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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第23章 AV女優でも母親でもない私

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AV女優でも母親でもない私 2話

17時頃、目覚ましで私は目が覚める。


しっかり寝たはずなのに、どこか疲れが取れてない感覚だけどもう慣れた。

シャワーを浴びて最低限の身なりを整えて、またいつもの職場へと足を運ぶのだ。


夕陽はとっくに落ちていて、街並みも寂しくなっている。


「天野さん!おはよーございます!」


そんな中、1人だけまるで一番星のように明るい女の子が手を振っていた。


「山崎ちゃん、今日も元気ね。」

「いやー、疲れ取れないですよ!夜勤の人増やしてくださいって言っても一向に病院側で増やす気ないのまじでムカつきません?」

「あはは、わかるわそれ。」


私の職場で地元から医者になる人はそんなに多くない。

現にうちの病院は基本的に県外からのスタッフが多いのだが、離職率に対して採用が極端に少ない。

だからいつもそのしわ寄せが私たちに集まり愚痴の言い合いだった。


病院に着いてからお互い夜勤の仕事に入り、一通り書類の仕事や引き継ぎを受けて準備をする。


とはいえ、半日前にここにいたので特に異常はなかったので大体は把握していた。

沖縄は観光地なので人は来るけど救急は隣町の病院が主にやっている。

なので、こっちは病棟の患者に対して対応するのがほとんどだった。


静かに私のキーボードを叩く音だけが部屋に鳴り響いている。

それが妙に集中力を上げているので心地よかった。


「天野先生、おはようございます。」

「……土方先生、おはようございます。」


この人は土方先生、この病院の副院長をしていて40近い男性だ。

いつもこうして私の作業中にコーヒーを淹れてくれる。


「すみませんねぇ、いつも夜勤やってもらっていて……体調は大丈夫ですか?」

「ええ、特に問題なく。」

「なかなか、採用をしても応募が来ないので尽力は致しますけど……その調子でお願いします。」

「はい。」


私は淡々と作業を続ける。

土方先生はどこかに行くかと思ったら隣に座りコーヒーを飲んでいた。

集中が逸れてしまうので早く行って欲しいのだけど、どうにも去る様子はなかった。


「天野先生って休みの日何してるんですか?」

「はい?」

「ああ……いや、雑談と言いますか。」

「……寝てます。」

「へぇ〜僕も寝るの好きですよ。そういえば、天野先生って恋人とかご家族いらっしゃるんでしたっけ?今度良かったら休みの日にディナーでも……。」


その質問に……少しだけ苛立ちを感じてしまった。

多分そんなに怒ることではなかったけど、仕事の邪魔をされてどうでもいい話をされてたのに急に堪忍袋の緒が切れてしまった。


「やめてください!!私はずっと独り身です!これ以上は怒りますよ!」

「はは、そりゃあ失礼。夜勤……お願いしますよ。」

「言われなくてもやります!」


そういうと土方先生は立ち上がり私の元から去ると、しばらくして山崎ちゃんが私の元へ駆け寄ってきた。


「……大丈夫ですか?天野先生!」

「ごめんなさい。うるさかったわよね。」

「ううん!そんなことないですよ!まじウザイですよね、土方先生!いっくら天野先生が可愛いからってあーやって唾つけるのキモイですよ!」


実際、土方先生は妙に目線が私の顔ではなく少し下を見ているので身体を見ているのは一目瞭然だった。


もうアラフォーになるのに何が良いのだろうと思いつつ、気持ち悪いという嫌悪感が同時に生きていた。

なにより、私に家族の話はタブーだと病院は承知のはずだったのにまたズケズケと入り込んだのが許せなかったのかもしれない。


「そういえば、天野先生は恋人とか作らないんですか?」

「うーん……いいかな。」

「そっか……そうですよね。」


何か言いたげだったけど、山崎ちゃんはこうやって深くは聞かないドライなところがある。

ここは職場だ。それくらいが良いと考えられるあたり本当によく出来た子だなと感じる。


ふと、20年前に直人くんが津波に飲まれた瞬間を思い出す。

そして、それに屈して……私は産むつもりだった我が子を堕ろしたのだ。

そんな人間が家族を作る権利なんて……無いのだから。


しばらく、作業をするのだけどどうにも集中出来ない。

ナースコールもないのでただただ時間が過ぎ去るようだった。


「いかん!まじで集中できない!」


そういって、私は屋上で少しだけ休む。

屋上から見える月明かりに照らされた海が一定間隔で波の音を刻む。

それがどうしようもなく心地よかった。


そして、好きでもないタバコを吸って落ち着かせる。

タバコなんて絶対吸わないと思っていたけど、人間関係で吸うようになってから、気がついたら常備するようになってきた。


でも……それでいい、私はこの自然に囲まれて吸うタバコが好きだった。

思えば些細なことで怒ってしまった。土方先生のセクハラなんて日常茶飯事だ。気にしていたら気が持たない。



そう反省しつつ、私は病室に戻る。


今は私は人の命を握った医者なのだから、せめてこの時間は責任を全うしようと気を引きしめる。


先程飲んだカフェインとニコチンは私の体を覚醒させて、私はまた無心になって仕事に望む。


その晩、ナースコールがなったりトラブルが怒ることは一切なかった。

暗闇だけが静かに……でも寂しく私を覆っていて、それがどこか夏なのに私の心を冷ましていくようでもあった。





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