雪と温泉とウィンタースポーツ 8話
「ふー……マジで疲れた。」
俺はテーブルに腰掛けて上着を脱ぐ。
寒いけど、身体が死ぬほど発汗していたので俺はキンキンに冷えたお茶をがぶ飲みしていた。
「あはは!直輝くんすごい飲むじゃん、無意識に疲れてたんだね!」
そう言って彩奈がラーメンを持ってこちらに来る。
どうやらチャーシューが何枚も乗っていて美味しそうだった。
ぶっちゃけ、家系とか凝ったラーメンも好きだけどこういうあっさりしたラーメンも大好きだ。
ちなみに俺はカツカレーにした。
疲れた時のカレーって本当にベタだと思うけどすごく元気が出る気がする。
「あ、いたいた!」
「瑞希!こっちだー!」
俺らを発見したのか舞衣と瑞希も座っていた。
瑞希はプリンのみで、舞衣はステーキを持っていた。
「え、舞衣まだ食うの?」
「えへへ〜、滑ったらカロリーほとんど消化できちゃったみたい!」
そう言って彼女はステーキを捕食する。
その様子からモンハンというゲームに出るイビルジョーというモンスターを想像してしまった。
あのモンスターも高い体温を常にキープするためにいつもお腹すいてはなんでも食べちゃうんだよね。
「……直輝くん、なんか失礼なこと考えてない?」
「い……いえ滅相もございません。」
「「なぜに敬語?」」
あまりの挙動不審さに彩奈と瑞希にも突っ込まれてしまった。
「それにしても、みんなスキー上手いんだな。なんというか俺だけ足引っ張って申し訳ないよ。」
そう言うと3人は笑った。
「いやいや!私ずっと直輝くんの動き見てたけど上手になったよ!別に無理に合わせようとしなくて自分なりに楽しめばいいと思うよ!」
そう言って彩奈がフォローしてくれた。
「むしろ、初日でここまで滑れてるのすごいよ。」
「そうなのか?瑞希。」
「私は親になんでも経験しろと毎年スキー教室に通わされてもう10年毎年滑ってるけど……最初は木にぶつかったりしてたもん!」
……ちょっと想像しやすいな。
ふぎゃっ!って悲鳴上げてそう。
瑞希なりに元気づけてくれてる感じがして嬉しかった。
「まあでも……私はこうして直輝くんと遊ぶのが楽しいかも。今日は誘ってくれてありがとうね。」
「舞衣……。」
ステーキを食べながらも俺の目を見て喋ってくれてる彼女はまさにヒロインだった。でも、少しだけ引っかかっていた。
「あれ?俺そういえば舞衣誘ってたっけ?」
顔面を鷲掴みにされる。
その瞬間顔面に強い痛みが襲ってきた。
「いたたた!!ギブ……ギブアップ!!」
「直輝くーん?直輝くんから誘ったよね?」
「い……いや、今のは違うでしょ!だって盗撮して情報を聞き出してから……痛い痛い!もげる!顔面が死ぬ!誘いました!僕から誘いました!」
そう言うと、彼女のアイアンクローから解き放たれる。
なんという恐妻なんだろう。
きっと盗撮してるの知られたくないのかもしれないけど。
「あはは!直輝くんはデリカシーをもう少し学んだ方がいいかも!」
「彩奈!?笑ってないで助けてくれると嬉しいんだけど……。」
あまりの折檻に恐れおののく瑞希に対して彩奈が腹を抱えて笑っていた。
「うん、なんか納得した。さすが舞衣ね、恐れ入ったわ。」
「ん?どういうことよ彩奈?」
「なんでもないよ、ただの独り言〜。」
彩奈は俺にアイコンタクトをする。
先程のゴンドラで彼女に告白されたのを思い出して、その言葉の真意を知るのは俺だけだった。
舞衣ほど一途で気持ちや行動で好意を示すことができないと静かに悟ってのその言葉なのだ。
でも、それは悲しさよりも納得したからこそのこの不敵な表情なのかもしれない。
気が付けば俺たちは食事を食べ終えていて、またもう少し滑りたいと感じていた。時刻は13時、もう少しでリフトは動かなくなるのであと1~2回は滑っておきたいものだ。
「あ!直輝お待たせ〜!」
「母ちゃん!」
やっと食堂に母ちゃんが来た。
その後ろで疲れすぎて顔が青白くなってる龍と飯田がいた。
「……大丈夫か?お前ら。」
「……なおっち、俺はもう……疲れた。」
こんな弱々しい龍初めて見た。
いつもは6時間ぶっ通しで俺に叱責しながら勉強教えてくれるのに。
「……えへへ、遥香さんハードで惚れちゃいそうだぜ。」
「飯田、お前のはなんか違うぞ。相変わらずドMだな。」
「いやー!3週も2人には付き合ってもらっちゃったよ!急斜面、新雪だらけ!上級者向けの自己責任コースをね!」
「……お前ら、災難だったな。」
俺は2人に労いの意味を込めて肩をぽんと手を置く。
あんなアクロバティックな動きをしてたから合わせるのも大変だっただろう。
俺は程々に楽しむことにした。
「そういえば、俺たちは今日はどんな感じなの?」
「もちろん、宿とってるわよー!」
「と……泊まり?」
「そりゃあそうよ!野沢温泉だから温泉も楽しまないとね!そのためのリフレッシュなんだから!」
そう言って、母ちゃんは妙なドヤ顔とグーサインをしていた。
相変わらず大胆不敵すぎる母ちゃんに俺は呆れともう1つ別の感情のこもったため息をする。
ぶっちゃけめちゃくちゃな弾丸旅だと思う。
でも、こんなに楽しそうに笑顔を向ける母ちゃんを見ると、どうにも否定することはできなかった。




