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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第23章 AV女優でも母親でもない私

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AV女優でも母親でもない私 6話

翌日……


昼に起きたら昨日の疲れが残ってるのか真っ先に頭痛が襲ってきた。

彼に対してどう返答しようか。

どうにも人は身体を交わすと恋愛感情が湧いてくることもあるようで、私はその答えを出すのに大往生していたのだが、時間がそれを許すことがなかった。


「天野先生!!」

「……どうしたの?山崎ちゃん。」


昨日の私をおちょくる電話の主とは思えないほど山崎ちゃんは戦慄しながらも、冷静な表情で私に話しかけた。

仕事が絡むと彼女はそれをこなすためのマシンに早変わりする。


「宮田さんが、破水しました。」

「……予定より早いわね。」

「ええ、しかも逆子の可能性が高いです。」

「直ちに処置をしましょう。場合によっては帝王切開をします。」


そう、今日は宮田さんの出産の日になった。

私も急いで手術室へと向かう。


「うぐぐ……ああああ!!!」


普段のおしとやかな宮田さんは出産の苦しみに悶えていた。痛みで酷く顔が歪み顔が汗ばんでいる。

すると、男が近くで待っていた。


「先生!!……妻は、無事出産できるんでしょうか!!」


どうやら、例の宮田さんの旦那さんのようだった。

やはり男といえど父親になるという自体に緊張してるのと、帝王切開、予定より早い出産などの要素が絡み今にも泣きそうだった。


「……宮田さんは逆子ですので帝王切開の可能性があります。」

「腹を……開くんですか?」

「高い確率でそうでしょう。」

「大丈夫なんですか!」

「彼女の体力次第ではリスクもあります。ですが最善を尽くしますのでお待ちください。」


自分でも冷たいと思った。

でも、医者というのは誠実に事実に基づいて話さなきゃいけない。

それに、絶対とかそういった表現も使うのもタブーなので彼をドラマのように勇気づけることはできなかった。


でも、それでいい。

私は……背中で見せればいいのだから。


「7月27日!21時44分!緊急の帝王切開を致します!」


そういい……私は帝王切開の手術をするのだった。

彼女に全身麻酔をかける。


すると、徐々に痛みよりもぼんやりとした気持ちになってくるのか彼女の絶叫は控えめになってきた。


「先……生……お願い……しま……す。」


宮田さんは託すかのように静かに目を閉じる。


「メス!」

「はい。」



私は、静かに彼女の腹に執刀を加える。

この時間は5~10分で済ましたい。


彼女の心拍数や血圧がやや控えめなので若干の焦りを感じる。

手術時間も宮田さんの体の弱さを考えたら長くは持たないだろう。


1つの親子の運命が、私に託された。


子を捨てた私が、子を助ける。

彼女の膨張した子宮を切開すると、そこには子供がいた。

まだまだ小さい2000gより少し重い程度だった。


そして、光の元に照らされると……初めてその子は声を発した。


「おぎゃー!おぎゃー!」


体内の羊水を吐き出すための、元気な産声が聞こえてきた。


へその緒を切除して、私は小さな子を預ける。


しかし、彼女の呼吸が少しずつ弱くなってくる。

まだ油断はできない。


針と糸を受け取り一つ一つ丁寧に縫い合わせる。

針が肉を貫通して、そして少しづつ開いた部分が閉じていく。


そして、子宮と……腹を縫い合わせて無事に手術を終えた。


生命が生まれる瞬間は尊い。

私はその瞬間に触れて……もう慣れきったはずなのに妙に涙が溢れそうになった。

そして、深くため息を着いて手術の終わりを宣言する。


手術は無事に終わった。

1時間ぶっ続けで集中したせいか、頭の血管がはち切れそうだったけど、私は大きなことを成し遂げたようで胸を張る事が出来た。


部屋を出ると、男は私の元に駆け寄った。


「先生!!妻は……子どもは無事ですか!!」

「ええ……無事、終わりました。」

「……うう……ひぐ……ありがとうございます……ありがとうございます……!」


宮田さんは、最近私よりも仕事を優先しているかもと言ってたけど、そんなことは無かった。

男の泣き顔を見て、それが一目瞭然だった。


手が震え、くしゃくしゃに泣いていてきっと不安な気持ちとか、嬉しい気持ちが共存してきたのだろう。

通路はしばらく男泣きが反響していた。


「体は小さいですが、元気な男の子ですよ。奥様もまたしばらく入院が必要ですが、回復傾向にあります。」

「良かった!!できる限り妻と一緒に居てあげたいと思います。」

「ふふ……きっと奥様も喜ぶと思いますよ。」


想像の100倍素敵な旦那さんだったので、宮田さんもさぞ幸せだろうとおもった。

ちょっと羨ましいと思ったけど、それは胸の内に秘めておこうと思いつつ。


☆☆


「天野先生!お疲れ様でした!コーヒーです!」

「ああ……ありがとう、山崎ちゃん。」

「まさか夜勤の時間に出産に立ち会うとは思わなくてびっくりでしたね。あの少人数でよくやりましたよ。」

「ええ……サポートありがとうね。」


いつもの仕事場所に戻って私たちは互いの職務を終えて一息をつく。



「さてと……で!例の彼とはどうなんですか〜?」

「えー、待ってこのタイミングでその話する?」

「したいに決まってるじゃないですか!私も見てみたいんですよ、恋人ができて……結婚して、子どもを育てる天野先生を見れるチャンスなんですよ!!」

「それ、どこでも見れるわよ。」


暗闇の中、私たちは楽しく一時の雑談に興じる。

メリハリもあり、こうして生命と向き合うのは責任が伴うけどやりがいがある。やっぱり私はこの仕事が好きだった。


静かに飲むコーヒーは、私を優しく癒してくれるようでもあった。

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