? 聞いているんですか?」


 そして俺はその場でユリアに正座をさせられている……。


「それでケンジ様から宝剣を奪って今は無いって、どういう事ですか? 教えてくれますよね?」


 ユリアの圧が強い。

 馬車の件よりこっちの方が衝撃的だったのだろう。


「だから、「剣魔の魔王」と戦った時に武器が無かったから、健治が落とした剣を使わせて貰っただけです。で、戦ったら壊れてしまいました」


「……さっきからそればっかりですけど、本当なんですか? ケンジ様が戦っていたのでしょ? 嘘をついてたらスライムで埋め尽くしますよ?」


「ほ、本当です。あの3人も俺があの場にいたのは知ってるはずです。信じてください」


 ユリアの目が怖いのでついつい敬語で謝ってしまう。

 スライムで埋め尽くすのだけはやめて欲しい。

 ユリアも3人を見て、俺を見て息をつく。


「……はぁ、わかりました。ここで言い争っていても仕方ないですし。お兄さんを信じましょうか……」


「本当ですか!?」


「はぁ、お兄さんの言ってる事を嘘じゃないと思ってしまう私がいるのは……おかしくなってる気がする……」


 諦めた様に言うユリア。

 良かった、俺の言う事を信じてくれたのだろう。

 嘘はついていないが、倒したのが俺だとは言えてない。

 謝るしかさせて貰えない圧力だった。


「エミリには伝えるとして……今日はここまでにしましょう。それでこれからどうしますか?」


 まだ納得していない顔をしている気もするが、ここからどうするか考える。


「そうだな。まだ昼だし時間はあるから、あいつらとどうするか考えようか。……ユリアはあいつらを一旦落ち着かせてきてくれ。俺は嫌がられてるし聞きに行きたくない」


「わかりました。……これから魔王と戦うのに、大丈夫かな……」


 まあ、別に俺から話に行ってもいいかもしれないが、クッション材は必要だ。


「ケンジ様達、お話ちょっといいですか?」


「ユリアリア様……」


 ユリアが少し離れた健治達の下に向かう。

 でも、あいつもあんなに嫌がらなくてもいいよな。一度馬車で引きかけたぐらいだろ。

 むしろ今までを考えたら俺は命の恩人ですよ。


「さて、俺は昼飯の準備をするか。おーいアルデー、準備手伝ってくれ」


「無理じゃな。串カツが作れない状況で妾が動くと思っておるのか?」


「そんな事はいいから手伝え!」


 そんなアホな事を言う幼女の頭を掴み力をいれる。


「痛い、痛いのじゃ! 手伝う、手伝うからそれはやめるのじゃー!」


 串カツ好きにしたのは俺が悪いが、もう少しこいつの躾の仕方を考えないといけないかもしれないな。

 これで何百年も生きてきたリッチーだったとか、誰も信じないだろうな。



   

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