雪と温泉とウィンタースポーツ 9話
「いっただっきまーす!」
「「い……頂きます。」」
直輝たちと別れた私は、龍くんと飯田くんと3人でご飯を食べていた。
食堂は相変わらず外国人で溢れかえっていて文明が入り交じる席取りが行われていて、少しだけ窮屈に感じる。
そして、明らかに2人とも疲れきって表情が青白くなっていた。
「2人とも大丈夫?」
「なんとか……あれ、遥香さんって運動とかするんでしたっけ?」
「んー、たまにジョギングくらいかな。」
「マジかよ。」
「なおっちママすげぇな、俺も体力には自信あったけど敗北っすよ。」
「ちょっと!?ふ……複雑だな〜、私32で体力衰えてきてるんだけど。」
そう言って、私はラーメンをすする。
こういう時のラーメンの塩っけが身体に染み渡るようだった。
「しっかし、なおっちも遥香さんみたいに体力あればもう少し勉強に打ち込めるんですけどね。そこは遺伝しなかったのか。」
「まあ……あの子は運動ほとんどやらないし、中学の頃は不登校だったからね。あとは……体力はあの人に似たのかもしれない。」
「あの人って……。」
「うん、あの子の父親。」
ふと、彼の父親に当たる工藤直人くんが脳裏を過ぎる。
彼はいつも本ばかり読んでいた。
「聞いていいのかわかんないっすけど、なおっちの父親に当たる人は今何してるんすか?」
「俺もいつもきいていいのかわかんなかったですけど、ちょっと気になります。」
「んーーーーーー。」
私は少しだけ息を整える。
あの頃のことを思い出すと今でも少し苦しくなるからだ。
でも、彼らは直輝のかけがえのない親友だ。
きっと大人になっても直輝とは気の置けない存在になるかもしれない。
私は孤独の中走ったけど、直輝には誰かに支えてもらいながら踏ん張って欲しかった。
「南海トラフの時に……私を庇って津波に飲み込まれて、それっきり。」
「「……………。」」
ちょっと令和には重すぎたかな。
いつもはユーモアのある2人が珍しく黙ってしまった。
「あ!気にしないで!もう昔の事だし、今はこうして乗り越えて幸せだったから!」
すると龍くんがコーヒーを啜っては少し考えていた。
「なんか、なおっちママすげぇなって思いました。直輝を身ごもってた時にそんな経験して……そっから単身で東京に来ての今なんすね。」
龍くんは頭の回転が早かった。1話しただけなのに10まで理解してしまったようだった。
「え、流石に親族とか友達とかいましたよね?遥香さん。」
「実はね……そんな人居なかったんだ飯田くん。」
「え……。」
「まあだから、それで直輝を育てるためにナイトクラブとかで働いたりもしてたし、パートとか体1つで頑張ってたの。まあ……その先がAV女優なんだけど。」
明らかにヤバい会話だったけど2人には笑顔と言うよりもその経験を想像して眼差しが尊敬とか、そんな感じの表情に変わっていった。
「俺は多分そんな経験したら耐えられないかもしれないっす。」
「だなぁ、母は偉大だよ。」
ちょっとオープンに言いすぎたかな?
明らかにふたりの表情がシリアスになっていた。
「あ!でもほんと気にしないで!私は今こうして人間関係の輪に恵まれて、直輝もこうして前を向いてきてるから本当に2人には感謝してるの!だから話したってのもあるけど。」
「あはは、直輝には本当に世話になってますよ。遥香さんほど強くはないけど、頑張ってるあいつを見ると俺も前向こうってなるし。」
「だな、俺も天野家居心地いいっすわ。こりゃあなんとしてでもあいつを医学部に行かせなきゃっすね。」
2人が栄養補給されたのか心が温まったのかは定かじゃないけど、青白くなった顔が血色が良くなっていった。
ラーメンが少し伸びて温くなってきたので私は食べるペースを上げて一気にスープまで飲み干す。
私は正直直輝が羨ましかった。
私も彼らのように素敵な友人に囲まれたら……なんてifを考えるけど、やめるようにした。
私は私で進んだから今がある。
直輝は私のようにはなれないかもだけど、こんな素敵な友人と切磋琢磨してこれから私の想像もつかないくらい強くなるだろう。
「さーて!私達もそろそろ行こっか!まだまだ滑るけど……2人とも大丈夫?」
「「もちろんです!」」
さっきよりも明らかに威勢が良くなったので私はスノーボードをもってみんなと滑っていく。
少しずつバランスを取りながら全身を研ぎ澄ませ吹雪に乗って私たちは滑っていく。
まるで私は風になった気分で新雪のゲレンデを駆ける。
時折膨らみを見つけてはジャンプしてアクロバティックな動きをして全力で楽しんでいた。
若さや身体が許す限り……私はそうやって今を全力で生きていたいから。
飯田くんも龍くんもなんとか着いてきてくれている。
新雪は柔らかく、膝の上まで雪が積もっている。
自然とは美しくも厳しく、でもその時間が自然と対話してるようで……その時間が愛おしくて仕方がなかった。




