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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第2章「邪龍の魔王」

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4話 魔王城へ

吹っ切れて、魔王城に向かいます。



 あれから考えた結果、とにかく俺は吹っ切れる事にした。

 考えてみたらあれだ、17歳ぐらいの女の子と1日一緒に過ごせるんだ。本当にご褒美じゃないだろうか。

 元の世界じゃ犯罪かもしれないけど、ここは異世界だし。言い出したのは俺だけどユリアは了解したわけだ。合意だ。

 うん、あの提案をした俺を褒めてやろう。


「スノハラ、その顔は気持ち悪いのじゃ」


「……さて、店の事情はハマさんとサッさんに伝えたしどうにかしてくれるだろう」


 失礼な幼女の発言は無視する事にした。

 一応、串カツ屋を休む理由としてアルデが風邪を引いた事にしている。きつい風邪という事にしたので、魔王城との往復の2週間ほどは大丈夫だろう。

 看板娘のアルデがみんなに大切にされている事を願おう。

 この串カツ上昇気流に乗ってる時に離れるのは嫌なのだが仕方ない。もしもの時のためにソースは数個置いてきたし、そんなに大変な事にはならない事を祈る。

 あと、店番もあいつに頼んだからどうにかなるだろう。


「ふわぁぁぁ……眠いな」


 昨日の夜のうちに色々と準備をして、ユリアが言った通りに市場が開く時間に東門の前に立っている。

 この東門も修理されいるようだ。

 修理費っていくらぐらいかかるんだろう?


「ユリアはまだなのか?」


「もうすぐ来るんじゃないか……ほら、来たみたいだぞ?」


「あっ、お兄さん! お待たせしました」


 アルデと話していると街の方からユリアが走ってきた。


「あれ? アルデちゃんも来るんですか?」


「うむ、妾も行くのじゃ」


 俺の隣にいるアルデを見てユリアが首を傾げる。


「こいつ元魔王だし、その「剣魔の魔王」の師匠みたいだからな。何かしら役に立つだろ」


「師匠……? えっ!? どう言う事ですか!?」


 驚いた顔でユリアが固まる。


「まあ、師匠と言っても数十年しか教えてないのじゃがな」


「色々聞きたい事が出てきたんですけど……」


 ユリアはアルデと「剣魔の魔王」の関係性に訳がわからないって顔をしているが、元魔王って事自体がおかしい事だから今更だろう。


「それよりも健治達は魔王城に向かってるんだろ? 俺達は2日遅れで向かうんだから追いつかないんじゃないか?」


 ユリアの驚きも気にしてあげたいが、今からの移動手段が気になる。

 俺が全力で走ったら余裕で追いつくと思うが、ユリアがいたら難しいだろう。


「大丈夫です。ちゃんと考えてあります。ついて来て下さい」


 そう言いながらユリアは街の中に向かって歩いて行く。

 少し歩いた所にある様なんだが、東門の南側、確かこの先にあるのは。


「ここです」


 少し歩いて到着した場所はやはり馬車乗り場だった。


「馬車か。でも魔王城まで行ってくれる馬車とかないんじゃないのか?」


 しかし、そこには2頭の馬と繋がっている馬車が1台あるだけで人の姿が見えない。


「その通りです。でも今回は乗せてもらうわけではありません」

 

「ん? じゃあ、ユリアが馬車を操るのか?」


「いいえ、馬に乗る事は出来ますが、馬車は引けないです。もちろんお兄さんは馬に乗れませんよね?」


 何故か決めつける様に言われるのはあれだが、乗れないのは当たり前である。車の免許ならあるけど。


「乗れません」


「ですよね。ですがこの馬車は特別なので安心してください」


 そう言ってユリアが少し胸を張る。


「特別?」


「はい。実はこの馬車に御者は必要ありません。この馬車は魔道具で操れる様になっているんです。直接馬に命令する事で到達地点まで連れて行ってくれます」


「へー、すごいな」


 だから御者がいないのか。

 中世ヨーロッパ風なのにハイテクな魔法もあるんだな。魔道具があるとは俺も使ってみたい。


 それにしても割と立派な馬車だ。屋根もついてて数人乗っても荷物が置けるぐらいだ。乗合馬車よりかは狭いかもしれないが、3人なら充分すぎる大きさだ。


「これは貴族しか所有していない魔道具なので誰でも使えるわけではないですけど」


 なる程、特別と言うだけある。


「では乗って下さい」


 そして無人の馬車にユリアが乗り込む。

 それに続き俺とアルデも乗り込んだ。


「出発します!」


 その声と共に馬車が動き始める。その動きは滑らかで違和感がない。

 まあ、馬車なんて初めて乗ったから何も知らないんだけど。


「おお、しっかり動くんだなー」


 御者がいないのに真っ直ぐ門を通り街を出て、そのまま道なりに進んでいく。


「馬はあまり乗らなかったから新鮮じゃな。中々快適なのじゃ」


「そうだな、揺れも余りないしスピードも遅くないしな」


「当たり前です。私が用意した馬車ですよ。快適に決まっています」


 ユリアがドヤ顔をしている。ちょっと珍しい。

 しかし、馬車が動き始めたら俺らは手持ち無沙汰になる。


「じゃあこのまま任せて俺らは寝てもいいのか?」


「うーん、そうですね。別に馬の動きを見ている必要もありませんし。大抵の事は馬自身が対処する様になってますから。危ないと言えばモンスターが出るぐらいですね。まあ、森に入るまでは気にしなくてもいいと思いますが」


 そうだな。モンスターが出たら俺の出番ってわけか。


「そうですね。あっ、お兄さんはスライムが出たら逃げた方がいいかもしれませんね!」


「はは……」


 いい笑顔で言うユリア。

 内心その通りなのでスライムは出ない方向でお願いします。


「じゃあ、朝も早かったし少し仮眠しようかな?」


「そうですね、私も少し眠いですし。森まではまだ時間がかかりますからね」


 そう言って可愛いくあくびをするユリア。

 今日まで焦りながら準備していたらしいからまともに寝れてないのだろう。

 俺も串カツ屋の色々で昨日はそこまで寝ていない。


「……む? スノハラー、何か近づいて来ておるぞ?」


 俺も釣られてあくびをした時にアルデがお菓子を食べながら言った。


「そうなの? って、アルデってそんなのわかるのか?」


「うむ。魔力探知ぐらいは常時自動発動しておる。妾はエルダーリッチーじゃからな!」


 そう胸を張って言うが、


「元だよな、元」


「うるさいのじゃ! 元って言うでない!」


 俺がからかうとアルデが噛みつく勢いで怒る。


「で、アルデちゃん。何か近づいて来てるって?」


「そうじゃな。空から……ってもうそこまで来てるのじゃ」


「ん? そこって……」


「……っ!!」


 その瞬間馬車が大きく揺れた。


「な、なにですか!?」


 馬の大きい鳴き声と共に馬車が急停車する。

 この衝撃は何かに襲われた感じだろうか。

 とにかく外を見るために御者台を覗こうとして……。


「なんだこれ……?」


 馬が大きいモンスターに襲われて……食われていた。


 全長5メートルを超える巨大な体躯に赤い鱗。

 鋭い爪と牙からは赤い血が滴っている。


「こいつは……」


 俺は見た事がある、アニメや漫画でだが。

 こいつも異世界に来たら見てみたいモンスター。


「うそ……どうして……ワイバーンが……」


 ユリアが驚き呟く。やはりこれがワインーンか!


「ワイバーンじゃな! ここにいるとは中々珍しいのう!」


 そう言っている間にも馬は食べられている。ちなみに2頭とも動いていない。

 俺はその光景を冷静に見ながら質問する。


「ワイバーンって強いのか?」


「つ、強いも何も、A級モンスターですよ!? A級冒険者5人でやっと倒せるぐら……」


「そこまで強くないぞ? 妾ならワンパンじゃな」


 アルデがパンチをしながら、ユリアの言葉にかぶせる様に言い放つ。


「そうか、そこまで強くないのか。なら、俺にかかれば一瞬か」


「……そうでした。貴方達は規格外だったんですよね……。でしたら早く倒して下さい!」


 何故かユリアが怒っている。

 焦ったり怒ったり今日のユリアは忙しいな。


「わかったよ。じゃあ、一瞬で片付けて来ようか」


 そう言って俺は外に出る。

 ワイバーンもいいが、同じ系列ならドラゴンが良かったな。ドラゴンだったら背中に乗りたかった。

 でもまあ、ここで俺のかっこいいとこを見せてやろう。


「グガァァァァッ!!!」


 俺が出た瞬間にワイバーンが威嚇してくるが。


「『地獄の業火』!」


「グギャァァァァ…………」


 直径4メートル程の炎の球を打ち出し、ワイバーンを燃やし尽くした。

 一瞬だ。


「……う、うそ。ワイバーンって炎耐性があるはずなのですが……それを一瞬で……」


 ユリアが燃えるワイバーンを見て唖然としている。


「お兄さんって……ここまで強かったん、ですね……」


 驚きながら強いと言われて嬉しくなる。

 無言で立つ俺ってかっこいいかも? とか思うぐらい。


「スノハラ、やはり其方は中々の魔力じゃな。しかし、ワイバーンは美味いのじゃが……食べる所が無くなったのじゃ。勿体ない」


 燃やし尽くしたワイバーンを見ながらアルデが呟く。


「まじで!! 知らなかったんだけど!? それなら先に言ってくれよ!」


 俺が知ってる異世界知識ではワイバーンの肉はそこまで美味しくない事が多いから、関係なしに燃やしてしまった。

 美味いなら食ってみたかった!


「いや、炎耐性があるワイバーンに対して炎魔法を使うとは思わなかったからのう。まあ、またいつか出てくるじゃろう」


 そう言ってアルデは馬車から降りてワイバーンの燃えカスに近づいていく。

 くそっ、食いたかったな。ワイバーンだけど、美味いならドラゴン系の肉って憧れるし。


 で、アルデは何をしてるんだろうか。それが気になって俺も降りる。


「この2人には常識って通用しないって……はぁ……」


 ユリアもぶつぶつ言いながら降りてくる。さっきから呆れた顔でいるユリアも珍しい。

 しかし、この状態はどうしようか。馬車は残っているが、引く馬がいない。


「ユリア、馬も食べられちゃったしどうする? 一回街に戻るか?」


「……ですよね。魔道具は回収出来そうなので良かったですが。こんな所でワイバーンと出会うとは思っていませんでしたし、その方が……」


 ユリアは肩を落とす。

 まあ、無難に新しい馬を取りに帰る方がいいだろう。

 そう考えてアルデに伝えようとしたところ。


「ふむふむ! いい事思いついたのじゃ!」


 アルデが何か思いついたのか叫ぶ。

 そしてワイバーンの燃えカスから馬車に向かって歩いてきた。


「これは名案じゃぞ?」


 そう言い馬車を叩いて……。


「スノハラがこれを引くのはどうじゃ?」


「アホかお前は!!」


 アルデの意味不明な言葉に反射的にツッコんでしまった。

 いや、訳がわからない。何で俺が馬車を引かないといけないんだよ! どう言う発想だ!


「むう……スノハラなら余裕じゃから、名案だと思ったのじゃが……」


「なんでそれが名案なんだよ! 意味わかんねぇよ! それよりお前がどうにかできないのか? みんなで飛んでいくとか」


 こいつがまだ魔王だった時、空中に浮かんでいたはずだ。

 魔法を使ったタイミングは見てないから俺は使えないが、今アルデが飛行魔法を使ったら俺も使えるようになるし。俺は飛びたい!


「それは無理じゃな」


 しかし俺の提案を否定する。


「なんでだよ?」


「今の妾の魔力は串カツを作るためにあるからなのじゃ!」


「なんだよそれ……」


 こんなアホな答えを言うなんて、アルデの串カツ愛はもしかすると俺を超えてしまったのかも知れない。

 ってそんな事はどうでもいい。


「他の方法を考え……」


「しかし、其方が馬車を引く分には少しの強化魔法で済む。妾は攻撃魔法が得意じゃが、簡単な付与魔法ぐらい使えるからのう。それに其方なら一度使う処を見たら自分で使えるようになるじゃろ」


「成る程、そう言う事か……って、俺が馬車を引く理由になってないだろ! ほらユリアを見てみろって、呆れた顔になってるだろ!」


「そうですね……そんな手もあるかもしれないですね」


「おい!」


 俺らのやり取りを流すユリア。

 いや、ユリアもアルデにツッコんでくれよ!


「別の方法を考えようか……」


「『パワー・アップ』!」


 アルデが急に俺に向かって魔法を唱える。


「おまっ! 何やって……って、少しだけど力が漲ってる?」


「これで覚えたじゃろ? 初級魔法じゃ。自分で試してみるが良いぞ。まあ、其方ならもう1回で十分じゃろうが」


「なんだよそれ……」


 なぜ得意げにしているのかわからないが。渋々だが言われた通り強化魔法を使う。

「『パワーアップ』! これでいいか?」


「ふむ、それでいいのじゃ! ほらスノハラ、騙されたと思って引いてみるがよい! ほら?」


 ニヤニヤ笑いながら俺を馬車の方に促してくるアルデはうざいが……なる程、今の状態なら引けそうな気がする。

 馬車に近づいた俺は馬を繋いでいた持ち手に、片手をかけて引っ張る。


「ふんっ! ……ふぁっ!?!?」


 その瞬間、馬車が宙を舞った。

 ただカバンを振り回す様な感覚で馬車は右から左へと勢いよく宙を舞った。


「なっ……!」


 そのままだと大惨事になると思い急いで両手で勢いを殺す。

 そのおかげか無事に馬車が地面に下ろす事ができた。


「……あっぶねぇー」


「なっ?」


「なっ? っじゃねーよ! なんだよこの力!」


 多分この馬車は1トン近くあるはずだ。それが簡単に軽々と宙を舞った。

 ただの初級の強化魔法でこんな力が出るとか……今の俺、怖!


「ってことで、スノハラ馬車を引くのじゃ!」


 そう言っていたの間にか馬車に乗り込んでいたアルデが前に向かって指を指す。


「そうだな……って、おい! なんでお前はもう乗ってるんだよ!」


「ほらユリアも何をしておる、早く乗るが良いぞ!」


「えっ……? あ……うん」


 ユリアはアルデに言われるがまま、戸惑いながらも馬車に乗り込もうとする。


「ちょっと!? ユリアまで俺が馬車を引く事に賛成なのかよ!?」


「えっ、でも、アルデちゃんが乗ってますし、その方が速いなら……」


「そうじゃ、そうじゃ! スノハラは早く馬車を引くのじゃ!」


 そしてアルデとユリアは定位置に座る。

 なんなんだこの状況……。


「まじかよ……。人力車じゃなくて馬車を引く事になるのか……。わけわかんねぇ……」


 確かこの馬車って2匹馬がいたよな……。2匹で引く必要がある馬車を1人で引くとか……。

 しかし俺も俺だ、言われるがままになってるし。

 そんな事を思いながら、元々馬にかけられていた引く部分に手をかける。


「ふははははっ! 良い眺めじゃぞ! 馬車馬の様じゃ!」


「黙れアルデ! お前にはこれ以上美味い串カツを食わせんぞ?」


「むぅ……。黙るのじゃ……」


 後でこいつは締める。


「えっと、本当にお兄さんが引くのですか……?」


「ユリアもそう思って乗ったんだろ? まあ、引けるだろう」


 ちょっとこのおかしな光景にユリアは戸惑っている。

 いや、一番俺が戸惑ってるから。


「まあいい。よし、お前ら! 本気で引くから安全運転はしないからな! しっかり捕まっておけよ!」


「えっ、お兄さん……!?」


「いくのじゃスノハラー!」


 後ろで叫ぶアルデの声が合図となり、俺は思いっきり力を入れる。

 そして馬車は予備動作なく勢いよく動き出す。


「ふん! うおぉぉぉぉぉ!」


 思ったより簡単に引ける。軽い!

 徐々に足に力を入れてスピードを上げていき、


「えっ!? ちょっと待っ……きゃぁぁぁぁぁ!!」


「ふははっーー! 速いぞー!」


 そして一瞬で普通の馬車のスピードを超えた。

 後ろから叫び声が聞こえるが、気にしない。楽しそうな声も聞こえるし。

 しかしこれは車だな。時速60キロは出てるんじゃねーか?


「ははっ!」


 やばい、ちょっと楽しくなってきた。


「ちょっ、ちょっとお兄さん! 速い、速すぎますっ!!」


「……えっ、なんて?」


 風邪を切る音でユリアの声が聞こえない。


「ふはははははーっ! 速い! 速いぞー! ふはははははっー!」


 アルデの声はよく聞こえるんだがなー。まあいい、もっとスピードを出すか!

 そして俺はより足に力を入れる。限界に挑戦しよう。


「いっくぞーー!!!」


「ちょっと、お兄さぁぁぁぁぁっ!!!」


「ふははははっーー!!」


 そして俺は限界を超えた。





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