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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第23章 AV女優でも母親でもない私

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酒とタバコとバレンタインデー 1話

新年も明けたというのに全くそんなおめでたい感じはなかった。


「締切締切締切……!」


私こと笛吹さやかはとにかく締切に追われていた。

珍しく作品が通らず添削や推敲を繰り返していたのだが、どうにも納得するようすがなかった。


「もう……私は……ダメだ。」


1杯のカップ酒を飲み干し、私はさらに悩み筆を走らせる。

どうにも毎年ベストセラーを作っていると、ある境地にたどり着く。

それは……ベストセラーを書き切るということは、その作品を背負ってそれを超えなきゃ行けないということだ。


そして、個人事業主の私は去年のより売れないとその分税金も引かれていくので物理的に命ギリギリで戦うしかないのだ。

でも、かれこれ8万文字ほど書いたのでもはや私の心から吐き出せるものは何も無かった。


「ただいまー……って!笛吹さん!?なんですかこのゴミ屋敷は!!」


この男は私のパトロン……もとい同居人の飯田蓮である。

通称、私はれんれんと呼んでいる。

まだまだ17歳という若さなのにしっかり者で、家賃が払えなくなった私を助けてくれた恩人である。


「れんれん〜!もう私はダメだ。」

「何が!?」

「もう……あの作品たちを超えることができないかもしれない。もうこれが飲んでなきゃやってられないんだよ!!」

「うっわ……酒臭。笛吹さん……風呂も入ってます?」


れんれんは辛辣に鼻をつまみながら私に話しかける。


「入ってないよ!入る暇もないんだよ!」

「入って!?頼むから!」


そう言って、私はれんれんにシャワーを浴びさせられる。

いやいや入ったけど、少し酒が抜けてきてリラックスするのを感じた。

ああ……ちょっと冷静になるとそうでも無いかも。

考えるんだ……、ベストセラー、締切、税金。


「ちょっと笛吹さん!体びしょびしょだし、全裸で酒飲まないでくださいよ。」

「うええええ!!やっぱりこの状況シラフでいられるの無理だ!!」


そう言って、私は安酒をコップに入れて一気飲みしようと思ったられんれんに止められる。


「離して!れんれん!」

「……笛吹さん、まずは泡をちゃんと流してタオルで拭いてからでお願い……します。」

「……もう!」


私は少し怒ってシャワーを浴びた。

でも、正しいのは明らかにれんれんだって分かってる。

それでも、私は妙に正常な判断力を失っていた。


「とりあえず、言われた通りにしよう。」


☆☆


シャワーを終えると、れんれんは髪を乾かしてくれた。

私は髪が濡れたまま寝るのだけど、それがどうにも彼にとっては受け入れ難いものだった。


「ほれ!髪サラサラになった!可愛いですよー!」

「……れんれん、最近なんかお母さんみ増した気がするんだけど?」

「そりゃあそうですよ!笛吹さん美人なのに風呂入らないし、酒臭いし、Tシャツタバコのヤニで黄ばんでるし……勿体ないんですよ!」

「うるへー!そんなのれんれんの尺度じゃん。」


そう軽口を叩くがれんれんはスルーする。

もう一緒に住んで半年以上過ぎたのだけど、扱いが慣れてきて男女から完全に同居人……むしろペットの方が合ってる気がした。


「れんれんは最近は悩みとかないの?」


こうして一緒にいると明らかに私が無能に見えてしまう。

でも私は彼よりも8個も上のお姉さん。

ここは歳上の余裕というものを分からせてやるしかないだろう。


「いや、ないっすね。」

「……へ?いやいや、あるでしょ!進路とか!」

「公務員か美容師になりたいっすね。」

「な……、あ!そうだ、お金とかは大丈夫なの?」

「最近、お袋が今まで放任主義だった事の責任感じて仕送りするようになりました。あと、笛吹さんの確定申告も大体対策済みですよ。」

「きょ……今日の晩飯は!」

「今日は豚バラ鍋にしようと思ってますよ。あとは煮るだけです。」


……どうしよう、この17歳一切の隙がない。

私はその現実に無言で無能という事実を押し付けられてるようがして、居心地が悪くなった。


「……ろう。」

「へ?どうしました?」

「れんれんの……ばかやろおおおおお!」

「なんで!?」


私は、半分酒に酔ったままそのまま着替えて家の扉を開ける。

そして、私は家を飛び出していった。


「ちょ!晩飯までには帰ってきてくださいよー。」


私は、そんな声を振り切って外に出る。

もう無理!家出だ!

今は優しくされればされるほど私が傷つくというのに……れんれんは、いつもあんなに優しい。

それが今はどうしようもなくムカついてしまった。


しばらく走るのだけど、今日は寒波で気温はマイナスになっていた。

薄着で無鉄砲に飛び出してしまったので身体が凍えてしまう。


「……帰りたい。」


多分、帰って謝ればれんれんは許してくれて、温かい豚バラ鍋を食べることができるだろう。

でも、妙にそれが歳を取ればとるほど素直になるのが難しくなってる自分がいた。


どうすればいいのか分からなくて、コンビニでホームレスの如く紙パックの酒を飲んでいると、ある人物が私の前に現れた。


「……さやか?」

「こと……ねえ?」


そう、目の前にいるのは神宮寺ことね。

絹のように揃った髪と、凛とした表情をして女の私でもうっとりするような美人だ。

施設にいた頃からの友人で、彼女は相変わらずキツめのセブンスターを片手に持っていた。


「……何してるの?」


そういって、彼女は心配そうに私の元へと酔ってくる。

冬のベンチは座るだけでもひんやりしていて、風がいつもよりも強く、そして鋭く吹き込んでいた。



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