雪と温泉とウィンタースポーツ 6話
「はぁ…はぁ…。」
俺はゴンドラに乗っては息が上がっていた。
隣には彩奈がニコニコ座っている。
「いい感じだね!さっきとは見間違えるほど上手くなってるよ!」
「おいてけぼりにしやがって……。」
スキーって滑ってるだけだと思ったけど結構全身を使う。
足が妙に痛いし、寒いと言うより中身から汗が吹き出すようだった。
自販機でさっき買ったホットコーヒーを口に入れる。
「冷た!?」
「あはは、そりゃあマイナス10℃に1時間も晒されたらそうなるよ。」
「雪山……恐るべし。」
ちなみに缶コーヒーは何度も転んだせいか表面が少し凹んでいた。
やっぱりそれなりの衝撃もあるみたいだ。
「……なんか、不思議だわ。こんなに直輝くん達と仲良くなるなんて思わなかった!」
「最初めっちゃ舞衣いじめてたもんな。」
「ちょっと!?それは言わないお約束だよ!」
最初の彩奈はぶっちゃけ怖かった。
舞衣に嫉妬して、攻撃をしたりとか……途中から不良を使って来たりして姑息だったけど、いつの間にか仲良くなってしまっていた。
「でも、なんだかんだみんなが温かくてずっとここにいる気がする。今までの私は強く見せることでしか自分を保てなかったからね。」
「一軍女子って生きずらいな。」
「あはは、そうかも。」
ゴンドラは速度を上げてどんどん登っていく。
少しだけその機械音だけが無機質に室内に響き渡る。
その音を聞きながら、本当に色々あって……彩奈も欠かせない存在になっていたことを強く感じた。
「私、直輝くんのこと好きだよ!」
「それは……異性として?」
「さあ、どっちでしょう!」
「あのなぁ……分かってんだろ。俺には舞衣って彼女がいる。だから彩奈の気持ちには答えられない。」
「そっか〜残念!」
俺はてっきりいつものふざけかなと思ったけど、表情は少しだけ切なそうに見えて…何故か胸が締め付けられるようだった。
もしかして……さっき俺はモテてるって言ってたのって……?
様々な憶測が飛び交うのだけど、これ以上聞くのは野暮だと思った。
「……ありがとう、はっきりと断ってくれて!」
「なんで断られてるのにお礼言うんだ?」
「むしろきちんと自分の意見を教えてくれるの真摯だと思う。」
「そっかな。」
「まあでも……友達としても君が大好きだから、これからも仲良くしてよ!第一印象最悪な女だったけど。」
「おう、これからも頼りにしてるぜ。」
きっと数ヶ月前の俺なら揺さぶられていたけど、様々な経験が俺の意見を確立していてもうブレることはそんなにない気がした。
ゴンドラをゆっくり降りて、先程のところに到着する。
すると、先程まで休んでいた舞衣と瑞希が立っていた。
「お!2人とも……そろそろ滑る感じ?」
「OKだよ!さっきまでお腹すいてたから死ぬかと思ったよ〜。これで腹八分目だから滑れそう。」
「8分目!?舞衣ステーキとカレーとドリアとプリン食べてたよね!?」
「あ〜瑞希、舞衣はフードファイターだから気にすんな。」
舞衣は普段から俺の3倍は食べる。
多分早朝から起きてカロリーを余計に使ったのだろう。
「じゃあ……さらに登るよ!」
「「「おー!」」」
俺たちはさらに上のリフトに乗る。
吹雪が吹き荒れて雪と霧が入り交じり、ホワイトアウトした景色はある意味幻想そのものだった。
リフトはブランと足が浮くのが気持ち悪いけど、なれるとそこまで気にはならなかった。
二人乗りのリフトで隣には舞衣が座っていた。
「どうだった?彩奈とのデートは。」
「は?へ……変な聞き方すんなし。」
どうしよう、さっき好きって言われたばかりだから妙に鋭い感じがして心拍音が上がる気がする。
「ほんとかな?彩奈可愛いしな〜。」
そう言って横っ腹を人差し指でツンツンされる。
かーっとなって俺は彼女にキスをする。
正直、自分でも何やってるか分からなかった。
でも俺は舞衣を愛すると決めたので言葉ではなく行動できる示すことにした。
とは言っても、ほんのジャブ程度の一瞬のキスだった。
ぶっちゃけ牡丹雪が顔について少し冷たい間隔の方が強いまでもある。
「……これでどうだ?」
「ちょ……ちょちょ!なんで急に!?TPO弁えてよ!」
「いや、みんなの前でベタベタくっつく人に言われたくないんだけど?」
舞衣は予想外の行動に顔を真っ赤にしていた。
いつもはもっと際どい発言とかしてるのに、こうグイッと来るとウブな反応を見せる。
「なんというか、直輝くんいい意味で変わったね。」
「そうか?」
「なんというか、前まではオドオドしてたのに……今は自信満々というか、強くなった気がして……かっこいい。」
そう言って、舞衣は俺を直視できなく頭から煙が出ていた。
まあ、あんだけ龍とかに勉強叩き込まれていたりしたら、自然と考えも変わるかもしれない。
「ほら、そろそろ降りるぞー。」
「え?ちょっ……まだ準備が。」
どうやらキスされた衝撃で周りまで見えてなかったらしく舞衣は慌てふためく。
俺はなれない手つきで手持ち無沙汰な彼女の手を引いて、ちゃんと降りられるようにエスコートをした。
最後にバランスを崩して、ちょっと無様な姿まで見せてしまって少しだけ恥ずかしくなった。
「……ありがとう!」
「おう。」
でも、舞衣はそんなかっこ悪さよりもきちんと彼女を気遣う方が嬉しかったのか今日一いい笑顔をしていた。
「お待たせー!」
間もなく彩奈たちが合流して、いよいよみんなで滑ろうとしていた。
突然景色が眩しくなる。
どうやら霧の層を抜けて、俺たちは晴れ渡る太陽で雲海に包まれた景色をみていた。
それを見て言葉を失う。
でも、みんなはこれからスキーを滑ることに夢中で俺だけがそれに気がついていた。
スキーは疲れる。
寒いし、足は痛いしで散々だ。
でも、こういう自然の厳しさと同時に美しさがあるから人は集まるのかもと思い、俺はゲレンデを静かに滑り出すのだった。




