表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第2章「邪龍の魔王」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/91

3話 魔王討伐依頼②



「……え?」


「それだったら嫌だな」


「……えっと、どうしてですか?」


 言ってる意味がわからないのだろう、俺の即答に顔が固まっている。


「今の説明なら初めから言っている通り、あの健治達の護衛をするみたいなものだろ? だったらあいつの為に俺が動くわけだ」


「護衛って……いや……そうなりますか……」


「それにメインで動いていいって言っても、俺がもし魔王を倒しても俺の手柄じゃなくて、あいつの手柄になるんじゃないのか?」


「そ、そう言うわけではないですけど……」


「前例があるからな。それに、俺に対するのはあくまでもエミリからの依頼ってわけで、国からの依頼じゃない。だったらまともな報酬も出ないだろ?」


「うっ……」


 言葉に詰まるって事はそう言う事なのだろう。


「……まあ、別にエミリとユリアには世話になったし手伝う分にはいい。俺に討伐依頼を出すなら確実に受けたと思う。でも、他の勇者の為……特にあいつの為になるとかは、嫌だな」


「どうしてそこまで嫌がるので……あっ! この前の「不死の魔王」に対しての功績がケンジ様の功績になったからですか……?」


「……」


「そうなんですね……」


 そんなユリアの戸惑う様な言葉に俺も吹っ切れる。


「……そうです。その通りですよ! 俺はただ自分が強いって認めて貰いたかったんです! エミリとユリアには認めてもらったってわかったけど、本当の強さはわからない。俺だってあの魔王を倒すのに危ないと思ったタイミングはある。でも報酬はなし、その変わり訳の分からない幼女を任せられる。ちょっと俺にも思うところがありますよ!」


「ちょっ、ちょっとお兄さん……?」


 この瞬間俺の感情が少し爆発した。


「別にいいんだよ、魔王の所に行くのは。俺だって魔王を倒したいし、エミリとユリアにはお世話になったから動くよ。ただの討伐依頼なら行ってくるよ」


「だ、だったら……」


「でも、今回はあの健治達の面倒を見るみたいなものだろ?」


「面倒を見るって……」


「だったら、俺になんの旨味もない。だから嫌です!」


 感情が暴走する。


「はっきり言ってあの俺の功績が健治に取られたのはどうかと思うんだよ。ユリアだって俺がアルデミスを倒したのはわかってるだろ?」


「……はい。実際には見てないですが……」


「もし俺だけの功績じゃないと言うならわかる。一応健治もあの時一瞬でも戦ったからな。最終的には俺が倒したわけだけど」


 はっきり言って全てが俺の功績にしていいぐらいだろうけど。


「でも、最終的には俺には何も報酬も無かったわけだ。全部健治の功績になったわけだ。流石にそれはどうかと思うだろ。ユリアはどう思う?」


「うっ……。そうですね。本当はエミリも私も報酬は出したかったですが……それが出来なくて……」


「エミリとユリアに出して欲しいってわけじゃないんだ。それを横取りした形になってる健治に対して思うところがあるんだよ。流石にそれはユリアも思うだろ?」


 俺の根本的な感情には健治が横取りした事が占めている。


「……実は、私もエミリも言ったんですけど、王はお認めにならなかったんです。王の言葉は絶対で……」


 ユリアの顔が申し訳なさそうに俯く。


「もう一言加えると、ユリアにとって魔王ってどんな存在なんだ? 勇者である健治でも、死にかける相手だろ? この前まで弱いと思っていた俺に、そんな簡単に頼めるものなのか?」


「……あっ!! すみません……」


 俺の一言が確信だったのか、目を見開いて驚いた後すぐに謝るユリア。


「……謝らなくてもいいんだぞ。その反応で何となくはわかった気がするから」


 数ヶ月だが一緒に行動していたのでわかるが、あの冷静なユリアが焦っていたのだとわかる反応だった。

 普通に考えておかしいんだ。

 王女の側近であり、賢いユリアがここまで考えなしで動く事が。


「だったら、俺1人で魔王を倒してくるよ。はっきり言ってあいつがいた方が足手纏いだからな」


「そ、それじゃあ……エミリが……」


「……ん? エミリが?」


「……っ!! いえ、何でもありません……」


 エミリとユリアがこぼした言葉が気になる。

 健治とエミリに何かあるのだろうか?


「何かあれば言ってくれ。助けるから」


「……ダメなんです。これはお兄さんにでも言えない事なんです……」


 そう頑なにユリアはエミリについて喋らない。


「で、でも……私が頼めるのはお兄さんしかいないんです! 他に勇者ぐらい強い方が……。どうかケンジ様に同行を……」


「……だから。健治の護衛は嫌なんだって。俺だけ行くのはダメなのか?」


「……はい」


 俺だけじゃダメで、健治に同行しなければならない。どう言う事なんだろうか。


「……お兄さん」


 ユリアが必死に涙目で訴えかけてくる。


「そ、そんな目で見ても無理だぞ? 俺にもプライドがあるから!」


 プライドって何それって感じだが、言う時は言いたい。

 ここまでユリアに恥ずかしいところを暴露してしまったのだ、引くに引けない……いや、引かない!


「むぐむぐ、スノハラー。なんだか駄々を捏ねている子供にしか見えんぞ?」


「うるさい。お前はポテチでも食っていろ! ソースをかけたらもっと美味いから!」


「むっ!! その手があったか! よし、食ってくるのじゃ!」


 うるさい幼女は排除する。


「ということで、今回の依頼は無理だ! もし、俺を動かしたいならしっかりした報酬を持ってきてください!」


 そして最後に無理だと言い切る。ついでに報酬も強請る。


「そうですよね……報酬ですよね……」


「ユリアのポケットマネーぐらいなら魔王討伐の報酬としては難しいんじゃないか? 多分「剣魔の魔王」を討伐するのは俺になるんだし。今の国の財政はあまり良くないんだろ?」


「そ、そんなわけでは……」


 財政は悪いとエミリが言っていた。

 もちろん魔王は安い敵ではない報酬は高くなるだろう。

 言い返す言葉に詰まるなら難しいとわかる。


「で、でしたら、お兄さんはどのような報酬が欲しいのですか?」


 おっ? そう来るか。だったらこのまま確実に無理な報酬を言って諦めさせよう。また後日に俺が魔王を討伐すればいいわけだしな。


「そうだなー。お金は串カツ屋してると大丈夫だし、材料といっても知れてるし。うーん悩むなー」


 そう言って悩むそぶりをする。

 しかし、言うことは決まっている。女の子が嫌がる事だ。定番がある。


「あっ、そうだな! だったら、ユリア?」


「は、はい」


「ユリアが1日俺と一緒に過ごすってのはどうだ?」


「1日一緒に過ごす、ですか?」


 ユリアは一瞬意味がわからなかった顔をする。

 ここでもう一手打つ。


「あっ、もちろん夜もだからな?」


「よ、夜も、ですか……」


 その俺の言葉にユリアは戸惑う。

 何がエミリに起こるのかわからないが、それに健治が関わっているのであれば、理由を言ってくれないと俺も動きたくない。

 だからこそ、無理な願いを言う。


「……」


 うん、そうだろう。悩むだろう。年頃の女の子が成人男性と1日過ごすなんて難しいだろう。

 俺が相手の立場だったらはっきり言ってこんな得体の知れない男は嫌だ。

 だったら答えは一つ。断るしかない。


「……どうする? 夜も一緒って事は、男と女って言ったらわかるだろ?」


 少しゲスイかもしれないが、ここまで言ったら誰でもわかるだろう。ユリアも手をギュッと握り悩んでいる。

 うん。この感じなら断るに決まっている!


「って事で今回の依頼はなかったって事で……」


「……わかりました」


「うん、そうだろ。普通は嫌だもんな男と1日なんて……ん?」


「わかりました。それがお兄さんの報酬となるんでしたら……受けます」


 今度は俺が一瞬理解できなかったが、その言葉がおかしい事に気づきもう一度聞き直す。


「えっと、もう一回言ってくれないか? 嫌だって言ったんだよな?」


「いえ、受けます」


 ん? えっ!? 今いいって、受けるって言った!?


「いやいや、ちょっと待って!? 1日中だよ? 夜もだよ? 俺、男だよ!?」


「はい、分かってます。ですから、それが報酬になるなら受けます」


「いや、だから。ユリアは年頃の女の子、俺は成人男性。そんな一日中いたら、流石にわかってるよな? え、えっと、ちゅ、チュウだってし、しゃうかもしれないよ!?」


「はい分かってます。報酬になるんですよね?」


「いや、普通は嫌だろ!? こんな得体の知れない男となんて……!?」


 自分で言葉に表すと悲しくなってきた。


「なんなんですか!? お兄さんから言って来たんでしょう? 嫌なんですか!」


 なぜか俺がユリアに威圧感されてしまっている。


「いや、嫌じゃない……って、そう言うわけじゃ……!」


「でしたら、これで成立ですね!」


「ちょっ、ちょっと……?」


 その瞬間ユリアが成立の言葉を言った。

 いやまじか!? 絶対断られるって思ったのに了解してしまうって……。

 いつの間にかこのパターン……。デジャブなんだけど……? なんでだ!?

 いや、これもユリアの作戦なのか!? 俺がこうなるって分かっていて、この形に持ってきたって……いや、そんなわけは……。


「これで成立しました。……早速ですが出発は直ぐにでもしたいです」


 ユリアが少し俯きながら言う。


「えっ、直ぐに? って、待って? 俺が整理できてないから!?」


「整理は後でしてください、お兄さんが言った事なのでっ! 続きを話しますと、実はケンジ様達は一昨日に出かけてしまわれました。だから私も焦っていたんです」


「そんなに……何やってんだあいつは……」


「ですので、今直ぐにでも出発したいのですが、準備もあると思います。なので明日の朝一に出発でいいですね?」


「本当にすぐじゃないか……」


「私も準備がありますので、一旦王都に戻ります」


 えっ? 準備があるって、もしかして。


「ゆ、ユリアも来るのか?」


「もちろんですよ! 私も一応戦えます! あと、お兄さんもケンジ様も1人にはできませんので!」


「いや、それは……」


 いや、魔王戦にユリアが来るのも危ない気がするんだけど。


「では私は直ぐに戻ります。明日の朝一の市場が開くまでに門の前で集合にします。いいですね?」


「お、おう……?」


「では、宜しくお願い致します!」


 そう言って俺と目を合わせる事なく、ユリアは早々と王都側の門へと走って行った。


「ちょっ、ちょっと……行ってしまったよ……」


「むぐむぐ。なんじゃ、あいつの所に行く事になったのか?」


 俺がユリアの行動と言動に戸惑っているとアルデがポテチを食べながら近づいてくる。


「そうみたいだな……」


 途中までは俺の思惑通りだったのだが、最後にはいつも通りユリアに持っていかれた……おかしい。


「ああ、美味かったのじゃ! しかし、其方も中々女々しい処があるんじゃな?」


「……っ!? う、うるさい!!」


 そんな幼女の言葉に俺はツッコむしかなかった。



魔王を倒しに行くのは全然いいけど、健治の手伝いになるとは。死にに行く健治に面倒くさいなって思う春原です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ