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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第21章 直輝と決意とクリスマスイブ

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直輝と決意とクリスマスイブ 3話

クリスマスの時期になると、どこに行ったってクリスマスソングが流れる。

ジングルベルーとかイニッシュアメリクリスマスとかなんかフレーズが耳に留まってしまう。


「ねえ!直輝くんはなにかしたい事ある?」

「お……俺?」


愛さんがクリスマスのリズムに乗りながら少しステップを踏むように歩いている。

きっと苦手意識がなければカップル感覚でこの時間を過ごせるのだろう。

でも、今の俺にはそんなもの楽しむ余裕はなかった。


「……何がしたいんだろうね。」

「あはは!ちょっと疲れてるんじゃん!どうしたの?」


彼女は突然距離を近づけて上目遣いでこちらを見ている。可愛い……のだがなにか含みがあるようで冷や汗さえ感じる。


笑顔なのに目が笑ってなくて、抱きしめたら折れそうな程に小柄なのにどこか余裕で、黒髪なのに妙に色にコントラストを感じていた。


「直輝くんのいいところ!」

「え、なに急に。」

「優しくて誠実で、努力家でユーモアがあるところ!」


そういって、彼女は俺に指を指す。

その奇妙な言動でさえ、都会の人は目に留めようとしない不思議なマジックが俺たちだけの閉鎖空間をつくる。


「そして、悪いところは……無理し過ぎてるところかな。」

「…………。」


図星だった。

あまりにも的を得ていて、俺は何を言うべきかわからなかった。


「私の事苦手なの知ってるよ?でも……今の君は崩れそうだよ。一人になったら突っ走って転んでしまいそう。今も君は自分の無力さに打ちのめされてる。」

「じゃあ!俺はどうすればいいんだよ!」


俺は無意識に少しだけ怒りを顕にしてしまった。

ズバズバと自分の事を言われて妙に心地よくない。


「俺……目の前で大切な人を亡くして、時折夢に出るんだよ!直人が……死を決意しながらも、ちょっと死ぬの怖いな……なんて顔してたんだぞ!俺は10日近く助けられるチャンスがあったのに……何もしてやれなかった!!もう嫌なんだよ、後悔するのは!!」


きっと何言ってるかわからない。

だって、あれが現実なのか夢なのか確信すらないからだ。

でも、俺にとっては残るものがあった。

決意と同時に……やはりどこかで後悔してる自分がいるんだ。


「ううん、きっとそれは直輝くんは悪くない。」

「なんでそう言えるんだよ!」

「もしお父さんが自分の命を優先したり、2人とも助かったら今の直輝くんは……どうなると思う?」

「……え。」


堂々としている彼女はまるで、自分よりも自分を理解してるようだった。

その目は先程の不気味さもなく、少し鋭く一点を見つめている。


「そんなの……わからない。」

「歴史で織田信長やほかの武将が天下をとったら?」

「……歴史がめちゃくちゃになる。」


時間ってパラパラ漫画のようなものだから1つのコマが合わないと成立しなくなる。

そう思うと、俺はハッと手で口を抑えてしまった。


「もしかして、直人はそこまでわかった上で……?」

「多分、その怪奇現象も含めて歴史の一部だったんだよ。」


そう思うと、彼の最後の不可解な行動にも合点がいく。

それと同時に、俺は彼を救えない無力感がどこか違うところに行ってしまうようだった。


「ねえ、直輝くん?そう思った上で……君はどうしたい?」


彼女はそう言って力なくベンチに座る俺に容赦なく胸に細く長い指を突きつける。

彼女の顔をもう一度ちゃんと見ると、どこか優しい目をしていて、俺は何故か頬を涙が伝ってしまった。


それと同時に……雪が降り初めて温かい水と冷たい水が同時に顔に存在するのを感じた。

俺は、雪の中無意識に泣いていた。


泣き顔を見せないようにと顔を隠すと愛さんが俺の顔を覆い隠すように隣に座り抱きしめて包んでしまった。


「ほんと……昔から君は変わらない。」

「……うるさいよ。」


妙に心地よく、落ち着くのを感じた。

まだ彼女への苦手な感情は拭えなかったけど、少しだけ俺は彼女に救われた気がする。


自分の無力さに焦り結果を急いでいたけど、確実に進歩しているのも気がついた。

どれくらい彼女に甘えていたのだろう20分?気がついたら手足が温度を感じないくらいに冷え込んでしまっていて、涙も落ち着いたので俺は彼女から離れた。


「……ごめん、ちょっと取り乱した。」

「ふふ、いいよ。」


どうして俺は苦手なはずの彼女に甘えてしまったのかは分からないけど、今は感謝したい気持ちだった。

なぜ医者になりたいのか。

人のためじゃない、自分が誰かを助けられるようになりたいからだ。

そこがはっきりした気がする。


「ねえ、直輝くんはどこか行きたいところある?」


彼女はまた同じ問いかけをすると、俺は少し等身大の高校生に戻って少しだけ自分がやりたいことを思い出した。


「たまには……映画でも行こうかな。」

「映画、私も好き!」


新宿の歌舞伎町にはゴジラが顔を出している。

100mを超える怪獣は今もこちらをまるで仁王像のように強い目つきと力強い咆哮をするかようにこちらを見ていた。


「アニメ……でもいいかな。」

「あー!今流行りのあのアニメかな?私も気になってたんだよね!」

「愛さんアニメ見るんだ、意外。」

「そりゃあ私だって見るよ!」


俺はこれから、苦手な彼女と映画を見に行く。

でもどこか妙な信頼が生まれたのか、好きなことを共有したいという気持ちもあった。


俺はこれから観る映画のヒロインがどこか主人公に歪んだ愛情を持っていて、そして儚く散っていくというところまでは原作で知っていた。

二面性の強いミステリアスなヒロインがどこか愛さんを重ねてしまうようでもある。


降り始めた雪は足跡に少し粒が重なり、俺たちは人混みへと紛れていく。

軽くなった心のまま、ゆっくりとやりたかったことをする。


居心地の悪かった時間だけど、今はそれをゆっくりと楽しむとしよう。

それから、結論を出してからでも……遅くは無いはずだから。


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