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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第1章「不死の魔王」

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17話 身バレ幼女



「で、この子は人間になったと……」


「……そういう事だな」


 幼女自ら自分が魔王だと暴露した。

 普通にしていたらバレることはないはずなのだが、こいつは自分が貶されることは我慢できないタイプらしい。

 プライドが高いのか、アホなのか。


 しかし、普通そう言っても信じることはないだろう。ただの幼女のタチの悪い冗談だと思われる。自分が魔王だと言う人間なんていない。

 だが、この場所とエミルアリスが居たからそれは変わる。


「意味がわからないんだけど……。そんなことあるわけないと思いたいけど、エミリが言うからそうなんだよね」


「うん、この子からは街で対峙した「不死の魔王」魔王アルデミスと魔力がほぼ一緒だから。魔王の魔力が無いから100%とは言えないけど、それ含めなくてもここまで似た魔力を持つ人間はいないよ」


 エミルアリスの先天性の能力「識別視」。魔力を持つモノの魔力が色として見える能力。

 魔力量までは見えないが、色によって違いがあるらしく、その人がどのような人物なのか大体わかるらしい。

 血液型占いよりも正確で、DNAレベルでわかるみたいだ。DNAでは性格はわからないが、エミルアリスにはわかると言うことだ。

 だからあの時俺は悪くない人と言われたのだろう。


「つまりこの子は魔王なんだけど……」


「悩むところだね……」


「ユリアの言う通りかなり悩むね。まだ魔王だったら即おにーさんに倒してもらうんだけど、元魔王って事で……この見た目だからね」


 そう言ってエミルアリスは幼女て呟く。

 今幼女はユリアリアから貰ったお菓子を食べている。

 エミルアリスが幼女を詳しく見た結果、この元魔王に今は人と敵対する気は全くないらしい。戦いと食欲しかないのは怖いが。

 食欲優先って……。


「どうしよう……」


 エミルアリスが集中して魔力の色を見ると日々の感情まで見通せるらしい。

 とても恐ろしいと感じてしまったが、ここまで詳しく見るのにはとてつもない集中力が必要らしい。

 だからあまり使わないみたいだけど、身の危険を感じたときは反射的に使うらしい。弱点でもわかるのだろう。


「そうだよな。流石にこの状態のこいつをな……?」


 殺せないだろう。

 元魔王と言っても今の見た目は幼女だ。こうやってお菓子を食べてる姿なんて本当に子供にしか見えない。


「できないね……」


 エミルアリスもそう思ってる様だ。


「だったら、王都の地下牢でも入れておいたらどうだ? 牢屋ぐらいあるだろ?」


「ありますけど……それは駄目ですね。エミリが言う通り今は敵対する意思が無い状態です。ですが元魔王ですから、いつかその感情が戻るかわかりません。もしそこで暴れられたら、私達では太刀打ちできませんから。ですよねエミリ?」


「そうだね……」


 ユリアリアの疑問にエミルアリスは答える。

 魔王を倒せるレベルの強者がいないのか。

 俺も他に何か方法が無いか考えているとユリアリアがポンッと手を打った。


「でしたら方法は一つしか無いです……」


 そう言って俺の事をじっと見つめる。


「何かあるのユリア?」


「考えがあるのか?」


「はい……お兄さん、あなたは強いですよね?」


「ん? おう、強いぞ? 魔王をここまでしたのは俺だからな」


 俺は幼女を指差して答える。

 しかし急になんだろうか? 褒められてこそばゆいが、ユリアリアの口から強いと言ってくれるのはとても嬉しい。


「ですよね。魔王を倒せるレベルの力があると」


「ああ、でも何か関係あるのか?」


「はい。これはお兄さんしかできない事です」


 そう言ってユリアリアは俺の目をじっと見た。

 そして、


「お兄さんが責任を持って、その子の面倒をみてください」


「……は?」


 俺の思考が一瞬止まった。


「成る程! ユリア、それはいい考えだね!」


「うん。それしかないでしょ?」


「うん! それが確実かも!」


「……って! ちょっ、ちょっと待て!? 俺が? こいつの面倒を!?」


 隣にいる幼女を見ながら叫ぶ。しかし幼女が俺を見返して笑う。


「妾は良いぞ? 串カツとやらを毎日食べられるのであればな!」


「お前は黙ってろ!」


 意味がわからない事を言う幼女に怒鳴る。

 しかし、幼女の言葉にユリアリアが返す。


「そうだよ。このお兄さんは世間では串カツのスライムさんって呼ばれてるぐらいだから、毎日食べられるよ!」


「それは良いのじゃ!」


「いやいやいや! 俺は? 俺の意見は!?」


「おにーさん、お願い!」


 俺の意見を無視する展開になってるぞ!?

 しかしエミリが手を自分の前で握りお願いする。


「これしか方法が無いと思うから! もしこの子が暴れてもおにーさんなら止められるだろうし、近くにいる事で監視もできる。それに串カツに懐いてるならおにーさんしか適任はいないでしょ!」


 追い討ちをかける様にエミルアリスが俺が適任だと言う。それも必死に可愛く見える様に。

 くそっ! 何故だ逆らえない! 可愛いは犯罪だ!


「そうですよお兄さん。エミリがそう言っているんですから」


「……いや、俺は……」


 せっかくの異世界生活に元魔王である幼女の面倒を見る事に悩む。


「……仕方ないですね、強行手段です。エミリ、ちょっとお兄さんを説得してみる」


「うん」


「説得って何を言っても……」


「お兄さん、少しいいですか?」


 そう言いユリアリアは俺を連れて、みんなに見えないように少し距離を取った。


「これを……」


 そして何かを取り出し俺に突き付けた。


「……っ!?!? お前、これ……」


 その出された物に俺は目を見開く。

 まさか、それって!!


「見ての通りスライムです。これの意味わかりますよね?」


 ユリアリアがニコっと怖い笑みを浮かべた。


「……っ!?!? お前まさか……」


「わかりますよね? でしたら、ね?」


「っ!! ……わ、わかった。お前の言う通りにする……」


 その目と言葉と行動に俺は渋々頷いてしまった。


「流石お兄さんです! そう言ってくれると思ってました! エミリ! お兄さんが良いって言ってくれましたよ!」


 そう言ってユリアリア……いや、ユリアが笑顔でエミリに向かって言う。


「本当! 良かった! これで安心できるね!」


 その瞬間、エミリがとても笑顔で笑った。

 エミリがすごく喜んでいるけど……くそっ! こいつらに優しい対応は、絶対にもうしない! 特にユリア!

 しかもなんでユリアはスライムが弱点だって確信してるんだよ! 急すぎて俺も隠し切れなかったのが悪いけど、ここまで強い所を見せたら確信は持てないだろう普通は!


「……って」


 そう悪態を心の中で吐きながらユリアを見ると少し安心した顔でエミリと話していた。

 まさか……ブラフだったのか!? うわ、こっち見て笑いやがった! くそっ! やられた!

 ……いや、大丈夫だ。もし次に脅されてビビらなければまだ覆せるチャンスはある。こいつの面倒を見ないといけないのは諦めるが、弱みは絶対に握らせない。


「ということでお兄さん、この子のこと宜しく頼みますね!」


「お願いね!」


「宜しくなのじゃ!」


 その場のノリと勢いとスライムによって事は進んでしまった。


「……って、お前はなんで納得してるんだよ!」


「……む? 串カツとやらをたらふく食わせてくれるのじゃろ? なら、なんでも良いのじゃ!」


「よくないわっ!!」


 そして、俺は異世界生活1カ月ほどで、元魔王という意味が分からない幼女の子守を任されることになったのだった。



   

「不死の魔王」アルデミス(幼女アルデミス)が付いてきました。

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