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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第1章「不死の魔王」

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18話 元凶は保護者のせい



「ユリアこれはどうしよう?」


 エミリが目の前の惨状にそう呟く。

 そうだよな、中々派手に壊したんだったなあいつ……。


 幼女と戦っていた草原から帰ってきて、門の前で立ち止まっている。

 俺が来た時は立派に建っていた門だったけど、今や門とは言えない瓦礫の山が目の前にある。


「そうだね。早急にどうにかしないといけないね」


 そう言いながら悩むそぶりをするユリア。

 まあ、この規模の門を修理するのは大変そうだからな。どれぐらいかかるのか俺では想像ができない。


「でも、一つ提案があるとすれば……」


「王女様! こんな所におられたのですか!?」


「ん?」


 ユリアが話をしようとした時、聞いたことがある声が後ろから驚きの声を上げていた。


「あっ、騎士達とケンジ様方」


 やはりそうか。健治達が近づいてきていた。

 何となくだけど、絡まれないように少し離れておこう。


「お逃げくださいと言ったのにどうしてこんな処に!? ご無事そうで何よりですが……」


「すみません。色々とありまして……。ケンジ様方は、モンスターの方はどうなりましたか……?」


「はい。無事に倒せました。街の住人達も死人は出てません」


「本当ですか! 良かったです!」


 あの惨状で死人が出ていないのはすごい事だな。


「ですが……少しお話ししたい事があるのです。この場でお話ししてもよろしいでしょうか? 魔王についてです」


「……えっと、魔王についてですか?」


 そう健治に切り出されて少し戸惑いながらエミリが俺の方をチラッと見る。

 そうだよな、魔王はここにいるもんな。


「実はその魔王なのですが……」


「……えっ」


 重要な話になる為か、部外者である俺に聞こえないように勇者と騎士達がエミリを囲んでしまった。

 ちょっと聞こえないな。まあ、側から見たら何で俺がいるの? みたいな感じだからな。仕方ないし離れておこう。


 その状況を外から見ているとユリアが抜け出してこっちに向かって来た。


「どんな話だったんだ?」


「えっと……魔王はモンスターを数匹置いて帰って行ったらしいです」


「へー……ん? 意味がわからないんだけど? 現にここに元魔王はいるし……?」


「ん? 妾はここにいるが……もしかして街に入る時に連れていた配下にリッチーがいたはず。そいつと間違えてるのかもしれないな。どこにいったのじゃろうか」


 へー。俺が走っていた時にそんな奴……いた気もしなくもないな……。見えてなかったかも。


「そうですか……。エミリに報告をしておきます」


「おう。あと、こいつが全面的に悪いから何でもこいつの罪にしておいたらいいと思うぞ?」


 こいつが来た事でこの街は大パニックだ。

 そう言いながら幼女の頭をポンポンと叩く。


「なっ!? 妾は何も悪くないのじゃ!」


 しかし俺の手を払い睨んでくる幼女。


「いや、お前がここに来たのが全ての元凶だからな?」


「仕方ないのじゃ! 妾は勇者と戦いに……」


「ちょっと2人とも静かにしてください」


 俺と幼女が言い合いを始めた所、呆れた声でユリアが止める。


「うるさくしていると騎士達に睨まれますよ?」


 そう言うユリアの目線が騎士の方に向いている。

 あっ、健治と目が合ってしまった……。面倒になりそうだ。


「あと私の用件もあるのでついでに話していいですか? この門についてです」


「門についてなら、修理費か?」


「はい。そうです。この門は早急にどうにかしないといけないのですが、幸いここに元凶となった元魔王がいるので声をかけようと……」


 そう言って俺を見るユリア。

 俺は元凶でも元魔王でもないのですが。


「どうして俺を見るのでしょうかユリアさん?」


「いや、私はこの元凶を見ていただけなのですが?」


 とぼけたように言うユリア。あなたが見るべきなのは横にいるこいつなのだけど。

 そう思いながら目線を下げると、幼女は俺の袖を掴み。


「おい、何か食べ物はないのか?」


 そんなことを言う。

 こいつは見た目だけではなく頭まで幼女化したのだろうか。


「普通はこの街と国で修理費用を出すのですが、幸いにも壊した張本人がいるので支払えるのであれば支払ってもらおうかと」


「なる程な、意味はわかるぞ。その方が国の財政にも優しいもんな。で、聞いてたか幼女?」


「ん? 聞いてたが、妾は金は持っておらんぞ? あと幼女と呼ぶでない!」


 幼女と言う言葉に必要に反応する幼女。そんな事はどうでもいいが、金は持っていないのか。


「そうだなモンスターが金を持っていたらおかしいよな。ユリア持ってないって」


 ユリアにそう返すと首を傾げる。


「え? 持っていないのですか? 魔王でしたよね?」


「え? その言い方って、魔王って金持ってるの?」


 その言葉に少し驚く。しかしそう言えば、あの剣魔の魔王の城も立派で高そうだった気がする。


「当たり前です。魔王と言えば一国の主みたいなものですよ? 少なくとも配下のモンスターには魔人と呼ばれる知能あるモンスターもいるはずですし。現金を持っていなくても、お金になるものは持っているはずです」


「へー、そうなのか。おい、幼女。お前嘘をついてたな? 一生串カツ食わせんぞ」


 その言葉に幼女の体がビクッと跳ねる。


「ちょっ、ちょっと待つのじゃ! 妾は嘘をついとらんぞ!? 本当に持っておらぬ! 全ての魔王が金を持ってるわけではないのじゃ! そもそも配下に魔人はおらん! だから……串カツは食いたいのじゃ!」


「は? いないって。さっき自分の配下にリッチーがいるって言ってただろ? だったらそいつ魔人じゃねーの? わかる嘘をつくのも大概にしろよ!?」


「いや、妾の部下は全てアンデットじゃ。あと全ての配下は妾が1から作った。じゃから知能も必要ないし、何も食わなくても生きていけるし、妾も食わなくても生きていけるのじゃ……」


 何とも悲しい話である。こいつ仲間もいなかったんだな。弟子もあんな感じだし。


「……そうか。寂しい奴だったんだな」


 俺はそういい幼女の頭を撫でてやる。


「妾は寂しい奴じゃないわぁ! それに撫でるでない!」


 優しくなでていた俺の手を思いっきり叩く幼女。リッチーってやはり孤独な生き物なんだな。


「そ、そうなんですね。魔王にも色々いるわけで……」


 ユリアも可愛そうな目で見ていた。


「そういうことらしい。だから、残念だが門の修理代は出せないことになるな。そっちでどうにかしてくれ」


「え?」


 俺の言葉にとぼけた顔になるユリア。


「え? いや、なんでそこでとぼけるの?」


「いや、とぼけるのって、お兄さんこそとぼけてるんですか?」


「は? 何言って……」


「お兄さんは言いましたよね。全ての元凶はその子。だから全てその子の罪にしたらいいと」


「お、おう。そう言ったが……」


 ユリアの圧力がすごく感じる。


「だから、お兄さんに払って頂くしかないですよね?」


「……はぁ!? ちょっと待って!? 何で俺が払わないといけないんだよ!?」


「ですから、お兄さんがこの子の保護者ですよね?」


「……え?」


 言葉の意味が分からなかった。


「あの時お兄さんはこの子の面倒を見ると約束していただきましたよね? この子は元魔王でも今は人間。でしたら人間の国の法律が適用されますよね? この街の物を壊したら器物損害で、修理費は払うのが普通ですよね?」


「あ、ああ。壊したものは普通直さないといけないもんな……」


 徐々にユリアの目が細くなっていく。


「しかし、その子にはお金がない。だったら、保護者が払うしかないですよね? それが大人としての義務ですよね?」


「なっ……」


 言っている意味は分かるが、この状況は例外だろう! 魔王が人間になるなんて考えられないことだ。そんな事が通るわけがない。それにこの幼女の為に俺が借金を背負うなんて……。


「待て待て! これは例外だ! それに知っての通り俺はお金は持ってないって!」


「でも、あのお店なら稼げますよね?」


「なっ……」


 こいつ俺の足元を見ようとしてる!?


「ゆ、ユリア……ちょっとどうした? いつもの感じじゃないぞ? エ、エミリにはその話はしているんだよな……?」


 少し離れて騎士や健治たちと話しているエミリに目線を向ける。


「いえ、エミリには話していませんよ? あの心の優しい子がそんな事許すわけがないじゃないですか」


「そ、そうだよな。エミリは許さな……」


「だから、直接お兄さんに話しているんですよ? エミリにばれないように。この意味は分かりますよね? エミリの為です」


 そしてユリアは声を出さず口だけを「スライム」と動かす。


「い、いや……でも……」


「アルデちゃんもそれでいいですよね? はい、お菓子あげるから」


「む? 妾をちゃん付で呼ぶなど……、むっ!? この食べ物も美味いのう! もっとくれたら許そう!」


「はい、これでいいですか?」


「うむ! 妾はそれで良いぞ! む? 其方にはやらんぞ!」


 俺が見ると幼女がユリアから貰ったお菓子を口いっぱいに頬張りながら後ろを向く。

 別にお菓子なんていらない。

 それよりも俺はユリアの考えを否定する。


「こいつの許可なんて関係ないから! 俺が良いと一言も…………」


 その瞬間、俺の頭の上に何かが乗っていた。


 冷たくて弾力があって、液状体らしき何かが……。


「……は? おまっ、これ……」


「はい。スライムです」


 ユリアはそう笑顔で答えた。




 

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