完璧弟と白衣の姉と 5話
神社の歴史のある自然は整備されていて、所々が御神木として大切にされてるようだった。
「姉ちゃん?」
私は、気に突然耳を当てる。
私は知っている、おおきな木は下から水を汲み上げる……いわゆる生きてる音がするのだ。
私は、この音が好きだった。
「わわ!姉ちゃんが木に発情した!?」
「……うっさい。」
「ごご……ごめんて、その拳を下げてよ。」
「……木の音、知らない?」
「あ、木からなんか聞こえるんだね!どれどれ……。」
凛もその静かな音を聞いて目を閉じると、確かに音が聞こえたのか目をキラキラとさせていた。
「すげぇ!めっちゃ神秘的!うおおー、これなら良いデザインが描けそうだ!」
「……まーた仕事。」
凛は本当に仕事が好きだ。
恐らく仕事とプライベートの境界線がないほど好きなのだ。
いや、私も人のこと言えないけどね。
私たちは正宮 豊受大神宮を見ると、そこには綺麗な新しい木で建てられた神社があった。
地面は玉砂利でできていて、それだけでもほかの神社とはひと味もふた味も違う。
他にも3つほどの別宮があって、神社なのにまるで1つの迷路のように広く迷いそうでもあった。
凛は難しい顔をしてよく見ている。
「昔からある建築って昔からあるのに長持ちするの不思議だよな。俺生きる世界が違ったら宮大工もやってみたかったかも。」
「……そんなに簡単じゃないかも。」
「だよね!歴史のある建造物だから、建てた人の意図も汲めなきゃ建てられなそう。木の扱い1つにしてもこだわってるらしいから、尊敬するよ。」
私たちは一通り外宮を歩いてはたくさんのことに驚かされる。
自然、建築……そして雰囲気、どれを取っても一流の一言に尽きる世界だった。
私も興味を駆り立てられたけど、凛はデザイナーという職業病もあってか深く考えていた。
そして、しばらく私たちは外宮を出る。
次は内宮を見に行くために、凛がタクシーを呼んで内宮を目指す。
凛はタブレットを開いてはデザインをすぐに描き上げていて、どこまでもプロなのだと思い知らされた。
「そういえば、この神社アマテラスを祭る神社だっけな?」
「……ごめん、神話はソシャゲ止まり。」
「あはは!姉さんらしいや!」
「……あ、そういえば天照にはスサノオって弟がいた気が。もしかして、凛と同じシスコンだったりして。」
「誰がシスコンだよ。」
え、自覚ないの?
すると凛は得意げに指をクルクルとして知識を披露する。
「残念ながら……スサノオはマザコンなんだよ!」
「……うわぁ、きつい。」
「海を任されるけど、母親に会いたいと泣きわめいてから、姉に無礼な真似を繰り返して嫌になったアマテラスは引きこもりになって世界が闇に包まれるんだって!」
なんか、いつもRPGとかソシャゲとかでスサノオは強いイメージだったけど、こうして見ると残念な面で溢れている。
「全く!弟として不甲斐ないね!僕が弟なら、姉の分の仕事もして一生養うのに!」
「……ここにもどキツイのがいる。」
スサノオと凛。対象的なのに本質は重いという所が似ていて、どうにも他人事におもえなかった。
そして、アマテラスも引きこもり世界を闇につつむとかも妙に私と共通してる部分がある。
神話は一切興味がなかったけど、こうして聞くと人間くさいエピソードに溢れてる。
きっと、天変地異を見た人がそのように形容してるのだと思うと、発想力自体は今と変わってなくて私たちの知能は数万年前から変わってないことが垣間見えた。
「おっと!ついに内宮に到着だ!」
タクシーは停車して、凛がPayPayで決済するとその様子に私は驚く。
宇治橋という木で作られたおおきな橋の先には神聖な地域が広がっている。
清い川が流れ、暖かく優しい日差しが松の木から木漏れ日として照らしている。
「……ここが引きこもったアマテラスの神社。」
「姉ちゃん!?人によっては怒られるかもしれないからあんまり余計なこと言わないでね?」
外宮よりかは内宮の方がメインになるから先程よりも外国人や観光客に溢れていて、まるでテーマパークに来たかのようなカオスかを感じる。
広大な道を進むと、松の木が盆栽のように綺麗に切られていて、形の綺麗さから庭師も一流の場所のようだった。
こうも知らない一流に触れると、妙に刺激が湧いてくる。この仕事が好きで、本気でやってる人の仕事に囲まれる感じがする。
私には無い感覚、かつての私にはあったような感覚。
それに対して、凛は今は一流を目指し努力をしている。
きっとこの旅も彼のデザインの糧に過ぎないのだろう。
「姉ちゃん!身を清める為に川触れるって!」
「……淡水か、なんか怖いんだけど。」
「いいじゃん!気持ちよさそうだし、行ってみよ!」
「……仕方ないな。」
風が周りの松の木を強く吹きあらし、川がせせらぎを奏でる。
玉砂利の音がいつもの砂利よりも甲高く上品な音を立てていた。
まあ、難しいことは考えなくていい。
今はこの旅に身を委ねてみるとしよう。
そう思い、川に手を当てるとひんやりとした水が手を冷やし、それが妙に心地よくすら感じた。




