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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第21章 直輝と決意とクリスマスイブ

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直輝と決意とクリスマスイブ 9話

新年、明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!

昨日は暗闇でわからなかったけど、内房線は自然に囲まれ、時には海が見えて陽光を美しく照りつけている。


千葉県とは東京から近いとはいえ、少し離れると静かな港町が続くものだ。

俺は少し睡眠不足の目を擦り、ゆっくりと列車に揺られる。


「もう少し!浜金谷っていう駅で降りるみたい。」

「……そういえば、どこ向かってるんだ?」

「えへへ〜秘密!」

「なんでだよ。」


俺たちは不気味なほどいつも通りだった。

昨日のことが少しフラッシュバックしたものの……それでも何とか彼女の明るさが紛らわしてくれる。


駅を降りると、ほとんど人がいなく1時間で電車が1~2本通るような少し寂れた雰囲気の駅だった。

少し歩くと海沿いの道があって、船が並んでいる。


しばらく歩くと、ひとつの文字が目に入った。


「鋸山……ロープウェー?」

「正解!よくわかったね!」


俺たちは施設を入ってお会計を済ませる。

そういえばロープウェーって初めてかもしれない。

実際どれくらいの速さで進むのかとか、全く想像がつかない。


ゲートを通ると、案外広い空間が吊り下げられていた。

吊るされているから当たり前だけど、常に等間隔で揺れている感じが妙にゾッとする。


「これ……落ちないよな?」

「あはは!直輝くんめっちゃ怖がってるじゃん!」


彼女は楽観的だけど、俺には恐怖感しか無かった。

鋸山は石を切り崩していた土地なので不気味なほど断崖絶壁が綺麗に垂直をなぞっていて、岩が露出している。

怖くないと思うほうがおかしい。


すると、突然アナウンスが流れてロープウェーが動き出す。

揺れると言っても……案外知れてるのかもしれない。

そう安心するのもつかの間だった。


ガコン!


「うおっ!?」


ロープウェーが支柱を通るとその度に結構揺れる。

俺はこの時高所恐怖症なのかもと思うほど少し混乱してると、彼女は俺の両頬をに手を当てて視線は彼女に集中した。


「どう?私だけ見てれば怖くないよ!」

「そ……そうだな。」


どうしよう、可愛い。

吊り橋効果よろしく恐怖感と彼女に対するドキドキが共存して、どうにかなってしまいそうだった。

彼女はどこまでもズルかった。


「……惚れた?」

「うっせぇ!惚れてなんかないし!」

「え〜でも顔真っ赤。」


すると、そのやり取りを聞いている年配の女性たちは「あらあら。」なんて暖かい目で見守って来るので俺は咄嗟に離れて目を閉じる。

この方が余計怖い気がしたけど、今よりはマシだった。


そして、15分程度でロープウェーを降りると、そこは山のてっぺんでどこまでも景色が広がっていた。


「すげぇ……。」


海の水平線がどこまでも見える。

その先に……伊豆や富士山、伊豆大島などの遠いところにあるはずの場所がすぐそこの距離で見えていた。


電車だと気が付かないけど、日本って案外狭い世界なのだと驚かされる。

だって、ここまで来るとこんなにも世界を見渡せるのだから。


「さーてと!ここからは、地獄のぞきでも行きますか!」

「何それ。」


すると、彼女は人差し指をピンと立てるとゆっくりと曲げた。


「断崖絶壁の上にこんな形の岩があるんだよね!」

「ごめん、用事思い出したわ。」


すると、愛さんは満面の笑みで俺の手首を強く握った。

まるでこの場においては選択の余地を与えないようでもあった。


「逃がさないよ?」

「……ぐぬぬ。だーっ!わかった、いきます!いきますよ!」

「えらいえらい!ご褒美にチューしてあげよっか。」

「しないからね!?」


全く……調子狂うな。

俺は山道を進む彼女をぼんやりと追いかける。

山道は急坂で、運動不足の俺には少しだけ答えるものがあった。


「ご……ごめん……休憩。」

「えー!……許可する。」


彼女は頬を膨らまして岩に腰掛けて足をバタバタとさせていた。

こうしてみると、本当は子供っぽいところもあるのかもしれない。


「それにしても……なんで急に登山?」

「直輝くんを鍛えるためかな〜。」

「何のために!?」

「なんの為って……君は大量がないのが弱点なんだよ?昨晩もすーぐ疲れちゃうんだから。」


まあでも体力が無いのは龍にも指摘された事だ。

何をするにも身体は資本なのかもしれない。

少しだけ、前向きにこの道を歩いてもいいのかもしれないな。


「行こう!さっさとこんな怖いところ降りたいし!」

「うんうん!大丈夫だよ、もし転落して死にそうになったら共に散ろうね!」

「待って!?この登山大丈夫だよね!?」


大丈夫かな、この子俺と共に自殺願望とかあるのかな?

こんなにも一緒にいるのに……まだ分からないことだらけだ。


やがて、岩肌がさらに露出してきて地獄のぞきを目の当たりにする。

断崖絶壁の上に岩がまるで先程の曲げた人差し指のように曲線を描いている。

その先にフェンスがあって撮影スポットとなっていた。

しかも、足場は安定してなくてまさに地獄を覗いてるようだった。


「やっと着いたー!すみません、写真いいですか?」


すご……愛さん知らない人に真っ先に話しかけられている。

コミュ力あるよな、もし彼女はアメリカにきても実はやっていけるのかもしれない。


「ほら!直輝くん!撮ろ!」

「ちょ!マジで押さないで!お願い何でもするから!」

「ん?今なんでもするって?」


何とか、地獄のぞきの先端に着いて行くと20mくらいの絶壁が体をふるわせていた。


「はい!取りますよー!カップルさん!」

「ち……ちが。」

「はい!チーズ!」


パシャリとシャッター音が鳴り俺は無様なポーズで写真を取っていく。そして、写真を見せられると俺は少しだけ達成感に溢れていた。


断崖絶壁の怖かった記憶、どこまでも続くパノラマ、そして登りきった達成感が切り取られている。

俺の顔は……どこか楽しそうで、それでいてやり切ったのか堂々としていた。

なんとか、岩肌をおりて俺は腰掛けた。


「ふーー……疲れた。」

「えへへ、怖かったのに逃げない直輝くんはかっこよかったよ。」

「なんというか、新鮮な経験だった。ありがとう……誘ってくれて。」

「うん、私も本当は怖かったけど……楽しかった。」


そう言って、彼女は俺の手を握る。

その様子に少しだけドキッとしてしまった。

彼女は俺の目をじーっと見つめて、また緊張すると……彼女は立ち上がった。


「さーて!下山するか!」

「そだな……ロープウェーで降りて。」

「え?何言ってるの?自分で降りるんだよ。」

「……まじ?」


彼女のペースのまま俺はどんどんと進んでいく、まだまだ鋸山と彼女の旅は終わりそうになかった。


岩だらけの山は俺の本能に危険信号を鳴らす。

そして、それを乗り越える度に彼女との時間が恋しくなってしまう。


俺は……この時間に果たして決着をつけられるのか、上がった息と足の疲労が俺の決意を削いでいるようでもあった。


「まだまだ、逃がさないよ。」

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