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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第21章 直輝と決意とクリスマスイブ

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直輝と決意とクリスマスイブ 8話

朝なのに湯気が立ち込めて、それだけでも贅沢な朝だと思う。

大きなガラス張りのところからは大海を一望することができて、自分の心を晴らしてくれる。


お風呂の気持ち良さと、海のマリアージュ。

そして、ふと冷静に振り返り……俺は頭を抱えてしまった。


「やっちまったあああ!」


そう、俺はやらかしていた。

普通に考えて最低だ。彼女持ちだし……俺はあいつしかいないと決めていたのに、彼女に押されていたり、俺自身が弱っていたとか色々あるけど……さすがにこれは大問題だ。


そして、俺は今めちゃくちゃな選択を迫られている。

彼女と逃げるという選択だ。

それを選ばないと彼女はアメリカにて孤独に過ごすかもしれない。


彼女自身の居場所は……もしかしたら俺しかいないかもしれないのだ。


この状況……二律背反、どちらかを選んでどちらかを捨てなきゃ行けない。

そんな状況だと理解すると……俺は弱りきっていた。


俺は、温泉に浸かりしばらく無心になるが、どうにも彼女の昨日の姿をフラッシュバックしてしまい。

さらに悶々としてしまう。


昨日の疲労は既に湯に溶けて、身体は妙に落ち着いていた。


「そろそろ……出るか。」


身体はさっぱりしたのに、まだ心はドロドロしたままだったけど、俺はじっとしてはいられなかった。

でも……結論はひとつ出た。


俺はきっと、彼女と逃げたら幸せにはなれない。

これは愛ではないし、その先もない。

楽な方へと逃げたら……きっと楽な選択しかできなくなると思ったからだ。


ゆっくりでいい、その方針だけは捨てないでおこう。

そして、浮気してしまったことを舞衣に土下座して後でぶん殴ってもらおう。


☆☆


「お!湯上りの直輝くんセクシー!」

「いや……昨日散々みただろ。」


風呂から戻ると彼女は髪を整え、化粧をしていた。

いつもの余裕のある愛さんがそこにいた。


可愛らしくも、どこかミステリアスな彼女は緊張感を覚える。


「あの……さ。やっぱり俺たち!」

「んー!いい匂い……。」


そう言うと、彼女は俺を抱きしめてクンクンと匂いを嗅ぐ。

相変わらず彼女は華奢で、少し柑橘系の香水の香りがして、俺の心はあっさりと揺らいでしまった。


「ねえ、その答えは……クリスマスイブに教えてよ。」


俺の心は既に読まれていたようだった。

それでも彼女は攻めの体勢を変えない。

ダメだって分かってるけど、彼女なりに俺と共に逃げる為に少し賭けてるような感じでもあった。


「あはは、直輝くん……私に抱きしめられると抗えないんだね。可愛い……もっと甘やかしてあげよっか?」

「う……うるせぇ!」


俺はカーッとなり彼女から距離を取ると、彼女は楽しそうに……でも少し残念そうに笑っていた。


「あらあら……。」

「と……とりあえず、今日は帰らないか?すこし……1人になりたい。」

「えー、直輝くんの攻略時間無くなっちゃうな。それに……私とあと2日しか会えないかもしれないんだよ?」


残り時間を言われるとぐうの音も出ない。

彼女とはまた会いたい。

どうにも、今見捨てるのも俺の中では後味の悪いものを残す気がした。


「ねえ、海見に行こうよ。」

「……わかったよ。」


俺たちはホテルをチェックアウトして、海辺の岬に立つ。

ほんのりだけど、モヤの先に富士山がはっきりと見えていた。


「すごー!富士山みえるじゃん!」

「いやほんと……こんなところからも見えるんだな。」


富士山なんて、死ぬほど見た。

富士五湖とか、大井川とかでも見た。


日本人がこれだけ富士山を愛するのは、この佇まいとどこまでも美しい青色と白のコントラストが美しいのもあるかもしれないけど、どんな所でも見れるところこそが富士山の素晴らしさのひとつなのかもしれない。


それでいて、潮風が気持ちいい。

冬だと言うのに日光が心地よく、それでいて暖かかった。妙に先程の緊張感は溶けて、リラックスしている俺もいた。


彼女を見ると、笑顔なのに……どこか悲しそうでもあった。


「綺麗……。」

「だな。」

「ねえ、直輝くん?まだ君は……医者になりたい?」

「そりゃあなりたいよ。最初愛さんに話した時は、直人の人生を生きようとしてるのかもと思ったけど、これは紛れもなく俺の夢だ。」

「あはは!……そっか。」


そういうと、彼女は俺の手の甲に手を乗せる。

少し、汗ばんでるのかしっとりとしているから、彼女の体温が高くなってる気がした。


「私はまだ、夢がないんだ。」

「愛さん頭いいから……なんでもできそうなんだけどな。」

「あはは!君は私を褒めたいのか、それとも悲しませたいのかどっちなの?」

「……ごめん。」

「いいの!」


そういうと、彼女は笑ってそれに合わせて波も静かに音を奏でる。

一定のリズムでザザーっと音を鳴らすのが心地よい。


「私は……君みたいに強くない。」

「え、俺強い要素ある?」


ちょっとキョトンとしてしまう。

優柔不断だし、今もこうして挫折している。


「直輝くんは……上手くいかない自分に悩んでるよね?それって頑張ってるから悩むんだよ。わたしには……それもない。ひとりで何も出来なくて、今もこうして君に縋っている。いつも私は誰かに依存しないと生きていけないの。」


確かに……俺は今、悩んでるのは己の無力さとか上手くいかないことに悩んでいる。

しかもこれは、俺自身が決めたことだ。

きっと偏差値をあと5増やすのはめちゃくちゃ大変だけど、今のまま続ければ上げられる。


「だから君は強い、昔の優しい君も好きだったけど、今の君が好き。」


そう彼女が続けると、俺は言葉が出なかった。

潮風と小波だけが音を奏でる。

太陽は優しく照りつけ、2人を照らしていった。


「よし!じゃあせっかく千葉に来たし……デート続けよっか!」

「……うん。」

「実は面白そうなとこ、ピックアップしてあったんだよね。今は二人でこの時間……楽しみたいな。」

「それなら任せてくれ。」


俺たちは、一緒の道を既に結論を持っているようだった。


彼女は今の頑張ってる俺が好きだ。

でも、共に逃げた先に彼女が好きな俺は居なくなってしまう。

彼女自身も……一歩を踏み出さなければ成長も夢もない。


つまり、お互いに別の道は既に見えていた。

しかし今はそれを見ないようにして、俺たちは館山駅へと向かう。

とりあえず、心の負債はあとできっちりお支払いするとして、今はこの時間の貴さを味わっていこう。


風は暖かく、ヤシの木が妙に暖かい気持ちにさせる。

しかし、楽しい時間と思えば思うほど、決断が怖くなってる自分がいた。

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